458:リラックス:2024/02/10(土) 06:36:42 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
乙です。試験管ベイビーが凄い優しくて良い子ってさ、それは物凄い作り手にとり「都合の良い子」ってことだよね
人理焼却したのも実質ここのトップで創設者みたいな奴だし、カルデアとは恐ろしい組織です
便乗して、
厄いものが湧いたみたいです~幕間・転移前の環太平洋条約機構2~
「このように新設の海上核融合炉に加えて反物質発電所は今月中に8割の稼働が開始される見込みで……」
セカンドインパクトを起こした連中への通称『二分間ヘイト』で思い切り愚痴を吐き出してスッキリした後、政府広報の発表を黙って聞く。
内容としてはエネルギー事情の改善と生活必需品を筆頭にする物資供給が改善されていくといった内容で、テレビに映る会見の場からもあちこちから安堵の声が聞こえて来る。
セカンドインパクトの発生で人類の勢力圏が大きく後退した結果、人手が圧倒的に余るのではないかと懸念されていた。
観光業や旅行代理店等は来る者も行く者も大幅な渡航制限から壊滅状態、輸出産業は販売先が丸ごと消滅、小売業も物資の流通規制のため売り物がなく、製造業も物資の輸入先が消滅したことから同様、不要不急の事業も中断されるため建設業すら停滞。
概ね予想されていたことだが、そうした状況では雇用の半分が実質的に消失すると見積もられていた。
勿論、環太平洋条約機構を再編した政府も手は打っており、自衛隊を内包する国防組織として新設された国境警備軍の規模拡張とβ/甲世界からの資源輸入に加え、技術支援により建設されるコロニーや海上プラント等の公共事業を実施に移していた。
しかし、それまで『GDP1%といったら1.9%まで可能というが1%ギリギリに抑えるのが平和に対するあるべき姿勢だろJK』と言って一生懸命お気持ち配慮の為に縛り上げていた物を数倍に拡大したところでタカが知れているし、数倍に拡大するのがそもそも大変なんだよ国民と政治家と官僚が協力して戦後一世紀近い積み重ねた成果だよ誇れバカヤローという事情もあった。
そうした巨大な課題を幾つも同時に対処しながら国内の再編の前に国家や社会、経済が崩壊するのではないかと漠然とした不安に苛まれる毎日がある程度改善されたと考えると安堵の溜息の一つも出ようというものだ。
とある一般家庭、一家揃って放送を見ていた加賀見家のリビングでも同じような空気であった。
春季休業で実家に戻っていた次男の渉は兎も角、貿易会社勤めの両親や駅員の兄まで一緒にリビングでグダを巻いているのは災害対策の一環だ。
仕事もないのに通勤してオフィスの空調や照明を動かすのはエネルギーの無駄でしかなく、電車の運行本数や運行時間の制限もあって自宅待機の時間が増えていたという次第だ。
「まあ、久々にゆっくりと家族団欒出来たと思えば良いじゃないか」
「それは、そうなんだけどよ…」
色々とブラック勤務に目が死んでいたこともある兄達をこう慰めたものだが、今の社会において仕事がないというのも、これはこれで致命的な悩みであることくらいはまだ学生の渉にも理解できた。
459:リラックス:2024/02/10(土) 06:38:43 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
(先輩達も大変だったらしいからなぁ…)
堅実に公務員試験に合格していたような者達すらお先真っ暗で絶望感漂っていた時期があったとはOBの先達から聞かされた話で、結局、半数以上はナノチップエキスパンションによる知識インストールとVRシミュレーターによる高速学習のコンボで国境警備軍に就職することになったらしい。
荒廃気味な世界を舞台にしたミリ風味ラノベにありそうな酷い話だと思わなくもないが、一応、そうした先輩達がOBとしてキャンパスに戻って来て自分達後輩が「大分マシな境遇になったんだな自分達」と呑気に戦慄しているのだから、まあ、最悪と比較すれば大分マシなのだろう。
それを踏まえると、何とか職場に戻れそうな両親や兄、先輩達よりは充実した選択肢を得られそうな自分、セカンドインパクトを起こした連中に比較して環太平洋条約機構は随分と上手くやっているらしい。
「渉、お前、卒業後はどうするんだ?」
「そうだなぁ…」
実際、選択肢は多い。
政府の補助を受けてナノチップエキスパンションの被験になることに同意して、旅行代理店営業から爆撃機、基、多目的輸送機のパイロットに華麗なジョブチェンジを決めた先輩もいるのだ。
大学で過ごした数年は何だったんだと思わなくもないが、『なら、使わずに苦労すれば良いだけなのに』と飲み仲間と酒の肴に馬鹿にしたことを思い出して、この考えは黒歴史として棚上げすることにした。
「選択肢が多いからってなぁなぁはダメだぞ。タイミング逃すと他ならぬ自分自身に怠け癖がついて転がり落ちて行くんだから」
「うん、分かってるよ…」
思い出されるのは加賀見家にしばらく前まで下宿していた十歳くらい年上の母方の再従兄弟だか又従姉妹だかだ(血縁とはいえ家族とカウントしたくない)。
地方から大学進学の為に下宿して、無事に外資系企業に就職が決まったのだが、卒業間近になってその企業が倒産。
これにショックを受けたのか引きこもり気味になり、更にこの頃にSNSか何かで妙なスピリチュアル的な思想に被れたのか、似たような境遇の生徒を対象に学校側から紹介された仕事を『政府の口利きで就く仕事で給料を貰って納税するのはファッショの片棒を担ぐことだから』と、『お前は何を言ってんだ』という謎の理屈で突っ撥ね、何とか大学は卒業したものの、そのまま実家にも戻らず就職も進学もせず、世間からは綺麗に言ったら家事手伝い(家事はしない)と呼ばれるような存在になり果てていた。
光熱費や食費も入れず洗い物一つせず、怪しげな行動ばかりしている彼女に対して、両親は彼女の実家に『大学卒業してこっちで就活もしないならさっさと引き取れ』という旨の連絡は何度も入れたらしいが、進展なく数年(両親の話を聞くと下宿料についての話も突っ撥ねられたとか)。
460:リラックス:2024/02/10(土) 06:41:04 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
そのままフェミ気取りの妙なグループとつるみ出して、家事もしてなきゃ働いてもいないのに『女の苦痛の声を聞け』だのなんだの騒いでスピリチュアルウォーキングなる奇妙なウォーキングをしようとして開始5秒で脇腹が攣ってやめるなど、『ここまで来ると笑える』とネタになりかけていた所、その所属したグループというのを支援していた存在がよろしくなかったらしく、目出たくもないが殺処分が下されたらしい。
学生時代の彼女は将来への希望に溢れた魅力的な存在で、当時幼かった渉の初恋の存在となったりもしたのだが、この有様にそれもさっさと黒歴史として棚上げし、二度目の初恋で上書きしたのは余談だが。
こうしたケースは意外に少なくないらしく、海外の『支援団体』から小遣いを貰っていたような所が、後に『支援団体』の方が魔物に乗っ取られていることが判明し、そこから辿っていく内に検挙対象として判明、というのが一種のテンプレとなっていると、大学のモラル教育で聞かされた話を思い返す。
セカンドインパクト後に起きたちょっとした社会現象として、心理学者とか社会学者の解説がニュース番組等で放映されると、下手すると自分も同じように堕ちて行き得ると思い当たる節はなくもなかった。
そう思えば兄の忠告も、背筋に冷たい物を感じる程度には真剣に受け止めざるを得ない。
(怠け癖か…日々の習慣が『1日くらい良いか』ってサボった瞬間、二度とやらなくなるなんてことはあるからなぁ)
さて、どうしたものか、と悩むと、ふと新聞の広告が目に入った。
「ほう、月の開発か……」
エネルギー自給政策の一環として、月におけるヘリウム採掘計画は先程のニュースでも語られていたが、その規模を拡張して、月の大規模開発計画が年明けよりスタートし、現地での労働希望者の募集を行うという旨が記されていた。
月は惑星でなく、生態系なんてものがない関係上、何とかという無色のエネルギーが地球に比べて希薄であることから、仮に無理矢理魔物を月に連れて行ってもマトモに生きられないという程度の話は渉も耳にしていた。
そして月は核融合に必要なヘリウム3の有望な採掘場とされており、将来的に宇宙開発が活発化、より安全な居住地を求めて移民が増える可能性などを大学で小耳に挟んだことをツラツラと思い出す。
これに応募しない手はない。
アポロ11号が月に行ったのは彼どころか両親が産まれるずっとずっと前の話だが、いつか月に行ってみたいと夢を見たことのない男の子は珍しいのではないだろうか?
尤も、夢を見た中から夢を目標に落とし込む為に本気になる者は更に珍しいだろうが、他に特段やりたいことも思いつかない以上、図らずも叶いそうとなれば、やってみない手はない。
渉はスマホで広告に記載されていたバーコードをスキャンすると、早速フォームに記入を開始した。
461:リラックス:2024/02/10(土) 06:41:41 HOST:softbank060106204110.bbtec.net
以上です
最終更新:2024年03月17日 19:09