517 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:55:41 ID:softbank126036058190.bbtec.net [77/155]

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「オペレーション・トライデント」6.5(修正版)


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日7時25分 インド亜大陸 旧ラーマナラプラム揚陸地点



 ヴァルファウ輸送機およびLCACの群れは次々と戦力をインド亜大陸に運び入れていた。
 MSにMA、戦術機、戦車や自走砲に補給車両、兵員輸送車に重機などなど、必要となる物は非常に多岐にわたっていたのだ。
 また、インド亜大陸がBETAの支配地域ということもあり、野戦病院や指揮所、野戦格納庫といった設備が急遽必要になったこともある。
ほんの一時の渡洋攻撃ではなく、恒久的な奪還を目的としているのだから、これくらいは備えておかねばならなかった。

 そして、最も必要な物の輸送も急がれており、到着次第、順次設置が進められている。
 そう、それは地球連合製の環境浄化設備であった。
 大地も空気も汚染されつくし、とてもではないが人が生活するような環境ではない。
恒久的な奪還でないとしても、この如何ともしがたい環境の悪さはどうにかしないとパフォーマンスに関わる。
これまではそんな余裕はなかったのかもしれない、だが今は違う!とばかりに連合は改善を開始したのだ。
付随する形で揚陸部隊が橋頭堡確保した直後に現地入りした工作部隊は、滑走路や臨時の基地設備を吶喊で構築し、後続を迎え入れる準備をしたのだ。
 そんなわけで、コロンボ国連軍基地第23戦術機中隊「オルフェウス」らが到着したころには、すでに一端の基地機能は構築されていたのだった。

「もう準備ができているのか、手際がいいなぁ……」

 アルヴィンらのオルフェウス中隊は、ヴァルファウの着陸後、速やかに隊の点呼をとり、戦場への展開準備を整えていた。
戦術機自体の補給や整備は輸送途中で行っていたし、衛士たちの休憩も十分に取れていた。

『こちらCP、オルフェウス中隊各員、聞こえるか?』
『オルフェウスリーダー、感度良好。
 空の旅なんてのは久しぶりだったぞ』
『元気そうで何よりだ。
 作戦については既に通達されているとおり、マドゥライ周辺を包囲する形で前進。失地奪還を果たす』

 CPからの通信と共に、網膜投影される情報が次々と更新されていく。
 すでに他方面からも地球連合軍が進出し、交戦を開始していて、前線の押上げを成し遂げている。

『オルフェウス中隊は地球連合軍の部隊との混成で行動してもらうとのことだ』
『混成で行動か……いきなり会わせろとは無茶を言うな』
『だが、あちらの実力は確かだ。
 そちらの橋頭堡を確保して整備したのも地球連合なのだからな』
『そうかい』

 ともあれ、やることは決まっている。

『オルフェウスリーダーより各機、準備はいいな?
 BETA共からインドを奪還する、行くぞ!』

518 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:56:34 ID:softbank126036058190.bbtec.net [78/155]

  • β世界主観1999年9月14日7時34分 インド亜大陸 旧サウスバーベル


 やや沿岸沿いに北上したオルフェウス中隊は、旧サウスバーベルで連合の部隊と合流した。
 ジムⅢおよびゲイツR2、さらにMAユークリッドを擁する混成部隊であった。

『こちら、中小国連合インド方面派遣軍第39混成機動部隊「ケートス」、隊長のTACネーム「リーブラ」。階級は中佐だ。合流する』
『こちらコロンボ国連軍基地所属第23戦術機中隊「オルフェウス」、中隊長のグスタフ・フォン・オスワルト中佐。
 貴君らが俺たちと行動する部隊で間違いないか?』
『ああ、間違いない』

 IFFを確認し、双方が無事の合流に安堵する。
 それなり以上の数の部隊が動き回っているために、誤認などをした場合には迷子になりかねないのだ。
そんなことをするはずはないと思いたいが、国家の垣根を超えての臨時編成となるのだから、念には念を入れる必要があった。

『こちらの戦力は見ての通りMSとMAの混成だ。
 盾役のMA「ユークリッド」が前衛に立つ、貴君らは光線級を警戒し、その陰に入ってくれ』
『盾役?』
『広範囲をカバーする防御システムがあってな、光線級のレーザー程度は軽く弾く。
 これで迅速に移動し、前線に駆け付けることができる』
『貴君らは大丈夫なのか?』
『問題ないさ、信用してくれ』
『……わかった。地球連合軍の力、見せてもらう』
『こちらも現地の部隊との連携を密にせよとの通達があった。
 オルフェウス中隊、期待させてもらうぞ』

 軽く挨拶を交わしたところで、同期させている回線に警報が鳴り響く。
 いうまでもなく、BETAだ。それも数的にはこちらの集団を軽く呑み込めそうな数である。

『早速お客か……』
『隊長、光線級がかなり前に出てきています。おそらく……』
『例の新種か……オルフェウス中隊、新種の情報は確認しているか?』
『ああ……あの大型の芋虫か』

 上空の観測機および衛星からの情報が速やかに速報としてオーバーライドされてきた。
 大量のBETAを運搬する新種の情報はここインド方面だけでなく、各地の大攻勢において確認されており、その脅威度は高く見積もられていた。
何しろ地下を掘り進めて後方に突如出現する可能性があるという個体なのだ。
加えて言うならば極めて頑強であり、大型であることも相まって、とてもではないが排除できないという問題があった。
かといって倒さずにはおれないという厄介さもあり、危険度は高く見積もられていた。
グスタフとしては、そこをどうするかが気がかりだったのだ。

『敵後方の光線級とこの芋虫の処理はこちらで行う。
 オルフェウス中隊は排除が完了するまでの足止めと敵の漸減をお願いしたい』
『後方にいる光線級諸共……?』

 光線級哨戒(レーザーヤークト)、その言葉がグスタフをはじめオルフェウス中隊の衛士たちの頭に浮かぶ。
 理論としては非常に簡単だ、敵集団を他の隊が足止めし、その間に最後方に位置する光線級目がけ、BETAの津波を飛び越えて撃破に向かうというもの。
それくらいは衛士の教育課程において学ぶことであるし、訓練でやったこともある。
やったことがあるからこそ、無謀だというのも理解していた。
 まず、大量のBETAの津波を飛び越えていかなければならない。
 次いで、高度を上げすぎると光線級に撃ちぬかれるために、スレスレを飛行して突撃しなくてはならない。
 とどめに、撃破後は敵中で孤立する前に離脱しなくてはならない。
 総合的に見て、無謀極まりない行為だ。自殺とさほど変わらないレベルである。
 そんな中で、新種の大型BETAまでも排除する?

『通常の光線級哨戒以上に危険すぎる……!』
『問題はない』

 その様に思わず反応したグスタフだが、リーブラは落ち着き払っている。

『議論している時間は余りない。敵は目の前だからな。
 何、心配するよりも生むがやすしだ』

519 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:57:26 ID:softbank126036058190.bbtec.net [79/155]

 そして、二つの部隊はBETA集団と会敵、交戦を開始した。

『予定通り、ゲイツR2のベリー小隊は光線級とデカ物を叩け。
 俺の率いるアップル小隊は散開して足止めに入る。
 レイン小隊、オルフェウス中隊に犠牲者は出すなよ?』
『了解!』

 その声の唱和と共に、地球連合の部隊は散開。各自に行動を開始した。
 散開して前面に出たアップル小隊が群れに食い込んでいき、MA「ユークリッド」がそれを援助する形である。
アルヴィンを含むオルフェウス中隊は指示があった通り、そのユークリッドの後方に展開し、抜けてくるBETA群の排除を始める。

『来たぞ、細かい雑魚共に突撃級だ!やれ!』
『オルフェウス12、FOX1!』
『オルフェウス13、FOX1!』

 距離があるうちに、とブラストガードがミサイルを放つ。
 多目的ミサイルで集団の数を削り、ついでに小型種も焼き払う算段だ。
オルフェウス中隊のカバーについているレイン小隊を構成するジムⅢもまた、多連装ミサイルポッドから制圧攻撃を行っていく。

『……来た!』

 だが、当然排除できる数に限界はある。先頭集団を削った程度でしかないので、後続が押し寄せてくるのだ。
 オルフェウス中隊のストーム・バンガードは戦闘教義に基づいて前に出ていく。棒立ちでは飲み込まれるのだから。

『レイン3だ攻撃を開始する。オルフェウス中隊、射線に注意してくれよ!』
『レイン2、目標を排除する!』
『この距離でか?』

 その言葉への返答は、オルフェウス中隊では考えられないビームライフルやショルダービームキャノンによる砲撃だった。
飛び込んでいったアップル小隊の取りこぼしや迂回した集団、あるいはミサイルの爆撃を抜けた集団へと突き刺さっていく。

『嘘だろ……』

 誰もが目を疑った。突撃級が一発で正面装甲を貫通されて、動きを停止。後続に呑み込まれていった。
 その射撃は一発どころではなく、継続された。突撃級や要撃級といった、戦術機に脅威になりやすい個体が順々に排除されていく。
 そして、Eフィールドを展開してオルフェウス中隊をガードしているユークリッドも攻撃を開始する。
ユークリッドはどちらかというと戦車に近いMAで、主兵装もガトリング砲とビームキャノンというシンプルな構成だ。
歩兵にとって戦車が脅威であるように、BETAにとってもそういった構成のユークリッドは脅威であった。
単純な弾幕と火力、その両方が同時に叩きつけられ、あっけないほどに駆逐されていくのだ。

『オルフェウス中隊!取りこぼしを掃除してくれ!』
『りょ、了解だ!』

 オルフェウスリーダーの返答を皮切りに、驚きのあまり動きが止まっていた戦術機部隊も攻撃を再開する。
抜けてくるのは要撃級がたまに混じる程度で、戦車級以下の小型種ばかりという状況だ。
前衛、中衛で脅威度の高い敵を排除しているからこその、楽な環境が構築されたのだ。

『FOX2!FOX2!』
『近寄られる前に撃て!』

 相手が弱い個体と分かれば、落ち着いて対処ができる。
 突撃砲の36ミリと120ミリで排除できるし、多少頑丈でも砲門の数を増やせば倒せるのだ。

『いけるぞ……!』

 アルヴィンは思わずつぶやいた。
 まだ交戦開始から間もないが、この体制が安定すると理解できたためだった。
 普段ならば、数が多すぎて処理しきれなくなり、また弾薬の枯渇という問題にぶつかって押し切られる。
そうならないように陣形などを維持して対処するのが基本であるのだが、それでも絶対的な弾薬の量には限界がある。
そうしている間にBETAの中でも厄介な要撃級に集られたり、戦車級に群がられてしまい、命を落としていく。
 だが、それの前提条件の一つである、突撃級や要撃級が事前に十分排除されているならば、こちらは損耗を抑えられるというわけだ。

520 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:58:29 ID:softbank126036058190.bbtec.net [80/155]

 そして徐々にBETAの津波の押上げが成功していく中で、ついにベリー小隊が動いた。

『よし、ベリー小隊より全隊へ。
 頃合いはいいと判断した、これより敵集団後方の母艦級および光線級の排除に向かう』
『リーブラ了解、派手にやってこい』

 ベリー小隊は何と上空へと飛び上がって一直線に飛び込んでいったのだ。

『おいおいおい……!』

 アルヴィンは思わず叫んだ。
 即座に光線級の目に止まってしまう、その未来が見えた。
 重金属雲濃度は低いままであるので、減衰などはとてもではないが期待できない。
 その代用としてこちらはアンチレーザー爆雷を使っているというが、どこまで期待できたものか---

『遅いっての』

 だが、何の感慨もなく、ゲイツR2の小隊はそれらを回避した。
 目測で十数を超える数が突き刺さろうとしたにもかかわらず、空中で容易く回避したのだ。

『嘘だろ……レーザーを、空中で!?』
『ありえない……!』

 目の前の光景も、レーダー情報も信じがたい。
 けれど、ゲイツR2と呼ばれた機体は健在で、今なお突撃を続けている。
 それどころか、同じく光線を銃から放ってBETAを次々と排除している。
進路上に展開している突撃級や要撃級を中心にし、尚且つ必要最低限に絞り、無駄なくその隙間を抜けていくのだ。

『ぼさっとするな、アルヴィン!』
『あ、りょ、了解!』

 僚機の叫びにアルヴィンは応答し、愛機のF-15Eの突撃砲を構え、攻撃を開始する。
 幸いにしてこちらに迫ってくるのは戦車級などがメインであり、落ち着いて36ミリを叩き込んでいけば排除は容易い。
たまに要撃級が混じる程度だが、120ミリで十分に対処できる範疇であった。エレメントと陣形を維持したまま、理想的なまでに叩けている。
 これには、オルフェウス中隊も気が付いていないが、MSの方へとBETAのヘイトが集まっていることも関わっていた。
MSと戦術機では搭載しているコンピューターの性能や量に圧倒的な差が存在していた。
当然MSの方がBETAにとっては魅力的に見えるわけで、走性を示してそちらばかりに向かうことになる。
MSはMSで近寄ってくるBETAを次々と排除するので、その分だけ全体の数が減っていく。
 その結果、戦術機部隊はフリーハンドを得られ、またBETAの側面を叩きやすいという有利な条件に置かれたのだ。

『!チェックテン!新しい集団だ!』
『迂回してきたのか!』

 だが、BETAも馬鹿ではなかった。
 お行儀よく平面の平押しではなく、突撃級などの速力に優れた集団を迂回させ、側面を突くように動かしたのだ。

『こっちに任せな!』

 そこで声をあげたのはユークリッドのパイロットだ。
 光線級の散発的な、しかし、正確無比なレーザーを受け止めるにとどめていたところから、そちらへ一瞬で回頭。その大火力を叩きつけたのである。
前衛の突撃級が軒並み排除され、距離的な余裕と、要撃級などにのみ集中すればいい状況が即座に形成される。

『ユークリッドだったか、感謝する!』
『お安いもんだ、あとは任す!』
『行くぞ野郎ども!』

 そして、アルヴィンを含むオルフェウス中隊は脅威度の下がった集団へと躍りかかった。

521 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:59:01 ID:softbank126036058190.bbtec.net [81/155]

 他方、母艦級と光線級へと哨戒するベリー小隊は、既に母艦級や重光線級などを指呼の距離に収めた。
 有視界戦闘域から射撃戦の距離を飛び越え、完全に白兵戦距離にまで肉薄していたのだ。
 全領域での高機動戦闘を得意とするフリーダムの技術を取り込んだゲイツR2にとってみれば、この程度の哨戒は簡単なものだった。
光線級程度のレーザーがMSに通用しないのもあるし、正確無比だがそれ以上ではない射撃にあたるものではないのも影響している。
 そして、俊敏な個体と比較して、どうしても鈍間な光線級は逃げを打つことができなくなっていたのだ。

『ほらよ、サービスだ!』

 そして、逃げ場を失った重光線級にゲイツR2のビームソードが振り下ろされる。
生じる結果は、切断というより、最早巨大な刃で叩き潰しながら蒸発させる行為であり、どうあがいてもオーバーキル。
とはいえ、この重光線級は確実に仕留めておかなければならないので、理にかなった動きであった。
連続した動きで周囲のBETAも排除されていき、他のゲイツR2の働きもあり---

『光線級は?』
『ほぼ排除完了!』
『あとは奴だな。遠慮するな、叩き潰せ』

 そして、周囲の個体がほぼ壊滅して孤立した母艦級へと殺到した。
母艦級自体に攻撃を行う部位などはない。せいぜいがその巨体を生かした突進くらいだろうと彼らは判断していた。
 無論これは地球連合軍だから言える評価だ。
 この世界では戦艦の主砲でも貫通出来ない固い外殻を持ち、大量のBETAを吐き出して攻撃させる、脅威どころではない存在なのだ。
 つまるところ、この母艦級の不運はMSという脅威に目をつけられたことであった。

「-----!」

 母艦級が攻撃を受け、痛みにのたうつ。地面を転がるようにして振り払おうとするが、生憎とそれで捕まるほどゲイツR2は鈍間ではない。
その大仰な、他のBETAも巻き込んだ動きを回避し、続けざまにビームライフルやレールガンの弾丸で串刺しにし、風穴を穿つ。
単発では終わらず、立て続けに突き刺さっていくのだから、母艦級からすればたまったものではない。
外皮ごと貫通するということは、ついでに内部のBETAの個体も同時に排除されるということでもあり、体内のBETAのストックを削ることでもあった。
 だが、まだ終わらない。しぶとくもがき、暴れる。
 体液をまき散らし、肉片をばらまき、大地を揺らし、それでも。

『とどめだ、芋虫野郎!』

 そこに、死神の鎌は落ちてくる。
 ビームサーベルやビームソード、あるいはシールド内蔵のビームエッジ、さらにはシールド内蔵のパイルバンカーが一斉に体へ突き立てられたのだ。
一度ではなく、何度も、何か所も、確実に排除するために振るわれる暴力に、ついに母艦級は崩れ落ちた。
そのころには既に形状はほとんど崩壊しており、ビームで焼かれて異臭を放つ肉の巨大な塊に成り下がっていたのだった。

『次に行くぞ』

 そして、動かなくなった母艦級を放置し、ベリー小隊は次へと向かう。
 撃破した感慨などあまりない。この程度は倒せてしかるべきだったし、この個体だけが母艦級ではないからだ。
 ゲイツR2の群れは、獲物を求めるように一気に飛び上がっていった。

522 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/22(木) 20:59:55 ID:softbank126036058190.bbtec.net [82/155]
以上、wiki転載はご自由に。
戦闘シーンをちょっと盛りました
戦術機達の動きが小さすぎたのとちょっとちぐはぐなところがありましたので、修正ついでに。
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最終更新:2024年05月19日 21:32