240:陣龍:2024/06/18(火) 23:24:10 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
【 夜 廻 乃 羽 魔 夢 棲 女 】
「うむ」
人通りも無く、整備も長い事されていないであろう石造りのトンネル、そして所々に祠が点在しているその中にて、
学生服を着ている一人の少女が腕を組んで佇んでいた。
「【前回】は並行世界のトレセン学園だったけど……うん。今回は明らかに全然知らない場所。つまりは世界規模の迷子と言う事」
腕組みしながら両眼を閉じて、頭頂部の両耳をピコピコ動かし、そして自身の尻尾もゆらゆら動かす少女。
ご存じ何時ものゴーストウィニングである。
「……取り合えず、トンネルから出よう。何だか良くない空気が漂ってるし」
溜息を吐きながら、取り合えず歩き出すゴースト。今回は前回ウマ息子たちに混沌の極致へと無意識に強制連行させた
実に平和な世界とは違い、肌にひり付くように、内面の精神を覗かんとするように、人ならざる存在がそこかしこに出でつつ有る。
その感覚は過たず、普段ポヤポヤしてるゴーストを真剣な顔付にさせるには十分な条件であった。
「さぁーて、今回は何が起きるのやらーっと。と言うか、多分今度も自然災害的な不可抗力な気がするけど理不尽に
締め上げられてるんだろうかな、あの神様」
何やらぶつぶつと独り言を言いながら歩いていく、本来居る筈の無い別世界の存在。
【――――――――】
夕暮れの時、逢魔が時に入ると共に現れる彼の者は、『極めて不幸極まりない』事に、既に彼女を見定めていた。
241:陣龍:2024/06/18(火) 23:25:48 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「おー、これこそ正しくひなびた地方都市……都市じゃ無いか。市、いや町ってくらいかな」
石造りのトンネルから出たゴーストは、自らの状況とは相反する様にノンビリと山を下りながら、
ガードレールの向こうに見える田舎町を見ていた。何処かしら観光気分である。
「で、さっき想定した通り学園等への通信は不能で此処が別世界なのが確定っと。
前回は途切れ途切れだったけど一応繋がってたのになぁ」
こりゃ大変だー、と全く危機感の無い呟きをしながら、自身のウマホを眺めるゴースト。
画面上部の二段に分かれたアンテナの本数は、お馬さんや別世界の例の人との通信状況を示す一段目は通信不可を示し、
その他の地域との繋がりを示す二段目は元気に三本林立していたが、トレセン学園等への電話は全て使われていない
電話番号と言う自動音声しか返って来なかった。必然的に、此処が別世界であるとの証明ともなっていた。
「……ん、犬と、散歩してる人……これは、子供かな」
そうこうしているうちに、ゴーストのウマ娘特有の聴力の良さを持つ耳は、前方に犬と人間、もとい子供がいる事を察知する。
「……!」
そして、視界に耳で察知した通りに子供と犬が山側の路肩に居るのを視認したのと同時に。
「らぁぁああ!!」
陽炎の如く突如【出現】した大型トラックが、悪意に塗れた異形にして不幸をまき散らす【怪異】と本能的に察知するが速いか、
ゴーストウィニングは一切の躊躇いも無く、アスファルト舗装の道を少しばかり抉り取る勢いで疾走し。
「……ぽ、ポロ……?え……?おねえ、さん……?」
「……間に合った」
少女が投げた石を取ろうと道路に飛び出た犬を抱え込みつつ、まるで流水の如く滑らかで軽やかに、
ゴーストウィニングが大型トラックの正面に叩き込んだ回し蹴りにて、激しい轟音と共に【怪異】は強制停止させられた。
「……え、え!?と、とまらない……!?」
「そんなに……轢きたいって言うのね、このワンコを」
……かに、思われたが、強制停止させられた大型トラックを模した【怪異】は、目の前のウマ耳と尻尾を持つ少女を意に介さずにタイヤを空転させ、
アスファルト舗装の道に白煙を上げだす程に突き進む意志を変えなかった。傍から見ると、学校制服を来た少女の開脚した蹴りの姿勢を崩せない
トラックの光景は何ともマジックめいた非現実的光景だが、当事者たちは演技でも何でもない現実に居た。
「……ポロ君、かな?その子の所に行ってて」
「ポロ、ポロ……!お、おねえさんは……?」
「私は、大丈夫……!この、位はぁ……!」
非現実的光景は、ゴーストが両手に抱えた犬を少女の元へ戻すと更に加速する。何せ、片足一本で大型トラックの【怪異】の突進を
食い止めているだけでも非現実的な所に、更に力を込めて前傾姿勢になると逆に【怪異】の方を押し返しているのだから。
タイヤが既に火花を散らさんばかりに空転を更に加速させているが、全く進む気配すら無かった。
242:陣龍:2024/06/18(火) 23:27:13 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「せぇーー……のぉ!」
「おねえさん!!」
「そぉっ……!」
挙句の果てに、数メートルばかり一声と共に大型トラックの【怪異】を押し返し、全く懲りずに再加速し轢き倒そうとした相手を嘲笑うかの如く、
上体を逸らして振りかぶるゴースト。
「ぶ、ぶつか…!」
「……ぉおい!!」
「え……」
路肩の子供が直後に目撃したのは、何故かウマ耳と尻尾を持った【おねえさん】が、一瞬で加速し飛んでも無い速度で突撃して来た大型トラックを、
文字通りに一瞬で真正面から十メートル以上弾き飛ばして後退させ。
「とっとと収まりなさい!後で除霊お願いして置くから!」
「……きえちゃった」
瞬く間に取り出した携帯でフラッシュを瞬かせてトラックを撮影すると、正面に二か所の【穴】が開いたトラックが消え去った光景であった。
「……こともちゃん」
「なぁに?」
「うん、ちょっとね。色々言いたい事沢山有るんだけどね」
「うん」
「……この町、ちょーっと、お化け多過ぎじゃない?」
「おとなのひとがみんな、よるにそとにでちゃダメだって……」
「そっかー……」
暴走トラックの【怪異】を、ゴースト用ウマホに実装されている特注の対怪異封滅アプリ、つまりは射影機の性能の強化改良版で封滅した後。
ゴーストと子供こと【ことも】とその愛犬のポロは、共に暗くなりつつある街中を、こともの家に向けて歩いていた。
「ピャイァ!?」
「あ、ごめんなさい。いたかった?」
「だ、大丈夫。ちょっと驚いただけだから……気になる?」
「……うん」
「……じゃあ、後で触らせてあげる。それでいい?」
「……おみみは?」
「……うん、良いよ」
付け耳等では無い生きているウマ耳と尻尾を持ち、そして謎の暴走トラックを真正面から二度も足と素手で強制停止させる少女と言うのは
明らかに【変】でしか無かったのだが、トラックに飛び出た愛犬のポロを身を挺して助け出した事と、ゴースト自身の普段のポヤポヤ雰囲気から、
こともが警戒や恐怖を抱く事は無く、加えて臆面も無く『迷子してます』と真顔でゴーストが言った事も有り、こともの家に招かれる事になった。
「……目線を上げればヤツが居て、後ろを向いてもヤツがいて。何なのさこの町、百鬼夜行から逸れでもしたんかいな」
「ひゃっき…やこう……?」
「あの白い人見たいなのとかが沢山並んで歩いているの。危ないから絶対にそんなのが居ても近付かないで逃げてね」
「うん」
その道中、明らかに現世の存在では無い【お化け】やら怪奇現象やらがそこかしこに跋扈し、ゴーストのウマホは常にライトを照射しつつ
射影機機能アプリで目に付いたお化けやポロが吠え立てた怪異を手当たり次第に除霊収容し続ける事になっていたが。
「ゴーストおねえさんは、つよいんですね」
「うん?どうしたの?」
「たくさんのおばけがいても、ぜんぜんこわいってかんじがしていないから」
「まー、うん……大変遺憾な事に、似た様な経験はそれなりにしているからね、うん」
「いか……?」
「それより、こともちゃんの家って此処?」
「あ、うん!ここ!!」
道中徹底した【掃除】にて、無事にこともの家に辿り着いた二人と一犬。遠目にこの三者を見遣ろうとする常世の者も居るようだったが、
軽く背後に視線を向けたゴーストの一睨みですぐさま逃げ散ったようだった。
「……さて、どう説明した物か」
243:陣龍:2024/06/18(火) 23:28:45 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
愛犬と共におねえちゃーんと言いながら自宅に入って行ったこともを玄関前で見送りつつ、
この家を背にして独り言ちるゴーストウィニング。既にこともとの会話で、この世界にウマ娘や
それに類する存在が居ない事は把握できていた。この町の明らかな異常性と併せて考えれば、
下手を打てば自身が怪異と思われて迫害や幽閉、最悪は実験動物や殺処分等に陥る可能性は十分考えられた。
「一体どう言うべきか……ウマホの映像とか写真で証明出来たり……ならないかなぁ……」
ちょっと部屋で昼寝したら此処に事前説明無しに放り出された事に理不尽さを感じつつ、
両手でウマホを弄びアタマの中の考えを延々と回しだした時。
「おねえさーん!!」
「こともちゃん!?」
けたたましく吠えたてるポロの声と、それに混じって聞こえたこともの声に即応しこともの家に駆けこむゴースト。
「おねえちゃんが……おねえちゃんが……!」
「……これは、そこら辺の【お化け】の仕業じゃ無い」
クゥーンと悲し気に無くポロと、泣くのを堪えて必死に異常を伝えようと言葉を詰まらせていることも。
本来安全である筈の家の中は、多数の【お化け】が点在しているのを即座にウマホで除霊収容しながらもゴーストは、
こともが『おねえちゃん』と呼ぶ少女が途切れる様に消えている事を、全ての理屈を超えた直感で確信していた。
「……こともちゃん」
「う、うん……」
「……探しに、行ける?お姉ちゃんを、私と、このポロと、一緒に。この町の中を」
「……いく……!!」
夜の帳も深まりつつあるこの時間帯に、保護対象である筈の幼女と犬を連れて、【怪異】に連れ去られた少女を探す為に
無数のお化けが跋扈する夜の町を捜索する。ハッキリ言って正気でない暴挙であるが、
この時のゴーストの思考はこのこともと言う子供とポロと言う犬が、この異常事態そして行方不明の少女の事件を解決する為に必要な、
絶対的な鍵である事を確信していた。一度、完全に【死】に至ったが故に、この常世に浸食された世界に置いて
思考や直感が鋭くなるのかそれとも唯の偶然でしか無いのか。そんな事はどうでも良い話である。
「うん、強い子だよ、こともちゃん……そうだ、懐中電灯見たいなのって有る?」
「うん、ある!」
「ヨシ、それじゃこともちゃんもそれを持って行こう……あ、壊れて無いかとか見たいんだけど、良いかな?」
その後、こともが持ってきた古めの懐中電灯を、ゴーストが所持していた例のティ連技術を持って修理と改造を行い、
見た目そのままで性能をその場で跳ね上げた事で、こともから『ゴーストおねえさんはまほうつかいだ!』と目を輝かせて
見て来られて苦笑いして視線を逸らす一幕があったモノの。
「……こともちゃん、もう引き返せないよ」
「うん。でも、わたしが、おねえちゃんをとりもどすんだ……!」
「ホント強い子だよ……ポロ、こともちゃんを守ってあげてね」
了承を示す元気な一吠えのポロと共に、幽霊の名を持つ別世界のウマの少女と、巻き込まれた極普通の女の子が、町中へと踏み出していく。
その二人と一頭を、幾多の存在が見つけ始めていた。
244:陣龍:2024/06/18(火) 23:29:30 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
ゴースト ゚д゚)<で、その後色々町中巡って怪異やお化けを討滅しつつ山の神()とやらを撃砕除霊してお別れ言って帰って来た次第です
飯崎 ^-^)<……仕方がない話とは言え、無茶をしたわね、ゴースト。全く、一体全体誰に似たのかしら
電筆頭一同´・ω・`) `・ロ・´) -ω-)・ω・) ´∀`)<どう考えても飯崎さんなのです(でしょ・ですわ・だよね・だけっしょ、等)
245:陣龍:2024/06/18(火) 23:32:59 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上、幼女と犬猫が酷い事になる事で有名()な某ホラゲ世界と流れて巻き込まれたゴーストでした
|д゚) この後はウマ娘のフィジカルとゴーストの対悪霊戦闘素質、そして後に原作では一部プレイヤーから【幼】兵と呼ばれる
こともちゃん、そしてその愛犬のポロが幽霊だらけのこの町で大暴れ()してホラー要素が激減して行くんですが、まぁそこら辺は御想像にお任せ致す所存
最終更新:2024年07月15日 19:55