959:弥次郎:2024/05/15(水) 20:39:24 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」小話「アルビオン航空機狂騒曲」3



 アルビオンが北米の日本領土に目を付けたのは理由がある。
 それは、ロシアへと輸出されていた飛行船と航空機であった。
 より正確には、それらが動くために必要な油とヘリウムガスが北米由来だった、ということだ。

 飛行船は航空機同様、アルビオンと日本だけが空の覇者ではないことを証明した一つの兵器であった。
航空艦に対しては劣るものの、爆撃や対地砲撃能力では航空機以上であり、慢心してエアカバーの外に出たアルビオン陸軍を何度となく焼き尽くしたのだ。
長距離砲撃の際の観測役としても活躍するため、アルビオンとその同盟軍にとっては、油断するとくらいついてくる恐ろしい怪物だったのだ。
まあ、クリミア戦争での活躍については追々語ることとしよう。
 ともかく、アルビオンはこれを賠償という形で接収し、何故浮遊するかを調べ、その「ヘリウムガス」というものにたどり着いたのだ。
輸送記録を辿ってみると、それは日本大陸本土からも輸送されていたが、多くは北米から輸送されてロシアに届けられていたと判明した。
そこからさらに探りを入れてみると、そのガスの産出は史実で言うところのカンザスやテキサスであることも判明した。
これは日本帝国領土内におけるサプライチェーンが確固たるものとして成立し、ある程度のトレーサビリティシステムがあったことに由来する。
また、ある程度のオープンソースを調べていけば、どこでそんな特別なものが得られるかあたりをつけられたのだ。
 航空機については言うまでもない。未だ研究中であるとはいえ、石炭とは異なる可燃性の液体を使って動き機関で飛行していることはわかっていた。
そして、それの供給源が日本大陸本土のほか、北米の史実テキサスの油田であるということも判明したのだ。

 日本大陸本土よりも欧州に近いここで得た必要なものを、最短ルートで仮想敵国や潜在的敵国に輸出されてはたまらない。
輸送路の遮断という方法が使えないならば、供給を止めるにはその産出地を特定して破壊ないしは制圧してしまうことが必要だ。
安全保障を鑑みるにこれは必須。そうしなければいずれは各国が飛行船と航空機の数を揃えて反旗を翻すのは明白だ。
そして、アルビオンとしてはそういった特別な資源を独占したいという欲が湧いた。

 斯くして、アルビオンはクリミア戦争が終結してから程無くして、北米へと食指を動かすことになったのである。

960:弥次郎:2024/05/15(水) 20:40:06 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

 これに反発したのはクリミア戦争でそれなりに痛い目に遭い、その損害の立て直しと戦訓の反映を行っていた軍部だった。
今すぐの軍事行動を行うというのは危険が過ぎる、ということである。
クリミア戦争に勝利したアルビオンだが、全くの無傷だったというわけではない。
同盟軍とはるばる東欧くんだりまで出征し、陸軍および空軍が中心となって戦ったダメージはそれなり以上に存在した。
航空艦を撃沈した航空機や陸軍を苦しめた飛行船、あるいはロシア陸軍の新たな戦術などで出血をかなり強いられた。その補填は必須だったのだ。

 戦訓も特に重要だった。何しろ航空艦を撃沈されてしまったのだから、それへの対策は必須であった。
軍部では、ロシアや他国に平然と輸出していることから、さらに上位の戦力が日本にはあると考えていた。
つまり、現段階でSg-20を手に入れはしたが、それを持て余している段階の自分達では勝てる確率が低いということだ。
そもそも相手からすればSg-20についてはよく知っているわけで、それをそのまま使えば手の内を明かすことにもつながるわけである。
そんな状態では危険だと判断するのは至極当然の話であった。

 さらに、フローレンスの成し遂げた医療改革が、戦時における有効性を証明したことでまさに進行中であったのも上乗せされていた。
内政にまで大きく関与するこれらを進めるのは、どう考えても平時でなければ不可能だ。
それもかなり腰を据え、地道に医療を供給する場において徹底を進める必要がある。
戦争省にしたって軍医局の構造や質の改善などを行いたいと考え、実際に行動に移していて、かかり切りだったのだ。
なまじ覇権国家であるがために軍隊の規模が大きかったアルビオンでは、それらの準備と実行に手間取っていた。
民生までも絡んだ問題である以上、ここで再び戦時に突入されてはとん挫しかねない---そう懸念したのだ。

 しかし、アルビオン政府はこれらを押し切ってでも戦争に出るしかなかった。
 うかうかしている間に、包囲網が完成してしまえば、アルビオンは本土失陥も含めた大損害を受ける可能性があるのだ。
現段階では各国からそれらを取り上げることができているが、いずれは効果を無くすだろうし、技術的に習熟されてしまう。
アルビオンの国力で研究などを進めることはできるだろうが、大本の大日本帝国の支援があれば追い抜かれる可能性もあった。

 さらに、史実同様にジャガイモ飢饉により発生したアイルランド系住人の問題が発生しており、解決が望まれたのだ。
アルビオンのおひざ元でそんなことが起こってはたまらない、と飢餓輸出の防止に力を入れ、また農業国のフランスから輸入することで何とか鎮静化を図った。
それでも少なくはない数のアイルランド系住人が食い詰めてしまい、行き場を失い、食い扶持を求めていたのだ。
これを利用しない手はないのではないか---そんな思考がアルビオンの脳裏によぎったのも無理からぬ話であった。

 紆余曲折を経て、この北米における資源産出地域の奪取を目的とした戦争は承認を受け、動員が開始されることとなった。
 何もかもが未だにクリミア戦争の影響の中にあって、そこへと進撃していった。
 敵国の武器を改良することもできないどころか、解析すらままならないまま、そのまま投入するという狂気。
 その行進の先にあるのが、アルビオンという国家に対して致命傷を与えかねない断頭台だったとしても、止まることはできなかったのである。
 ルール・アルビオン、世界を統治せよ!アルビオン!その勢いのままに。

961:弥次郎:2024/05/15(水) 20:41:11 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
次回は時系列がちょっと飛びます。
具体的には北米東西戦争の後まで。
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最終更新:2024年08月16日 14:41