829 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/15(金) 00:33:22 ID:softbank126036058190.bbtec.net [105/125]

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「リヴェンジ」3


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 12時53分 フィリピン ミンダナオ島 ダバオ 大東亜連合軍ダバオ基地 指令室



「……」

 国連軍将官は、最早沈黙を選ぶしかなった。
 次々と各戦線に地球連合軍が参戦し、まるで逆再生するかのように戦線の押し返しが始まったのだ。
 ここミンダナオ島ばかりではなく、カリマンタン島、スマトラ島、陥落間際だったマレー半島でBETAが次々と消されていくのだ。
後続のBETAが押し寄せるよりも早く殲滅が進むから、その分だけ戦線が押しあがるわけで、そうなれば自然と失地奪還が成っていく。
浸透してくるBETAがいないわけではないが、これまでの大規模攻勢で押し寄せていた数からみればはるかに少なく、十分に対処できる範疇だ。

「どうです?結果だけを見るならば、救援要請は正しかったでしょう?」
「犠牲を減らし、窮地を救い、さらには確実な戦果をもたらしている。
 これで多くの市民が救われ、焦土戦術で失われるはずだった土地も奪還できる」

 勝ち誇った、しかし顔色はよくはない大東亜連合の将校の言葉に、国連軍将官たちは何も言い返せない。
 同じくアメリカ軍の将校や将官たちも口をつぐんでいた。
 大東亜連合の言っていることは、狙っているかもしれないが、オペレーション・ルシファーの後の大統領談話に酷似していた。

 曰く「G弾の投入により犠牲を減らせた」「G弾によるハイヴ攻略は今後の転換点となる」「結果的に多くを救えた」。
その言い草に評価をしたのはアメリカやAL5推進派くらいなもので、それを予告も無く事前協定を破って投入されたことで被害を受けた国は反発した。
G弾の起爆によって融合惑星への転移が発生したと思われることも含め、G弾が良からぬ結果をもたらすのではというのは共通見解となりつつあったのだ。
アメリカとしては「本当にG弾でハイヴが攻略されたのか?」という風潮を消したかったのかもしれないが、逆効果とさえ言えた。

 そして、その理屈が通るならば、地球連合に救援を求めないという事前のプランを放棄しようが、最終的な結果でプラスならば問題はないということになる。
他ならぬアメリカが、その事前の協定や予定を突如として破ることを肯定しているということだった。
地球連合による戦果を否定するということは、G弾による戦果らしき何かを否定することにつながるのである。
軍事の場に限らず、大東亜連合とアメリカ、さらに国連までも巻き込んだ政治の場でも同じような発言が大東亜連合から突き付けられた。
これにアメリカが言い返すことができなかった、あるいはかなり苦しい詭弁を言うしかなったのは語るまでもない。

 無論、国連軍やアメリカ軍とて、大東亜連合からの要請で必死に戦ったのは事実だ。
 上の思惑がどうあれ、それが人類のためだと命がけで戦い、犠牲を支払い、協力してBETAの侵攻に立ち向かった。
逃げたかっただろうし、恐怖もあっただろう。犠牲が出ることも十分に予想できた。
それでもと戦った結果がこれでは、まるで報われないではないか。少なくとも現場の将兵の感情は良くなかった。
仲間たちや戦友たち、あるいは多くの兵士たちの覚悟と挺身は全く無意味な消耗だったのだと言われたも同然なのだから。
 だが、それを大東亜連合に追求しようが、地球連合に追求しようが、もはや意味をなさない。
軍人でしかなく、政府と国民の統制を受ける側の人間がここで何をしたところで
 だから、感情を持て余す。
 アメリカ軍は知らなかったかもしれない、その感情こそ、アメリカの政治の事情で不条理を味わった国と同じものなのだと。
同じ場にいたからわかっていたつもりでも、どこか他人事だったのだろう。どうせアメリカの事ではない、と。
あるいは政治を言い訳に自分達を守っていたのかもしれない。政治に命じられたから仕方がないのだと。
そうやって自分たちを守っていた言い訳が消え去り、今度は自分たちが切り捨てられた。
立場と感情の逆転が起こって、早々に抑えが効く物でもない。まして、地球連合の強さを見せつけられているのだから。
 故に彼らは歯をくいしばって耐えるしかなかったのだ。

830 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/15(金) 00:34:45 ID:softbank126036058190.bbtec.net [106/125]

  • ほぼ同刻 β世界 フィリピン ミンダナオ島



 ミンダナオ島での防衛線の安定が齎されてなお、地球連合は慎重さを優先していた。
 今のところ、潜水艦隊から発した戦力は既にユーラシア大陸方面の沿岸部と北部沿岸地域に展開し終えて戦闘を続行中だ。
海底を歩き、あるいは母艦級によって運ばれてきて、ミンダナオ島に押し寄せてくるBETAを次々と排除しつつあり、戦線の整理などを進めている。

 だが、他の戦線のように防衛ラインを押し上げて失地奪還などをするよりも、相手の打ち止めを待った方が良いと判断した。
以前も述べたように、入り組んだ島嶼の集まりであるフィリピンの奪還は慎重さが必要だった。
無理に攻め込んで後ろに浸透を許すくらいならば、BETAを排除し続けて打ち止めを待った方がより確実なのだ。

 加えて、失地奪還の後のことを考えれば、焦るよりも時間をかける方が良かった。
 ミンダナオ島を除くフィリピン各所では核兵器による焦土戦術が実施され、多くのBETAを排除した。
それは後方に迫るBETAを少しでも減らすための苦肉の策であったが、奪還には面倒が付きまとうものだった。
何しろ放射能汚染が発生しているし、時間をかけて降ってくる放射性降下物(フォールアウト)だってある。
台風が通り過ぎてもまだ大荒れなのでそれらは流されていくというのもあるが、それはそれで危険だ。
おまけにBETAが浸透してきて大地を荒らしまわった上に核なども使えば地形も変わり、展開していくのが一筋縄ではいかなくなっている。
そんなフィリピンに踏み込んでいく準備するのは流石の地球連合でも時間を要するのである。

『フィリピン北部は派手に焦土戦をやったようだな……』
『組織的に撤退しながら、BETAを引き付けつつ地雷や核で数を削る。
 わかってはいるが、影響はデカかったようだ』

 ミンダナオ島沿岸部で防衛を担うMS隊の装甲へと吹き付けるのは、フォールアウトの混じった黒い雨。
使われてから相応に雨風で大気中から落ちてもなお、目に見えて観測できるのは、如何に大量の核を使ったかの証左であった。
圧倒的多数のBETAを排除するための手段としては決して悪くはない。生じる被害やその後のことを考えなければ、だ。
このミンダナオ島も防衛しきれなくなったら撤退し、核を起爆する手はずだったというのだから怖いところ。
今はそのスイッチを大東亜連合が握っているらしいとのことだが、うっかりでも起爆してほしくはないものだ。

『……味方がいるのにやりはしないよな?』
『だと思うがね……上は、大東亜連合はともかく国連軍やアメリカ軍が自分たちの利益のためにやりかねないと考えているようだがな』
『同じ人類同士で殺し合いか?この状況で?』
『人類はそう簡単に団結できないってことさ……あー、また来たか』

 その時、弾幕を抜けることに成功したと思われる突撃級の集団が飛び出してくる。
 しかし、出てきた場所があまりにも悪かった。地球連合派遣軍の攻撃の届く範囲に飛び出してきたのだから。

『全く……』

 連射されたビームライフルの砲火で、あっけなく前面装甲が食い破られ、突撃級は全滅する。
 食い破られて綺麗に穴が開き、高熱で内部が焼き尽くされ、そのままもつれ合うように転がって停止した。戦闘ですらなく、ただの処理で終わった。

『ナイスキル』
『どうも』

 MAや艦艇からの砲撃で十分に削られているということもあって、警戒している防衛線に突破してくるのは散発的な群ればかり。
母艦級を叩きつけてくれば話は多少は違うだろうが、それさえも圧倒的な質に勝てるわけではないのだ。

831 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/15(金) 00:35:35 ID:softbank126036058190.bbtec.net [107/125]

 そんな退屈とすら言える戦いは、ちゃんと意味もあった。
彼らが防衛を行っている間に、ミンダナオ島各地に戦力を送り出した潜水艦隊がフィリピンを迂回して進出。
艦載機として搭載していた残りの戦力を、大陸からのBETAの進行ルートへ展開させ、増援の遮断に乗り出している間の時間稼ぎである。
重慶およびマンダレーハイヴからあふれた群れは南シナ海を通過して攻め込んできているので、北から順にフィリピンは陥落した。
そのままでは戦線押し上げが面倒なので、海中で後続を殲滅し、その間に準備を整え、北進して失地奪還と大地の浄化を進めるという手はずであった。

 そして、その結果が出たのはおおよそ1時間半余りが経過した、現地時間9月14日午後2時半ごろ。
 水中での阻止戦が功を奏し、いよいよフィリピンを構成する島々からBETAの姿がほぼ消えたのだ。
ここぞとばかりに地球連合軍は大東亜連合軍と国連軍を引き連れ、北進をして次々と諸島の奪還を成し遂げていく。
 同時に、衛星軌道から投下されたタワーの設置と稼働を急ぎ、放射能汚染や重金属汚染まみれのフィリピンの環境浄化に乗り出した。
並行してそれらの設備を防衛しつつ、さらには再度の侵攻に備えた防衛ラインの構築と設備の設置に奔走することになったのだから忙しい。
 とはいえ、それだけの大仕事を他の防衛線の救援と並行で行いながら進めて「忙しい」で済ませられる当たり、中小国連合の国力が窺えた。

 フィリピン全土奪還と防衛線の再構築の完了がなされ、BETAの侵攻が打ち止めと判断されたのは同日の午後6時頃。
南シナ海におけるBETAの早期警戒網として敷設型の音響監視装置の敷設及び海底地雷の敷設も完了し、あとは大東亜連合の進駐を待つのみとなった。
とはいえ、大規模攻勢を受けたことで大東亜連合の戦力は枯渇に近い状態であり、仕方なしに大部分を地球連合軍が代理で担うことになった。
 大規模侵攻が開始されて12時間で失った土地を、その半分以下の時間で奪還し、人の勢力圏にまで巻き戻して見せた。
土地の形状はともかくとして、放射能汚染やフォールアウトの始末に重金属汚染の除去なども含めての6時間なのだから驚愕すべき点だろう。
地球連合に殆ど依存しているとはいえ、その技術力や物量などはとてもではないが国連もアメリカもなしえないことであったのは明白。

 さらに言えば、地球連合軍はこのフィリピンのほかにも複数の戦線を受け持ち、それぞれで同じような処置を行っていたのだ。
総力を挙げても守れなかった大東亜連合・国連・アメリカのいずれの勢力もとても足下に及ばないというのが証明された形となる。
サクサクと、あまりにも順調すぎるほどに進んだそれに対して、発狂しかけた現地の人員が現れてしまって騒ぎになったが、それはさておき。
ともかく、たったの6時間を以て、フィリピン方面の作戦は終了が宣言されたのだ。

 ただ、これが一時的な終了であるというのが地球連合の見解だった。
 高々これだけでBETAが侵攻を止めるだろうかという、これまでの外敵との交戦で得られた経験則からの予測である。
それは見事に当たり、翌日から再度BETAの動きがあったのだが、それについては追々語ることとしよう。
 それより先に、同日中に他の方面で行われた動きを追いかける必要があるのだから。

832 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/03/15(金) 00:36:28 ID:softbank126036058190.bbtec.net [108/125]

以上、wiki転載はご自由に。
フィリピン奪還、完了。

次はスマトラ島およびマレー半島の救援ですかねぇ…
どっちも崖っぷちまで追い込まれてしまい、普通なら負けるんですが、そんな道理などねじ伏せるのです。
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最終更新:2024年07月15日 20:42