890 :New ◆QTlJyklQpI:2012/03/15(木) 23:40:25
ネタSS~カリフォルニアの残滓~

1950年、元はカリフォルニア共和国であった地域には最早廃墟しかなかった。
僅かに残ってる人もあちこちにケロイドや包帯が見え隠れし僅かな食糧を巡って殺し合っている。
まだ健康であった者たちは中部に逃げるかメキシコに逃げようとしてメキシコ軍の射撃の的にされていた。

「馬鹿、どもが・・・くだらんプ、プライドのせいで・・この国は・・・」

廃墟の中で全身包帯で覆われているハーストは呪詛の言葉を紡いでいた。

1947年に突如現れたゲートより出現した精強な合衆国軍。彼らが合衆国の再建を叫び、
日本軍を駆逐する様を見ていてアメリカ再建の熱が世論を賑わせようとしていた。
しかし、ハーストやグル―などはこの攻勢も一時の勢いであり、こちらに合衆国並のインフラや
工廠がない限り軍事技術も列強と互角なため良くて引き分け、悪ければ補給の差で合衆国が
叩きだされると予想し、カリフォルニア共和国政府に中立を保って両者の交渉の仲介をすることを促した。

しかし、今まで鬱屈した日本に対する劣等感を蓄積してきた世相を変える事は出来ずにマッカーサー将軍を
筆頭にしたクーデターによってすべてが瓦解した。ハーストは着の身着のままで潜伏できたが
グル―など親日家を唄う面々は吊るしあげられ、そして日系やメキシコ系などの有色人種まで虐殺され、
後から来た”向こうの”米軍の面々が「こんなのが合衆国の継承者なのか・・・・」と顔をゆがめる光景が出来上がった。

そして、熱狂もいつか終わる。向こうの世界の共産主義陣営の躍進に戦力を取られたアメリカは支援を突如打ち切った。
「合衆国は見捨てるのか!!」と白人主義者らが騒いだところで事態は変わらず、裏切り者を滅ぼしに来た日本の核攻撃と
水爆実験によって最早この地域を国と呼ぶものは誰もいなかった。

「東洋には・・・・い、因果応報、と言う言葉が・・・あるが・・・何と、いう皮、肉だ」

まるで今の自分のように国が滅ぶ、その事に無くなった唇を歪めつつハーストは土に還った。

後年、この地域では日本人よりも自分らを見捨てた合衆国を憎む風潮が強くなり、
ゲートを通じて様々なテロ行為に走った。彼らは「カリフォルニアの残滓」と名乗った。

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最終更新:2012年03月17日 16:28