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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「無情な決算」2
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月22日 午前11時14分 アメリカ合衆国 ニューヨーク 国連本部 議事堂
地球連合によるAL5への切込みは、その骨子であるG弾についてから始まった。
G弾が齎す影響---重力異常、植生異常、空間異常、見境のない存在分解---確認されただけでも、それだけのものが存在していたことを提示したのだ。
G弾が実際に投入された横浜ハイヴ跡地、そして宇宙においてバジュラに対して使われた宙域。そこで収集されたデータをもとに丁寧に行った。
無論、西暦年間にある国家が理解できるとはあまり信じてはいない。
「荒唐無稽にも程がある。フィクションの話なら他所でやってくれたまえよ。
それに、その修正力とやらがあるならば使っても問題ないだろう?」
そう
アメリカの代表は一笑に付した。
アメリカだけではない、多くの国の参加者が地球連合の言いたいことを半分も理解していないだろう。
例外的なのは一部の国---イギリスを中心とした欧州諸国と日本帝国、ついでにAL4の香月博士くらいなものである。
特に香月博士に至っては殺さんばかりの鋭い視線を送っているが、無理もないことである。
発生したラザフォード場の中で何が起こっているのか---存在そのものも、空間も時間も何もかもを破壊し、虚無が観測される異常事態。
単なる威力の高い爆弾なのではない、もっと致命的なものなのだと、理解している人間なのだから。
修正力とて無尽蔵に世界の維持ができるわけではない。有限だからこそ、現在の融合惑星や重力異常などが発生しているのだから。
そんな扱いを受ける地球連合だが、説明だけはしておく必要があった。
アリバイともいうが、とにかく説明しておいたという事実が重要なのだ。
「懸念すべきはもうひとつ……アメリカ宇宙軍が会敵したという、新種のBETAについてです。
これについては、この惑星に現れた勢力の方々の方が詳しいので、説明をお願いいたしましょう」
そして、案内されてきたのはフロンティア政府の外交官とお付きの専門家。
どちらもアメリカが言うところの新種のBETA---バジュラについて理解している第一人者と言えるだろう。
尤もそのバジュラについて理解していると言っても、それはあくまでも人間の理解の及ぶ範囲での話だ。
想像さえも難しいほどのプロトカルチャーがその力を恐れたというバジュラを、ちっぽけな人が理解するのは烏滸がましいかもしれない。
ともあれ、である。
「ご紹介にあずかりました、フロンティア船団より参りました、エリザベード・アードラと申します。
我々が把握する限りの、バジュラについてをお話ししましょう」
今度はアメリカも一笑に付すことはできなかった。何しろ当事者なのだから無理もない。
他の国にしても、アメリカの先走りの結果BETA以外の外敵から、しかもBETA以上の怪物の怒りを買ったとあれば顔色を変える。
ただでさえBETAにさえ勝てているとはいいがたいβ世界各国だ。ここでさらなる怪物が襲い掛かってきたらどうにもならない。
しかも、あのG弾の攻撃さえも耐えきったというのだから、おおよそ自分たちの有する戦力ではどうにもならないことが確実だ。
BETAを鎧袖一触とばかりに蹴散らした連合さえも恐れていることから考えれば、牙をむかれたら死ぬ。
その脅威を知っているフロンティア船団という集団もおおむね地球連合と同じ態度だ。
「もし不必要にバジュラを刺激するならば、コミュニケーションが成立している我々でも制止できなくなります。
彼らは姿形こそ人とは違いますが、知性や知能は人を超えているとさえ言えますし、その能力も高い。
人間の尺度を持ち込んで御そうなど、土台無理な話です」
「だが、報復を止めることはできたのだろう?」
「話を通じさせる手段と方法があり、それが間に合っただけの話です。
その気になれば彼らは星一つを滅ぼすなど容易いでしょう」
だからこそ、と鋭い視線をアメリカ代表に向けて断言する。
「彼らに敵意や悪意を向けないことです、どのような理由があれ。
同じようにG弾やG元素を近づけるだけでも、彼らは自分達への攻撃とみなす可能性が非常に高いでしょう。
軽率な行動は控えるべきです」
「……」
フロンティア政府の代表の言葉に、会場の誰もが口を挟めなかった。
それだけ、言葉が重たく、ついでに厳しい態度であったのだ。反論の一つも許さないほどに、絶対の意志があったのだ。
451:弥次郎:2024/04/01(月) 23:11:48 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
この点に関してはアメリカさえも沈黙せざるを得なかった。
宇宙に配備されていたG弾を集中投射して効果が思ったほどではなく、逆に宇宙軍が文字通り全滅する羽目になったのだから。
当然戦術機も歯が立つわけもなかったし、事実として交戦した戦術機もまた全滅の憂き目にあっている。
AL5委員会のみがギャラクシー船団の戦力を量産すれば戦えることは知っていたが、相手の数がBETAなどの比ではないなど、委員会ですら慄いている。
BETAを片付けてその上でならばと皮算用はしているのだが、ギャラクシー船団さえ苦言を呈しているのもある。
その結果、委員会内部でさえも意見が対立して結論が出せていないのだ。
まして、AL5委員会の実情を知らない表のアメリカはBETAだと思っていたのが全く違う宇宙生物ということを今知らされたのだ。
この国連の場にいるアメリカの人員の一部は知らされていなかったこともあり、ただただ泡を食うしかなかったのである。
さらにフロンティア政府からの外交官であるエリザベードは、地球連合と同じく時空間に影響を及ぼすG弾の危険性を説いた。
マクロスの落着とそれに端を発した事件や騒乱を経て、恒星間文明にのし上がった地球---そしてその統合政府の一部であるフロンティア政府。
時間や時空というものにおいては極めて敏感であり、危機感を抱いている彼らは、彼ら独自の視点からG弾の危険を指摘した。
特に地球連合の指摘---G弾が起爆した際に何が起こっているかアメリカが全くの無知であること---を追従する形で批判した。
何かよくわかっていないものを十分な検証や研究を行うことなく場当たり的に使ってよいのか、と。
さらに横浜ハイヴ攻略時はやむを得ない状況だったかと言えば微妙であるし、そもそも事前協定などを無視し、無警告で投入していた点も批判した。
何が起こるか分からないことも合わせて鑑みれば、とんでもない博打を打ったとしか言えないのだと。
お題目や建前であろうとも人類が結束しなければならないタイミングでそういった独断専行は本当に人々を救ったのかとも、舌鋒鋭く落ち正したのだ。
これらに対してアメリカは何とか強気に大統領談話の内容を繰り返すのみであった。
実際のところ、G弾の試験的な起爆実験においては詳細な観測ができなかったのだ。
それ以前にG元素の可能性を研究する段階からムアコック博士らの意志を無視し、G弾という短絡的な使い方をしていたのだ。
G元素のこともG弾のことも「よく知らない」としか言えないのが実情だ。それは口が裂けても言えないのだが、実際口を滑らせていたのだから致命傷だった。
押し問答になったが、結局はアメリカが押し切る形となった。追及を強引に終わらせたのである。
だが、すでにアメリカ自身が口を滑らせていたし、その後言及をとにかく避けていたことから、各国からの心象は語るまでもない。
「私たちも自分たちの考えを信じて行動した結果、多大な被害を受けた。
かけがえのない命をいくつも失い、多くの愚考を重ねた。
だからこそ、どうか同じ惑星に暮らしている隣人からの言葉に耳を傾けてほしい。
本当にどうしようもない過ちを、無知や偏見から犯してしまう前に」
そうして、エリザベードの、フロンティア政府のプレゼンは完了した。
言いたいことに関しては、実際には山のように残っているがぶつけすぎても相手が拒否する可能性があった。
ただでさえ、アメリカの方針とは相反するものだから、相手にされない事さえも考慮に入れる必要があった。
アメリカだけでなくβ世界全体の意識や考えがこちらと違うことも拍車をかける可能性があるという悪条件。
それでも必死に訴えたのは、幾多の戦いを潜り抜けた世界の住人だからこそであり、言葉に非常に重みがあったのだった。
そして、地球連合をはじめとしたこの世界の外からのプレゼン---半ば脅迫なども籠っていた---が終了する。
今度は過去の清算や報告から未来へと話題はシフトしていくことになる。
それが行われるのは午後からという発案が議長からあり、それが承認され、議事堂は喧騒に満ちることとなった。
インターバルの間に、午前の議論やプレゼンなどを振り返り、今後の方針などを話し合うことが必要になったのだ。
452:弥次郎:2024/04/01(月) 23:12:37 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
それぞれの国が自国との打ち合わせに走る中にあって、国連そのものもまた岐路に立たされていた。
それはなぜか?簡単に言えば事前の協議の時点から、すでに国連はその役目と能力を失いつつあったことによる。
大規模攻勢においてはアメリカの意向もあって、意図的なトリアージが行われたことに端を発した。
それがその時にとっては最善とは言わずとも次善であり、到底太刀打ちできないBETA相手に無駄に兵力を消耗するよりはという考えなのは認める。
ただしそれは国連軍やアメリカ軍からの視点であり、見捨てられた側にとってはたまったものではないだろう。
明らかにアメリカの意向がモノを言ったというの認識が広まっていれば、なおのことだ。
要するに、国連はアメリカの意志が大きく絡んでおり、当てにするのは危険だという見解が広まったのだ。
元々国連軍への編入を拒んでいた形の大東亜連合などはもちろんのこと、欧州連合やアフリカ諸国さえも国連から距離をとるの動きが見えた。
流石に離脱まではしない---外交ルートとしての活用などは考えているようであるが、それだけアメリカの影響力から逃れようとしている。
0にできるわけではないだろうが、それでも国家の意志に横やりを入れられる可能性を減らそうというのが事実だった。
勿論、国連がアメリカの影響を強く受けているのは今に始まったことではなかったが、それしかなかったというのが前提条件だった。
腐っても鯛というべきか、アメリカや国連の助力や力は大きく、このBETA戦争において多大な貢献をしてきたのは事実だ。
現在進行形で、その恩恵を受けていることで成り立っている国家は亡命政府を含めれば山のように存在している。
だった、という過去形でわかるように今は地球連合を頼るという手が取れるようになったのだ。
もしも各国がアメリカの都合が優先される国連ではなく、地球連合を通じて手を取り合った場合、国連はその機能と目的を失うことになる。
そうなれば今後の対BETA戦争がどうなるかのコントロールがまるでできなくなり、下手を打てば国家間の、人間同士の争いになりかねない。
そうなったとき、国連は歴史において愚かな集団として刻まれ、人類同士の争いを止められなかったと後世批判にさらされる。
今更であるかもしれないが、紆余曲折を経ても建前を守れていたというのに、ここにきてとなったのは国連の焦りを生んだ。
さらに厄介なのは、国連軍からの兵士の撤収、そして祖国への帰還を望む声が増えているということだ。
国連軍のその数的多数は、既存の国家はもちろん、祖国を失った兵士や難民から志願している兵士によって担われている。
祖国奪還のため、あるいはこれ以上の被害を食い止めるため、生きるため。理由はあれども、そうやって国連軍は編成されていたのだ。
だが、祖国が奪還、あるいはその展望が開けたとするならば?
地球連合による介入はそういった希望を国連軍内部に蒔いた形となった。
地球連合と手を結べば祖国奪還が進むのではないか、実際に奪還ができたではないかと、国連軍内部に大きな衝撃を与えた。
だから祖国に戻りたいという声が兵士レベルでも増えている。高級将校や将官までも含まれているのだから、どれほどかは言うまでもないだろう。
それは国家レベルでも同じであり、欧州諸国は国土奪還が成功したことを理由に、避難民から自国民の回収を始めようとしていた。
軍にしても国連軍所属ではなく国家に属する軍として再編成し、国連に振り回されない体制を作るつもりなのが明白だ。
この事案について、国連自体から各国に呼びかけ、状況を打破する必要があるのは明白。
しかし、それが途方もなく難しいのはこの場にいる国連所属の人間なら簡単に分かろうというもの。
そしてそんな彼らも祖国からの引き抜きがかかっているという状態にあった。
図らずして、地球連合などの外部勢力はβ世界の結束をその衝撃で崩してしまいそうになっていたのだった。
453:弥次郎:2024/04/01(月) 23:13:34 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
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決算は続きます。
最終更新:2024年07月20日 13:12