847:奥羽人:2024/02/09(金) 22:35:18 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
近似世界 1944年の連合各国
「おはよう諸君!今日も素晴らしい1日になりそうだ!」
「今日の閣下は一段と機嫌が良いな」
「日本人から新しい玩具を貰ったんだとさ」
戦争半ば、西欧の連合軍司令部では、機嫌の良さそうな大男が闊歩していた。
彼の名はシャルル・ド・ゴール。
自由フランスの指導者であり、実に“フランス的”な男だ。
彼が今日、実に上機嫌な理由は、東洋の超大国である日本から大量の支援物資を受け取ったからだ。
受け取った物は「機甲師団」
機甲戦力ではない、機甲師団だ。
軍団を編成できる程の戦車、装甲車、トラック、火砲とその予備部品、弾薬、燃料、おまけに指導教官団。
それら膨大な物資を、日本人達はポンと大船団で送り込んできたのだった。
港湾の積み降ろし能力に不安を抱いていたのか起重機船もセットで、だ。
中身も、日本が誇る八九式および九七式中戦車に、数個大隊分の九五式重戦車まで付いてくる豪華なものだった。
(八九式中戦車:見た目はチヌ、性能はM4A3)
そして、これらをフル装備した自由フランス軍は西部戦線において最強の機甲軍団と化すのである。
「何故、日本は奴をこれ程優遇するのだろうか」
「日本軍は南部戦線で複数のドイツ軍防衛ラインに阻まれているようですし、此方に幾らかドイツ人達を引き付けて貰いたいのでは?」
対照的に、西欧の連合軍を預かる調整力の塊ドワイド・D・アイゼンハワーと、その補佐官アーサー・テッダー英軍大将の表情は微妙なものだった。
このド・ゴールという男、フランスにとっての英雄といえば英雄ではあるのだが、友軍上層部からの評価は決して良いものではなかった。
ド・ゴール当人の性格に加えて、その“フランス的”気質や独断専行等によって米英からは何かと疎まれており、一時は失脚の危機に陥っていた。
そこに現れたのが、かの日本人達だった。
どんな手品を使ったのか、ド・ゴールは日本政府と話を付けるや否や、あっという間に日本から莫大な支援を引き出してきた。
更に、日本による自由フランスそのものへの支持を取り付けることにも成功。その功績と支援物資を手土産に表舞台へ返り咲くと同時に、その立場を盤石なものとしたのだった。
848:奥羽人:2024/02/09(金) 22:37:15 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
「何ということだ!日本は我が国の実力を疑い始めたのではないのか?」
一方、その頃。
合衆国はホワイトハウスでは、ルーズベルト大統領が悩みに悩んでいた。
彼にとって、日本が西部戦線に大々的に介入してきたのは、ドイツ軍の抵抗を突破できないでいる米軍の無力さにしびれを切らしたからとしか思えなかったからだ。
日本人は非公式に、もはや超大国足り得ないイギリスに代わり、合衆国を次世代のパートナーとしたいと言っていた。
そして、広大な市場を求めていた合衆国にとっては、まさにその“世界”が必要だった。
とはいえ、それは合衆国がパートナーとして相応しいと認められなければ、絵に描いた餅でしかない。
「この戦いが終われば、日本は世界の半分を、衰退するイギリスに変わって我が合衆国に任せるとまで言っているというのに、ここで日本に見限られでもすれば……」
そうして、大統領の血圧はいつも通りに高まるのであった。
「フランスに手綱を着けて、欧州での代理人にしたいのだとすれば、些かフランス人の質を見誤っていると笑う所だが……日本人の考えることだからな、そう生易しいものでは無いのだろう」
チャーチル首相は、ロンドンの夜景を前に思惑していた。
彼が考えるに、もはやイギリスの凋落を止めるのは難しい。勿論、彼は根っからの愛国者(帝国主義者)であり、この大英帝国が崩れ去るままにするつもりは毛頭無いものの、今次大戦で出来た力関係からすれば戦後欧州全体が
アメリカの強い影響を受けるのは確実だった。
そんな中で、西欧の中心に位置するフランスを影響下に置くことが出来れば、それは強固な楔と為り得る。
フランス人的な独自路線嗜好を加味すれば、手綱を制御できるかは兎も角中々厭らしい一手だと思うが、彼は何となく、日本人の思惑はそれだけではないと考えていた。
『フランス人が率先してドイツ人と戦いたいと言っているのです。ならば、お望み通り先頭に立ってもらった方がいいでしょう?』
849:奥羽人:2024/02/09(金) 22:39:38 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
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夢幻会「だってド・ゴール失脚したら史実から逸れるしアルジェリア問題とか大変そうだし……」
最終更新:2024年06月16日 23:25