362:陣龍:2024/03/04(月) 19:35:19 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『自動人形ちゃん頑張る ~【ネジ】を外す方法募集中(白目)~』
「……よくよく考えれば、同棲状態に持ち込めているのならば幾らでも【絶好機】は有る筈よね、うん」
犬の散歩に出掛けて行った【特務任務】対象を二階から眺める自動人形が呟く。
自動人形が開発元に『創業以来史上初の【敗北()】』を現在進行形で突き付け続けている難敵の対応員である。
「……ええ、そうよ。焦る事は無い、ご家族の皆様も色々と賛同されているし、ご近所さんとの関係も良好。
後は【本丸】へ攻め上って天守閣に【旗】を掲げれば良いだけの事」
自らに言い聞かせる様な独り言は、実際に自己の高精度な解析でも未だ尚【突破方法】を全く見出せていない不安に対する裏返しだった。
「ふふっ……覚悟しておきなさいよ。この私の、全身全霊の行動には、決して抗えたり等しないのだから……」
【本国】では全く想定外の流れと進捗停止の有様に、開発責任者等が何か致命的な欠陥やバグ、エラー等が発生していなかったのか
確認する三度目の緊急極秘ミーティングを開催したとか何とか等と言う噂話はどうでも良いこの自動人形ちゃん。
こうなれば何が何でも目標を【陥落】させる手段を選ばないと決意し、行動を確定させた。
「……それで、どうなったの?」
「なんの!」
「うん」
「成果も!!」
「うん」
「得られませんでしたぁ!!!」
「知ってた」
「うっきぃぃいいあぁああーーー!!!!」
それから更に半年後。その自動人形の友人宅ではストロン〇ゼロやフランスワインで焼き鳥とチョコレートケーキにナポリタン、
ハンバーガーと刺身を一緒くたにやけ食い、流し込み、ぐい?みして奇声を上げるする哀れな敗北者()が居た。
食い合わせが最高に最悪そうな酒類と食品選定である。
363:陣龍:2024/03/04(月) 19:37:14 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……あー、【また】か」
「うん、【また】だよ」
半年前より悪化した、割と駄目な酒飲みでも眉を顰めそうな滅茶苦茶な飲み食いの暴飲暴食する自動人形に
呆れる友人コンビ。そうなる理由は既に分かっているし自動人形なので機能損壊する事も無いので、止めはしないが。
「……やっぱ、向こうから手出しさせる手法とかは無理なんちゃうかな」
「そうだとは思うけど、だからと言って【こっち】から行くのは、それこそ犯罪や規定違反に抵触する可能性が高いから」
「そうなんよなぁ」
美人の顔が台無しになるのも構わずやり場のない憤りを荒々しく食って飲んで誤魔化している当事者を他所に、
友人の自動人形達は外野視点から事態を話し合う。
「古典的なやり口やけど、所謂【精の付くもの】を食べさせまくって、出張勉強会で離れた土地で予約ミス(大嘘)で
一緒にホテルの一室に泊まってバッチコーイ、ってのは普通勢いで行けそうやけどなぁ」
「当たり前に車で寝るか床で寝るって言われて普通に車中泊されたら白目剥くしか無いよね。止めても止まらなかったし」
「んで、色々な【攻勢】が本丸どころか一の丸すら落とせても居ない有様の最終手段でやった【泣き落とし】も」
「『自由意志が有るのなら貴方が自分に好意を持つ事等絶対有り得ない。泣き落としする程の事の時点で、
それは貴方の意志で有るかどうかの話になる』……。私ら自動人形と言う存在意義からして、一部的外れでも無いから、
質が悪いよね」
「もう面倒や、押し倒した方が速いで、ホンマ」
「絶対逆効果で更に拒絶反応される」
「そんなんは、分かっとる……」
奇声を出す気力も無く延々と飲食物を腹に流し込み続けている【アレ】な【特務任務】従事中の自動人形の有様を横目に見つつ、
溜息を吐く二人。
「家族や同僚からもそれとなく誘導や説得とかもしてるけども、それも殆ど馬耳東風やと言うしなぁ」
「制度改変や手取り給与改善とか早々進んでいる事を示されても、それでも結婚等の抵抗感は相変わらず
強固で変わっていないから」
「やでなぁ……『今はゲートを通じた強力な【指導】が有るから良くても、何時までそれが続くか分からないし、
仮に今日や明日に【指導】が途絶えたら即日復讐と報復に燃えて【旧に復す】で終わらない連中が再臨跋扈して
報復に結婚税でも子供税でも追加される』って、言うとった程やし」
「弾圧されて羽虫にも劣る勢力の少人数が、旧権奪還の為に呉越同舟で国外からの圧力でも何でも使うってのはセオリー、
且つ母国や国民の事は欠片も眼中に無いのは古今東西の共通事項」
「育成・教育中の新規勢は順当に伸びてて良いとしても、過去の権勢や栄光に身も脳も焼き尽くして固執しとるのはなぁ。
相当狩り尽くして潰したと言っても……」
「【もう暫く】時間が有れば、この国の根底から改善出来る。でも【今】断絶したら反動でこの国は、この世界は不味い事になる。
最悪、第三次世界大戦ルート」
ギャグマンガ張りに膨れ上がったお腹を抱えた酔っ払いが苦痛に歪んだ顔を見せつつお腹を抱えている中、
本題から大分外れた杞憂の類な事を言い合う二人。多数の大陸日本が、それぞれの得意分野を活かして列島日本に関わり、
支援であったり指導だったり、時には粛清をしているのだ。各々の世界で悪鬼羅刹や魑魅魍魎を相手取り、
表裏の世界で死戦や死闘を繰り返して来た面々が、ある種【純白】なまでに隙だらけの穴だらけな存在に後れを取る事は無い。
364:陣龍:2024/03/04(月) 19:38:21 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「まぁ、でも……」
「うん……」
だが、散々此処まで言い合いながらも、結論に関しては相当以前から変わらず同一だった。
「やっぱ結婚や恋愛その物への不信感、忌避感、恐怖感、倦怠感が主原動の心理を
どうにかせんと変わらんやろうな……」
「今まで結婚しない、付き合わない理由で言ってた事も、結婚したくない、付き合いたくないが為の
理由付けなのが一番だからね。政治云々の事も殆ど言い訳と理論武装なだけ」
「ほなら結婚も恋愛せんでもええわ、で終えられたらええんやがな……」
「自動人形の名折れ云々、【特務任務】云々以前に、このまま放って置く訳に行かない……けど……」
「どうすればええんやろなぁ……あの氷河より硬く冷えた警戒心と恐怖心……と言うより、
人生一度も恋愛なんぞ知らんからこその対応と言うのが適切か」
「あの対応さえ抜けさえすれば、間違い無く私ら自動人形に一生ゾッコンになるけどね」
「……ゾッコンって、言い方古くないか?」
蚊帳の外の当事者な自動人形が妊婦の如くお腹が膨らみ切った酷い身体を横倒しにして休み、
そしてもう一方の当事者がペットの犬と夜の散歩をしていてくしゃみ等せず歩いている頃、
日本帝国の皇居に単身全裸突撃して玉璽と宝刀を奪ってくる方が未だ簡単そうに錯覚する様な難問に、
自動人形達は溜息を吐き続けていた。
「お腹……痛い……うぅ……」
「あーあー、こんなに食い散らかしーの飲み漁りーの……」
「追加請求して置かないと」
「うっぷ……うぇ」
「ちょ、おま!?吐くな、此処で吐くんやないで!?」
「自動人形なんだからそこは呑み込みなさい」
まぁ、何だかんだ言いつつも追い出される気配は欠片も無いのだから、長くても3年か5年も有れば
何時の間にか実質夫婦も同然になるだろうと楽観している彼女らは、
何とも悲惨な醜態を見せている友人の介抱を始めるのであった。
「ワフン?」
「……」(頭ナデナデ)
「クゥーン……」
「……」(身体ナデナデ)
「ワフッ」
一方その頃、その【特務任務】の対象は延々と犬を愛でて撫でていた。自動人形ちゃんの苦難と苦闘は、
これからも相当続きそうである。
365:陣龍:2024/03/04(月) 19:40:48 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 酒飲ませて既成事実化等の手段は根底レベルから選択肢に無い自動人形ちゃんの死闘()は他所から見ればギャグラブ(?)漫画に見えるであろう
|д゚) だが当人にとっては真剣に考えて実行して空回りしているのであるのだ、そろそろ自動人形専用掲示板にスレ立てされるやも()
最終更新:2024年07月22日 22:04