325 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/12(月) 12:52:12 ID:softbank126036058190.bbtec.net [52/137]

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「オペレーション・トライデント」


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 4時23分 セイロン島 マナー島 コンプトン級クィーラ


 マンナル海を望むセイロン島西部に突き出た形のマナー島には、物々しい戦力が並んでいた。
 それはMSやMAであったり、通常兵科の車両や戦車であったり、あるいは各種兵科の歩兵であった。

 BETAの勢力圏となっているインド亜大陸を対岸に迎えるこの島は、インドから押し寄せるBETAが上陸をすると予測された島であった。
この島に限ったことではなく、インド亜大陸を向いた西部地域一帯の島々や沿岸部において広い防衛線が敷設されている。
未明に始まったBETAの大規模侵攻に合わせ、現地にいた地球連合の派遣軍は迅速に展開し、防御を固めることとなったのだ。
流石に入り組んでいる島々までも戦力を張り付けるのは効率が悪いため、ある程度大雑把に配置されている。
それでも、国連軍に属するコロンボ基地に存在していた戦力では到底できない規模での防衛体制を固めることができていたのだ。

 そして、すでに防衛戦は始まっていた。未明にBETAが動いたとの報を受けてから迅速に展開し、余裕をもって迎撃を開始していたのだ。
 第一段階はセイロン島西岸に陣取っている陸上艦艇群からの砲撃が行い、インド南東部沿岸から海に飛びこむBETAを漸減するものだった。
BETAの光線級による迎撃を容易く突破して突き刺さるそれらは、非常に効果的にBETAを消し飛ばしていた。
地球連合の投入する砲弾やミサイルなどは、高々レーザー程度で撃ち落とされるような貧弱なものではない。
 また、射線が開けているという関係上、艦艇に搭載されている巨大なビーム砲による排除も並行している。
宇宙での撃ち合いも経験している地球連合にとってみれば、インド亜大陸とセイロン島の間の距離など短距離の範疇だ。
まして、回避をするでもなく、装甲で弾くわけでもなく、何らかの防御手段があるわけでもないBETA相手だ、苦戦する要素がない。

「撃て、遠慮はいらん」

 だからこそ、ポップコーンのように滑稽なほど簡単にBETAははじけ飛んでいた。
 インドの大地において散っていくが、そんな相手に斟酌するほど地球連合軍は優しくはない。
 相手はコミュニケーションも何も通用しない「外敵」と判断されているのだから。

 それでも物量を叩きつけるBETAはそれでも少なくはない数を海中に飛び込ませていた。
 セイロン島からの砲撃は漸減を第一義としており、長時間の戦闘も考慮している関係上、その砲撃の密度はある程度で抑えられていたためだ。
海中に飛び込み、ひたすらにBETAの群れは海底を進みセイロン島を目指していく。

「BETA群、海中に突入していきます」
「規模は?」
「想定の範囲内です」

 クィーラのブリッジには、観測機や観測衛星からの情報が届けられ、リアルタイムで確認されていた。
 元より、この艦艇による砲撃は漸減にすぎないと割り切っていたのだ、阻止できなかったからと言って問題はない。
 ブリッジ要員からの報告を受け、クィーラ艦長は指示を飛ばす。

「予定通り、プランE-23で迎撃する。
 砲撃はこのまま続行、頻度はBETAの数に合わせて適宜修正せよ。
 担当海域の水中艦隊旗艦のナタニエフに打電、入れ食いだとな」
「了解」

 BETAが海中に飛び込んだ場合、β世界では人類側の攻撃手段は限られる。
 色々と理由はあるが、爆雷投射以上の効率的な手段がないというのが大きなウェイトを占めるだろう。
海中に爆雷を投射すればあとは爆圧がBETAを圧殺してくれるのだ。あとは数さえ揃えて放り込めばよいのである。
強いて弱点を言えば爆雷を投射する艦艇の数および投射できる数に限度があるということくらいだろう。
逆に言えばそれ以上の弱点はないわけで、β世界ではこれが主軸となっていた。
 地球連合でも勿論爆雷や魚雷といった手段での迎撃も選択肢の一つとして選ばれていた。
 だが、それ以上に地球連合では排除を行うための手段を備えていたのだった。

326 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/12(月) 12:53:12 ID:softbank126036058190.bbtec.net [53/137]

  • β世界 マンナル湾沖合 海中 ボスゴロフ級ナタニエフ


 水中ではまさに虐殺が行われていた。
 水中・海中を難なく移動することができるBETAであるが、遊泳能力があるわけではなく、また攻撃手段も限られる。
地べたというか海底を這って進むしかなく、その間は非常に無防備なのだ。
だからこそβ世界では爆雷による漸減と言う手段がとられていたが、地球連合軍はそれ以上を叩きつけた。
 まずは潜水艦からの攻撃。これは魚雷や爆雷などの形で、BETAを大雑把に削るものだった。
 そして、その攻撃で空いた隙間に飛び込んだのが水陸両用MSの群れである。
海中では膨大な数こそあれど、殆ど攻撃手段を持たないBETAを一斉に食い散らかしていくのだ。
水中用の偏光ビームライフルを筆頭に、ロケット、爆雷などを順次叩き込む。
さらには格闘兵装---同じく偏光式のビームサーベルやクローを展開し、次々と屠っていく。
彼我の速度差はひどいもので、水中を無尽に動くMSなどから見れば止まっているようなものだった。

「これは、酷いな……」

 マンナル湾を中心とした海域を担当する水中艦隊の旗艦であるナタニエフの艦長は、一人呟いた。
 海軍としては久しぶりの出番ということで、満を持してこの迎撃作戦に出撃した。
 だが、蓋を開けてみれば、想定された以上にBETAが弱かったのだ。

(油断を招かないためにも情報を抑えていた、ということか)

 事前のブリーフィングでは想定をそれなりに高く見積もっていたのだが、外れた形だ。
 いや、相手が弱いというのは別段構わないことだ。不測の事態が発生して犠牲が出るのは、覚悟はしていても避けたいところ。
その可能性が低いと判明したことは、母艦を預かり、MS達を送り出す身分としては嬉しいものだ。
 だが、拍子抜けするほど相手が弱いのも困る。実際、作戦参加した人員が半ば落胆しているのが明らかにわかるのだ。

「各艦に通達。まだ作戦は続行中だ、油断せず任務にあたれ!」

 艦長のレイモンドの声に、はっとなった艦橋クルーは復唱し、それぞれに伝達していく。
 それが刺激となって、緩慢になりかけた空気が変わるのを頷いて受け止める。

(……作戦後には訓練のやり直しだな)

 この大規模侵攻に対する迎撃作戦である「オペレーション・トライデント」はこれまでの外敵として比較して弱い相手との持久戦である。
 だが、楽な作戦をやったがゆえに慢心や油断を招いてしまえば、練度や今後の作戦に差しさわりが起こりうる。
なればこそ、外地に展開している状態ではあるが、訓練でそこを絞ってやる必要が出てくるだろう。
 なまじ出番が乏しく、ここで本番があって喜んで勇んでいた分だけ、その落差は大きいだろうし。
 順調な迎撃とは反対に、レイモンドは早くも憂鬱な状態であった。

327 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/12(月) 12:54:13 ID:softbank126036058190.bbtec.net [54/137]

  • β世界 セイロン島 コロンボ国連軍基地 作戦指令室


「……その情報は正しいのか?」
「はい。現場に配置した連絡員や観戦武官から同じ報告が複数寄せられています」

 司令官の問いかけに、参謀の一人は信じられないという表情のまま、しかし報告を続ける。

「押し寄せてきたBETAの大規模集団に対し、地球連合の派遣軍はこちらの出る幕がないほどに圧倒的な戦闘を行っています。
 水際での防御にたどり着いているのは、推定ではありますがインド亜大陸で観測された個体数の10分の1にも満たないとの予測も……」
「どういう手品だ……」
「海を挟んで対岸のBETAを吹き飛ばす艦砲射撃。
 海中での機動兵器による迎撃。
 海上艦艇からの漸減攻撃。
 それらによって、効率的にBETAが排除されているとのことです」

 そして、と参謀は言葉に詰まる。
 驚異的な戦果を挙げているというのは事実だが、さらに驚くべき情報があるのだ。

「驚くべきことに……損耗と呼べるような被害が発生していないとの情報も」
「馬鹿な……」

 今度こそ、基地司令は目を見開いた。
 BETAとの戦いは常に消耗戦であり、膨大な物量による押しつぶしを何とかするものだ。
 そこには犠牲がつきものであり、どうやっても支えきれなくなって戦線が崩壊してしまうのが常だった。
 今回の侵攻に際しても、地球連合からの派遣軍と共に構築した防衛ラインは崩壊するものと見越していたのだが---

「合同で展開している部隊がやることがないほどだという報告も……」
「それだけ地球連合が強いということなのか?」
「そんなはずが……中小国の連合軍だという話では?」

 実際、東南アジアおよびインド方面に派遣されてきた地球連合の部隊は、中小国の連合軍だと聞いていたのだ。
つまり、自分たちの基準で言えばアメリカやソ連といった国とは違い、国家としては小さい国々が合同で送ってきたのだと判断していたのだ。

「いや、まさか」

 司令官はここで一つの可能性に思い当たった。
 彼らは確かに自らを中小国と言った。
 しかし、こうして違う惑星に軍を派遣してきて、大規模な作戦ができるという時点で、自分たちの認識を超える国なのではないかと。
 それこそ、冷戦構造を率いていたソ連やアメリカを遥かにしのいでしまえるだけの「大国」なのではと。
 このセイロン島の防衛は絶望的だと思っていたが、ひょっとするとひょっとするかもしれない。

「……」

 自らの予測に妙な確信と、何かに気が付いてしまったことによる震えに、司令官は口を噤むしかなかった。
 戦局は刻々と変化していった。それこそ、絶望的な防衛戦ではなく、むしろ積極的な攻勢にまで出てしまえそうなほど、圧倒する方向へと。

328 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/12(月) 12:54:50 ID:softbank126036058190.bbtec.net [55/137]
以上、wiki転載はご自由に。
というわけで東南アジアおよびインド方面でのドンパチの様子を。

お昼を食べてきます
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最終更新:2024年05月03日 20:28