342 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/21(水) 01:27:15 ID:softbank126036058190.bbtec.net [63/155]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「オペレーション・トライデント」6
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日7時58分 インド亜大陸 マドゥライ南方上空
インド亜大陸の戦線の押上げは、急速に進みつつあった。
これは、南方から内陸へと進出したディアナとその艦載機の活躍もあるが、同時に別方面から侵攻した部隊の活躍もある。
スリランカに近いインド亜大陸東海岸からは国連軍と中小国連合軍の合同部隊の進出があった。
スリランカ沿岸に陣取った陸上艦艇からの潤沢な火力支援の元で進み、そのまま橋頭堡と陣地の形成を行うことができたのだ。
さらにインド亜大陸の西海岸は遅ればせながらも到着したオーブ海軍のタケミナカタと護衛艦艇の戦力がBETAに牙をむいた。
M1アストレイもそうであるが、対地攻撃に特化した爆装のムラサメ弐式による一方的なまでの殲滅が効率的な排除を可能としたのだ。
こちらでも揚陸された装備および資材による陣地形成などが行われ、そこから徐々に戦線の押上げも開始された。
これら3方向からの進軍は、旧マドゥライを中心としたエリアへと向かっていた。
インド亜大陸の南端のほぼ中央に位置するそこは、一先ずの目標地点として丁度良いと判断されたためだ。
だが、橋頭堡を確保してBETA支配地域に切り込んでいくとは、BETAの津波が間断なく襲い来るということに他ならない。
供給元へと近づいて行っているわけであるから、それは必然的な現象であった。
橋頭堡確保と押上げを行ってその分だけ消耗している部隊に、さらにやれというのは、出来なくはないが、効率が悪いものと言えた。
未だにBETAの大群はハイヴから吐き出され続け、おまけに電子機器に吸い寄せられて集合し続けているのだから。
では、どうするのか?
その答えは、ディアナから発艦した、青い翼を持つ天使のようなMSであった。
ZGMF-G10---プラントのハインライン設計局及び共同開発機構が送り出した、ガンダム目のMS。
基礎スペックの時点でハイエンドであるが、その真価は少数対圧倒的多数を想定した砲撃殲滅能力にある。
まさに現状況下において求められる能力に特化した、戦略級MSであった。
母艦であるディアナから出撃したフリーダムは4機。
汎用的なA装備が2機と砲撃特化のB装備が2機の1個小隊編成で「ブルーバード」小隊は構成されている。
高高度を高速で飛行するという、光線級BETAからの熱烈な歓迎を受けるβ世界から見れば常識外のことをしながらも、各機は予定ポイントへ進出していた。
「我がフリーダムに追いつく光線級はなし、とでも言おうかな」
B装備の3番機のガンナーあるいは兵装システム士官(WSO)であるTACネーム「カナリア」はハスキーな声でつぶやく。
元より大気圏内でも最高速力及び機動力の高さを売りにしていたフリーダムに、テスラドライブなどをつぎ込んだことで生まれたのだ。
いかに正確無比であろうと、そうであるがゆえに照準を置き去りにするほどの速度でインドの空を駆け抜けていけた。
潜り抜けていくレーザーは当たったところでどうということはないのだが、そこはそれ、である。
この程度の弾幕で当たるなどドライバーのTACネーム「スキピオ」の腕が疑われる事案である。
343 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/21(水) 01:28:06 ID:softbank126036058190.bbtec.net [64/155]
「カナリア、それは旧世紀の言葉じゃないか?よく知っているな」
「ええ、昔を知るのはいいことよ?」
喋りつつも、スキピオは油断なくレーザーの弾幕を潜り抜ける。
フリーダムの優れた索敵システムと地上からの攻撃を予測・演算するOSの恩恵を受け、あとは操縦者の技量。
「しかし、ここまで弾幕が濃いってことは、そういうことだな」
「ええ、AWACSからの情報でもわかるけど、いよいよポイントね」
カナリアがフリーダム専用の火器管制システムを呼び出して準備を始めながらも応じた。
即ち、戦略砲撃を実施する地点へ到着する間近ということだ。
フリーダムを擁する「ブルーバード」の目標は押し寄せてくるBETA集団---師団を超え軍団のそれの殲滅にあった。
効率的に数を消し飛ばし、揚陸地点から内陸への押上げを行う時間を稼ぐという目的があった。
その気になれば単独でインド亜大陸を縦断し、ボパールハイヴに接近、排除することも可能ではあった。
だが、全てを地球連合軍がやってしまうことには問題が生じるために、あくまでも戦略砲撃にとどまることとなったのだ。
『ブルーバード1より各機、間もなく予定ポイントだ。
わかっているとは思うが、俺たちの仕事は敵の殲滅による時間稼ぎ。
戦略を大きく左右する重要な作戦だ。失敗するなとは言わんが、いつも通りやって見せろよ』
『ブルーバード2了解。ちまちまやるより本丸に突入したほうが早いですけどね』
『それは言わない約束だぞ?ブリーフィングでも伝えた通りにな。ほれ、編隊を変えるぞ』
その言葉とともに、編隊飛行から砲撃に合わせたポジションへと組み換えを行う。
一定の距離を保ち、弧を描くように展開するのだ。
トップはB装備の2機で、両脇をA装備の2機で固める。正面に最大火力を指向しつつ、側面の火力も決して劣らない形だ。
同時に、B装備フリーダムにそれぞれいるWSOは火器管制---その中でもフリーダムの最大火力を発揮するためのシステムを操作していく。
敵の補足、脅威度査定、攻撃順序の割り当て、効果範囲、射撃に影響する処々の観測データ、予想される機体負荷---それらを一気に処理していくのだ。
背面から回り込んできた専用HUDを覗き込みつつ、如何に砲撃を行っていくかを決定していく。
「マルチロック……OK、いい子ね」
「加速する、気を付けろ」
スキピオの言葉に無言でうなずきつつも、カナリアの操作は続行する。
『攻撃用意』
その言葉とともにフリーダム各機はハイマットモードのまま、フルバースト体勢へ移行。
B装備2機は最大火力であるロングレンジレールキャノンの長大な仮想砲身を展開し、その機構を動作させていく。
同時に、ビームライフルやレールガン、ビームキャノンなど抱えていた火砲が指向され、準備を整え---
『撃て』
合図とともに、一斉に解き放たれた。
真っ先に着弾したのはロングレンジレールキャノンだ。
長大な砲身で十分に加速された大口径砲弾は刹那に着弾、そこを基点にして周囲をまとめて吹き飛ばす。
着弾によって着弾地点にいたBETAははじけるというより圧殺された。
ついでに、衝撃の時点で多くのBETAが転ぶか吹っ飛ばされてその活動を停止させるという結果も生み出された。
とどめとして、砲弾の炸裂が発生した。核兵器さえも軽々と凌ぐほどの威力の炸薬が詰め込まれ、遅滞なく起爆し、周辺を「消滅」させた。
熱・爆風・衝撃・破片その他諸々が着弾地点から半径数十キロの有象無象をまとめて破壊せしめた。
そんなのが一定間隔で放たれていくのだから、如何にBETAが広い大陸の広範囲に散らばっていようが意味をなさない。
『ほら、そこ!』
そして、フリーダムの火力はそれだけではない。
射程は極端に長くはないにしてもビームライフルやレールガンがあり、あるいはビームキャノンがある。
速射性という面で優れているそれらは、FCSとOSに導かれるままに適宜狙いを変更して、その火力を叩き込む。
広範囲を吹き飛ばすような悪く言えば大雑把な砲撃とは異なり、細かい目標を適宜正確に排除できるのだ。
ほんの数分間の射撃で、インドの大地はだいぶ綺麗に掃除されてしまった。動目標---BETAの姿もほとんどないほどに。
344 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/21(水) 01:28:38 ID:softbank126036058190.bbtec.net [65/155]
『まだ余裕はあるか?』
『当然です』
『よし。ブルーバード1より各機に通達。
予定より広い範囲にBETAがいる。各自判断で散っているBETAの排除を実施せよ。
やり過ぎには注意しろよ?』
ブルーバード1の判断は一瞬で、それに応じてフリーダム各機は散開していく。
元よりブリーフィングで順調に言った場合のことを見越して、いくつかプランを用意していたのだ。
順調にいきすぎている分、弾なども余裕がある。そうであるならば、少しばかり進出して、押し寄せてくるレンジ外のBETAの排除を続行する方がいい。
ここで足止めの戦略砲撃をしていれば、ここより後方---マドゥライから南のエリアは残敵掃討に集中できるのだし。
「まったく、まだあきらめないか!」
ドライバーのスキピオは未だに続くレーザー照射を回避しつつ吐き捨てた。
実際、BETAはまだ眼下で戦闘行動を継続している。未だにしぶとく光線級はレーザーを放っているし、他の個体は南へと進もうとしている。
「諦めるって思考自体ないのかもねッ!」
カナリアはそう応じながらももう一度フルバースト。吹き飛ばした先から押し寄せる津波を足止めしていく。
それはハイマットモードで高速移動しながらのハイマット・フルバーストだ。
ドライバーとWSOの息があった操作の連続とそれを補助するOSが、見事にそれを実現している。
嘗てはエースしかできなかったことを、今では訓練をしたパイロットならばできるようにしていた。
「予定以上に排除しているけど、まだ尽きていない……」
「AWACSから情報、ハイヴからまた増援が出現していると」
「数任せの一つ覚え。芸がないわね」
『ブルーバード各機、AWACSからの情報は届いているな?』
二人が話している最中に、ブルーバード1からの通信が繋がる。
『こちらブルーバード4、確認しています。
どうやら東南アジア方面に向かっている集団もこちらに向かっているとのことですが……』
『ああ。BETAが精密機械に惹かれるっていうのは、ここまで有効なのかと驚くしかないね』
それは地球連合が現地の国家から得た戦訓の一つだ。
BETAはどうやら何らかの方法で精密機器を識別して、それに向かって走性を示すのだ。
確かにMSなどに搭載されているコンピューターなどは、現地国家の遥か上を行くものである。
とはいえ、そこまで影響を及ぼすものだろうかと、少し訝しむのも無理はない。
『司令部からは?』
『司令部からは継続の指示が出ているとのことだ。
後方もどうやら当初の予定以上の規模で防衛線を構築するようだからな、俺たちで少し時間を稼いでおく方がいいだろうな』
『了解、続行します』
「ブルーバード3了解、このまま継続します」
そして、青い翼の天使たちは死を降り注ぎながらも、華麗なまでに空を舞い続けた。
彼らの貢献により、後方へと浸透するBETAは格段に減少。
防衛線を構築し、十分な縦深を得て、さらには後方基地を整える資材などの投入までの時間を稼いで見せたのだった。
同時に、この戦略砲撃による足止めをしている間に、友軍は補給などを実施。目標とされたポイントまでの進撃を開始したのだった。
345 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/21(水) 01:29:45 ID:softbank126036058190.bbtec.net [66/155]
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今宵はこのまま寝ます。
最終更新:2024年05月19日 21:29