746:モントゴメリー:2024/04/21(日) 00:54:24 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
日蘭世界SS——「新時代の発電機」——
時は1990年代初頭、所はグレートブリテン島の某所。
そこではある施設の完成記念式典が行われていた。
「では、試運転を開始します」
所長が居並ぶ記者たちに宣言すると同時に、装置が目覚める。
その装置は発電機なのだが、従来のそれとは根本的に異なっていた。
…タービン(羽根車)がないのである。
その発電機は『MHD発電機』と呼ばれる。
MHDとは「Magneto-Hydro-Dynamics」の略であり、日本語では電磁流体力学を意味する。
どういう原理かを説明するためには、“ファラデーの法則”をおさらいする必要がある。
諸々を端折り乱暴に説明すると、磁界を横切るように導電性の流体を流してそこから電気を生み出すのである。
その原理自体は手回し発電機から使われ続けてきたが、MHD発電ではその流体に導電性の高温ガスを利用しているのが画期的な点である。
従来の発電機の様にタービンを回すために一度運動エネルギーに変換する必要がないため高い変換効率が期待できる。
理論上の発電効率は50%を越える。
さらに、発電機内部に可動部品がないため構造も単純化できる。
まさに理想の発電機であるが、実用化にはある“問題”を解決する必要があったため、未だ世界中で成功例は無かった。
唯一大洋連合において爆薬式即応発電機として実戦配備されているが、これは電磁投射砲のための電力を確保するためのものであり、瞬発的な発電は可能であるが持続的な発電は不可能である。
しかし——
「…発電量、規定値を1時間維持しました。試運転は成功です!」
担当者の言葉の後、室内は歓喜の声に包まれた。
ついに、英国は、BCは、夢の超高効率発電を実用化したのである。
これにより、増加する一方であった電量消費量を賄える発電量を余裕をもって確保できる目途が立った。
「ワード卿、成功しました!!ここまでたどり着けたのは全て貴方のおかげです」
所長は男性——モーリス・ワード卿の手を取り叫ぶ。
彼の言う通り、MHD発電機はワード卿無しでは生まれなかった。
MHD発電機実用化の問題とは、「耐熱性」であった。
前述したとおり、MHD発電機は内部に高温の流体を流す必要があるのであるが、この高温とは具体的には2000℃から3000℃に達するのである。
これほどの温度では、並大抵の素材ではすぐに融解してしまい、持続的な発電は不可能だったのだ。
そこに救世主として現れたのが、ワード卿が発明したスターライト樹脂だった。
1万℃のレーザー光線にも耐えるスターライト樹脂にかかれば、3000℃程度のガスなど敵ではなかった。
誰かが歌い始めた。
最初は一人であったが、やがて室内の全員が唱和していく。
——Rule, Britannia!海を統べよ 英国の民は隷属せじ!
747:モントゴメリー:2024/04/21(日) 00:57:04 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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BC国民「「「Rule, Britannia!海を統べよ 英国の民は隷属せじ!」」」
文中でも申した通り、MHD発電は正に夢の発電機、革命的と言って良い存在です。
発電効率50%
比較すると原子力発電は30%前後となります。
(こっちは文字通り桁違いの『分母』で押し切っているのですが)
研究は継続していますが、こっちでは爆薬式ですら実用化しておりません。
ですが…。これ、スターライト樹脂があれば何とかなりそうなんですよね。
日本の転生チート集団に対して、各国が一人の天才を酷使して対抗するのが日蘭世界ですが、FFRとCISは政治部門のチート(鉄人ズ)でBCは技術部門のチートが特徴となっております。
多分BCの教科書では「18世紀のバベッジ卿、20世紀のワード卿」と讃えられることでしょう。
最終更新:2024年08月25日 00:40