143:奥羽人:2024/05/23(木) 20:42:17 HOST:sp49-109-150-228.tck02.spmode.ne.jp


「どんな些細な報告でもいい!早急に事態を把握しなければならん!!」


1970年代後半
とある日本大陸世界にて。

よくも悪くもなくほどほどに世界との付き合いを続けていた日本の、何の変哲も無い筈だったとある日中。

突如、地面が揺れた。

どこかを震源とする地震ではない、日本の国土の、その全体が揺れていた。
震度自体は強くてもせいぜい2程度であり、揺れそのものなら日本社会の耐震システムを以て余裕で耐えられる程度に過ぎないが……その揺れは、日本全国各地で均等に発生した。

数秒後、唐突に始まる強烈な電波障害。
無線通信の一切が途絶し、有線機器ですら強いノイズが走る程の超高エネルギーEMPに似た空間放射が発生。

次の瞬間、空が極彩色の光で溢れかえった。

……十数秒の完全な情報的孤立の後、それら怪現象は跡形もなく消え去った。
まるで、初めから何事も無かったかのように。

「状況確認を急がせろ!!」
「空軍に連絡だ!戦闘機からの報告は!?」
「核爆発でないことは明白ですが…今は何とも…」

通信が回復したのを切っ掛けに、急速な現状確認を進めていく日本政府や各種機関。
空軍基地から戦闘機がスクランブル発進し、空からの目を以て何か異変が無いかと探し回り、陸軍が突発的な大規模災害に備えて厳戒態勢を取る。

「こちらワカサギリーダー、現在宮城県沖合いを飛行中だった筈だが……管制、当機の現在位置を教えてくれ」

「ここ、確かに海だったよな…?」

『ワカサギ、国籍不明機が接近中!方位────』



──そうして、一応の現状が政府首脳部に集められた。

「……総理、結論から申しあげますと、北海道および東北の東に出現した未知の陸地は……イベリア半島とフランス本土であることが確認されました」

「欧州各国の当局に確認を取ったところ、我々に異変が発生したのと同時刻に同じような現象が起きたとのことです」

「現時点で判明したことをまとめると……我が国の国土は、異変発生と同時に西太平洋から消失、大西洋沿岸部に転移したということになります」

「SFかよ…」

「現在、ポルトガル、スペイン、フランス、イギリス、アイルランドと暫定的な国境画定交渉を始めています」

「太平洋地域で作戦中だった艦隊に帰投命令を出していますが、大西洋までの航海となると燃料や物資が足りません、至急補給艦艇を派遣してください」


“転移”の影響は絶大だった。
日本国土の跳躍に伴い発生した海面変動は、大型の津波となって太平洋と大西洋の沿岸部を直撃。
地続き、あるいは距離が近すぎた為に津波の被害を受けなかった西欧を除き、世界各国が大なり小なり被害を被った。

特に、アメリカ合衆国。
ニューヨークを始めとする東海岸に数mの津波が到達して混乱状態に陥った所に、時間差で太平洋を横断してきた津波が西海岸を直撃。
両岸から発せられるSOSを前に、アメリカ政府は暫く右往左往することとなる。

地政学的変化から来る政治的・経済的混乱が先進国を中心に炸裂し、一時は宗教やカルト思想すら巻き込んだ騒乱にまで発展した。

とはいえ、致命傷とはならなかったのが幸いか。
確かに世界は十年単位の損害を受けたものの、それは逆に、十年単位で取り組めば治せる傷でもあるということだ。

幸い、日本と世界の関係は悪くなく、手を取り合って復興に取り組む事は難しくなかった。

……平穏が続けば、の話だが。






『東ドイツ、チェコスロバキア、ユーゴスラビアに大規模なWTO軍の集結を確認……通信量も格段に増加しています』

144:奥羽人:2024/05/23(木) 20:44:53 HOST:sp49-109-150-228.tck02.spmode.ne.jp
以上となります。転載大丈夫です。
ひょんなことから西欧と陸続きになった日本大陸です。海流とか気候とかは奇跡的になんかいい感じに回復可能なレベルに収まってます

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最終更新:2024年09月06日 21:34