478 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/06(月) 01:19:45 ID:softbank126036058190.bbtec.net [49/119]
日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」小話「アルビオン航空機狂騒曲」
「ロイヤル・サブリン」撃沈さる。
このニュースは、比喩でも何でもなくアルビオン王国を揺るがした。
その就役以来、文字通り戦場において不沈を誇っていたアルビオン王立空軍航空艦隊の一隻が撃沈されたのだ。
艦名がロイヤル・サブリン(王権)だった航空艦が戦闘において撃沈されたのもショックを上乗せしていた。
この出来事はロシア帝国側の戦略に基づいて広く世界に発信された。
ロシア帝国軍はアルビオンの航空艦を撃沈する能力を有しており、それはケイバーライトに依存せず、という事実と共に。
勿論のこと、撃沈できたのはある種の限定状況であったことに由来していた。
フリゲートに該当するロイヤル・サブリンは、見敵必殺的な遊撃任務でロシア軍の陣地を荒らしまわっており単艦行動だったこと。
任務の都合もあって、ロイヤル・サブリンが所謂対空兵器を有しておらず、回避行動をとるしかなかったこと。
そもそもロイヤル・サブリンをはじめとした航空艦隊の艦艇の設計が上空からの攻撃を想定していなかったこと。
航空機というものをそれまでロシア軍が秘匿し、満を持してキルゾーンに飛び込んできた航空艦に対してぶつけたこと。
それなりに訓練を積んでいた航空機編隊が、訓練通り航空艦のウィークポイントに攻撃を浴びせ続ける技量を発揮したこと。
航空艦艇の最大の弱点であるケイバーライト機関の作動に必須の熱を生み出す機関部から伸びる煙突に航空爆弾が複数入ったこと---きわめて多数に及ぶ。
とはいえ、幸運ありきではなく、ロシア側が努力と準備を重ねたうえで結果を出せたことも忘れてはならない。
諜報網に引っかからないように秘匿をしていたのはロシアの努力であるし、航空機の運用やパイロット育成をしたのもロシア軍だ。
そして実戦において訓練通りに煙突という弱点に爆弾を投下してみせたのもロシア軍のパイロットの実力と努力の結果だ。
何しろ史実と比較すれば正しくオーパーツもいいところなのだ。
ライト兄弟の初飛行が1903年であり、その時は12馬力のエンジンで12秒間、約37メートルしか飛べなかったのだ。
それから比較すれば、史実におけるWW1において投入された名機ソッピース キャメルというのは先取りしているどころではない。
そんな航空機を旧式ゆえに放出しても良いという日本が異常なほどに発達しているというべきなのだが、ここでは割愛する。
ともかく色々と並べ立てたのだが、ロシア軍がアルビオン王国の覇権を支える航空艦を撃沈したのは変わらない事実だ。
アルビオン王国が事実を確認し、それを認めるまでの間に、ロシア帝国はこの勝利を喧伝してしまったのだし。
最初こそ日本から来たそれをゲテモノ扱いしていたのだが、こうにまで実績を出せば、最早救国の英雄である。
撃沈に貢献した飛行隊の面々は昇進が決まり、ロシア帝国皇帝に謁見を許され、勲章を与えられるなどしたほどに。
479 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/06(月) 01:20:43 ID:softbank126036058190.bbtec.net [50/119]
しかし、戦争とは単純な勝負ではない。
確かにロシア帝国軍はロイヤル・サブリンの撃沈を筆頭に、他の航空艦に対しても損害を与えたり、航行不能に追い込むなど成果を上げた。
それらは特筆すべき戦果であり、アルビオン王立空軍が対空兵器を泥縄で積むようになってからも成果を出していたのだから、その力は高かった。
航空艦だけでなく、抵抗手段が少ない陸軍に対しての攻撃にも運用されたそれらは、多くの出血を強いることにも成功していた。
それでも、最終的に物を言ったのは物量と質であり、ロシア帝国軍は敗北を喫することになった。
航空艦に対して大金星を挙げたとしてもそれは局地的勝利でしかなく、戦争の帰結までも覆すほどではなかったのだ。
さて、戦後になって、勝者であるアルビオンは、そうであるがゆえに大急ぎで航空機というものを入手する必要に迫られた。
自国の覇権の屋台骨を揺るがす鏑矢となりかねないからこそ、真っ先に研究し、対策を編み出すか、あるいは取り込まなくてはならないと判断していたのだ。
戦時賠償という形で現物のほか、ロシア側に存在していた研究資料などを接収し、研究に取り掛かったのである。
アルビオンという覇権国家の権威と威信にかけ、抱えている頭脳を総動員し、急ぎで始めたのだ。
その中で判明したことはいくつもあった。
ロシアで研究が始まったのは割と最近であり、殆どが飛行船と同様に外国---大日本帝国由来なこと。
ケイバーライトを用いることなく飛行することが可能であるのは事実であること。
ケイバーライトとは違う原理と力を用いて空を飛んでいること。
蒸気機関とは異なる動力を用いることで稼働すること。
空を飛ぶにはケイバーライトを使えばよい、というドグマに囚われていたアルビオンにとって、目から鱗というべき発見の塊であった。
同時に判明したのは、これらを接収してもなお、アルビオンが独自に航空機を運用するのは先になる、ということだった。
曲りなりにも大国であるロシアが研究していても、まだ理解しきってはおらず、必要なものはすべて輸入し、そのまま使わざるを得なかった。
その資料と現物を得たとしても、アルビオンが実物と同じものを作り上げるには、研究資料と現物の間のミッシングリンクを見つける必要があったわけだ。
その存在するはずの技術的なつながりを手探りで見つけ出し、実用化する---参考資料はあれど、苦労することになりそうだった。
さらに、これが大日本帝国から輸出されてきたということに大きな意味があった。
即ち、この航空機を遠慮なく輸出し、技術的指導ができるほどに日本は研究分野で先行しているということなのだ。
同時にこうも言っているのだ---その気になれば、航空艦を沈められる非ケイバーライト依存の兵器をばらまけるのだとも。
そうであると分かったからこそ、ロシアから得たそれを研究し、追い越さねば---そのようにアルビオンの意志は統一された。
そうして、得たモノを元手にし、急速な勢いで先行しているであろう大日本帝国へと追従を始めたのだ。
ロシア帝国から奪い取って手に入れたそれが、大日本帝国によって入念に仕込まれた特大の毒饅頭だと知らぬままに。
480 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/06(月) 01:21:30 ID:softbank126036058190.bbtec.net [51/119]
以上、wiki転載はご自由に。
こちらの方が先にかけたので。
文字通り狂騒曲になりそう(こなみ
最終更新:2024年08月11日 20:10