292:陣龍:2024/01/25(木) 17:30:56 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

『ゴーストウィニングの異世界旅行記 ~何処でも変わらぬ【ターフの亡霊】~』



「……つまり、今ゴーストは例の『神様』が一切関わっていない超常現象の結果、行方不明になっているって事ですか」
「なのです」
「……それで、その『神様』が必死に探しているけども、全然見つからない、と」
「なのです」



 ウマ娘が集うトレセン学園の教室。その理事長室にて、最近この世界に何事か有る度に出ずっぱりに成りつつある
別世界の駆逐艦娘が、此度の【亡霊失踪事件】に関する事情説明に現れていた。今回この世界に来た時に、
とある投資家兼動画配信者から頂いたアルコール飲料ととある新星若手騎手から貰ったアメリカンビーフジャーキーを
飲み食いするこの苦労人少女は、学校の一室で未成年者が居ようと遠慮なく酒を飲むと言う行動について
行儀が悪いとか言う事も考える気に成れなかった。



「もう飲まないとやってられないのです……」
「その、ご愁傷様です」
「謝罪、そして感謝……此方が出来売る事は可能な限り行おう……」
「電さん、何にも悪くないのにいっつもこっちの世界の事で振り回されてますよね……」
「スぺちゃん、言わない方が良いと思うよ、うん」


 理事長室に集まっているのは、何時もの黄金世代の五人衆にゴーストの友人のナイスネイチャ、そして学園責任者の理事長と秘書。
往来での騒ぎも偶然オペラオーが朝っぱらから臨時楽劇を展開してそれにカノープスメンバーのロイスアンドロイスや
ツインターボが便乗して騒ぎを起こしていたのも有ってかき消えていた偶然も有り、ゴーストウィニングが
異世界に転移している情報は情報封鎖されていた。因みにその臨時楽劇はヒシアマゾン寮長によって鎮圧された。


「しかし、【ウマ息子世界】とは、また珍妙な世界に行ってしまったのですね。ゴーストウィニングさん」
「【ウマ息子世界】から見て見れば、私ら【ウマ娘世界】の方が珍妙な世界なんでしょうけどねぇ……」
「結局、あの後ゴーストから通信は繋がらないし、コッチからのメールも電話も繋がらないし……」
「まぁ、でもゴーストの事デスから、普通に元気にやってるとエルは思うのデスよ」
「エル、少々楽観的過ぎませんか?」



 何事かアクションを起こそうにも、肝心要な通信が一方通行で受信しか出来ないとあっては、気をやきもちさせつつも、
内容の無い話をするしか無かった。


「……あー、ちょっと聞いてて思ったんだけどな」
「え…ご、ゴゴゴゴゴールドシップさん!?何でここに!?」
「いやスぺが変な反復横跳びしてたのが見えたのと一緒にゴーストの件の事が聞こえちまってな……勿論、
誰にも他言はしていないぜ」


 そんな中、横目で見ていた電以外には誰にも気づかれずに理事長室に入って来たゴールドシップ。腕組みしつつその表情は
真面目な様相で有る事からも、普段の悪戯爆走劇は計算して行う、やってはならない事との区別はキッチリ付ける
非天然型である事を容易く証明していた。


「なんか微妙に場違いで変な解説が入った気がするな……」
「……えっと、それで、ゴールドシップさんは、何を思われたのですか?」
「おお、そうだそうだ」


 謎の受信を仕掛けたゴールドシップに対し、疑問を提示する事で修正するキングヘイロー。


「……ゴーストってさ、今【ウマ息子世界のトレセン学園】に居るだろ?」
「はい」
「で、トレセン学園って事はアタシらの世界と同様の形態って事だろ?」
「それが……どうしたんですか?」


 不明瞭で躊躇う様な物言いに思わず催促する様な口振りで応えたグラスワンダー。

293:陣龍:2024/01/25(木) 17:32:43 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「……ゴーストってさ、つまりは今【思春期真っ盛りな10代揃いの男子校ど真ん中にたった一人でいる】って事だろ。
あの何時も何時も、最近マシになったけど前は素っ裸や下着だけで脱衣室から出て行こうとしていた様なアイツが」




 両手を後頭部へとやり、一本線に眼を閉じる例のポーズで放たれたゴールドシップの一言は、
数瞬の間を開けて理事長室に轟く驚愕と悪夢の絶叫を誘発させたのであった。



「どうして電だけがこんな事ばっかり……」
「あー……ドンマイ、電ちゃん。このジャスタウェイ人形上げるから元気出して下さいまし」
「こけし見たいなジャスタウェイは要らないのです……」





 一方その頃、【ウマ息子】世界では。



「あ、どうもです。ウマ娘世界出身のゴーストウィニングと言います。多分暫くの間になると思いますが宜しくお願い致します」



 動揺と興奮と混乱とその他イイ感じな物が織り交ざっている、ウマ息子達が通う教室の一室で自己紹介を始める
【ターフの亡霊】が居た。


(マヤ分かってたよ、絶対大混乱になるって)
(あはは~……ゴーストさんってこう言う人なんだなぁ~……)


 そしてその混沌を乾いて貼り付けた笑みで以て、周囲の喧騒と同化するウマ息子のマヤノトップガンとカレンチャン。
学友が次々立ち上がって動物園の猿の方が統制が取れているかも知れないゲート破壊寸前暴走を、
何処か遠い目で天井を眺めて視界に入れない様にしていた。





 全く無防備なウマ娘、ゴーストウィニングとの撮影にて二人のウマ息子の心臓の鼓動が連打された後。
一座の面々はゴーストウィニングの扱いをどうするかで話し合いが持たれるも、当然ながら難航した。


 第一に、次の【光】が出るまで空室内にゴーストを住まわせると言う案は、事実上の軟禁生活を強いると言う事な上に、
性別の違いはあれど走る本能は同じであるウマ娘に何時出るのか分からない【光】が出るまで出て来るな、
と言うのは余りにも酷な話であり、没となった。

 第二に、ゴーストを男装させて周囲を誤魔化す案も上がったが、肝心のゴーストの方が男装演技については
全くの素人である上に、寮長曰く『ウマ息子の嗅覚を考えると、黙っていても直ぐに違和感を持たれてバレる』と判定され、
これも没となった。


「……もう誤魔化すのは諦めて正面突撃で全情報開示で良いのでは?隠していても絶対バレますし」


 最終的に、この悩み事の根源がそう言いだしたが為に、脅威のトレセン学園ウマ息子教室にウマ娘臨時入学と言う
流れになったのであった。



「……カレンチャン」
「何?マヤ君」


 分かり易くヒートアップしている学友たちの質問攻勢に相変わらずこの学園に来た時と変わらぬポヤポヤした雰囲気のまま
適当に答えているゴーストを他所に、カレンチャンとマヤノトップガンはコッソリと話をし出す。



「……どう考えても、【危なっかしい】よね」
「うん、【危なっかしい】」



 本当に女なのか不躾な質問をしたウマ息子に対して『ウマ娘ですってば~』と、何処ぞのツインロケット砲や巨大スイカ砲丸を
抱えているウマ娘より掛け離れては居れど、女性としてはそれなりに無くも無いと言うか何と言うかな、
その一部分を何処ぞのドイツ生まれな閃光を参照にした前屈みを披露して一部の馬鹿を爆発させてさらに一部に
『血染めの天井』を出現させる大狂乱が引き起こされている中、この二人だけはこの事態を横目に見つつ静かに鼻を拭って冷静に見ていた。

294:陣龍:2024/01/25(木) 17:33:45 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「……ゴーストさんが帰るまでの間、ちゃんと『守護らないと』だね」
「うん、『守護らないと』」


 突如として阿鼻叫喚の大惨事と化したウマ息子の教室に慌てふためく教師と『……あれ?』と
不思議そうな顔で疑問符を頭上に羅列させつつこの有様を眺めるゴーストを視界に入れつつ、
二人は決意するのであった。





「……どうしてこうなった」
「……なんでこうなったの」


 尚、その大混沌が巻き起こった午後。トレセン学園が所有する模擬レース場にて、体操着姿の
ゴーストウィニングが、同じく模擬レースに出走する多数のG1ウマ息子達と共に出走準備を整えていた。



「……マヤ君、分かってる?」
「うん、分かってる。終わったらゴーストさんの慰めに行かないとね」




 異世界から来たウマ娘、しかもその異世界の中でも【特異点】であったゴーストウィニングの実力が
燦然と示されて別方向の阿鼻叫喚或いは衝撃の暴風雨が荒れ狂うまで、後少しであった。

295:陣龍:2024/01/25(木) 17:35:25 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 最近635氏が来なくて寂しいゾ()

|д゚) 因みに『血染めの天井』はどっかのこち亀のボルボの如く噴水式に鼻血を噴出して染め上げられたヤーツ(ギャグ成分)

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最終更新:2024年03月17日 18:42