77 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/27(火) 20:43:40 ID:softbank126036058190.bbtec.net [6/148]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Andaman Express」
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日未明 アンダマン島 国連印度洋方面第1軍 中アンダマン島・オースティン基地 通信室
未明のオースティン基地は、警報で満たされていた。
その理由は言うまでもない、BETAの大規模侵攻が発生したとの報告を受けたからだ。
来るものが来た、という認識は誰もが認識していた。いつまでもBETAがハイヴで大人しくしているわけではないと理解していた。
このアンダマン島に存在する基地はインドシナ戦線を側面から支えるという役目を担っている。
だが、立地的にはボパールハイヴとマンダレーハイヴが直近に存在する最前線でもあるのだ。
つまり、ここがBETAの侵攻を受けることはある意味では想定内であったし、そのように備えを重ねられていた。
故に、基地に詰めていたスタッフや軍人が揃ってたたき起こされても、非常時に備えたマニュアルに沿って行動をしていた。
驚きはあるが、それの影響は少ない。BETAの行動原理など人類の考えが及ぶところではないのだし、嘆いたところでBETAが消えるわけではない。
いや、この基地だけではない。
アンダマン諸島に存在する国連軍基地であるポートブレア基地やパルサ・キャンプも同じように動きが発生していた。
その他細かい基地---哨戒基地や前哨基地なども当然の如く、まさしく鉄火場の様相を示していた。
BETAの大規模侵攻が起こっていて、すでに海中へとBETAが突入しているということは、アンダマン諸島に到着まで秒読みということだ。
このアンダマン諸島には1985年に大規模な国連軍基地が設営され、BETAによる侵攻に備えていた。
さらにユーラシア大陸失陥---1990年のBETA南進以降はここに難民キャンプが多く設置されていて、オーストラリアほどではないにしても、多くの人口がいた。
然るに、このアンダマン諸島にいる国連軍の任務は、BETAの侵攻に対して防衛戦を行うことと非戦闘要員や難民の避難までの時間稼ぎにあった。
この作戦が選ばれたのは至極当然で、このアンダマン諸島の戦力を以てしても防衛しきるのは難しいという判断と事前の予測ゆえだ。
だが、事前の計画を進めていたところに入電があった。
それは国連軍、そしてインド政府からである。管轄的に上位からのそれを基地司令は受け取り、目を白黒させた。
「増援、ですか?」
正直、納得がいかない。
陥落することがほぼ確定しているような基地に増援を送るだろうか?と。
この大規模侵攻は何もアンダマン諸島だけにBETAが向かっているわけではなく、他の方面へ---東南アジア方面にも向かっている。
このアンダマン諸島は確かに重要ではあるが、より人口が多く、守るべき優先度の高い立地の場所があるはず。
だというのに、増援を送り込む?ありがたいことではあっても納得はできなかった。
『そうだ、生憎と国連軍ではないが……地球連合のことは聞いているだろう?』
「地球連合……以前のブリーフィングで聞きましたな」
荒唐無稽だと思って、あまり信じてはいなかった情報の雪崩の中で聞いた記憶がある。
日本の横浜にできたハイヴの攻略作戦において新兵器であるG弾が使われ、その結果、違う惑星に転移したという、どこの三文芝居だと思ったものだ。
とはいえ、実際に天候が急変したり、夜に観測できる星の配置が変わっていたりと、不可解な現象が起こっていたことは確かであった。
加えて上層部がそう判断したことなので、下の人間としては信じざるを得なかったのだ。納得はしていないが。
78 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/27(火) 20:44:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [7/148]
『ともあれ、そちらに増援が向かう。共同して防衛にあたってくれ』
「しかし、間に合うのですか?シンガポールに駐留しているとのことですが……」
『最前線のそちらに間に合うように派遣すると言っていた……ああ、衛星軌道から下ろすと言っていたな』
衛星軌道からとは大胆な、と思う。
確かにBETAが攻撃を仕掛けない衛星軌道上というのは衛星があることからもわかるように安全だ。
とはいえ、光線級がそれを見逃してくれる保障などない。
『衛星軌道上からのテレポーテーションと言われたが……正直なところ半信半疑だ。
一瞬で降下できるから問題ないとは言われたがな』
「……あてになるのですか?」
『正直なところ、地球連合という組織も、そこからの派遣軍も未知数な要素が大きい。
与太話という線も捨てきれないが、かといってなんの根拠もなく言い出すとも思えない。
頼り過ぎてしっぺ返しを食らうのは御免だからな、話半分に聞いておいた方がいい』
「了解いたしました。では、当初の予定通り?」
『ああ。難民輸送を最優先として、南方へ逃がしてくれ。
バルサキャンプおよびポートブレアを中心に輸送艦をかき集めさせているからな。
それと……』
言葉に少し詰まったのち、国連印度洋方面第1軍の将校は非情ではあるが、指示を出す。
『いざとなれば、コードF33の使用を許可する』
「……ハッ」
コードF33。マニュアルの規定するところによれば、それはこの基地を含む地域を丸ごと使った自爆---焦土戦術に他ならない。
BETAの侵攻を受け、どうにもならないことを考慮に入れた、地形を変えるような規模の核兵器が敷設されており、それの起爆が許されるのだ。
その結果、この島は地形が大きく変わることになる。それでも多くのBETAを巻き込めるし、地形を変えることで侵攻を遅らせることができる。
それを行った際に影響範囲内にいる味方の命が全く保証できないという点を除けば。
だが、それしかないのも事実。覚悟のある少数を切り捨てることで、大多数を救うというのはありふれた選択なのだ。
犠牲無くして得られるものなどなく、BETAと戦うのは犠牲が付きまとうものなのだと。
『すまないな……』
「元より覚悟の上です」
当てになるかも分からないならば、最悪を想定しておくに越したことはない。
たとえそれが自分の命を失う結果になろうとも。
『現場の指揮は任せる』
「お任せください」
そして、通信が切れた。
吐息を一つ。これから数時間で、どうなるかが決するのだ。
恐怖がないわけではないし、逃げ出したい気持ちが0なわけではない。
だが、ここで誰かが止めねば多くがBETAの暴虐によって死ぬのだ。
「覚悟の決め時か」
ともあれ、指令室に戻らなくてはならない。
力の限り戦うしかないのだ。命を燃やし、多くの人々を救うために。
そんな悲壮なまでの覚悟がひっくり返されるのは、2時間も経たないうちなのだが、この時の彼は未だに知らなかった。
79 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/27(火) 20:45:46 ID:softbank126036058190.bbtec.net [8/148]
以上、wiki転載はご自由に。
そう言えばこっちも描写しておこうと思いまして…
普通なら見捨てるけど、そういうことはしないよね!ということで。
こちらは時間がないので衛星軌道上からテレポーテーションアンカーでどんどん下ろします。
如何せん防衛範囲が広いのでね…(白目
最終更新:2024年07月06日 20:30