911 :New ◆QTlJyklQpI:2012/03/16(金) 13:35:23
ネタSS  ~合衆国の悪夢~

1950年、ホワイトハウスを埋め尽くす群衆を現合衆国大統領トルーマンはやつれた顔で見ていた。

「さんざん対岸の火事に手を出すことを私に求めておいて、自分らに火が付いたら批判するか」

民衆に対する愚痴を言いつつ、今後の世界戦略の見直しを検討しないといけない。
彼はまだ合衆国大統領なのだから。

1947年に現れたゲートにより向こうの米国が滅び、日本や欧州の経済植民地になってることを知ると
世論は激昂した。合衆国崩壊の詳しい事情を知るトルーマンらは穏便に済ませようとしたが
軍部の突き上げと世論に押され出来る限りの準備の下、合衆国の再建を唄いゲートを潜った。
軍部にも民衆にも、そしてトルーマンにも楽観があったのだ、あの体当たりのキチガイな東洋人と
ソ連と戦って疲弊したナチやジョンブルなど恐れるに足らぬと。勝つのは我々だと。
しかし、そんな予想はあっさりと崩れ落ちる。
確かに激闘の末、西海岸とパナマから日本軍を追い落とし、ドイツ軍や英軍も追い落とせた。
しかし、その損害たるや嘗ての対独戦にも匹敵するものであった。
日本軍は強力な戦車や航空機を持ち、英独は劣るものの日々、日本との戦闘に備えていた練度から
米国世論が悲鳴を上げるほどの損害が出た。だが、なんとか追い払った。それで合衆国が再建できたら
良いではないか。そんな声もその後の経過に中に消えていった。

東部は津波から手つかずのままで、カルト教団や軍閥が居座り、テキサス軍は反合衆国勢力として徹底抗戦していた。
クーデターで合衆国の継承者であるはずのカリフォルニア共和国はクーデター政権の軍政による
経済停滞と白人主義丸出しの有色人種の虐殺に走り、ゲリラに悩まされ合衆国軍の士気は下がる一方だった。

そして欧州ではイギリスの革命勢力に加担したことで向こうの世界の英国に顰蹙を買い、ドイツや枢軸国に対する
ルメイによる無差別爆撃は欧州の東西陣営からも非難の声が上がった。爆撃自体も日本の富嶽に備えていた対策により
損害が積み重なり、日本領アラスカへの空爆も開発中のF86に似た機体により文字通り全滅された。
そして合衆国とカリフォルニア両海軍によるハワイ奪還作戦の失敗により次第に劣勢となり、遣欧艦隊という戦力のスイングを
許し、手詰まりの膠着状態が生まれた。なんとか事態を打開しようとベルリンに原爆を投下し、英本土でも迫りくる敵の前に
原爆を落としたが米軍捕虜が悲惨になるだけで変化がなかった。

そしてその膠着状態を見た共産主義者は好機として(実際スターリンが「チャンスだ」と言ったらしい)一気にユーラシア赤化を
推し進めた。向こうの欧州に対する無差別爆撃と核攻撃に西側諸国ではアメリカへの不満から暴動も起きており
欧州は英国を残してあっさりと赤く染まり、中国共産党も支援が途切れがちな国民党を台湾に追い落とす前に包囲殲滅し、
朝鮮もスイッチを切り替えたようにあっさりと染まった。

アメリカは文字通り慌てた。内密にソ連は動かないという言質を取っていたのだ。見事に騙された形になった
合衆国は形振り構わず戦力を戻した。そのせいでカリフォルニアは水爆で焼かれ、現地でアメリカを頼った勢力は
反米勢力に根絶やしにされていった。しかもアメリカ風邪というペストまで持ち帰ったため混乱が広がり、
赤化も止められず向こうの世界のドイツなどには賠償金を払うハメになり政権の支持は急落した。

この時の合衆国への見方は英国のチャーチルの発言として残っている。

「腕っ節だけが取り柄の男が隣人の言う事も聞かず、自分の家と似ているからと他の家に殴り込んだ。
そして隣人が強盗に襲われて助けを求めても家が大事だと助けなかった。こんな自分勝手に誰が誼を通ずるだろうか」

アメリカ合衆国を本当の友好国として見ている国は最早誰もいなかった。

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最終更新:2012年03月17日 16:38