903:弥次郎:2024/05/14(火) 22:43:44 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」小話「アルビオン航空機狂騒曲」2
さて、現物や資料などをロシアから手に入れたアルビオンであったが、前途は多難どころではなかった。
そも、アルビオンにおいて航空分野の発達がひどく歪であったのが原因であった。
なまじか航空分野の発展の積み重ねが行われている時代において、ケイバーライト鉱石が発見されてしまったというのが原因だ。
それ故に、空を飛ぶにはケイバーライトを使えばよい、という固定観念が生まれ、長い時間と経験が積み重なった。
その結果として、非依存の航空分野への知識などが史実よりも大きく劣っていたのである。
まして、以前も述べたように動力機関を積んだ航空機モドキが各地で研究されている中で、一足飛びに完成形を見せられたのだ。
前提となる知識が不足しているばかりか、目の前の実物との間にいくつものミッシングリンクが存在し、理解が追い付いていなかった。
航空機の部品一つをとっても「どうしてこういう形で、こういう素材を使ったのか」が全くわからない状態であったのだ。
ロシアからせしめた資料を研究をするだけでも、どう考えても10年は必要になりそうな塩梅であった。
ところが、政治と軍事的な事情はそれを許さなかった。
大日本帝国はロシアだけでなく、ドイツやオスマン帝国、北欧諸国などに対しても同様の航空機を積極的に輸出がされていたのである。
クリミア戦争後、改めてロシアが航空艦を撃沈したことを公表した後に、相次いで各国が公表したのだ。
「我が国はロシアがクリミア戦争で投入した兵器と同等のモノを保有している」と。
当初は日本がロシアに対して供与することで緩衝国としてのバランスを保つためだと考えていたのだが、そうではなかった。
この予測が裏切られたことで、アルビオンは航空艦隊を沈め得る航空機を多数保有した、潜在的な敵国に包囲されている状態に陥ったのである。
確かに上記の国々は多くがアルビオンに逆らえない、あるいはアルビオンの潮流に流されている国だ。
だからと言って、完全な味方でもないのが事実だ。リ・レコンギスタで制圧した地域はアルビオンへの反抗心や報復心の強い地域が多い。
アルビオン王国の大陸側の領土として組み込まれている旧フランスや旧スペイン、あるいはイタリアなども同じ。
団結されて反抗された場合、アルビオンが無視しえないダメージを受けることは確定だった。
そういう都合もあり、研究グループは発破をかけられ、研究を大急ぎで進めることとなった。
また、始まったのが鹵獲品で構成された航空機部隊の運用だった。
より正確には航空機運用の試験や調査を行うための研究チームに招集されていた人員を基にした錬成チームだった。
如何にして航空機を運用すればいいのか---戦闘だけでなく、メンテナンスや維持管理、パイロット育成、技能研究まで行うチーム。
勿論、実態は半分程度しか明かされていない。張り子のトラと受け取られようが、ともかく航空機部隊がいることを喧伝する必要があったのだ。
とはいえ、その航空機部隊は戦う前から損耗を強いられていた。
何しろ、教官がないままにマニュアルを読んだだけの状態で、航空機を実際に操って空を飛ばされているのだ。
フライトシミュレーターもなければ練習機もなく、あるいは航空機を乗りこなす訓練もまともにない、そんな状態なのだ。
起こるのは操縦ミスや判断ミスによる墜落や激突、着陸や離陸の失敗、その他事故のオンパレード。
如何にアルビオンと言えども、予算では調達できない貴重な軍人を次々失うのは堪えたのだ。
研究するチームでも同様だ。
蒸気機関を用いた航空機ならばともかくとして、内燃機関については知識がさっぱりだったのだ。
コピー品を作るにしても、部品の設計や寸法や材料などについて解明しなくてはならず、鹵獲品の多くが分解や分析に回された。
エンジンの仕組みなどを調べるためにも、不可逆的であってもバラバラにする必要性に迫られた。
そうまでしても「わからないということが分かった」というレベルであったのは語るまでもないだろう。
メンテナンスや整備の方法までは説明書を読めばわかるとしても、何故そうする必要があるのかまでは事細かに記載されているわけではないのだし。
理屈を記した参考書もあったが、それの解読も時間がかかるのでなおのこと分からないことだらけだった。
904:弥次郎:2024/05/14(火) 22:45:26 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
航空機そのものについては、まだ分析が可能で、そこからのコピーと再現はできていたのが救いであった。
Sg-20は元になった航空機がそうであるように、根本的には木材などを中心として構成されているのだ。
だが、貴重な鹵獲品のエンジンは次々と失われていき、実働に耐えられない状況となっていったわけだ。
元々が、ロシアから賠償で得た分しかないという時点でエンジンの絶対数自体が少なかったの言うまでもない。
それが鉋にかけられてすり減っていけば、そういう結果になるのは必然であった。
開発元は大日本帝国だというのはわかっていたことだ。
だが、まさか大日本帝国に対して売ってくれ、などできるわけがない。
将来的な仮想敵国の中でも最大の国家であり、アルビオン同様に航空艦隊を擁するあの国に外注など頼めないのだ。
国防を担う兵器の供給を他国に委ねるのが如何に危ういかは理解していた。それくらいの危機感と分別はあったのだ。
現状でどういう構造や仕組みなのか藁かない状態なのだ、これ以上に何が仕込まれているかもしれないのは危険が過ぎる。
非合法を含む諜報活動、あるいは他国から奪い取るという手も検討に上がっていたが、それも断念された。
この時代、アルビオンの諜報というのはてんでバラバラにやっており、統合されていなかったのだ。
おまけにロシアがこの航空機を戦争以前から購入し、ひそかに導入して準備を整えていたことを見切れず、多くの関係者がその引責を強いられた。
その為にまともな諜報活動などできようもなく、態勢を整えるだけでも精一杯であった。
日本から輸出されているそれを通商路で待ち構えれば奪い取れるのは確実だが、そうなれば今度は確実に報復を喰らう。
具体的にはインドとアルビオン本土の通商路が攻撃を受けるだろう。
インドから搾取している富などがアルビオンのすべてではないが、大多数を占めていることも確か。
そことの連結を断たれれば、覇権国家としての屋台骨を失うということにつながりかねない。
とはいえ、ないものねだりをしたところで意味がないのは依然として変わらない事実だった。
ロシアから賠償以上に得られたものはなく、自分たちはその研究の間に次々と数を減らしていく。
その間に仮想敵国や潜在的敵国は航空機の数を着々と揃えつつあるというのだから。
そして、迷いに迷った末に、アルビオンはプライドと自国の利益をを切り売りすることとなった。
即ち、日本から航空機を購入した各国からSg-20を部品などとまとめて購入するという、屈辱を選んだのだ。
当然だが、アルビオン側は値段を吹っかけられた。多くの国はアルビオンに対抗するためにこれを購入したのだ。
それをみすみす手放したいとは思うのは、よほどのことがない限りありえない事であった。
そういう国だと見越したうえで購入を許してもらった国もいたくらいであり、早々に手放せばその国が日本からの信頼を失う。
だからこそ、大きく吹っかけた。自国にとって優位な条件を飲ませる代わりとして、元値の何十倍もの値で売りつけたのだ。
安全を金で買えたならば安いものかもしれない。とはいえ、仮にも覇権国家が自分よりも小さな国にされることではなかった。
そんな状態で必死に研究と運用をしている中で、アルビオンはさらなる選択を重ねた。
苦境を脱出するための博打行為。博打に負けたからこそ、元凶を打破するために危険に踏み込むという矛盾。
それが必要でも回避すべきものと分かってもなお、選ばないとならない選択肢。
即ち、大日本帝国との間の、地域を限定した戦争であった。
905:弥次郎:2024/05/14(火) 22:45:56 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
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アルビオン、屈辱。
これが戦勝国かよ、となりますねぇ!
因みにですが、日本からすれば、将来的に失敗することが確定した航空機だから、正直いくら売ってもいいんですよね。
自分たちはとっくに先を行く航空機を揃えていますから。
因みに国外に輸出された航空機はSg-20(ソッピース キャメル)のほか、フルガン同様蒸気機関を使った航空機などですね。
後は航空機研究に必要な技術とか論文とかを色々とテクニカルハラスメント込みで輸出しています。
これで盛大にリソースを割いて無駄な後追いをしてもらっているわけですね!
最終更新:2024年08月16日 14:29