211 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/28(水) 21:22:11 ID:softbank126036058190.bbtec.net [23/148]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「Andaman Express」2
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日未明 アンダマン諸島
地球連合β世界東南アジア方面派遣軍の首脳部は、アンダマン諸島の防衛を急務としていた。
同時並行で東南アジア方面やスリランカ方面にもBETAが侵攻を開始していたが、到達予想時刻などを考えると先に手を打つ必要があったのだ。
物理的に2つのハイヴに近く、尚且つ明らかにアンダマン諸島へ向かう集団が確認されていたのだからごく当然と言えた。
残念なことに派遣軍がアンダマン諸島に配置していた戦力は少数過ぎた。
現地には人道支援とその護衛、そしてBETAの調査という形でしか入れなかったというのが理由だ。
いや、性能や練度などを考えれば少数でも十分だったかもしれないが、戦局を覆すにはとにかく数が必要だった。
あるいは少数でも戦略的な影響力を及ぼすことができる質が要求される状況下にあったのだ。
勝てることは確定にできるとして、問題は現地の国連軍への被害を如何に抑えるかだ。
現地国家の戦力は時代を考えればよくそろえたものであるが、地球連合の調べた限りではBETAに対しては不利が否めない。
というか、総合的な軍事力がBETAの侵攻を阻止できるほど完熟していないと考えていた。
これまでBETAとの戦いにおいて、この世界の人類は常に敗北を重ねていた。
様々な要因があったことは確か。さりとて、現地の国家に失礼かもしれないが、手助けしないとならないほどに弱いのだ。
幸いにして、地球連合派遣軍は予め防衛計画を練っていた。
現地に到着して情報収集をし、外敵であるBETAについて研究する期間がおおよそ1か月もあったのだから、それくらいは策定できた。
だからこそ、国連軍からの要請があった直後に現地司令官の承認の元、一斉に動き出せたのだ。
手始めに投入されたのはテレポーテーションアンカーである。
衛星軌道上からアンダマン諸島各地に突き刺さったそれは、瞬時に戦力を衛星軌道から転移させた。
陸上艦艇、MS、砲台、あるいは大型兵器。海上に落とされたものからは海上艦艇などが次々と出現した。
悠長に大気圏突入などをする手間を惜しんでの、遠慮のない戦力投入であった。
突如として各地に出現した戦力には、現地の将兵、そして司令部の人間も大いに驚いた。
増援が来るとは通達されてはいたが、文字通りいきなり出現するとは夢にも思っていなかったのだ。
次いで目をむいたのは、その量だ。中小国からの派遣軍ということで、数は少ないだろうと推測していた。
実際、前述のように事前に確認できた戦力は少なく、それがすべてと思っていたところもあったのだ。いい意味で期待を裏切られたということである。
これで少なくはない将兵が勇気づけられた。戦力価値はどれほどか不明だが、数があれば抵抗できると。
内陸部、人が無いエリアに配置されたのは砲台の群れだ。
いや、単なる砲台などとは口が裂けても言えない。
あまりにも大きく、長大で、他を圧倒するスケールであった。ただの野戦砲などとは格が違う。
一種は、砲の口径600ミリ、砲身長76.5メートル、稼働にはプラズマジェネレーターとコンデンサーによる電力供給を担うレールガン。
それを艦載した潜水航空巡洋艦の名からとって「アリコーン・キャノン」と呼ばれる大口径砲。
さらに、アリコーン・キャノンよりも大きい砲台まで出現していた。アリコーン・キャノンもデカイが、こちらはさらに巨砲だった。
無理もないであろう。元々は宇宙から攻め寄せる外敵を地上から迎撃するために開発された、防衛兵器であり戦略兵器なのだから。
その名を120センチ対地対空両用磁気火薬複合加速方式戦略砲---通称「ストーンヘンジ改」。
原型となったストーンヘンジが固定砲台であったのに対し、戦略兵器としての柔軟性を維持するために、自走砲化を行ったモデルだ。
212 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/28(水) 21:22:46 ID:softbank126036058190.bbtec.net [24/148]
これらを映像で見た現地国連軍の指揮官は、何故人気のない土地が要求されたのかを即座に理解した。
この手の大型砲は周囲へと影響を及ぼしてしまうものなのだ。発砲音、衝撃、振動、その他諸々は想像するだけでも既知を超えている。
さらに、追加で開示された情報でこれがどういう意図で設置されたかが理解できた。
これは防衛兵器として動くと聞いたが、その砲口と照準はユーラシア大陸へと向けられている。
普通ならば届くはずもないが、これはそんな距離程度を軽々飛び越えるものなのだ。
そも、大気圏外の標的を狙撃するようなストーンヘンジにとって地表の海程度の距離など朝飯前である。
加えて砲弾自体にも何種類ものコーティング処理が施されており、光線級程度で迎撃されるような間抜けは晒さないと教えられている。
(まったく、お手上げだこれは……)
事細かに知らされ、現地国連軍やインド軍はもうどうにでもなーれと一任した。
そして、あらかじめ準備が行われていたそれは、地表に設置された後のチェックを終え、1時間と経たずに砲撃を開始した。
それは、アンダマン諸島防衛戦---ひいては東南アジア方面への助力を含んだ一連の作戦の開始を告げる号砲となったのだ。
着弾と炸裂のたびに、ユーラシアの大地でBETAの群れが消える。
弾着観測を行い、出力を調整し、砲弾の種類を変更することで、効果的な対地砲撃を続行しているのだ。
600ミリあるいは120センチという大口径。雑に打ち込むだけでも加害範囲は広いし、フレシェット弾などを用いればさらに加害範囲は広がる。
元々の時点で下手な核兵器を凌ぐ威力の火薬が詰め込まれ、その上で破片効果や燃焼、あるいはフレシェットをばらまくのだからむべなるかな。
砲撃はベンガル湾を飛び越えたインド亜大陸や旧ミャンマー、旧バングラデシュ一帯に飛び込んでいく。
水際に押し寄せ、海中に飛び込もうと集まってくるBETAを根こそぎ消し飛ばしていくのだ。
先を行く群れが消えても愚直に進んでくれるので、あとはそこへと順次砲撃を続けるだけでよかった。
勿論光線級や重光線級による迎撃も試みられているのだが、それはもはや賑やかしにしかならない。
射程はぎりぎり勝負になるとしても、弾速と砲弾の物量、さらには正確無比な狙いに勝てていなかった。
さらに別な砲台群は、東南アジア方面への火力投射を開始していた。BETAが南進を続けるマレー半島は、余裕をもって射程圏内なのだった。
本来ならば地球連合派遣軍が介入を許されていないところではあるが、そこはそれ、助力しているアンダマン諸島の国連軍の名義を使った形だ。
全力砲撃とは言わないが、これにより最前線にあたるクラ海峡に押し寄せるBETAの群れは相当数削られており、東南アジアの時間稼ぎの一助となった。
これらを衛星あるいは観測機からの映像としてみていた現地の司令部は揃って遠い目をしていた。
もはや驚くことも置き去りにしてしまっているのだ。
「圧倒的過ぎるな……」
「あっはっはっは……」
「一射で師団や軍団規模で消えている……ひとつ、ふたつ、みっつ……」
「いやぁ、楽ができそうだ」
司令部の人間が軽い現実逃避に走ったのは必然だろう。
ちょっと助力を頼んだらこれだ。味方が頼りがいのある相手なのは助かるが、ここまでとは思わなかった。
とはいえ、現地の軍の仕事が消えたかと言えばそうではない。現地住人や難民の避難はもちろんのこと、水際での防御なども行わなくてはならない。
砲撃だっていつまでも続くわけでもないのだから、それまでの間に可能な限りの防衛策を講じておかねばならないのだから。
さて、勘のいい人ならば既に気が付いているかもしれないが、近隣のハイヴは砲台群の射程に収まっている。
アリコーン・キャノンの時点で5000キロは平気で飛んでいくので、ボパールハイヴもマンダレーハイヴもその気になれば滅多打ちにして滅ぼせる。
ただ、吹っ飛ばしてしまった場合にはそこまでを人類側の勢力圏として制圧しなくてはならず、そうなるとどうしても現地国家のキャパを超える。
それだけの物量を送り込み、防衛ラインを構築し、補給線を繋げて、以降の侵攻に備える?どう考えても不可能だ。
あくまでも手伝いに来ただけであって、問題を増やすためにやってきたわけではない。
地球連合としては現地国家の意志や判断などを尊重するし、必要以上に乗り込んで解決することは望まない。
現地国家についてしっかりと戦力査定などをしていた地球連合は、そういう判断を下していたのだった。
213 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/28(水) 21:24:03 ID:softbank126036058190.bbtec.net [25/148]
- 融合惑星 β世界 9月14日1時18分 ベンガル湾
所変わってベンガル湾。
砲撃を受けてもBETAの群れは少なからず海中に飛び込んで侵攻を続けていた。
狙うべき範囲が非常に広いことや持ち込めた砲台の数の限界もあり、どうしてもうち漏らしが発生していたことによる。
さらに、東南アジア方面への援護射撃でも同様であったが、遠慮会釈をせずに攻撃できないという、強い故の弊害もあった。
つまり、奪還すべき土地までも過度に破壊してしまうので、多少の範囲で収まるように手加減を強いられたということだ。
逆に言えばちょっと火力を出すだけでも十分に排除できることから、支援攻撃を長時間を行うことができる見込みがあったということでもある。
とはいえ、BETAが後方まで浸透してしまうリスクは回避すべきであった。人間のいる地域---アンダマン諸島へ集まっている傾向にあるとはいえ、抜けられると困る。
「投下開始!」
「アイサー、投下!」
そして、それに備え、国連軍およびインド海軍の艦艇は海上からの攻撃を実施していた。
方法としては極めて単純な爆雷の投射。今現在行われているように、水中では攻撃手段の限られるBETAを水圧と爆圧で圧殺してしまう方法だ。
もうひとつは機雷の設置。海岸線は既に機雷によって囲われており、BETAが突っ込めば起爆するようになっている。
海岸線だけでなく、BETAがとると思われる予想進路上にも敷設が進められている。
艦艇を標的としたものというより、最早海底地雷といった方がいいレベルの深度に設置するそれは、これまでも少なからず活躍してきたものだ。
その作業は順調に進められており、爆雷の投射による排除も順調そのものである。
「……聴音手、前方海域の様子は?」
「賑やかなパーティーですよ、四方八方で推進音と爆発音……それになんでしょう、モノを切り裂くような音がしています」
艦長からの問いかけに、ソナーで海中の様子を窺う聴音手は報告する。
前方の海域で、というか、艦隊が担当する海域よりユーラシア大陸寄りの海域では地球連合派遣軍によるBETAの漸減が行われている。
水中でも行動が可能な機動兵器---水陸両用MSが暴れまわっている証拠はソナーなどで捕捉ができていた。
聞きなれない推進音に爆発音、あるいは何かが発砲される音---とどめに聴音手の言うようなモノを切り裂く音。
「BETA相手に水中で格闘戦とはとんでもないものだな」
「まあ、戦術機でもやりますけどね……」
「それでも驚愕すべきことだ」
ソナーなどの情報を統合、あるいは地球連合派遣海軍から伝えられるところによれば、水中での迎撃は脅威度の高い種を優先しているとのこと。
即ち、突撃級・要撃級・要塞級・重光線級という厄介な相手を後方に通さないようにと動き回っているのだ。
そうなると残りは戦車級以下の個体が中心となるので、こちらとしても排除が容易くなり助かっている。
そして、水中での活躍以上に驚くべきことは、その戦力の特異性にあった。
「それに、展開している部隊は無人機だというのだから驚いたものだよ」
そう、ソナーでとらえている無数の推進音には、いわゆる無人MSの音が混じっている。
黎明期においてプラントが開発した水陸両用MS「グーン」を基にした「グーン・スクワッド」が、無人機故の強みを生かして戦っている。
こちらの質が圧倒的に勝るとは言っても、相手の数が多いのは問題となる。如何にMSと言えども武器弾薬は使えば消耗する。
その点、無人MSは人が乗ることを考慮せず、構造を単純化し、武装の搭載量を大きくとることができる強みがある。
「無人兵器、ですか……複雑な判断を機械ができるとは、にわかには信じがたいですが……こうして証明されると頼もしいものですね」
「ああ」
艦長は海軍の人間で、戦術機について特段に詳しいわけではない。
それでも、衛士を育成し、実戦で戦えるようにするのには時間がかかるというのは理解できる。
分野こそ違えども、水兵の育成には途方もない時間とコストがかかり、実戦で艦艇の能力を生かせるようになるまで苦労すると知っているからだ。
もしもそれを人間ではなくて機械に委ねることができたのならば---今でさえもコンピューターの恩恵は著しい。
それに上乗せされたならば、どれほどの力を発揮できることか。
「おかげで楽をできている。その分だけ我々も力を尽くさなくてはな」
「了解です、艦長」
ベンガル湾での漸減は続く。少なくとも悲観はなく、前向きに戦えていた。
BETAの大規模侵攻と身構えていたのだが、既に希望が見えているのだから。
大軍を相手にしても、防衛しきれるだろうというそれが、彼らの働きを支えていた。
214 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/02/28(水) 21:25:38 ID:softbank126036058190.bbtec.net [26/148]
以上、wiki転載はご自由に。
細かい設定はオイオイネー。
あと2話くらいで終わらせる予定です。
司令官の覚悟君がお亡くなりになるのは次回ですねえ。
改めて見返しましたが、こんなレールガン搭載していたアリコーンってやべぇなぁ!(白目
こんなのを素面で作っていたであろうストレンジリアルは狂ってやがる
最終更新:2024年07月06日 20:33