541 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/12(火) 00:37:40 ID:softbank126036058190.bbtec.net [81/125]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「リヴェンジ」2
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日12時12分 フィリピン ミンダナオ島 スリガオ防衛線
開幕を告げたのは、潜水空母からの艦砲およびミサイル攻撃の着弾であった。
デルフィニウムやアグリッサ、あるいは接近していたMSから放たれた巡航ミサイルなども含んだそれは、光線級の迎撃を当たり前のように突破。
着弾し、あるいは空中で炸裂することでその効果を広範囲へとばらまいたのだ。
既に陥落した北部の島々から押し寄せる群、あるいは海岸線から上陸しようとするBETAの群れへと突き刺さり、文字通り一掃する。
『援護攻撃……どこから!?』
『艦隊は弾切れで引いたはずだが……!?』
『HQ、どうなってる!状況を伝えてくれ!』
現地で絶望的な数を前に必死の抵抗をしていた部隊は瞠目しただろう。
既に弾薬切れなどで途絶えて久しいと認識ていたところに、明らかに艦砲射撃が含まれる攻撃が行われたのだから。
既にこのフィリピンは放棄することが決まり、あとは焦土戦を実行するまでの時間稼ぎばかりだったはずなのに。
『HQより作戦参加中の全部隊へ、地球連合軍からの増援が向かっている。援軍到着まで戦線を維持せよ!』
『地球連合軍……?』
その内容に、彼らは一様に首を傾げた。
確かにその存在は彼らも知ってはいたが、大規模侵攻の割り振りで彼らは後方支援だったはずだ。
戦力的価値が不明瞭ということで、可能な限りの民間人や非戦闘要員を逃がして戦場の不確定要素を減らすという仕事が任された、どこからか来た軍隊。
その部隊がいきなり前線に出てきた?驚きや困惑が生じるのも無理もない話だ。
『こちら大東亜連合軍HQだ、繰り返す!地球連合軍に正式な要請を行った!現地に戦力が向かっている、合同でBETAに対処せよ!』
『なんだかよくわからんが、味方が増えるってことだな!』
『ありがてぇな。もっと早く来てくれればよかったんだが』
ともかく、眼前のBETAに突き刺さった攻撃が地球連合からのものというのは理解した。
それによって一時的にではあるが後続のBETAの群れが消失したことで、目の前のBETAに集中する余裕を得た。
今の攻撃だけでも数が一気に減ったのだ、それくらいはできる。途切れないことが恐ろしいのであって、途切れれば怖くない。
だが、それをかき消さんと次のBETA---母艦級が大地を割って出現した。
それに合わせるようにして、HQからの通信は続いた。
『さらに地球連合軍より通達!援護攻撃が来る!新種をまとめて吹き飛ばすとのこと!
射線上より退避!繰り返す、射線上より退避せよ!データをリンクする!』
『了解!』
『うわ、なんて範囲に……』
その指示を受け、戦術機部隊は一時後退する。
既に戦車や自走砲なども弾切れなどで後退して久しく、後方からの支援なども途絶えていた状況だったのだ。
そうであったがゆえに、戦術機部隊は遠慮をすることなく素早い移動が可能であった。
そして、その直後に「それ」が来た。
一言で言えば、光の柱。
先行して戦場に接近していたデルフィニウムの主砲であるツイン・メガ・ビーム砲による掃射だ。
複数のデルフィニウムから放たれたそれは、ミンダナオ島に足掛かりを構築していたBETA群をまとめて焼き尽くす。
当然のように、出現していた母艦級も跡形もなく蒸発させてしまった。多少地面もえぐれてしまったがご愛嬌というべきか。
あっという間だ。そこに展開して必死になっていた兵士たちを置き去りに、あっという間にBETAが消えていく。
そして、その砲撃からさほど間を置くことなく、スリガオ防衛線に「それ」が着陸して参戦した。
『こちらスリガオ防衛線の救援の任を受けた、第11混成機動群!現着した!
このまま当該防衛線のBETA排除および失地奪還の先陣を切る!』
ドスンと、大地を砕かんばかりの巨大な機体が、戦術機さえも見上げるしかない怪物が着陸した。
ザク・ファントムをコアMSとするデルフィニウムだ。飛行形態から陸戦形態へと変形して見せたのだ。
それを目撃した衛士たちが驚きで固まってしまい、目を疑ったのは言う必要もないであろう。
542 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/12(火) 00:38:43 ID:softbank126036058190.bbtec.net [82/125]
『2番機はこのままブトゥアン方面へ展開。3番機はカガヤン・デ・オロ方面へ進出。
各MS隊はその援護をしつつ、戦術機の撤退支援を開始。SFSは人員輸送を最優先とせよ!』
隊長機のデルフィニウムの指示を受け、戦力は一斉に散開し、各戦線に殴り込んでいく。
デルフィニウムは確かに高い火力と殲滅力を持つ戦力ではあるが、大型であるがゆえに小回りが利かない。
周囲へもたらす影響が大きすぎることもあって、それをカバーする戦力が必要だった。
それを担うのが、長期戦闘に備えてキャリアーウィザードを搭載したザク・ウォーリアおよびグフ・イグナイテッドで構成されたMS隊だ。
大雑把に削られ、それでも湧いてくる高脅威度目標を優先的に排除していく。
そうなれば、後方へと抜けていくのは小型種だけで済み、戦術機部隊だけでも対処ができるようになる。
とにかく防衛範囲が広いこともあって、連戦になることを承知で彼らの力を借りなくてはならないのだ。
『戦術機部隊は補給作業を今のうちに!SFSが運搬してきてある!』
『りょ、了解した!』
MSが乗ってきたSFSは爆装する以外には、戦術機の補給コンテナが乗せられていた。
後方にあったものを大東亜連合の許可を得て積み込み、ここまで運んできたのだ。
前線で必死に戦っていた戦術機部隊にとっては待ちに待った補給である。
何しろ、悪天候と台風の影響もあり、衛星軌道上からの補給物資の投下が十全に行えていなかったのだ。
数を落としても、大気圏内のそれによって外逸してしまい、多くが着陸する予定地から大きくそれていたのだ。
さらにSFSからは、兵士やアンドロイドたちが次々と降り立ち、戦闘が続行できない人員の救助活動を開始した。
武器弾薬が枯渇して、役に立てていなかった戦車や自走砲などの機甲部隊の人員を誘導していくのだ。
SFSと一言にいうが、MSの高速展開のための輸送機という面のほかにも、人員や物資輸送にも転用ができるのだ。
V/STOL機の面目躍如で、悪天候且つ荒れた戦場となっているミンダナオ島にも難なく着陸できた。
「助かりそうだな……」
「ああ、死ぬかとは思ったが」
「出します、全員シートに座ってベルトを!」
SFSも忙しい。
未だに避難しきれていない部隊や人員をデータリンクなどを基にして発見して回収していかなくてはならないのだ。
悪天候であるが、速度を出していかなくてはならない。それほどに回収すべき人員と回るべき場所は多い。
そんな彼らが救助活動を行うためにも、前線の部隊はBETAの浸透を防がなくてはならない。どこも、必死で過酷だった。
スリガオだけでなく、派遣されていた潜水艦隊から送り出された戦力はミンダナオ島各地へと展開していた。
兎にも角にも防衛線の維持に助力をしなくては、失地奪還をしようがその間に後方が落ちる羽目になりかねないのだ。
戦線の整理と戦力の再編という大仕事を大東亜連合軍と国連軍が行うまでの時間稼ぎが主任務となる。
勿論フィリピン全土の奪還も不可能ではないのだが、如何せん島々の集まりであるがゆえに防衛範囲と奪還範囲が広すぎた。
フィリピンはそういう構成であるがゆえに、BETAが浸透してきやすいのだ。
現在進行形で海中から上陸してくるBETAがいることを考えると、下手に失地奪還に乗り出すと後方に抜けられる可能性が高かった。
純粋にフィリピンに割り当てられる頭数が少ないということもあったのだが、それはともかく。
ともかく、救援を要請した大東亜連合からすれば焦土戦術などを行わなくて済むだけでも大助かりだったのだ。
国土や貴重な兵士を見捨てることを選ばなくて良いというだけで、十分すぎるほどの価値があった。
もっと欲を言えば、インド方面がそうであったように、このまま失地奪還にまでこぎつけたいところであった。
だが、問題はむしろその安全圏となった後方で発生していた。
543 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/12(火) 00:39:16 ID:softbank126036058190.bbtec.net [83/125]
- β世界 12時43分 フィリピン ミンダナオ島 ダバオ 大東亜連合軍ダバオ基地 指令室
フィリピンに残ったミンダナオ島の最後方にして、国連軍および大東亜連合の人員の詰めるダバオ基地の指令室は、かなりの険悪な状況であった。
困り顔の国連軍の将校たちとそれに相対する大東亜連合軍の将校たちに分断され、争いの数歩手前くらいには突入していたのだ。
原因は地球連合軍に直接あるわけではない。間接的にはあるが、地球連合が関与していないところで発生していた。
端的に言えば、大東亜連合軍と国連軍の間---もっと正確に言えば大東亜連合と米国の間の政治的軋轢があったのだ。
当初、大東亜連合は正体不明瞭且つ戦力が未知数という地球連合からの派遣軍を断り、業腹だが米軍と国連軍の助力を得ることを選んだ。
衛星でBETAがハイヴから出現して大規模侵攻を開始し、その後に短時間で決定を下す際に、どちらが当てになるかを天秤にかけたわけである。
元より大東亜連合は国連軍への編入などを拒んだ国の集まりであり、国連軍や米軍を引き入れることには反発があったのは言うまでもない。
だが、結局のところ、頼れる戦力は国連軍や米軍しかないと判断した。
この判断は米国や国連との折衝の中で大東亜連合自身が下した結論ではある。
だが、同時に米国のAL5派の意志も介在しており、自国にとって都合の悪い大東亜連合を弱体化させようという裏の目的も存在していた。
あくまでも提案するだけで、自分たちが強要したという言質を取らせない、なんともいやらしい方法であった。
その結果がどうなったのかは語るまでもないだろう。空前の規模の侵攻に対して、人類側は後退に後退を重ね、犠牲を重ねてしまった。
そんな苦境にある間に、インド・スリランカ方面での地球連合の活躍によって何が起こったかも知ることになった。
それによって地球連合軍が如何に強く頼れるかの証明となったことで、今回の救援要請につながった。
地球連合と大東亜連合の間でならば、これで問題は完結したであろう。多少遅かったにしても、救援を頼んだのだから。
問題なのは、大東亜連合に見切られた形となった国連軍と米軍の大本である米国との間であった。
当然、米国としては面白くない。隠れた目標である大東亜連合の消耗などはまだ半ばでしかない。
救援するにあたっては地球連合の手を取らないようにと誘導して確約させたのだ。米国から見ればそれは裏切りそのもである。
国家戦略を挫かれたというのはとてもではないが許容できない。殊更にBETA戦後を見据えている
アメリカでは猶更だ。
それを表だっていう馬鹿はいないが、そうでなくとも、これまで国連軍や米軍が積み重ねた被害が無駄になったということへ反発が生じたのだ。
これはアメリカの裏の目的を知らない、国連軍や米軍の現場の兵士や将校、あるいは指揮官からも生まれた。
請われるがままに必死に戦ったのに、それを鑑みることなく他所へ救援をするなどどういうことか、というわけだ。
だが、大東亜連合からすれば国連軍やアメリカ軍はまるで役に立たなかったと評するしかない。
事前の計画は、かつて日本が西半分を失った大規模侵攻の反省点を活かしたものと聞かされ、承認したのだ。
そのプランに基づいて、クラ海峡をはじめとした地域での大規模な戦略級核兵器の投入と戦術核兵器による焦土戦などが行われた。
犠牲が出ることも覚悟で、それでもBETAの侵攻を食い止められると自信をもって言われたのだ。
その結果が、今の地球連合に頼らざるを得ない状況に繋がっていた。自分たちの判断であるのは認めよう。
それでもアメリカや国連を信用して業腹だが助けを求めたのに、事前の大言に反して大損害を出していたのはある種裏切りである。
そんなわけで、前線で地球連合軍が活躍している間に、国家間でバチバチに言い争いに発展していたのだ。
それだけでなく前述のように現場の兵士の間でもご覧の有様で、BETAと戦う前に人間同士で争う数歩手前になったのだ。
双方の理性が効いていて、地球連合がついでに目を光らせているから致命傷ではない。
だが、それでも感情の軋轢などは避けられなかった。なまじ命や国家の未来などを天秤にかけただけあって、双方が引けなかった。
ある種、BETAより厄介であろう。呆れる地球連合の連絡役将校の前で、戦端は開かれてしまったのだ。
544 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/12(火) 00:40:26 ID:softbank126036058190.bbtec.net [84/125]
以上、wiki転載はご自由に。
悪意よりよほど善意の方が怖いって話ですね。
次の話でフィリピン方面はケリをつけます。
ついでに大東亜連合とアメリカの間のバチバチの描写も一区切りにします。
作業BGMは「シドニア」でした。
誰がために、カラスは飛ぶ(違う
今宵はこのまま寝ます
おやすみなさいませ
最終更新:2024年07月15日 20:34