440:リラックス:2024/02/08(木) 20:13:30 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
厄いものが湧いたみたいです~無人機は人の仕事を駆逐し得るのか?~

国境警備軍の主な任務は、爆撃や近接航空支援を除けば最前線と後方を繋ぐ補給線の構築が主なものであった。

コレは魔物と直接接する機会を可能な限り減らす為であり、前線に比較的近い砲撃支援を行う部隊すら二重雑種兵や無人機による実施が主になっていた。

如何に魅了や洗脳系の能力への対策を行うにしろ、一番有効なのはそもそも効いたら困る奴を近づかせないことなのは言うまでもない。

閑話休題。

シーパワーの及ぶ地域から徐々に内陸部へと進行する前線部隊を支援する為の中継拠点を築く為、波止場から水平線までの間に、今となっては比類なき大型という他ない船舶がずらりと並んでいた。

徴用という名目で使い道がなく岸辺の女王となっていたのを政府が買い上げた艦が結構な割合を占めるそれらは順々に入港し、人員や機材を降ろしていく。

トラックの類は勿論のこと、トレーラーや特殊建設機械も勢揃いで、見ていて飽きることはない。

とはいえβ/甲世界との共同開発されたという特殊建設機械等の無人機械の群れを見ると、どうにもおかしな気分になってしまう。

「何というか、ガキの頃の特撮映画だかアニメか何かで見た気がするなぁ」

ショベルカーや動力ドリルやハツリ用のコンクリートハンマーをアームの先にくっつけ、車体正面に頑丈なドーザーを付けた工作機械の怪物みたいな代物は、実際怪物じみた勢いで与えられた役割に従って破壊された街並みを更に破壊…否、資源として『採掘』し始める。

そうして生じた瓦礫の山をショベルカーやクレーン車がトラックの荷台に積み込む。

そして巨大なミキサー車に見えないこともない特殊工作車両に投入すると、仕分けされた各種資源が集積場に積み重なり、また別の工作車両に積み込まれ、各作業場所へと向かって行く。

ついでに言うならクレーン車と言っても、物理的なクレーンを有しているのでなくPK技術を用いて力場によって荷物を上げ下げ運搬しているとのことで、ファンタジーなのかSFなのか分からなくなって来る。

何より驚くべきなのは、破壊された都市を原料に新しくコロニーを建築しているこれらの車両や重機の全てが、最初に触れた子供向けアニメの敵役に出て来そうな工作機械の化物みたいな代物により一元管理されている無人機だということだ。

「確か陸地を制圧するメダルギアの管制システムの流用だとか」

「やれやれ、瓦礫の山から都市を一つ自動で作り上げてしまうとは凄まじいな」

国境警備軍の技術士官として現場で様子を見ていた三浦一尉は、部下の芹沢と会話してそう呟く。

トミカ好きの甥っ子が喜びそうな光景ではあるが、何ともはや、少し詳しく聞けばSF作品好きの性癖というか悪癖というべきか、兎に角その辺りを抱えている連中が呼んでもないのに『人類に敵対するフラグですね分かります!』と横からしゃしゃり出て来そうな話であった。

異様な世界で異様な敵と戦うという世界観を成立させるギミックが存在したという意味では現実と似ているが、人類を裏切って敵に回る人類なんて枚挙に暇がないくらい実績が積み上がっている現実があり、環太平洋条約機構上層部はその程度は不可避のリスクとして織り込んだ上で無人化への躊躇がまるでない。

というより、エネルギー事情と資源の問題が改善された現状、マンパワーの不足の方が余程問題だから、という方が大きいが。

441:リラックス:2024/02/08(木) 20:15:49 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
ファーストインパクトからセカンドインパクトの過程で魔物の勢力圏に落ちた地域は人口爆発地域を軒並みカバーしていたこともあり、環太平洋条約機構が成立し、加盟国を合わせても登録された人口は10億に届かない。

だからこそ、現状の設備規模でエネルギーや食料をカバー出来る訳だが、如何にナノチップエキスパンションやVRシミュレーターがあるとはいえ、その全てが真っ当に働ける訳でもなく。

「限られた貴重な労働力を計算機アルゴリズムでリソース処理し、それに合わせて動く端末を用意することでカバーする…というのは理屈では分かるけどな」

「それを実際にやったのがこちらになります、と… 実際便利だし、効率的とは思うんですけどね」

「ここまでカバー出来てしまうのを実際に見せつけられると、その内どんどん人の仕事がなくなっていきそうだ」

都市を一つ作る、というのはガワだけでも大事だというのは理解している。

如何に安全対策をしても、いや、対策が必要になるからこそ、工事には危険がつきものだし、各種事情により非効率とならざるを得ないことも当然あるだろう。

前職の経験からそれを思い知っている三浦に言わせれば効率最優先で死者も出ない、何ともありがたい現場がすぐそこにあると言えそうだったが、歴史の教科書にも度々名前が出るような国際都市がかつてそこで暮らしていた者達の残骸ごと、丸ごと新たな都市で上書きする為の資源になっていく様を見ていると、かつて存在したヒトの営みに対する蹂躙のように感じるのは否めなかった。

(いや、ただの感傷だな。山を切り拓いて都市を築くのとやってることは変わらんはずだ)

実際、霊的な物の存在はエネルギー変換工学(β/甲世界風に言うと魔導技術)の観点から言うと科学的に解明出来るそうで、魂が強い残留思念によってその場に留まって悪さをするプロセスも解明されているが、

その魂ごとエネルギー変換工学により丸ごとエネルギー資源として再利用することで『浄化』出来ることも証明されている。

如何にやらかした側にも色々あると言っても、丸ごとお持ち帰りテイクアウトで丸っと解決という訳だ。

臭い物に蓋?いいえ、錬金で仕分けして再利用ですという強引さだが、訳の分からない恐怖やリスクが払拭されるならきっと良いことなのだろう。

「まあ、この機械でやるのは都市のガワと基礎インフラを建築するところまでで、その後のインフラ点検や整備は人の手でやるということだから、結局は新しい働き口が出来るって結果になるんだろうが」

「だと良いですね。予備士官入りした後の再就職先に悩まなくて良いなら朗報です」

「そうだな。港湾設備に加えて飛行場も整備するって話だし、その辺りだけでも結構人が必要になるだろう」

「飛行場に港湾設備か、何ともロマンがありますね。男の子の夢ですよ」

人が集団を作り社会を営もうとする限り、人と物の流れは必ず生じ、そこに付随して生じる仕事は必ずある。

そう考えると、この拠点の整備や点検に携わる仕事は長いこと勤められそうな有望な仕事の一つと言えるかもしれなかった。

442:リラックス:2024/02/08(木) 20:17:29 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
多目的輸送機として開発されたMVー90はその気になれば本土から地球全土をカバーすることも可能な航続距離を誇るが、パイロットの負担も馬鹿にならないし、人が作った物である以上トラブルも必ず起こる。

そうすると前線近くに中継や緊急着陸の目的で飛行場を用意することも必要だろう。

勿論、中継となる拠点は飛行機以外にとっても必要となる。

国境警備軍の戦闘がひたすらに根気の作業で最前線を押し上げていく、というものである以上、その進出拠点、中継拠点となる都市の任務は長いものになるのは間違いないし、大陸方面における進行の始点の一つとなるこの基地はかなり長期間忙しいことになると予想できた。

炭鉱の閉山により役割を喪失して経営破綻した都市なんていうのがニュースで話題になったのを思い出せば、廃墟ヲタ以外にとって都市の役割が長期間無くならず、果たすべき仕事が多いというのは悪い話ではないはずだ。

高度成長期に建てられて老朽化とゴーストタウン化がニュースで問題になっていた公営住宅の団地に良く似た規模とシルエットの建物がみるみるカタチになっていくのを見ながら、『デザインが味気ないのに目をつぶればだが』と三浦は小さく呟いた。


オマケ
特殊工作車両
通称『悪役2号』
メタルギア:カイオト・ハ・カドッシュの技術を応用し、無人工作機械群の管制用に作成された工作車両。

役割は配下の無人工作機械と共に破壊された都市の残骸を原料に中継拠点を兼ねた都市を新しく築く工事を行うこと。

破壊された建物やインフラの残骸を資源として『採掘』する為にアームを駆使しながら傘下の工作機械を統制管理するのだが、その様子を撮影したPV映像を有志の方が加工し、中央アームの先端部に顔っぽい映像を合成したところ『特撮の敵が街を破壊してるようにしか見えん』『戦隊ロボ、早よ!』『東○自衛隊を呼べ』とコメント欄が埋まった模様。

※加工後の画像は、大体デジモンのブレイクドラモンをイメージすれば良いとのこと。

通称の由来は上記の映像がどう見ても悪役にしか見えなかったことによるものであり、宮崎駿さんの「雑想ノート・多砲塔の出番」に登場する悪役1号というネタにちなんで悪役2号という名称がネットから一気に広がったことによる。

443:リラックス:2024/02/08(木) 20:19:04 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
以上、きっと碁盤目都市にコピペ建築物な都市が出来上がっている

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最終更新:2024年03月17日 19:07