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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「リヴェンジ」5


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月14日 16時32分 カリマンタン島 国連太平洋方面第12軍 ボルネオ基地 指令室


 戦場はもはや終盤へとなだれ込んでいた。
 スマトラ島の奪還は完了し、再編された部隊がマレー半島の押し返しを開始したのである。
ここには衛星軌道から駆け付けた大洋連合の派遣軍も前線および後方の両方に加わっており、補給物資の提供や艦艇による援護などを開始していた。
これは大洋連合も交えた折衝の結果として、作戦規模が想定以上となった東南アジア戦線の支えが必要と判断された結果だった。
大洋連合が最初から参戦していた日本列島はともかくとして、東南アジア戦線は遅れての参戦となった弊害だ。
救援すべき箇所が増え、また失地奪還後の汚染除去などといった問題が山積していた。
それらは、迅速な解決は現地の中小国連合の軍勢だけでは手に負えないとの判断から、こうして援護要請が向けられたのだ。
厳密には日本列島の奪還はまだ続くのだが、他所に戦力を回すくらいの余裕はあったということだ。

 最初に投入されたのが、外地展開用のギガフロートだったのは、まさに中小国連合の要望であった。
 兎にも角にも安全な後方が欲しい。救助したり避難をさせた民間人、あるいは戦闘能力を喪失した現地の部隊を一纏めにしておきたかったのだ。
何しろ後方への浸透を行う新種が確認されており、陸地でさえおちおち休んでいられなかったのだから。
 このギガフロート上において、人々は仮の住居に入居したほか、兵士たちは休息や治療を受けることとなった。
 戦闘による直接の負傷者などもいたが、怖いのは放射能汚染やPTSDなどである。
激戦になればなるほど、こういったモノはついて回る。まして核の積極投入による焦土戦術が徹底されたのだ。
その弊害は国土もそうであるが兵士たちの身体に少なからず影響を与える。
ケアを行っておかなければ、今後の戦略にまで差し支える重要な任務と言えた。

 その他、補給物資や作業用MTなどを抱えた輸送艦や補給艦などが駆けつけ、焦土となった地域へと乗り込んでいく。
彼らの仕事は防衛ラインの再構築だ。母艦級の存在も頭に入れて、地下侵攻に備えた形で整えなくてはならない。
加えて言えば、未だに影響が残るフォールアウトなどの後始末も含まれている。
既にタワーを各所に設置することは決定済みで、大東亜連合にも了承をとっていた。
これらの設置・維持は中小国連合には無理でも、理事国ほどの大国ならば可能であったのだ。

 これに、大東亜連合及び国連、アメリカ軍は「大国」を見た。理解してしまった。
 大国とは、これまではアメリカもしくはソ連が上がったであろう。実際、それだけの力があった。
冷戦構造の二極のトップ、世界を滅ぼせるほどの核を有した国、あるいは最先端の技術と国力の国。
強いからこそ強い、そんなトートロジーが成立し、受け入れられているような存在であった。
 けれど、そんなものなど比較するのも失礼になるほどの、途方もない力が振るわれていったのを見たのだ。
彼らの言うところの中小国でさえ、自分たちの定義を超えている。ならばそんな中小国の上にある大国は---?
 それについては、語るまい。
 これまでの活躍もあって、この指令室に乗り込んできたカガリの扱いがすさまじく丁重になったのはごく自然の事であった。
何も知らない、お飾りの小娘という評価は全く正しくなく、むしろこの年齢にしてトップが備えるべき素養と知識と経験を持っているのだと判明していた。

417:弥次郎:2024/03/20(水) 20:23:04 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

 そんな、現地の将校たちの興味を超えて戦々恐々とした感情のこもった視線と態度に、そのカガリは居心地の悪さを感じていた。
大規模侵攻前の、この巨大惑星に転移してきた時に接触した際の態度などよりはよほど建設的に話し合えるのは事実。
さりとて、恐怖生物を見るような視線をずっと向けられていては、さしものカガリも傷つくというものだ。
受け流すこともできなくもないが、カガリとて人の子であり、年相応の面がある。

(まあ、いいか……)

 とはいえ、自分がいるだけで連れてきた他の将校や参謀が自由に動けるのは非常に大きい。
 大東亜連合からの要望である失地奪還---大規模侵攻前までの状況に戻すという目標に対して、具体的な作戦内容が定まったのは彼らの活躍がある。
ついでに、大洋連合からの物資も含む支援はその作戦に具体性と柔軟性を与えており、戦闘後を見越した動きも既に始まっている段階だ。
大東亜連合などの現地の勢力もそれらに合わせて動いているのはわかる。
 だが、同時に大規模侵攻を凌いだ後を考えてもらう必要もあるのだ。
 監視衛星や偵察機からの情報を統合すれば、BETAの侵攻には打ち止めが見え始めていた。
地下侵攻や海中に潜んで移動しているBETAの存在も否定しきれないのであるが、そちらは追々対処できる。

「マキタ」
「はい、こちらに」

 呼びかけた先、将校の一人がタブレットに情報を表示する。
 地球連合の戦力が前面に出て、尚且つ後方でも戦線の整理や戦力の再編などに関与することで、多くの情報が直接入ってきている。
 その情報を再度確認してみるが、やはり時間をおいても厳しい状況なのが窺えた。

「想定通りなのが悔しいところだな」
「はい。想定されていた通り、東南アジア方面の戦力は軍事定義上の全滅を通り超えています。
 単なる救援だけでなく、駐留せざるを得ないのが確定的となりました」
「それを見越して大洋連合にも助力を求めたのは正解だったわけだが……本国への問い合わせは?」
「何とか対応するとのことです。とはいえ、大盤振る舞いとはいかないとも釘を刺されました」

 その言葉に思わずカガリは笑いをこぼした。

「現有戦力で対処せよ、か。言いたくはない言葉だし、聞きたくもない言葉だな」
「まったくです」

 実際、直近の問題として融合惑星への対処は急がれているが、かといって他に問題がないわけではない。
 さらに言えば、問題が発生するかもしれないという予測を以て備えておく必要だって存在するのだ。
 だからこそ、カガリたちは今ある戦力での対応を強いられるのだ。

(……大東亜連合の立て直し、か)

 最終的にたどり着くのは、そこだ。
 いつまでも駐留するわけではないから、現地の国家が力を取り戻してもらう必要がある。
 その手助けをするというのならば、限りある戦力と余力の中でも不可能ではないと判断している。
 当然だが政治的な折衝になるわけで、これまでのBETAへの対処以上に踏み込まなくてはならない。

「マキタ、先に大東亜連合の方に話を通しておいてくれ。
 この大規模侵攻への対処が終わる前に、その先について話しておきたい」
「かしこまりました」
「逐次報告を頼む。早くに動いておくに越したことはないからな」

 モニター上、既に進軍は順調に進み、マレー半島の奪還が進んでいる。
 旧に復すという目標が達成されたら、そこでおしまいなのではないから、急ぐ必要があった。
まだまだ喜んでいる場合ではなく、やるべきことは山のように存在している。それを認識してもらわねば。
政治家としての動きがカガリには必要であった。

418:弥次郎:2024/03/20(水) 20:24:12 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

  • ほぼ同刻 β世界 マレー半島 クラ湾防衛線跡地


 北上を続けた地球連合派遣軍は、その先兵が元の防衛線が存在していたクラ湾にたどり着いていた。
到着したMS隊は、未だに数的には少ない先遣部隊ではあるが、前線の押上げが確実に進んでいることの証拠である。
彼らが押し寄せる集団を分断しつつ食い込み、中衛の部隊が各個撃破に持ち込み、後衛部隊が残存を平らげる。
理想的な態勢でここまで押し上げることに成功していたのだ。
 彼我の戦力差、数、士気、そして何よりも踏んだ場数の差。β世界の住人の持つものより優れている地球連合軍ならではであった。

『まったく、酷い光景だな』
『アフリカよりはマシさ。こっちはまだ核を使った焦土戦なだけだから』
『それでも、酷いことは変わらないさ。比較しても意味がない』

 M1アストレイSpec4を主力とするMS隊は、軽口を叩きつつも周囲への警戒を怠っていない。
 一先ずの所手が届くところのBETAは排除しているのだが、未だにMSに搭載されている震動計や生体感知センサーなどは反応を示している。
この巨大なクラ湾の中に未だにBETAが存在し、あるいは地下から侵攻を続けているというのが窺えるのだ。
次の瞬間にBETAが出現してきたとしても、全く不思議ではなく、油断はならないのが実情であった。
 そして、そんな彼らの話題に上がるのは当然焦土戦によって破壊され、そしてBETAにより蹂躙されたこのクラ湾であった。
 ほとんどが核の起爆によって灰燼に帰しているが、それでも核の炸裂で吹っ飛んだ地形などが窺えるし、フォールアウトだって観測されている。
コクピットハッチの向こう側は、とてもではないが人が安全に活動できるような環境ではないのだ。
 とはいえ、それが核を使った結果だというのは理解しているし、なんならこれ以上に酷い光景を見たこともあるのがパイロット達だ。
違う惑星であるから、というのもあるが、この程度の惨劇の跡など見知ったものでしかないのだ。

『さて、と……十分に数は減らされているはずだが……』
『まだいる。地下通路を進軍しているのが震動計でわかるからな、しかも結構な数だ。
 まあ、出口は概ね抑えてあるから、モグラたたきの要領で処理できているわけだが……』

 そこでアラート。
 この状況下での警報など、意味するところは一つしかない。

『各機散開して迎撃態勢。こりゃあ、また芋虫だぞ』
『了解』

 訓練されているパイロットばかりだ、すぐにフォーメーションを組みなおした。
 地下からの大規模な振動とそれに伴う海面の揺れ、何が来るかは明白だ。

『出てきた瞬間を狙え』
『わかってますよ』

 フォーメーションの中心にいるのはメガビームランチャー持ちだ。
 マークスマンであり、重火力による支援を役目とするそのM1アストレイが最も効果的に火力を叩きこめるように備える。
 果たして、母艦級数匹とそれに付随するBETAの群れが、大地を割って出現。一斉に先遣隊に襲い掛かっていく。

『てぇーっ!』

 それを迎え撃つべく、M1アストレイ達は一斉に火力を解き放つ。
 濁流の如く迫るそれを、真っ向から迎え撃ったのだ。
 BETAの幾度目かの群れが、速度を上げて進軍してきた中衛部隊によって殲滅され、クラ湾の制圧が完了したのはそれから1時間も経っていなかった。
 この戦闘の集結を以て、地球連合派遣軍と現地軍の合同部隊は、大規模侵攻の前の状況にまで巻き返すことに成功したのだった。
 そして、この後に到着した敷設部隊により基本となる防衛ラインの構築が行われ、その間の防衛も含めて完了したのは9月14日の真夜中過ぎ。
さらにBETAによる第二次および第三次攻勢を凌ぎきり、BETAの打ち止めが確認されたのは、翌日の9月15日の昼頃を待たねばならなかった。

419:弥次郎:2024/03/20(水) 20:24:43 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
終わり、閉廷!

次回は簡単に後始末の様子を。
だらだらやるよりすっぱり終わらせたいところ…
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最終更新:2024年07月20日 12:35