337 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/23(木) 23:09:11 ID:softbank126036058190.bbtec.net [18/109]

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」小話「アルビオン航空機狂騒曲」6



 アルビオンという超大国が王国と共和国に分裂した後、航空機開発はさらに加速した。
 理由は複数あるが、やはりは隣接する敵国への対抗という意味が大きかったのは言うまでもないだろう。
直接的な戦争が立地などの関係から難しくなり、影の戦争---諜報などを主軸とした争いに主軸を移したことがそれを加速させた。

 既存の軍備で土地の奪い合いなどをすると陣営問わず甚大な被害が出るため、直接戦闘を双方が嫌ったというわけだ。
互いの政府および主要な機関や資産、そしてケイバーライト鉱石の産出地域や設備が失われることを恐れていた。
そのまま双方が疲弊すれば、ここぞとばかりに他国が侵略を開始してもおかしくはない。
そうすれば共倒れという可能性が見えたために、両国は互いに対して決定的な優位を得られる何かを欲したのである。

 そこでなぜ航空機が出るか、と言えばパフォーマンスが優れているからだった。
 これは北米東西戦争やクリミア戦争で明らかになったことだが、航空機は要所をピンポイントで破壊できるという強みがあった。
練度と装備こそ必要という条件をクリアできれば、航空艦や野戦砲などと比較して狭い範囲だが、狙ったところだけを破壊できるのである。
土地や建造物への被害---目標達成のためのコラテラル・ダメージを小さくできるというのは、その後を考える両国にとって魅力的過ぎたのだ。
先に整備を整えたほうが、相手の喉元にナイフを突きつけることにつながる---王国も共和国も研究などを急いだわけである。
 同時に、ナイフを防ぐ手段---航空機を発見・迎撃するシステムもソフト・ハード両面で開発がすすめられた。
ロンドンの壁には高射砲や対空機関砲が林立し、あるいは航空機を発見するための監視所が設けられた。
そこから司令部へとつながる連絡手段も研究が急がれ、速やかな即応体制が確立されていった。
司令部から先は?当然、空軍の航空基地につながる。いつ何時相手国の航空機が突入してくるか不明。
なればこそ、警戒機を常に張り付けておくほかにも、即応の迎撃機の準備と運用体制の確立が急がれたのである。
そういう立地になったからこその必要とはいえ、あまりにも速いスクランブルや防空識別圏といった概念の成立であった。

 ついでに、この航空機開発は王国・共和国の双方で急速に進められた。
 コピー品のSg-20の運用を行いつつも、互いが互いの航空機を超えるものを生み出そうと競い合いが発生した。
なまじっか国威だけでなく国家の正当性などをめぐっての争いで、なおかつ隣国同士なのだ。
予算と人材と資源は惜しみなく投じられ、またそれを取り巻く影の戦争の激化は必然として発生した。
互いが互いの開発状況や防空体制などを盗み見しようと画策し、あるいは妨害工作を仕掛けたり、技術者を亡命させたり---まさに加熱していった。

338 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/23(木) 23:10:04 ID:softbank126036058190.bbtec.net [19/109]

 さて、ナイフが鋭くなると今度は刺さった時のことを考えたくなるのが常というものだ。
 快速の航空機によって防空圏を飛び越え、標的のいる家屋および建造物に爆弾をデリバリーするという、史実アメリカ的な暗殺が可能になった。
同時にそれを相手がやってきた時のことを考えなくてはならなくなったのだ。
監視体制を作り、哨戒飛行やスクランブル体制が出来上がったとしても、それを必ずしも阻止できるとは限らないのだ。
アルビオン両国は航空艦隊を有していたから、高高度から降ってくる爆弾なりなんなりの威力が強力なことは理解していた。
建造物が頑強に作られているのは周知の事実だが、果たして航空機以前の時代に作られた建物で防げるだろうか?と。
これが普通の建造物ならば改築するなりすればよいわけだが、歴史的建造物などはそうもいかない。
相手国もそういったモノに手を出しにくい筈とは考えたが、なりふり構わなくなった時に抑止力とならない可能性は高い。
 ここで発揮されたのが、アルビオン王国が磨いてきた地下を掘削する土木技術であった。
伊達に何十年もケイバーライトを求めて露天掘りを進めてきたわけではなく、彼らは器用に既存の建造物の地下に退避壕や防空壕を整備してのけたのだ。
いや、単なる航空機想定どころではなく、航空艦による艦砲射撃さえも想定した、極めて頑強なものが整備されたのだ。
その存在を秘匿されたものから、公的に明かされたものまで---アルビオン両国の持つ恐怖は時代不相応な代物を実現せしめたのだった。

 これらの競争こそが、各国に後れを取っていたアルビオン両国の技術水準を押し上げ、他国に並ぶかそれ以上に至らせることになった。
アルビオンを裏からも表からも観測し、監視し、隙を伺い続けている各国が慌てて後追いに走る光景が見られるほどに。
 さしもの夢幻会も、アルビオンの持つ底力に慄き---同時にここに技術が放り込まれると恐竜的進化を遂げることを察して恐怖を覚えた。
発展していけば、それはやがて史実WW2でイギリスが実行に移したものに?がり、やがては夢幻会の知る現代の防空システムにたどり着くのだから。
 これらの事実を以て、夢幻会は改めて「アルビオン恐るべし」と認識を強めたのだった。

 なお、ここにおいて一つの例外的な空域が存在したことをここに述べておこう。
 語るまでもないが、通称「ナイチンゲール・ポイント」---小陸軍省のある地域を中心とする中立地帯であった。
革命によってアルビオン王国が二つの国に分断された時から存在する、ロンドンの中立地域。
共和国にフローレンスのシンパが多くいたこと、王国では女王が自ら禁じたことなどが合わさり、その地域は維持され続けていた。
 そして、それは双方が航空機を配備してにらみ合う環境下においても、むしろ拡張を続けていた。
 その領域にいかなる理由があっても戦闘目的の航空機を侵入させるべからず---両国の暗黙の協定が結ばれたのだ。
如何に両国においてフローレンスとその周辺の人物の価値が高いかを語り、また影響力の強さをうかがわせるものといえよう。
「ナイチンゲール・ポイント」を維持することが両国にとっては都合がよかったというのもあるだろう。
とはいえ、一個人の始めた活動に端を発して生じたこのエリアがそこまでの影響力を持つのは、まさに偉大さを物語ると言える。

339 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/05/23(木) 23:10:37 ID:softbank126036058190.bbtec.net [20/109]

以上、wiki転載はご自由に。

アルビオンの航空史のようなものでした。

次からクリミア戦争に視点を移す予定です。
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最終更新:2024年08月23日 22:20