400 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/13(火) 00:48:44 ID:softbank126036058190.bbtec.net [64/137]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「オペレーション・トライデント」2
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 1時11分 国連太平洋方面第12軍 シンガポール基地
時はBETAの大規模侵攻の開始が確認されて暫くした時まで遡る。
シンガポールに存在する国連太平洋方面第12軍の基地は、発生した大規模侵攻に備えて人員を叩き起こしての準備に追われていた。
衛星で観測された規模は過去に例のない規模。少なくとも東南アジア方面では空前といった規模であった。
すでにインドシナ戦線における最前線にあたるクラ海峡では既にBETAが押し寄せ始めており、その勢いは既に対応能力の限界に近いものがあった。
交戦が始まってからそう時間は警戒していないにもかかわらずという事実と合わさり、クラ海峡の崩壊はもはや棒読みと呼べる段階であった。
しかし、そんな中にあって、最前線に地球連合からの派遣軍の姿はなかった。
正確には姿はあっても撤退の方向に動いていたのだ。
それもそのはず、現地の大東亜連合に対して救援を打診したものの、それは協議の末に断られたためであった。
現地の国連軍および米軍で対処を行うため、ということであり、介入を断られたのであった。
その理由としては、政治的な動きがかかわっていた。
大東亜連合が地球連合の救援能力などを疑問視した、あるいは借りを作ることに躊躇したこともある。
それ以上に大きいのは、国連軍に大きな影響を持つ米国からの圧力があったことにある。
最善を担う大東亜連合は例にもれず米国からの援助などに依存している面が大きく、国連軍も米国の意志を無視しえない。
とはいえ、あくまでも押し付けるために来たわけではな地球連合としては、それらを見越したとしても、その判断を受け入れざるを得なかった。
納得できるかどうかではなく、ただその意志を尊重しなくてはならないのだ。
外交というのは国家としての意志を出し合い、同時に妥協点を探り合い、利害などを鑑みて決定を下すものだから。
シンガポール基地を離れていく連絡機の中で、地球連合東南アジア方面派遣軍の総司令を預かるカガリ・ユラ・アスハは大きくため息をついていた。
彼女はぎりぎりまで交渉を重ねていたのであるが、結局大東亜連合や国連から参戦の許諾を得ることができなかったのであった。
それが政治的な物も含むと分かってはいたのだが、空前の規模だという侵攻を彼らだけで裁けるかに不安があった。
救える命を救えないという事実が、私人としてのカガリにはどうしても痛かったのだ。
だが、彼女も全くの無策であったわけではないし、出来ることを行えるようにしたのも事実だ。
「……タケミカヅチは動いているな?」
「はい、既に」
副官のキサカの言葉に、重たいため息をカガリは漏らした。
地球連合は確かに最前線において戦うことはできない。
だが、それ以上に重要な任務に人員を割くことはできた。
「大東亜連合も国連も、あの提案までは拒絶できなかったようですね」
「根本的な目的だからな、断るはずもない」
妥協の結果だがな、とカガリはしかし不満気だ。
本来ならばタケミカヅチ級空母の1隻を護衛艦艇と共にクラ海峡方面に展開させる予定であったのだが、それができなかった。
その代案として、民間人及び非戦闘要員の退避と避難などを担当するということで大東亜連合と国連を納得させたのだ。
防衛を必死に行っているのは事実だとしても、突破された際のリスクについては考えなくてはならない。
突破された先にいるのは民間人だ。抵抗する手段も逃げる手段もない彼らをどうにかしなくては元も子もないのである。
全力で最前線の維持をしなくてはならないβ世界側にとっては、そういった民間人を逃がす手がどうしても足りなかったのだ。
巨大空母と大量の輸送機あるいはSFSによる市民の避難と輸送の提案は、流石に振り払えなかったのだ。
防衛するのは人の生存圏を守るため、ひいては人の命を守るためなのだから、流石にそこまで拒否しては体裁が悪かった。
そこにうまくねじ込めたのはカガリの政治的な手腕によるところが大きいだろう。
401 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/13(火) 00:50:15 ID:softbank126036058190.bbtec.net [65/137]
「とはいえ、問題なのは台風の発生ですな」
「そうだな」
そう、問題なのは最前線の崩壊だけではない。
季節の関係なのか、発生した台風が天候を荒らし、あらゆる動きが阻害されてしまっているのだ。
前線においてもそうであるし、後方においても雨風が強くなっており、人の動きも兵力の動きも遅くなっている。
こういった天候も考慮に入れているとはいえ、海上艦艇であるタケミカヅチ級空母らも、航空機の発展にあるSFSや輸送機も影響を受けるだろう。
現地での避難誘導も同様だ。台風はともかくとして、BETAの侵攻は急に起きたのだから、逃げる備えができているとは限らない。
「……我々もできることをするしかないな。
天災までもBETAに味方するのは何とも複雑だが」
とはいえ、だ。
「こちらに戦力を割かなくて済む分、セイロン島方面は何とかなりそうでよかった。
逆侵攻も考慮しているのだったな?」
「はい。ミネルバ級やタケミカヅチ級空母などを艦載機と共に派遣する準備が侵攻しております。
現地司令によれば、インド亜大陸への上陸と橋頭堡の確保、さらに衛星軌道からの強襲で前線を構築することも考えていると」
「こちらで妥協した分、あちらでフリーハンドになったと、そう考えるしかないな」
「あとは結果次第、ですね」
「こればかりはな……まあ、私の仕事は戦いの後の戦いだ。
彼らが命をとして戦ったのを無駄にしないように備えておくのが先決だ」
何もMSに乗って前線に出るだけじゃない、とカガリは断言した。
カガリとて一国のトップに連なる人物であるからして、戦う能力は身につけてはいる。
けれども今必要なのは兵卒としての力ではなく、政治家としての能力なのだ。
「カガリ様、そろそろ……」
「ああ、出してくれ。
それと、タケミカヅチにはストライクルージュとキャバリアーアイフリッドの準備をするように伝えてくれ」
「既に通達しております」
「よし。到着後、すぐに私は乗り換える」
「了解しました。天候が荒れていますので、多少揺れますがご容赦を」
そして、連絡機は飛び立っていく。
後ろ髪を引かれないわけではないのは事実。
だが、それ以上にやるべきことがあるのだと、カガリは眼下で忙しく動き回るこの世界の将兵たちを心中で激励した。
彼らの使命を果たすのを手助けすること。彼らが守らんとするものを微力であっても助けること。
場所と立場は違えど、そこは同じだと信じたかった。
「ハウメアの御加護があらんことを」
その言葉を残し、カガリの身体は輸送機と共に舞い上がった。
402 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/13(火) 00:51:00 ID:softbank126036058190.bbtec.net [66/137]
地球連合東南アジア・インド方面派遣軍は人道的な作戦---民間人は非戦闘要員の退避という任務に従事するため、タケミカヅチ級空母を投入。
さらに広範囲にまで浸透されることを前提とし、衛星軌道から予備の艦隊---特に輸送艦を招集し、各方面での避難を急いだ。
β世界では主観1999年と言えども、その人口は多い。さらに言えば、後背地ということもあって、避難民という問題も存在していたのだ。
島々の集まる東南アジア地域ゆえに、とにかく手数と輸送する船が必要であったのだ。
他方で、オーブのタケミカヅチ級空母タケミナカタ、中小国連合軍の旗艦ミネルバ級ディアナ、その他護衛艦艇は駐留していたシンガポールを抜錨。
協議の結果、作戦展開の認められたインドおよびスリランカ方面へと展開を急いだ。
しかしこれらは、おり悪くも発生していた台風や悪天候の影響を受けざるを得ず、連合としては歯がゆい思いをする羽目となっていた。
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 2時41分
そして、最前線では動きがあった。
クラ海峡に用意されていた最前線がついに崩壊、後方への突破を許してしまったのだ。
同時期に行われていた各地の大規模侵攻でも見られた新種の母艦級の出現により、前線の後ろに回り込まれ、包囲されたことが要因であった。
海上艦艇からの砲撃なども行われはしたのだが、その効果は圧倒的物量の前にはすぐに押し負ける結果となった。
侵攻開始から2時間余り、もっと言えばクラ海峡での交戦が始まってから1時間余りという、あまりにも早い崩壊であった。
彼らの努力が足りなかったということはなかった。ただ、それだけの物量を押し留めようとして、出来なかったのだ。
これを以て、国連軍は事前の取り決めに従い、クラ海峡を中心とした防衛線の放棄を決定。
同海峡とその周辺に埋設してあった核兵器の一斉起爆により、BETA群を排除するとともに、陸路での進行ルートを吹き飛ばして防衛線を引き直した。
しかし、それで稼がれた時間は残念ながら限定的としか言えなかった。
BETA群は陸路だけでなく、海岸沿いの海中を進むことで陸上の防衛線を迂回、逆に包囲するようにして人類の防衛線を食い破っていったのだ。
そして、人類の目がマレー半島に向いている間にも、BETAの大群は別方面へも向かっていた。
衛星で観測はされていたが、BETAはアンダマン島方面・フィリピン方面・カリマンタン島方面・スマトラ島方面へも移動していたのだ。
勿論、そこにも戦力は備えられてはいたのだが、安心できるとはいいがたいものであった。
その為、国連軍は早い段階で各方面の基地および前線の放棄を決定した。特に戦力の乏しい基地は早期に撤収させ、離脱を最優先させた。
同時に焦土戦術の徹底を指示。国連軍が持ち込んでいた戦術・戦略核兵器の集中投入により国土と引き換えにその数を削り、勢いを削ぐことにしたのだ。
それを行う猶予があったのは、皮肉にも政治的要素から前線から遠ざけた地球連合が避難などを迅速に進めていたからであった。
避難などを行いつつ、さらにBETAと戦い、戦力を統制を保ったまま逃がすなどキャパシティーギリギリの国連軍などには不可能であったのだ。
だが、あまりにも多方面に押し寄せて今後交戦が想定されるというのは、国連軍や大東亜連合軍を悩ませた。
どこの防衛を優先し、どこを切り捨て、どこまで被害を許容するか?
後退するにしても、そうやすやすと大量の人員や物資などを逃がせるわけでもない。
追いつかれるのを阻止するためにも防衛ラインは抜かれることを前提に配置しなくてはならない。
ジレンマに苛まれつつも、国連軍や大東亜連合軍は必死の戦闘を継続した。
そして、クラ海峡を吹き飛ばしてでも作り上げた防衛ラインが崩壊したのは起爆してからおよそ3時間余りが経過したころ。
核兵器のなりふり構わぬ投入を行って自軍への被害も前提としたそれらでも、攻勢を支えるのには限度があったのだった。
半日は防衛できると見越していた予想は裏切られ、BETA群は南進を重ねた。
さらに、いよいよBETAの先遣部隊が前述の方面に到達しようかという時間が迫っていた。
国連軍---というか物量自慢の米軍でさえも、焦りを隠せないほどに。
けれど、まだ戦いは始まったばかりなのだ。
機械的なまでに進撃を続けるBETAを前に、人類は蟷螂の如く立ちふさがるしかなかった。
403 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/13(火) 00:53:17 ID:softbank126036058190.bbtec.net [67/137]
以上、wiki転載はご自由に。
当初の予定から変更していますが、ご容赦を。
核兵器ドカンドカンが始まりました。
ですが、その効果も限定的で、台風や悪天候というデバフを喰らっているので防衛ラインが維持できない状態……
けど、まだまだ大地を焼き尽くしてでも戦いは続くのじゃ…
最終更新:2024年05月03日 20:32