451 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/11(月) 00:22:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [58/125]

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「リヴェンジ」


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日12時 ジャワ海海上 タケミカヅチ級空母タケミカヅチ 甲板上


 ストライクルージュのコクピット内で、カガリは息を入れた。
 既にキャバリアーアイフリッドの機能を通じ、各方面に展開する戦力との通信回線は繋がっている。
 指示を待つ戦力群もまた、その指示があればすぐに動けるようにと、準備を整え終えていた。
 そして、遅滞なく、言葉が紡がれた。

「反撃を開始せよ。
 否、これは単なる反撃ではない。
 雪辱を果たすための、報復だ」

 言葉は、人を動かす。
 その言葉でこれまで政治的な枷をはめられていた暴力装置が大義と自由を得てしまったのだ。
これに勝る不幸はBETAにとっては存在しないだろう。自分たちが淡々と使命を果たすために動いた結果が、断頭台への行進に他ならなかったのだから。
前線にいる思考能力のほぼ存在しない種も、そんな個体に指示を送る頭脳級でさえも、理解は愚か考えもしなかった。
ケイ素生命体のみを生命体と定義し、炭素生命体を生命と見なさず、ただただ排除し続けようとした結果がこれを招いたのだから。

「やれ」

 窮地に陥っている東南アジア地域に点在する地球連合派遣軍が一斉に動き出した。
 アンダマン諸島では母艦級の襲撃を凌ぎ終え、十分な補給と調整を終えた巨砲の群れが。
 激戦が続くフィリピンの近海では海中に潜む大型母艦とその艦載機の数々が。
 そして、ジャワ海のタケミカヅチ級空母タケミカヅチの艦載機の群翼が。
 躊躇も遠慮もなく、BETAのような外敵を打ち払うための「力」が無造作なまでに振るわれたのだ。


  • 同刻 アンダマン諸島 北アンダマン島 地球連合アンダマン諸島派遣軍旗艦 改レセップス級陸上戦艦「アナトール」


 最初に始まったのは、陥落して久しかったマレー半島への支援砲撃だった。
 これまでは支援砲撃という体裁を保つために抑えていたアンダマン諸島からの砲撃だが、遠慮の必要がなくなったのだ。
感慨もなく、ただ機械的に砲弾---この世界では構想しかしたことのないレベルのそれ---が送り出されていく。
頻度自体はさほど変わっているわけではないが、インド方面がうち止めになったことによって、指向できる砲門の数が単純に増えていた。
そうなれば、陸地を進軍していくBETAは海に飛び込めた少数以外は悉くが陸地で汚物に変換されていくしかない。
 いや、海中に飛び込んだ個体も対して末路は変わらなかった。水中の敵を屠るための砲弾が次々と降り注いでいたのだ。
あるいは、マレー半島の周辺に展開していた改ボスゴロフ級から出撃した水陸両用MS達が次々とBETAを屠り始めたのだ。
こちらも、これまでの遠慮会釈をしたものではなく、殲滅を目的とした攻勢に出たのだ。
MSや母艦の数は決して多いとは言えないが、それでも圧倒的な質によりカバーがなされていた。
 これらの効果は劇的だ。純粋にマレー半島の南端、シンガポール基地周辺で粘っていた現地軍がBETAの数が明確に減ったのを確認できたのだ。
相変わらず地中からの侵攻は来るのだが、それ以外のルートから来る数が極端なまでに減った。

 そうした変化はマレー半島だけでなく、島のほぼ半分がBETAにより突破されて後退を重ねていたスマトラ島においても発生していた。
こちらにも、アンダマン諸島からの支援砲撃が突き刺さっていき、BETAの漸減を開始したのだ。
海中での排除も含め、残存する兵力を斟酌しなくてよい砲撃により、現地軍はいきなり減ったBETAの群れに目を白黒させるしかなかった。

「余剰の戦力はスマトラ島およびマレー半島へ送り出して。
 そう、砲撃だけで削り切れるわけじゃないし、地下侵攻の可能性があるから」

 アンダマン諸島防衛の総旗艦の艦橋で、アイは息をつく暇なく指示を出していた。
 現在のところ、アンダマン諸島はBETAの襲来が減り、警戒態勢に落ち着いている。
いつ何時襲い来るかは不明だが、少なくとも他に援軍を送り出す程度の余裕というものは存在していた。
崩壊寸前で絶望的な撤退戦をするしかない現地戦力の救援はとかく厄介であるし、数を出さなくてはならない。
 同時に何度目かも分からないが思うのだ。もっと早くに対応できていれば、と。

452 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/11(月) 00:23:14 ID:softbank126036058190.bbtec.net [59/125]

 政治に軍事は従属するものであるのだが、政治が間違いを起こさない理由など全くないのだ。
 無論、救援を求めないよりはましであるが、その分だけ対応が複雑化していることも確かなのだ。
最初からやっているならば、もっと簡潔にことを済ませられた筈であるのに。

「……あほらしいわね」

 他山の石、他山の石、と自分を戒める。
 偉そうに言うが、自分達だって失敗を重ねたことくらいはある。失った命の数で言えばこの世界の対BETA戦争以上なのだから。
 ただ、だからこそ同じ轍は踏んでほしくないと思うのだ。BETA程度ならまだマシで、もっと恐ろしい敵が現れてもおかしくないのだから。



  • 同刻 フィリピン近海 潜水艦隊


 パノティア級潜水艦や改ボスゴロフ級で構成された潜水艦隊は、フィリピン近海で浮上していた。
 大規模侵攻が始まってから間引きを行っていた艦隊とは別の、大規模侵攻を迎撃するための大戦力を備えた艦隊だった。
本来の予定---大規模侵攻が始まった直後に最速でシンガポール周辺からマレー半島へ向かう計画---が崩れたことで、ここまで下がっていたのだ。
本隊であるタケミカヅチを根幹とする艦隊からは距離があるフィリピンへの介入のためということで、先んじて移動していた。
 そして、パノティア級をはじめとした潜水空母は次々と艦載機を送り出していた。
 ザフトからの派遣戦力ということで、SFSで飛んでいくのはザク・ウォーリアやゲイツR2が主軸だ。
ザク・ウォーリアもゲイツR2もその気になれば飛行できるのであるが、少しでも迅速に展開し、押し寄せてくるBETAの排除のためにSFSが適切と判断されたのだ。
 また、現地で抵抗している戦力への救援のほか、戦闘に参加できない負傷兵などを後方に下げるためにもベースジャバーは活用できる。
組織的な撤退戦など望めないほどに激戦になっている状態なのだ、どれほどいるかなど考えたくもない
そんな兵士たちをいつまでも前線に置いてけぼりにする方がよほどリスキーで、対処すべき案件であるのだ。

 そして、ボスゴロフ級よりもさらにキャパシティーがあるパノティア級は、その腹から大型の戦力を吐き出そうとしていた。

『大型ハッチ、解放完了。
 作業要員は退避急げ!』
『退避、退避だ!吹っ飛ばされるぞ!』
『拘束具群の解除を確認、出撃スタンバイ!』

 それは、デルフィニウム---高貴、あるいは清明の花言葉を持つ植物の名を冠する兵器。
 MSをコアユニットとし、拠点攻撃などに際して大火力と防御力、殲滅力などを持たせた外装ユニットの一つだ。
 コアMSからの操縦に合わせ、デルフィニウムは格納庫からふわりと飛び立っていく。
本体とコアMSに搭載されたテスラドライブによる慣性制御と浮遊能力を合わせた、物理法則に喧嘩を売るような動き。
さりとて、その大型兵器がその推力を解放すれば影響は免れない。故にこそ、送り出した作業要員たちは急ぎで安全圏に下がっている。
折りたたまれていた主砲の砲身をはじめ、各所の機構が展開され、その速力を発揮する準備が整っていく。

 いや、デルフィニウムだけではない。
 デルフィニウムから見れば小型のモジュールユニット兼MAである「アグリッサ」も順次出撃していくのだ。
アグリッサはデルフィニウムほどの足の速さはないにしても、それでも数を送り出せるというのは大きな強みだ。

453 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/11(月) 00:23:57 ID:softbank126036058190.bbtec.net [60/125]

 忙しいのは、何も送り出すメカニック班だけではない。
 パイロット達に最新の情報を送りつつ、司令部からの支持を伝達するオペレーターも忙しい。
 パイロットたちも乗り込んでいる機体のコンディションの最終チェックを行いつつ、作戦内容を確認し、さらに現場の状況を確認する。
寧ろ忙しくない部署など存在しない。今は戦争をしているのだから、緊張のない場所などない。

『現状、フィリピンはほとんど陥落している。
 残っているミンダナオ島に残存勢力が集まって時間稼ぎをしているようだが、陥落は時間の問題だろう』
『組織的撤退ができてはいたようですが、ミンダナオ島からの撤退は進んでいないようです。
 一応撤退していく船などは確認されましたが、明らかに数が足りていない』

 オペレーターの言葉が意味するところは一つ。
 即ち、現地戦力は死兵だけとなっているということだ。
フィリピンにBETAが押し寄せる前の、既に陥落したパラワン島でも確認されていたことでもある。
最後までBETAを食い止めて、出来るだけ戦力を逃がす。BETAができる限り集まったところで島ごと葬り去るつもりだ。
その結果として巻き込まれる兵士たちもいるのであろうが、それは考慮の内なのだろう。
少数が犠牲となることで後方に貴重な時間をもたらし、尚且つ膨大な数の敵を少しでも削る。
人の生活圏が失われ、核の使用に伴う汚染が起こることも飲み込んだうえでの、捨て身の戦術だ。

『大東亜連合と国連軍では、この焦土戦術の続行について意見が対立しているようです』
『おいおい、助けに行ったのに核に巻き込まれるのは勘弁してほしいぜ?』

 パイロットの一人が口を挟む。
 その気になれば、MSなどは旧世代の核兵器など耐久することは容易だ。
 だが、あくまで自分たちは助かるが、周りの救援すべき味方を見捨てる、ということになるのだ。

『だからこそ、急を要します』
『大東亜連合は連合の戦力の参戦を理由として焦土戦術の停止を言っているそうだ。
 対して国連軍は当てになるかどうかもわからない戦力を参加させること自体に反対をしている』
『マジかよ……』
『まあ、よその政治の考えを俺たちが理解しようとしても無駄さ』

 わかっているのは、と男のパイロットが断言した。

『早くに動いて、速く駆けつけて、状況を変えてやることで救える命があるってことだな』
『そういうわけです。各機、指定された防衛ラインに参加し、BETAの排除と前線の維持を行ってください』
『了解だ』
『やれやれ、政治ってのは厄介だ』

 オペレーターからの最終確認に了承を返し、MSや大型兵器たちは一斉にフィリピンのミンダナオ島の防衛線目がけて飛び出していった。
 目標はミンダナオ島の救援。到着するまでにどれほどの人命が消耗されるか考えたくもない。

『VLSおよびミサイル発射管、装填完了』
『主砲準備ヨシ!』
『撃ち方はじめ』

 そして、MS隊の発進と進路解放を以て、潜水艦隊はその火力を投射していく。
 巡航ミサイルや実弾砲、レールガンその他諸々。その射撃の先には、BETAの群れがいる。
 MSなどより先に着弾し、現地の将兵たちを救い、勇気づけるだろう。
 まだ終わってなどいない、逆襲が始まるのだと。

454 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/11(月) 00:24:36 ID:softbank126036058190.bbtec.net [61/125]

以上、wiki転載はご自由に。
色々と設定を出し終えたので、いよいよ参ります。
空母タケミカヅチの動きはもうちょい後に描写します。
まずはフィリピンの救援からですねぇ
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最終更新:2024年07月15日 20:30