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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「リヴェンジ」4


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 15時11分 マレーシア沖合 地球連合東南アジア方面派遣軍旗艦 タケミカヅチ


 マレーシア領土のBETAからの奪還は、非常に順調であった。
 空母として高い能力を持つタケミカヅチからムラサメ弐式で構成されたMS隊が交代で出撃し、入れ代わり立ち代わりで航空攻撃をしていたためだ。
光線級などをものともしない航空攻撃に対し、BETAは一方的に排除されるしかなく、物量の津波も効率的に消されるしかなかった。
航空支援のほかにも、沖合に展開していた艦艇からの火力支援も潤沢にあったことも大きい。
陸戦を担当するM1アストレイやユークリッドなどの戦力が押し返しを実行したのも大きい。
総じて、地球連合派遣軍がどれほどの力を持っていたのかを示していた---そして、如何にBETAが弱いかを示していた。

 忘れがちであるが、本来BETAは航空攻撃に弱い。
 BETAの落着ユニットがカシュガルに落ちてきて、BETAに対処した際、当初BETAは当時の中国単独で撃退できていたのだ。
その原動力が、陸軍の諸兵科もそうであるが、空軍による航空攻撃であったのだ。
光線級によって航空戦力は壊滅したとは言うが、逆に言えばBETAでさえも新種を作り出すというコストと手間暇をかけなければどうにもならなかったのである。
光線級のほかに新種と言えば闘士級くらいしか確認されていないことを考えれば、どれだけBETA---頭脳級がコストをかけることを嫌っているかが分かろうというもの。
 そして、その光線級さえいなくなってしまえば、あるいはレーザー対策が万全となれば、BETAなど地上を移動する演習標的に成り下がるということである。
実際、タケミカヅチ級に搭載されていたムラサメ弐式は40機ほどであったものの、スマトラ島およびマレー半島に割り振ってもなお余裕があった。
戦闘力が高いということもあるが、それだけ効率的に排除てきた、ということである。

『スマトラ島全島の奪還は目前です、あとはマレー半島のみとなりますが……』
「厄介なのは大東亜連合軍の動きか」

 甲板上に立つストライクルージュのコクピット内部で、カガリは多方面からの報告を受け取っていた。
 勝つことは必然であるのは、とっくに理解している。問題なのはどこまで挽回するか、その点にある。
所詮これは対処療法にすぎない。既に事態が発生して状況が悪化してからどうにかしようとするのが、現在の地球連合派遣軍の役割だ。
ここから如何に奮戦したところで、大規模侵攻が始まってから生じた多くの犠牲がなかったことになるわけではないのだし。
 しかし、問題となるのは勝ち方、そして体裁だ。特に大東亜連合からの救援要請を受けてなのだから、それに合わせた言い訳と勝ち方が必要だった。

『はい。現地の大東亜連合軍はもちろんのこと、国連軍とアメリカ軍の戦力の糾合と再編を行っていますが、時間がかかります。
 また、戦術機との足並みがそろわないというのも厄介な点ですね』
「……そこは仕方がない。いてくれるだけでも十分だからな。
 それに、失地奪還後の駐留戦力がいてくれなくては困る」

 現地兵力を置いてけぼりの大反撃なのは、想定の範囲内だ。
 ぶっちゃけ、戦術機に合わせたらこちらが足を引っ張られることになりかねない。
 前線に出られて犠牲を増やすよりも、奪還した地域に駐留してもらった方がよほど良いというもの。
あくまで救援という体裁であり、同時にその為の役割に特化しているわけで、その後の防衛などまで全部やれるわけではない。
そういう頭数、あるいは数合わせ的な意味合いでならば、

「そこは大東亜連合には話を通してあるんだがな……」
『ほかに懸念することが?』
「……どこまで奪還するかや防衛計画の策定がまだなんだ」

 通信で聞いていた誰もが察した。
 つまり、サクサクと反撃できているのはいいが、どこまで奪還し、そこを如何に防衛するかの戦闘の後についての方針がまるで決まっていないということだ。

「いや、もちろん、大東亜連合にもそこは話をしたんだ。
 あちらとしては大規模侵攻前の状況に復すことを当面の目標としたわけだが、現状生き残っている戦力を糾合しても数がな……」
『そしてそこを指摘したら……』
「それからずっと『協議をする』とのことでな」

 カガリとしては嘆息するしかない。
 緊急だからというのは仕方がないにしても、方針や計画が定まっていないのは問題だ。
地球連合とて兵力や物資に限界はあり、軍事行動をいつまでも続けられるというわけではない。
少なくともβ世界の現地戦力よりは多くを抱えているのは確かだが、決して無制限ではないのだ。
どこかで妥協点を探らなくてはならず、加えてあくまでも補助的に回るスタンスであるがゆえに、主たる大東亜連合が決定をしなくてはならない。

123:弥次郎:2024/03/17(日) 20:49:07 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

 一先ずの所、スマトラ島の奪還と寸土を残すばかりのマレー半島の救援は進めているのだが、どこをゴールにするかが不透明なのだ。

『……それは、厄介でありますな』
「ああ。旧に復すとしても、それはおそらくだが我々の戦力があることを前提のものだ。
 我々がいなくても維持できるラインを策定したとしても、次が来たらどう考えてもオーストラリアまで抜かれる。
 理由はただ一つ---戦力不足でな」

 カガリは参謀本部から送られてきた大東亜連合、国連、そしてアメリカの戦力の残存についての報告に目を通し、ため息をつく。
ため息をつくしかない。本当ならば投げ捨てたいほどに状況は悪い。

「かき集めても元の戦力の半分にも満たない。実働できる戦力に絞ると3分の1以下だ。
 即応戦力が足りなさすぎる。戦術機も通常兵科も、それらが消費する武器弾薬もまるで足りない」
『すべてが消費された結果、ということですか』
「そうだ。兵器や弾薬の補充には時間がかかる。
 いや、作るだけでいい兵器などはまだマシだ。問題なのは兵士の頭数が足りない点だ。
 はっきり言って、大東亜連合でさえも成人以下の兵士の割合がそれなり以上で、これ以上兵力を供出できない。
 国連軍などを頼るには、すでに心象などが最悪過ぎてな……」

 つまり、方策としては二つに一つということになる。

「失地奪還を妥協して防衛しやすい範囲に無理なく留めるか、それとも泥沼に突っ込む覚悟で要望に応えるか。
 救うという手前、どちらかを選ぶしかない」
『……』

 通信の先の将校たちが沈黙するのも無理はない。
 一時的な救援はともかく、大規模侵攻にも備えた駐留というのは中々に負担だ。
地球連合を構成する大国ならばできるかもしれないが、オーブという国からすれば中々に重たい。
やってほしいと連合内で話が付いているならばともかく、長期的に駐留するのは勘弁願いたいのだ。

「というわけで、だ。
 地球連合理事国の方に伺いを立てておいてほしい。我々の手に余る状況になる可能性があると忌憚なく伝えて構わん」
『かしこまりました。
 では、カガリ様は?』

 決まっている、と深くため息をつきながらも答える。

「私は大東亜連合との折衝だ。政治と軍の両方の面から直接会って話を進める。
 何人か人員を見繕ってくれ、連絡機でカリマンタン島のボルネオ基地に向かう」
『すぐに!』
『ではこちらは、旧に復すという方針で動いて構わないのでしょうか?』
「ああ。一先ずはマレー半島を押し返してシンガポールの安全くらいは確保してくれ。
 そこから先に進むかどうかは協議次第だな。采配については任せる。報告は適宜頼むぞ」

 ずっと座りっぱなしもつらいな、とこぼしながらも立ち上がる。
 これから行った先もまた話し合いだ。国家と国家のめんどう事が山ほど積み上がっている、そんな場所に行かなくてはならない。

(終わらせる方が大変だ。
 そして、話し合いの通用しない外敵相手ならばなおさら。
 それ以上に話が通じるはずの人間もそれ以上に……)

 父が自分を派遣した理由もわかる。
 箔をつけるという以上に、自分の将来に何が待ち受けているかを改めて教え、身を以て学んで来いというわけだ。
そうでなければ、まだ20歳にもなっていない自分を大東亜連合への外交使節の代表兼派遣軍の総指揮官に据えたりしないだろう。
これでも帝王学や政治・軍事について学び、実地でも経験してきたが、やはりというか実際に熟すのは楽ではない。

(ならば、越えてこそだ)

 だが、先達はそれを超えてきたし、自分達にはその方法を教えてくれて、お膳立てをしてくれた。
 ここまでされたならば応えねば。カガリの意志は固かった。

124:弥次郎:2024/03/17(日) 20:49:39 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
だらだら続けるより結果をズバリと。
キングクリムゾンともいう。

戦闘の問題よりも政治や戦闘後の方が厄介だよね、という感じですね。
中小国であるがゆえに、外征の部隊に余裕があるわけじゃないのだ。
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最終更新:2024年07月20日 12:27