807 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:30:54 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [63/87]
  • 60式戦車-陣龍様Fallout世界支援ネタ-

1.概略

 日本大使館襲撃事件及びその報復攻撃以降、米中は日本を挟んで対立を深め、第三次世界大戦の足音は着実に聞こえ始めた。
 彼らは過度な資本主義、あるいはファシズムと区別のつかないコミュニズムにより資源を蕩尽し、互いに資源を奪い合っていた。
 大使館襲撃事件に対する鮮やかなまでの報復により、当面は日本と同盟国を攻撃目標から外しているが、それが継続する保証もない。

 故に日本を盟主とする西太平洋条約機構も軍事力の効率化、近代化に余念はなく、それは陸軍機甲兵備においても同様であった。
 資源不足故にパワーアーマーなどの歩兵主体となった米中軍と異なり、日本陣営は順当にAFV開発と技術進歩を継続していた。
 両陣営ともに資源不足とはいえ軍の規模は大きく、特に中国などは我が陣営と地続き国境を接している国々も多い。

 そこへ資源収奪目的の人海戦術を用いた軍事侵攻は十分に考えられ、米中対立先鋭化は恐らくそれが現実になることを示唆していた。
 加盟国の各国軍隊、政府の研究結果は共通して、米中戦争は概ね泥沼化し、戦争資源簒奪のため我が陣営を攻撃するであろう。
 その際に核兵器多数を併用した陸上侵攻、あるいは揚陸艦多数による着上陸も十分に起きうると結論付けていた。


 かように悲観的だが現実的な判断に基づき、条約機構の軍備全般の更新ペースは増大し、その過程で一つの産物を得ることになる。
 2040年代以降の急速な量子コンピュータ技術の発達に伴い、物質の四次元空間への格納という副産物を得ていたのだ。
 電算機の処理能力次第ではあるが、スマホサイズの量子コンピュータでも大型トラック相当の格納と取り出しが可能となったのである。

 当然、この技術はまず民間の流通業界で爆発的に普及し、西太平洋条約機構の各種流通コストを大きく低下させ、経済を活性化させた。
 そしてこの技術こそ次世代の戦場。ABC兵器が乱れ飛ぶ人海戦術に対抗する新戦車開発に悩む陸軍にとって、一種の福音となった。
 弾薬や燃料などは言うに及ばず、外装式モジュール装甲さえ状況に応じ四次元空間から展開し、戦場で即座に着脱が可能となる。

 またMBT用の分散処理システムともなれば演算能力も、信頼性を重んじ若干枯れた技術を用いたとしても、当然桁違いに高いものとなる。
 それだけの増加装甲、弾薬、燃料、真水、糧食等を常に収納し、必要な時に必要なだけ展開できる戦闘車両が夢ではなくなったのだ。
 やがて新型戦車計画は次世代重装甲戦闘車両計画へと拡大発展し、2060年代以降の日本を筆頭とする加盟国陸軍を支えることになった。

808 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:31:36 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [64/87]
2.コンセプト

 計画初期のようにMBTだけではなく自走榴弾砲、重装甲指揮通信車、重歩兵戦闘車、戦闘工兵車など派生型多数により戦闘団を構築。
 その上で歩兵、砲兵、各種ドローン、そして空軍や海軍と協働し、ABC兵器さえ平然と使うであろう人海戦術の破砕を一義としている。
 米軍の上陸作戦も対応視野に入れているが、海軍力と空軍力の懸絶から可能性は低く、主に中ソ陸軍との正面戦闘を重視している。

 彼らは戦時。それも着々と枯渇しつつある食料を含めた資源簒奪のためであれば、無制限徴兵の上で大軍を確実に送り込むであろう。
 条約機構軍の規模も十分に大きなものではあるが、無制限徴兵で迫る人海には劣後し、突破を許せばあらゆる虐殺と簒奪が確実である。
 故にこれまで以上に諸兵科連合部隊の共同交戦能力を高め、更には量子格納技術を用いた継戦能力と生残性追求が徹底された。

 日本式のAFVは欧米や中ソなどと異なり半導体技術の進歩により、武装したコンピュータと称して良いほど電子化が従来より進んでいた。
 そこへ量子電算技術と四次元格納というパラダイムシフトが生じたことにより、まずネットワークを介した共同交戦能力が飛躍的に向上。
 そしてレーションから外装モジュール装甲に至るまで、実に20トン以上の自由な予備装備の取り出しと収納が、開発初期より可能であった。


 故にまずABC兵器やレーザー兵器などに対する防御力を重んじ、砲塔・車体基本構造の段階で内装モジュール複合装甲を適用。
 その上で各種外装モジュール装甲を戦闘状況に応じ展開し、直接防御手段と乗員生残性の向上を目指した重MBTでもある。
 それ以外のアクティブ防護システム、パッシブレーザー検知しシステムも完備され、戦闘時は乗員全員が対ABC防護服を着用している。

 量子コンピュータを用いた共同交戦能力は、最早その気になればAIにすべてを任せ、無人車両戦闘団として機能できるほどであった。
 無論、乗員が主体となる戦闘行動システムを構築しているが、それこそ豪州やシンガポール等が開発しているFPSゲームレベルで、常時連携できる。
 マンマシンインターフェースも民間技術主体を用いることで、習熟が容易なものとなっており、未だに無線通信が主体の米中とは雲泥の差である。

 無論、火力や機動力も必要十分な性能を目指しているが、常に群れとして有機的に行動し、最適化された長時間の火力投射を継続。
 米中ソが躊躇なく用いるABC兵器に対しては、基本構造と外装モジュール双方に多種複合装甲を用い、APSを突破したものも十分耐久する。
 その上でキルレシオを最低でも1:20以上を維持しつつ派生車両からなる戦闘団、無人兵器、空軍海軍と連携しての敵野戦軍「殲滅」を目指した。

809 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:32:10 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [65/87]
3.C4I

 一般的に戦車の一義とは火力であるが、この60式以降は量子コンピュータ技術が共同交戦能力、継戦能力を司る最優先要素となった。
 日本製MBTは従来のデジタルコンピュータ時代より、オープンアーキテクチャ主体の分散処理システムを長きに渡って採用、改良し続けてきた。
 そこへ民間流通業界で信頼性、確実性、汎用性を大きく高め、小型化にも成功した量子コンピュータの導入は、爆発的な処理能力向上を達成。

 60式戦車量産型においては最小で乗員1名による、共同交戦能力発揮の継続を含めた運用が可能で、通信速度と冗長性も桁違いに向上。
 基本乗員3名はVR投影されるABC防護措置を施されたHMDを装備し、全車両に搭載された戦術AIの支援を受け、常に最適行動を可能としている。
 また最悪車両を放棄する際には敵による鹵獲を防ぐため、ソフト及びハード双方で自壊手段が準備され、データは戦域指揮通信車に転送される。

 これら量子コンピュータ群に対して情報を与えるセンサー系も充実しており、砲手及び車長双方に第五世代全天候光学照準システムを搭載。
 操縦手も非常用ペリスコープは無論存在するが、車体前後左右に搭載された新世代のHD全天候カメラを用い、VR投影HMDに従い操縦を行う。
 光学システム以外には砲塔にコンフォーマル形態で搭載されたミリ波AESAレーダ複数を持ち、索敵と同時に友軍誘導弾や砲兵等の誘導も行う。


 そして高い継戦能力を保証する量子格納能力については、各種兵装弾薬及び燃料、故障に備えた予備コンピュータモジュール、医薬品及び食料。
 更には簡易整備機材や外装モジュール装甲まで収納可能であり、開発過程で枯れた世代ながら小型化と分散処理を徹底し、処理能力を大きく改善。
 量産車においてはついに30トンの収納能力を達成し、外装モジュール装甲を当初より搭載すれば、全ての能力を予備物資に回すことも可能である。

 この技術は60式戦車の派生型全てにおいて適用されており、パワードスーツを纏う歩兵を輸送する歩兵戦闘車等でも、大いに重宝されている。
 最大70キロ先を射撃可能な自走榴弾砲においては、毎分10発の継続射撃を弾薬補給車を必要とせず、最大で60分ほども行えるのである。
 道なき荒野に道路、陣地を作る重戦闘工兵車には大量の築城資材を収容し、従来に比べ極めて短時間での永久築城を成し遂げている。

 かように量子コンピュータ、共同交戦能力、大量の四次元格納をシナジーとした装甲戦闘団が、どれほど始末に終えないかがこの段階で伺える。
 試作車試験において1個大隊戦闘団が従来装備とはいえ、本土防衛の精鋭機甲師団を散々に翻弄し、師団司令部壊滅判定を勝ち取ったほどである。
 アグレッサーに指定された機甲師団所属の将校によれば、豪州製FPSゲームに出てくる特殊部隊が、ゲームそのままに正規軍に拡張されたと評していた。

810 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:33:02 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [66/87]
4.防御システム

 この新型戦車が戦うであろう米中戦争から拡大した世界大戦において、従来以上にレーザーなどの新兵器。そしてABC防御対策が重視された。
 米国は我が大使館を核手榴弾で襲撃した-つまり歩兵の手榴弾でそれならば直射、曲射を問わずに戦術核を大量に用いるは確実である。
 中ソは(比較的)米国に比べ戦術核の配備は控えめだが、一方で致死性ウィルスや毒ガス開発に極めて熱心で、やはり油断ならぬ仮想敵である。

 故に60式戦車は基本、乗員が外部に露出しない形での運用を基本としており、上述した各種高性能センサ複数の搭載もそのためである。
 とはいえ主砲まで閉鎖するわけにはゆかないため、乗員3名(操縦手・砲手・車長)は軽量型ABC防護スーツを着用し、訓練や戦闘に臨む。
 当然乗員への負担は増大するため、車内空調は量子コンピュータ冷却も兼ねて完備され、シートリクライニング等の疲労負担にも努めている。

 そしてABCを含む敵弾-対戦車ミサイルや直射核爆弾などに対しては、ミリ波レーダや広角度レーザ検知器等により検出。防御手段を自動選択する。
 最たるものが迎撃擲弾発射装置であり、あえて残留物質の危険性を看過し、指向性硬破片炸裂により確実な目標破壊を企図している。
 砲塔上面に4基の擲弾発射装置が備えられ、同時複数目標の迎撃も可能である。また擲弾予備も量子格納領域から逐次補充、再装填を行う。


 上述した国産アクティブ防護システムの信頼性は高く、既存の個体装薬を用いる戦車砲の対戦車榴弾に対しても、十分な迎撃性能を発揮した。
 また高角度発射にも対応しており、敵砲兵が戦術核や毒ガス弾等を用いるを想定した場合にも、相当な阻止能力を有している。
 弾頭が核ないし生物化学兵器であっても砲弾は砲弾であり、信管さえ破壊してしまえば滅多なことで炸裂することはないのだ。

 しかし先制防衛システムも万能ではなく、被弾を許した場合の防御手段-装甲についても重視され、基本車体構造に内装モジュール複合装甲を適用。
 そしてこれも量子格納領域に収納可能だが、その上から更に外装モジュール式の複合装甲を搭載することで、生残性を大きく冗長化させている。
 構成素材は微細粒子結晶方式の防弾鋼板、大型拘束セラミック、高効率チタン合金に加え、対レーザー用の鏡面化加工装甲も表面に搭載。

 少なくとも米中の持つ戦車砲徹甲弾、対戦車誘導弾で貫通は側面に至るまで不可能で、車載レーザー照射にも30秒以上は耐久可能である。
 そのような複合装甲を重量増大を承知で二重に装備し、背面や上面にも軽量複合装甲を適用し、戦術核至近炸裂にも防御試験で耐えてみせた。
 実体弾を用いたアクティブ防護システム、マテリアル主体の装甲と既存方式ながら、システムと素材の洗練と効率化で将来の凶暴な戦場に応じたのである。

811 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:33:38 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [67/87]
5.火力システム

 上に述べた通り60式戦車はコンフォーマルミリ波AESAレーダさえ備えており、量子コンピュータと次世代ネットワークと併せ高い共同交戦能力を実現している。
 ではそれに基づく火力投射手段といえば45口径130ミリ電熱化学砲を自動装填装置とともに主砲として備え、どちらかといえば堅実な選択肢である。
 技術的には核融合炉を動力源とし、電磁投射砲を主砲とすることも不可能ではないが、生産可能な加盟国が限定されることから敢えて手堅いものを選択した。

 とはいえ液体装薬を電力撃発させるだけに個体装薬砲に比べ、威力は大幅に向上し、装弾筒付翼安定徹甲弾の初速は毎秒2500メートルを非常に大きい。
 射距離4000メートル先の均質圧延装甲1400ミリ相当の標的を貫通し、60式の二重複合装甲以外では阻止困難とされるほどである。
 徹甲弾以外には知能化多目的榴弾を備え歩兵、パワードスーツ、軽装甲目標、永久陣地等目標をFCSより入力され、最適破砕・破片爆風効果を発揮。

 特に今後、重防御を目指すであろうパワードスーツ・パワーアーマーに対して、重機徹甲弾相当の大破片を指向散布し、着実な破壊と殺傷を企図している。
 従来の軽装甲車両や永久陣地等に対しては、一種の半徹甲榴弾として信管が機能し、装甲や掩蓋を射貫後に炸裂し、やはり確実な内部殺傷を行う。
 既存の多目的対戦車榴弾に比較して、歩兵レベルで随所に展開できるパワードスーツ兵に対する察書力を、より確実かつ最適化した榴弾と言える。


 砲及び照準器は水平・垂直・前後の三軸で安定化されており、AI支援を受けた乗員のHMD照準に最適追従を行い、砲旋回速度も毎秒60度と早い。
 即応弾18発が収まった自動装填装置は平均1.5秒で装填を完了し、装甲で区切られた戦闘室と弾薬庫解放のリスクを最小化している。
 無論、主砲の130ミリ弾も量子格納技術を用いて収容され、発射ごとに逐次、C4Iの要求する弾薬を格納領域から自動装填装置へ給弾する。

 砲以外の火力投射手段としては主砲同軸及び砲塔上RWSそれぞれに、テレスコープ弾薬を用いる25ミリ機関砲を各1門備えている。
 歩兵ですら核手榴弾を用いてくる以上、パワードスーツや装甲車両ともなればより射程の長い、直射式の戦術核投射が確実と日本軍は考えた。
 そこにおいて従来の7.62ミリや12.7ミリ機関銃では射程が不足し、量子格納技術による予備弾収納も活用しあえて機関砲を搭載したのである。

 用いる弾薬は高初速多目的弾が主であり、射距離3000メートル以内の歩兵やソフトスキン、パワードスーツを無力化可能である。
 またRWSは自立したFCSを備えており、AI自動処理に基づく全方位脅威目標攻撃も可能で、緊急時には砲手ないし車長のオーバーライドにも応じる。
 装甲防御もそうであるが、テロ行為にさえ平然と小型核爆弾を用いられた経験が、日本及び条約機構加盟国軍に深刻な教訓として働いたのである。

812 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:34:18 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [68/87]
6.車体規模及び駆動系

 量子格納技術の多用により相当な重量増大から解放された60式戦車であるが、だからといって小型軽量化に走ったわけではない。
 戦闘重量は基本状態で54トン、昨今の情勢悪化から常備搭載となった外装モジュール装甲を含めれば66トンに達する。
 寸法も全幅3.6メートル、全高2.6メートル、主砲身長を除く全長7.7メートルと相応に大きく、上述した戦闘艤装搭載の負担は軽くなかった。

 だがABC兵器を歩兵戦闘レベルでさえ平然と用いる仮想敵を考慮した場合、運用負担の低減より防御力を重んじるのは当然であった。
 また西太平洋条約機構が日本主導、途中より豪州やインドネシアも旗振りに参加し、道路から港湾に至る流通インフラの拡大更新を推進。
 60トンを超える重装甲MBTであっても鉄道ないしトレーラー搬送、船舶輸送に十分対応可能となったことも、大型化を許容する恩恵となった。

 では駆動系はといえば多燃料水冷ディーゼル、独立油気圧サスペンション、無段階自動変速機と、技術的には2010年代に完成されたものである。
 日本及び条約機構加盟国は産業効率化、資源再利用の徹底により、依然として豊富な化石燃料算出地帯を有し、燃料には困らない。
 そして燃料さえ入手できるのであれば、米国のように全てを原子力で補う必要もなく、手堅い既存の技術をより洗練することで、事は足りたのである。


 このように記すと旧態然の技術に固執したように思えるが、随所に量子コンピュータ制御を適用し、70トン近い車体を支える素材も大きく進歩を果たした。
 結果、水冷4サイクルV型10気筒ながら最大3000馬力を発揮する車載ディーゼル、その大出力に最適化された無段階自動変速機。
 姿勢制御機能こそ省かれたが路上、路外を等に応じ、最適な機動制御を行う独立油気圧サスペンションを実現し、それらを一つのシステムとしている。

 最大速度は路外においても毎時100キロを超えており、高い旋回性能や加速力もあり、乗員のABC防護スーツと座席は対G機能さえ付与された。
 2010年代の段階で日本式MBTは「地上を走る戦闘機」と称されたが、それから半世紀を経て洗練された結果、比喩ではなく高機動戦車へと進化した。
 整備段列への負担は小さいものではないが、各部モジュールごとの交換で迅速な復旧を成し遂げ、戦線復帰そのものは迅速に行える。

 航続距離は固有燃料を用いた経済巡航毎時60キロにて700キロほどであり、量子格納領域に燃料を収納した場合は1000キロを平然と超える。
 勿論乗員への負担が大きいため、連続で1000キロも機動することはまずないものの、高機動を含む継戦能力についての不安は解消されている。
 段列への負担は確かに小さいとは言えないが、基本枯れた技術の延長線上故に、過度の負担ではなく、信頼性そのものは高いレベルにある。

813 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:35:01 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [69/87]
7.部隊配備及び実戦

 2060年に日本及び西太平洋条約機構において60式戦車として、この量子技術をフル活用した新型主力戦車は正式採用へと至った。
 なおほぼ同時期にパワードスーツ歩兵に最適化した重装甲戦闘車、予備弾薬を量子格納領域に大量に収めた自走榴弾砲。
 築城資材をやはり大量に量子格納した汎用戦闘作業車。これらを統括する大型指揮通信車等の派生型もロールアウトしている。

 量子コンピュータと四次元格納は民間流通業界で始まったものであり、つまり条約機構加盟国であれば、概ね等しく生産運用が可能である。
 それ以外の要素技術も2050年代から60年代の日本勢力圏としては、彼立てがたいものを用い、やはり加盟国の過半数で生産を可能としている。
 本体そのものを生産が困難でも戦闘艤装の製造は中小国でも十分可能で、ノックダウン生産も多用され、部隊配備ペースは迅速なものとなった。

 事実、米中がアラスカに残されたアメリカ最後の油田を巡って2066年に総力戦を初めたとき、条約機構軍の現役部隊は60式系列の配備を完結。
 米中が我が方を戦争に巻き込むことがほぼ確実視されたため、予備役部隊への配備も着々と進み、戦闘効率を著しく向上させていった。
 米軍でもモノの見えている将校などは、戦闘用ロボットや戦術核を多用しても、数倍の兵力を当てねば勝負にもならないと頭を抱えていた模様である。


 そして2077年10月23日に最終戦争が勃発。日本及び西太平洋条約機構も核攻撃及び軍事侵攻の対象となり、戦争状態へ突入。
 既に予備役部隊の動員と訓練も終えていた条約機構陸軍は、主に東南アジアと北海道で中国軍とソ連軍と激戦を展開した。
 戦術核を多用する米軍の上陸にも備えていたが、余りの空軍及び海軍力のレベルの違いから、彼らは尽く海の藻屑となってしまった。

 北海道はソ連軍の上陸能力が限定されたため、日本陸軍最精鋭の第七機甲師団の機動反撃により、寧ろスマートに終わった。
 圧倒的な戦闘効率、実効火力投射の違いを前にソ連軍は寧ろ早々に降伏し、降伏という形の亡命に等しい有り様であった。
 一方で地獄の様相を呈したのが東南アジア戦線で、全ての資源が枯渇した中ソ両国の主力が陸路で、文字通り人海となって殺到したのだ。

 想定通りABC兵器が多用され条約機構軍も相応の打撃は受けたが、60式戦車とその派生型は高い共同交戦能力と継戦能力で奮戦。
 中ソ連合軍の突撃衝力を大きく減殺し、戦線を秩序だったものに短期間で変え、やがては無人兵器や空軍、海軍と連携しこれを叩き潰した。
 気づけば後方段列や司令部を蹂躙し、そこから戦線を引き裂く60式系列固められた機甲部隊は、多くの中ソ将兵を恐慌状態に陥れた。

814 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:35:41 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [70/87]
8.最終戦争以降

 米中が互いに撃ち込んだ、あるいは日本からの報復攻撃による熱核兵器で世界の殆どが壊滅したことで、最終戦争は終結することになる。
 日本を含む西太平洋条約機構は多重化された弾道ミサイル・巡航ミサイル防衛網により、国土国民の殆どを守ることに成功した。
 国軍は米中ソのABC兵器多用により相応の被害を受けたが、他陣営が壊滅した現在、自国を守るのに十分な力は依然とし有していた。

 しかしながら全世界の熱核兵器をほぼ使い尽くした戦争だっただけに、西太平洋条約機構ですら地表や領海は大いに汚染されてしまった。
 政府機能及び国民の殆どを地下都市に避難させ、概ね文化的生活を継続させているが、ドローンやアンドロイド以外では相当に危うい汚染である。
 そのような地上の調査。あるいは変異生物の観測ないし駆除にも活躍したのが、ABC防御の完備された60式戦車と派生型であった。

 高度なセンサーとネットワーク。燃料や弾薬の量子格納で長期行動可能な彼らは、アンドロイドやドローンと連携して、国土状況の調査を継続。
 汚染状況、あるいは変異生物の発生地域の記録、もしくは米国のFEV由来の巨大変異生物の駆除作戦などに、大いに活躍したのである。
 また汚染が極度に強い地域においてはAIに全てを任せた無人車両として運用され、ドローンやアンドロイドとクラウドを構築し、無人部隊として活動した。


 フィリピンを筆頭に開発の進んでいた除染技術の運用が本格的に始まり、地下都市の人々が地上に戻った後も、長期間陸上防衛の主力を担ってる。
 まずは国土除染と経済復興が最優先され、国軍の拡大や新兵器開発などに回せるリソースが乏しい時代が、10年単位で継続したが故である。
 無論、量子コンピュータ等のマイナーチェンジは行われ、性能向上は継続されたが、当面変異生物以外の仮想敵がいないため、その程度で済んだのだ。

 故に60式戦車とその派生型は小規模改良を繰り返しつつ、実に半世紀以上にわたり西太平洋条約機構陸軍・海兵隊の主力であり続けた。
 生き残った日本人とその友好国の復興に必要なリソースがそれほど大きかったことと、60式系列のポテンシャルが非常に優れていたこと双方を示している。
 事実、この戦車に祖父、父親、息子の三代で乗り組んだ人々もいるほどであり、除染と復興に勤しむ人々を長きにわたり守り続けた。

 22世紀も中盤になりようやく国土除染と経済復興から高度成長に至った頃、ようやく60式戦車とのその派生型は予備装備として御役御免となった。
 そして彼らの後継となる戦闘車輌はより発達した量子コンピュータAI・高速衛星通信を介した、完全な無人戦闘車両グループであった。
 人が乗り込み血を流して戦った最後の戦車として、今も各地の駐屯地や基地において、稼働状態で往時の車両が展示されている。

815 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/05/19(日) 21:36:41 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [71/87]
9.あとがき

 コンセプトはPip-Boyの凄いやつを乗せた四次元ポケット付きの「ドラ◯もん戦車」でした。
 原作のPip-Boyが数十キロバイトのメインメモリで200キロ以上を格納可能で、陣龍様の作品で日本軍も半導体主体で同様の技術を再現している。
 そして現実世界では量子コンピュータの実用化もあり得る時代になり、大陸日本世界ならば仮想敵の存在からより前倒しに作れるであろう。

 そのようなところからヒントを得て、弾薬及び燃料、果ては外装モジュール装甲さえ量子格納し、延々と戦い続けられる戦車として描いてみました。
 共同交戦能力や火力投射最適化に米中の注目を集めたうえで、実はとんでもない隠し玉-軍用四次元ポケットを持っている戦車です。 
 恐らく艦艇を含む広域防空システムなどにも適用され、あの世界の狂った物量の核攻撃を見事に迎撃したんだろうなあ…とも思ってます。

 とはいえ原作の米軍はレーザーライフル、ガウスライフル、パワーアーマー、そしてヌカランチャーを使ってくるイカれた連中です。戦闘用ロボも豊富です。
 中国軍もステルスアーマーを用いた精鋭歩兵部隊を揃え、何より条約機構加盟国のかなりが存在する東南アジアと、地続きという状況です。
 故に戦車隊も砲兵隊もパワードスーツ歩兵も、可能な限りの予備物資を量子格納して、これらを苦戦の末に撃破したんじゃないかなと想像してます。


 そして最終戦争が終わってからは、恐らくマイナーチェンジ以外に軍備の更新とか困難でしょう。何しろ国土除染と経済復興が最優先です。
 故に現実世界のエイブラムス、レオパルト2のように半世紀以上に渡り使われ続け、変異生物や旧中国軍等から人々を守り続けた。
 国土浄化と経済成長に移行してからは戦闘車輌は完全に無人化され、人が乗り込み戦った最後の戦車という情緒も追加してみました。

 しかしこの戦車を考えるとき、Fallout世界の米中軍の凶悪さが本当に怖かったです。電子技術の遅延を除外すれば恐ろしい敵です。
 何だったら外交が存在するだけジオンやガミラスの方がまだマシです。FO世界戦前は奪えば全部ゥ!がデフォで、戦争は絶滅戦争一択です。
 自分で書いておいて何ですが60式戦車くん、本当によく頑張りましたわ…

 最後になりますが快く設定作成に許可をくださった陣龍様、相談に乗ってくださったスレの皆様。本当に有難うございました。
 久々に錆びついた頭を使ったためか、ちょっと目が痛いですね。やはり老眼なのでしょう。さてヌカ成分を補充するために連邦に戻らなきゃ…
 長い投下、毎回申し訳ありません。そして重ねて皆様に御礼申し仕上げます。
+ タグ編集
  • タグ:
  • 日本大陸×版権
  • 設定
  • 戦車
  • FALLOUT
  • 日本大陸×FALLOUT
最終更新:2024年08月23日 21:58