894 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/25(日) 14:28:44 ID:softbank126036058190.bbtec.net [132/155]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「オペレーション・トライデント」8
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日12時32分 カリマンタン島 国連太平洋方面第12軍 ボルネオ基地 指令室
ボルネオ基地の国連太平洋方面第12軍の軍人たちは控えめに言って大混乱の渦のど真ん中にいた。
まさに混沌というべきか、その言葉すら生温い阿鼻叫喚の地獄か。
きっかけとしては、スリランカにあるコロンボ基地へと情勢の確認の問い合わせを行ったことだ。
ボパールハイヴから大群が向かったスリランカは陥落しているだろうという想像とは裏腹に、コロンボ基地は健在だった。
いや、ただ健在なだけだったらどれほどマシだったか。
問題なのはコロンボ基地がBETAの侵攻を凌いで健在どころか、インド亜大陸へと逆侵攻を仕掛け、上陸して前線を押し上げている、ということだった。
スリランカ政府の要請も受けた地球連合からの派遣軍は現地の国連軍およびスリランカ軍と連携、それらを成し遂げてしまっていたのだ。
既にインドの旧マドゥライまで押し上げ、防衛ラインの構築を開始しているとのこと。
BETA?なんと2時間ほど前には既に「うち止め」---つまり殲滅しきってしまったというのだから、その驚きは言うまでもない。
空前絶後の大規模侵攻からの防衛成功、インド亜大陸の失地奪還、さらには防衛戦の構築、止めに犠牲がほとんどないという事実。
本当の事なのは非常にうれしいが、同時に嘘であってほしいと願ってしまう、そんな---夢物語。
客観的に見て、朗報なのは事実であった。BETAに対して明確な戦略・戦術的勝利を成し遂げたのだから。
同時に---それは劇物だった。
人を真に砕くのは何も絶望だけではない。
時として希望というものが、疲弊し、苦しんでいる人間に致命傷を与える。
嗚呼、これを知らなければ---戦局の確認のため、コロンボ基地に問い合わせなければ、まだ絶望の底で留まれただろう。
「う、う、うわあああああああああ!?」
「馬鹿、やめろ!」
「抑えろ、早く!」
「なんで……なんで?」
叫び声、鳴き声、呆然と呟く声。
あるいは人の身体が力を失って崩れ落ちる音がする。
「うお、危ない!」
「早く取り上げろ!暴発したら危険だ!」
「はなせ、はなせ!はなしてくれ!」
そして、もっと危なかったのは、取っ組み合いになっている音だ。
それは、階級の上下に問わない、突発的に銃を求めてそれを使おうとする動きとそれを阻止する動きのぶつかり合い。
どこかで発砲音が轟き、物が壊れる音がする。
あるいは取っ組み合いでもつれ合い、激しい肉弾戦の音が生じる。
「誰か、誰か鎮静剤を!」
「医務室からもってこい!ありったけ!」
「くっそ、放せよ!」
「MPも呼んで来い!何とかしないと……!」
「許してよ……許してよ……」
無理もない。
彼らは理解「してしまった」のだ。
大規模侵攻が開始されてから、これまで自分たちが必死にやってきたことの「無意味さ」を。
いや、無意味どころではない。それ以上に許容できない---端的に言えば「自滅」を選び、指示していたということ。
理由はどうあれ、地球連合からの打診を断って、自力でBETAと戦うことを選んだことで生じた途方もない犠牲---それらの「IF」を考えてしまったこと。
地形を変えるような規模の核兵器の投入による焦土戦術に始まり、絶望的な抵抗、撤退戦、さらに奪還を顧みない先述の多様。
どうしようもない犠牲ではなく、まぎれもなく自分たちの過ちで多くの命と国が失われたこと。
それらを認識し、理解してしまい、彼らは耐えられなくなった。
絶望に上乗せされた希望で、止めを刺されたのだ。
パンドラの箱に最後に残ったそれが、牙をむいた。
嗚呼、もしも、など考えたくはない。
多くの人々が折れた。
自らの選択で。
895 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/25(日) 14:29:55 ID:softbank126036058190.bbtec.net [133/155]
- ほぼ同刻 β世界 ジャワ海海上 タケミカヅチ級空母タケミカヅチ 甲板上
ストライクルージュのコクピット内でカガリは指示を出し続けていた。
大東亜連合からの救援要請を受けてから、地球連合からの派遣軍は、それぞれが総司令官のカガリの指示を受けて各方面で動き出していた。
主としてザフトの潜水艦を主軸とする潜水艦隊は、フィリピンのミンダナオ島の救援に。
足の長いTMS「ムラサメ弐式」を主力とするタケミカヅチ艦載機部隊はスマトラ島およびマレー半島のシンガポールへ。
タケミカヅチおよびその艦隊はジャワ海を西進、MSおよびMAをカリマンタン島の防衛線に送り込みつつ、スマトラ島方面へと移動している。
予めそのように備え、準備をし、待機していたからこそ迅速な対応ができていた。
「ふぅ……」
一通りの指示を出し、水をチューブから補給して一息ついたカガリは、しかし、考えてしまう。
(もう少しでも救援が早ければな……)
大東亜連合からの問い合わせが来たのはおよそ1時間ほど前のこと。
あまりにも被害が大きく、国連軍や米軍でも足止めできないと危惧した一部の人間が、ひそかにコンタクトをとってきたのだ。
このままでは防衛しきれないかもしれない、助力を願いたいというもの。
地球連合派遣軍としては待ちに待った言葉であった。これで大々的に介入できる、と。
同時に思ったのだ、もう少し早く地球連合の力を信用してほしかったと。
その気になれば、地球連合派遣軍が向かったインド・スリランカ方面の情勢を確認することだってできたはずなのだ。
例えば、通信を繋ぐなどすれば、あるいは重金属雲による通信障害を回避できる連合の回線を利用すればどれだけの戦果を挙げているか分かっただろう。
確かにBETAの大規模攻勢を受けて余裕がなかったのは事実ではあるが、その行動をとらなかったことが決定的な差を生んだ。
既に結果となっている以上、最早言い訳は意味をなさない。結果ばかりではないとしても、結果というのは覆らない。
(カリマンタン島のボルネオ基地との通信が一時遮断されたが……)
何が起こっているかは想像に難くない。
けれど、それを斟酌してやる余裕はない。
非情かもしれないが、こうしている瞬間にも多くの兵士たちが決死の戦いに挑んでいる。
それに一秒でも早く救援を送って窮地を脱し、巻き返しを図る必要があるというのは事実だから。
結局のところ、自分達のやることは対処療法にすぎない。
重要なのはそこからどこまで取り返せるかであって---
「どうした?」
『カガリ様……言いにくいのですが、アメリカ合衆国から抗議が』
「適当にあしらって構わん。すでにこちらは大東亜連合からの要請を受領して行動している。
それに、米国としても戦力は底打ちだろうしな」
『あちらからの言い分では、この後到着するとのことですが?』
含みのある言い方に、カガリは鼻で笑った。
「到着はどう見積もっても半日以上後になるだろう。
そうしている間にオーストラリア以外は失陥している可能性が高い。
我々よりうまくやれる証拠は何もないしな」
『では、そのように……』
「ああ、それとな……」
言いたくはないが、と付け加えて指示を出しておく。
「戦場が酷く混乱しているからな、核兵器の『誤射』には注意しておくように全軍に通達だ」
『了解いたしました』
誰が誰に誤射するかは言わない。
言う必要もない。
こんな時に想定しなくてはならないのは馬鹿らしくとも、だ。
「さあ、反撃だ」
これ以上BETA程度に好き勝手にはさせない。その意志がカガリの瞳には宿っていた。
896 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/25(日) 14:31:16 ID:softbank126036058190.bbtec.net [134/155]
以上、wiki転載はご自由に。
やっと折り返し地点ですね。
次回から巻き返しが始まりますよぉー
ついでにタイトルも変わって新しい章となりますね。
お楽しみに。
最終更新:2024年05月19日 21:48