113 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/22(水) 00:09:13 ID:softbank126036058190.bbtec.net [8/109]
日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」小話「アルビオン航空機狂騒曲」5
後世、失われた20年と呼ばれる動乱と混迷の時代を迎えたアルビオンは、その影響力を綱渡りのように維持し続けた。
史実において「一撃講和論」と呼ばれるような、相手に決戦で手痛い一撃を与え、その脅威と恐怖を以て講和に持ち込み優位を得る---それが失敗したからだ。
大日本帝国はそれを見越したように決戦を回避し続け、北米大陸という縦深を活かし、泥濘の中にアルビオンを引きずり込み、消耗戦を強いた。
その結果として、当初想定されていた短期決戦も一撃講和も為すことはできず、アルビオンは国力を消耗させてしまったのだ。
だが、その中にあっても未だにアルビオンは崩壊や停滞を起こして機能不全に陥ることは回避できていた。
腐っても世界の3分の1を占める超大国。打撃を受けても立ち直れるタフネス、そして強力な体力を備えていた。
国力を削られはしたが、決して0になってしまい、他国に侵攻を許すものではなかったのだ。
実際、大日本帝国との限定戦争で大きく疲弊したアルビオンを見て喝さいをあげた国は多かったが、これに乗じてという国はいなかった。
未だにアルビオンは本国艦隊や東
アメリカ以外の植民地軍を残しており、攻め込んでも他国を焼き尽くすくらいはできる分はあった。
複数の国が攻め込んでもなりふり構わぬ反撃で刺し違える結果になるかもしれない---なんだかんだでアルビオンを恐れた結果、彼らは動けなかったのである。
とはいえ、受けた打撃からの回復を図るアルビオンとの間の国力差を埋めるくらいの努力は、この隙に進めるくらいはやっていたのをここに記す。
さて、そのアルビオンであるが、失われた20年の間にようやっと内燃機関についての研究が進んだ。
クリミア戦争の際に得たバクー油田により、航空機に使われる燃料の元かもしれない物質を得て、それを調べ、研究を重ねていたのだ。
この油田という安定生産が可能な供給源を得て、潤沢に使えるようになったことはアルビオンにとり、途方もない価値があった。
ここにきてようやく、アルビオンは腰を落ち着けて研究をする機会が得られたのだ。
訳もわからず使うのではなく、きちんと基礎の基礎から調べていくことで、何であるかにようやく認識が追い付き始めたのである。
自力での内燃機関の開発を行う中で、意味不明なままに放置されていた情報や知識の意味が分かってきたというわけである。
尤も、この内燃研究そのものは各国でも同様に進んでいたのは言うまでもない。
特にロシアでは内燃機関を早くから取り入れており、そのおかげもあって安定して戦場で航空機を運用できていたのだ。
クリミア戦争にこそ敗北したものの、アルビオンの覇権の牙城が無敵でないと明らかにし、その支えである航空艦への対処方法と技術を得たのだからプラスだった。
そも、クリミア戦争時にアルビオン軍に多量の出血を強いることができたのものこれの研究の成果なのだが、これはまた別な機会に譲ろう。
内部分裂のにおいが漂い始めたころ、アルビオンは自国での内燃機関の開発及び飛行機を実現していた。
未だにSg-20の姿はあったもののその稼働状態は非常に良好になったし、コピー生産品も生まれていた。
さらに言えば、自国で開発された航空機もまた、アルビオンの空にあった。
Sg-20の時点で実現していたものが、そこに生かされていたのだ。
兵器とは芸術品にあらず、工業品にあり。
共通の規格や寸法、徹底したマニュアル化による質の均一化、不良品を生産段階で統計学的に弾くことによる品質の向上。
あるいは匿名的だった品質チェック体制の開示---フローレンスが医療品工場で導入したものが、こちらにも輸入され、活用されたのである。
ともあれ、アルビオンはようやくスタートラインにつくことに成功し、長い道を走りだした。
そして、革命を経て東西に分断されたアルビオンにおいてさらなる役を担うことになるのだった
115 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/22(水) 00:09:46 ID:softbank126036058190.bbtec.net [9/109]
以上、wiki転載はご自由に。
次回は王国と共和国における航空機事情を。
そしたらひと段落ですね。
最終更新:2024年08月23日 22:16