671:陣龍:2024/02/26(月) 23:28:38 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『ゴーストウィニングの異世界旅行記 ~江戸時代式【火災】消化法~』
「にゃはは……大変でしたね、ネイチャさん」
「はぁー……はぁー……ホントだよ、スカイやい。全く、あのターボったら……」
ゴースト転移して四日目の夕方。異世界ウマ息子世界鑑賞会は未だ続いていた。
「スぺ……イケメン見て騒ぐ気持ちも分からんでも無いでも、少し騒ぎ過ぎだべ」
「だって……カッコ良すぎて……」
「エル、ワイヤワイヤするのは良いとしても、必要以上に大騒ぎするのは関心しないデスよ?」
「エリュー……」
「全く……ウマ息子世界の自分を見て気絶するなんてどう言う事よ。それでもキングなの?」
「ぽこぉ……」
何故かウマソウルなおウマさんの方の人らと共に。
「……今日は休日ですし、それに許可も取ってますから余り目くじら立てなくても良いんじゃ無いですかね」
「甘いなぁ、スカイは。確かに相応に騒ぎたい気分も分からなくはないよ?でもだからと言って、
廊下を超えて下の階にも響く位に大声まで連呼し続けるのはやり過ぎでしょ?」
「あぁー……それを言われると……」
ウマソウルなので瓜二つの容姿、されど服装は神崎島の軍服とトレセン学園制服で全く違うセイウンスカイ。
「全く……ターボはいい加減にその躊躇無く走りだす暴走特急気質を如何にかしなさいなって。
大分前にあの凱旋門賞での【ヤラカシ】の時見たいに、ターボ号にタイマンで怒られたいの?」
「ごめんなさいだもーん……」
「あっははは……ありがとうございます、ネイチャ号さん」
「ネイチャもネイチャよ、ターボは兎も角、私の事は敬称とか要らないってのに」
「あー、それはー、そのー……」
正座させられているツインターボと向き合う軍服ナイスネイチャ号、そして目が太平洋遊泳している
トレセン学園制服ナイスネイチャ。
「正しく……混沌、ですわね」
「そうですわね……それはそうと、マックイーン。向こうの世界のウマ息子のイクノディクタスを見た
この万歳三唱未遂についてですが」
「あっ、そ、それは、その……」
ウマ娘世界トレセン学園視聴覚室は、何だか三つの世界が混在する異常現象()が発生していた。
672:陣龍:2024/02/26(月) 23:30:33 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……それで」
「残念ながら、お察しの通り。全く進展見られず」
「まぁ……そうなりますか……」
「……一応言っておくけど、件の『神様』はずっと真面目に捜索してるって話だからね?」
「電さんからその事は聞いています。ただ、『神様』も早々、私らが一方的に思う程に
全能でも万能でも無いんだなぁって」
相変わらず小さい毒針のあるウマ娘、セイウンスカイの言葉に苦笑いするウマソウルのセイウンスカイ。
表面上は飄々としつつ中身は燃え盛る闘志を秘めた彼女、異次元の成績を記録した競走馬相手に
世界唯一勝利した事と、そこから唐突に始まったジェットコースターより戦闘機の戦闘機動より
遥かに激しい状況の乱高下に常に遭遇し、共に有った事から、所謂『脳を焼かれ切った』状態に近かった。
「……ねぇスカイ。私、思うんだけどさ。あんまりゴーストの事気にし過ぎたら倒れるよ?ローレルさんから、
スカイが直ぐにゴーストからの連絡に即応出来るように、ずっとウマホの側で眠り浅くしているって聞いたし」
「……そう言うネイチャさんも、マーベラスさんが寝るまでずっとウマホを確認していて、それに着信音も
最大音量に設定してずっと気にしていてマーベラスに反応してくれないって嘆かれてましたよ。
マーベラスが何なのかは分かりませんが……」
「……ネイチャ号さんに言わせて貰うと、どっちもどっちよ。お二人さん」
脳の焼かれ具合ではいい勝負な、世界で唯一ゴースト号に打ち勝ったウマ娘コンビに少々飽きれるネイチャ号。
ウマ娘のセイウンスカイもナイスネイチャも、双方方向性は違えど友人想いで有る事には違いなく、
世話焼き気質が色々と【ふら付いている】ウマ娘を放って置ける筈も無かった。
「(pipipipipi)……っと。それはそうと、ゴーストからですね」
過保護に見えて実際にはそれだけしても時たま足りないのだから質が悪い転生馬にして
ウマ娘からのメールを確認するセイウンスカイ。
「……ゴースト、一体どれだけ向こうの世界に【爪痕】を残すつもりなんですかねぇ」
「もうそう言う存在だと割り切るしかないと思ったりする、おウマさんのセイウンスカイ号」
「そうですね、ウマ娘のネイチャさんもそう思いますよ」
「以下同文なおウマさんのネイチャ号」
視聴覚室内のトレセン学園生徒のウマ娘が未だウマ息子世界の自身の同位体や友人らの写真や映像に
感情のボルテージが鰻登りなのをおウマさんらが諫めたり抑制したり一部シレっと混ざって鑑賞会している中。
『【朗報】暴走してたウマ息子連中を自作動画で鎮圧に成功セリ( `・ω・´)b【完封勝利】』
情緒破壊や涙腺崩壊【攻撃】に定評の有り過ぎる隠れていない誘導ミサイル()が発射され、
効果絶大な成果を証拠の自作動画と共に送って来てニッコリサムズアップで得意気な異世界失踪者のメールを、
頭を突き合わせて確認した四名は揃って苦笑いし合うのだった。
「……そう言えば、おウマさんのゴースト号は来れないんですか?」
「あー、今ゴースト号は飲食関係の勉強で、二つの意味で詰め込み過ぎて体調崩しててね……」
「……真面目で頑張り屋なのは良い事なんですけど、ねぇ」
横になったまま微動だにせず膨れたお腹を抱えているゴースト号の姿を、
ウマ娘のセイウンスカイとナイスネイチャが想像していた丁度その頃。
「ねぇ、ゴーストちゃん」
「はい」
「カレンはね、確かにゴーストちゃんにあの頭思春期真っ盛りウマ息子を止める方法が有るって言う口振りだったから
止めなかったんだよ」
「はい」
「……じゃあ、ね。この二回目の死屍累々()な有様になるって、どうして言ってくれなかったのかな?向こうの世界でも、
似たような事やってたって、言ってたよね?」
「……すみませんでした」
そのウマ息子世界では、ウマ息子カレン君に椅子に座って面と向かって【お話】されているターフの亡霊の姿が居た。
最早前世も今世も異次元の成績を多数残している存在に有る筈の威厳や威風等、欠片も有りはしない。
673:陣龍:2024/02/26(月) 23:31:42 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……ぜーんぜん、収まる気配無いね」
「ゴルシさんもタキオンさんも、あのウマ息子の集団から逃げ切って行方知れずになったからね」
「直接走り回る事は一応収まっても、この変な方向への熱気は全く止まって無いよ……」
「マヤ君、如何にかして落ち着かせる方法って分からないかな?」
「マヤ、分かんないよ……こんな頭が茹だっている様なウマ息子の止め方なんて」
「そりゃそうだよねー」
ゴーストウィニングによるウマ娘世界の情報開示した直後、暴走したウマ息子軍団の大行進が
突如勃発すると言う事態が発生してから一時間後。行方をくらませたゴールドシップとアグネスタキオンを捕捉出来ず、
結局トレセン学園内に留まっているウマ息子達であったが、大した耐性も抗体も無い所に
押し寄せたウマ娘と言う存在によって点火された有様は鎮火する気配を見せて居なかった。
「心配しなくても大丈夫っスよ!ゴーストさん!」
「そうです。不埒な者共は、我々が排除してゴーストさんには指一本触れさせたりはさせません」
「はい、ありがとうございます。やっぱり頼りになりますねバンブー委員長とヤエノさんって」
そして、思春期真っ盛りな男子校の中の事である。アタマが煮え滾ったが余りに【お手付き】を目論み企む
不届きウマ息子が出て来そうなものであるが、ゴーストの傍らには常にカレン君とマヤノ君が居る上に、
今この視聴覚室にはこう言う事態では頼りになるバンブーメモリー君とヤエノムテキ君が居た。
「ヨーヨー♪頼られて嬉しそうじゃんねー、この色男コンビ?」
「なっ、そ、そそそそそのよよよ様な事は、わわわ……」
「そ、そうっスよ!?こ、これはゴーストさんを守る為の仕事っス!?」
まぁ、パリピウマ息子のダイタクヘリオス君に揶揄われたのが図星だったのか分かり易く動揺しているが、
その位は問題無い平常な反応であろう。
「そ、そうです!バンブーさん、明鏡止水、精神を落ち着かせて警護に当たりましょう!」
(グッ……ゆ、油断していると、あの子供見たいに無防備なゴーストさんの愛い姿が、頭の、
頭の中に……!ウォォー……!!)
「そ、そうっスね!ヨッシ!どこからでも掛かってくるっスよ!!」
(お、落ち着け、落ち着くっスよバンブーメモリー!頭の中を、アタマの中を空っぽにするっスよ……!)
何とも、微笑ましい姿である。
「……でも、このまま時間経過するだけで収まり付くんかねぇ?」
「いやぁ、厳しいとしか言えないと思いますよジョーダンさん」
「あ、別に呼び捨てで言って良いんだけど?コッチはそー言うの気にしないし」
「あー、でも一応、私はこの場の誰よりも年し……」
「ゴーストちゃん。全然意識していないのは分かってるけど、そう言う事は軽々しく言わないようにね?」
「アッハイ」
ウマ息子のトーセンジョーダン君たちが持ってきたお菓子を食べながら、言葉を交わす一同。
時々他意も何も無く闇深い事を言い出しそうになるのをカレン君にインターセプトされつつも、
良い感じに血と熱が抜けていないウマ息子達への対策を考えるも、そう易々と沈静化させられる方法は思い付いたりはしない。
「事は色々と精神的なアレコレが原因だからね。寮長らの一喝では収まりそうにないかなぁ」
「お!なんかフェスって雰囲気とか全塗り替えとかどうよ!?」
「フェスるって、そんな設備とか無いのにどうやんのさ?」
「……フェス」
ヘリオスの何時もの如き案にジョーダンが真面目なツッコミを入れるのを聞いて呟くゴースト。
「……ゴーストちゃん。何か思い付いたのかな?」
「まぁね。ずっと勉強時間は図書室で自主学習している事に成ってた時に作ったのが役立ちそう」
「初日の【血染めの天井】事件で、ゴーストさんはウマ息子と一緒に勉強とか出来なくなっちゃったからね」
「……あれ、本当に血だったんだ」
「あれ?パマやん知らんかったん?」
「いや、まさか本当に天井が血に染まるなんてね……」
674:陣龍:2024/02/26(月) 23:32:18 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
別クラスだった事から、壮絶な大騒ぎからのその後の休み時間にその教室の天井の謎の染みを見た位しか
詳しい事情を知らないメジロパーマー君。
「……おっ、丁度都合が良い事に二日前の繋げてたのがそのまま残ってる」
「ん?なにそれ?」
「一昨日、ゴーストさんの公式生放送したでしょ?その時に使った機材じゃないかな」
「あー、そう言えば、ゴーちゃんのカミングアウトで色々大混乱してたねー」
「いやヘリオス、ゴーちゃんって何さ。仇名?」
そんな事を呑気に言い合うウマ息子のパリピブラザーズに対して。
「……カレン君」
「え?どうしたのマヤノ君」
「マヤ、分かっちゃった」
「……何が?」
幸運か、或いは不運か。その理屈を超えた天才的直感がマヤノ君を通じて警鐘を鳴らすも。
「よーし。じゃー流しますかー」
「あ、ご、ゴーストさんちょっと待って……!」
一手、遅かった。
「いや、ね。流石に注意を引いて落ち着くかなぁってだけであって、まさか二度目の卒倒祭になるとは……」
「これから動画とか出す時はカレンが全部チェックしますね」
「えっ」
「チェックしますね」
「いや、でも」
「……チェック、しますね?」
「はい」
とある風マスターの言葉を一部借りれば、ウマ息子達を覆っていた【陰】の風はゴーストお手製のウマ息子
MAD動画と言う爆風によって纏めて吹き飛ばされ、勢い余ってウマ息子当人すらも巻き込んで吹き飛ばされた様なモノ。
「……カレン」
「はい、なんですかヘリオスさん?」
「……ゴーちゃんの事、頼むわ。ウチだと普通にノリと勢い任せに余計に発破しそうだわ」
「嘘ッ……ヘリオスが……!?」
「自分から自重する発言をするなんて……!?」
「……こりゃ、明日は雪かねぇ」
パリピ系ウマ息子筆頭のダイタクヘリオス君が結構真面目に言い出して来た内容からも、
ゴースト謹製MAD動画の破壊力は抜群なのは確実であった。
675:陣龍:2024/02/26(月) 23:33:02 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 一週間しか居ないのにどれだけの破壊力を齎すかターフの亡霊。それは誰にも分からない
最終更新:2024年03月17日 18:55