326:戦車の人:2024/05/31(金) 23:51:51 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp
60式戦車の派生型

0.概略

 先程の記述で述べた通り、60式戦車は量子コンピュータ及び量子格納技術の適用から、多様な派生型を生み出している。
 原型である60式戦車に搭載された複数の量子コンピュータによる分散処理と、10トン単位に及ぶ量子格納の恩恵はそれほど大きかった。
 またこの戦車が量子技術を除けば概ねオーソドックスな技術で作られ、戦闘艤装をモジュール化・ホットスワップ接続したことも無視できない。

 必要とあらば原型の車体を用い戦闘艤装を丸ごと新世代のものに換装も可能で、最終戦争以降はその発達余裕を最大限に活用。
 新装備開発と配備の余裕に乏しい中、西太平洋条約機構陸軍の機甲戦力を長きに渡って担い続けている。
 単純に軍事予算が削減されただけではなく、量子コンピュータを用いたモジュール換装・収納技術による発達余裕も功を奏したのだ。

 故に原型である戦車の開発段階から多様な派生型設計が行われ、機甲科以外の各種兵科部隊に大量に配備されることになる。
 MBTをベーシックとしているために重厚長大ではあるが、盟主である日本の支援等により、産業及び流通インフラ効率化が進んでいたこと。
 何よりABC兵器を拳銃弾よりも気軽に使ってくる米中ソが最大の仮想敵故に、加盟国陸軍の間でも不満や疑問はなかった。


 戦車運用に必要不可欠な戦車回収車は当然として、人海戦術相手に必須な野戦築城に不可欠な重戦闘工兵車。
 米軍のパワーアーマーに匹敵し、より洗練された強化外骨格を纏う重装歩兵の支援に最適化された新型歩兵戦闘車。
 量子格納を最大限に用い、大量の弾薬と装薬を搭載した自走榴弾砲など、60式派生型は殆どの戦闘兵科部隊に配備された。

 その中でやや異彩を放つ派生型が重指揮通信車である。この車両は量子格納技術を自衛用武装の弾薬以外に殆ど用いていない。
 一方で他の車両よりも更に多重化された量子コンピュータ分散処理システムと、やはり量子化された高速通信システムに特化。
 指揮下戦域部隊の有機的な運用支援を一義とし、更には各種車両の戦闘情報の蓄積と司令部への送信さえ担っている。

 やや古い言葉を使えば学習型コンピュータであり、前線で戦う戦闘車輌のAI及び乗員の戦闘経験を処理、蓄積、送信するのだ。
 勿論演習においてもそれは最大限活用され、様々なミスや経験に基づく是正情報を戦闘部隊に適用し、能力向上に努めている。
 このような経験の蓄積と最適化により、60式戦車とその派生型による装甲戦闘団は、最終戦争以降も長く主力足り得たのである。

327:戦車の人:2024/05/31(金) 23:53:35 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp
1.61式自走175ミリ榴弾砲

 60式戦車を原型に砲塔を撤去し、左右90度限定旋回方式の大型砲塔を備えた自走砲。砲兵システムは全て砲塔に収まっている。
 MBTの車体を原型に砲塔で完結するシステムを搭載した自走砲は珍しくなく、西太平洋条約機構軍においても複数が配備されてきた。
 一方で量子格納技術の実用化により、これまで155ミリが標準とされてきた砲を175ミリまで拡大し、射程と破砕能力を強化している。

 量子コンピュータ及びネットワーク主体の共同交戦能力は言うに及ばずとして、この自走砲の最たる特徴は175ミリという大口径砲である。
 砲身長50口径、弾薬重量70キロ、量子格納適用の自動装填装置を用いて、継続で毎分10発の投射能力を有している。
 また原型と同様に液体装薬を用いることで有効射程60キロを達成し、最大60分に達する長時間射撃に備え外部砲身冷却装置も有する。

 これほどの大火力システムを構築した理由は言うまでもなく、人海戦術を精密迅速かつ長時間の効力射で破砕するために他ならない。
 弾薬は通常榴弾の他に対軽装甲能力も持つ多弾頭弾、サーモバリック弾、発煙弾、照明弾、そして最悪に備え戦術核砲弾も存在する。
 なお最終戦争で多用されたのは多弾頭弾とサーモバリック榴弾で、中ソ連合軍をアウトレンジから着実に減殺し続けた。


 車高3メートル以上に達する大振りな砲塔には主砲、自動装填装置、量子コンピュータ及び通信システム、乗員3名が配備されている。
 大口径砲弾を用いるために自動装填装置の即応弾は12発と少ないが、量子格納領域に定数で240発。最大600発を収納している。
 またFCSは直接戦闘も想定しており、大口径榴弾の直射・速射により浸透を図った敵部隊を殲滅したケースも少なくはない。

 戦闘重量は実に65トンとフル装備の60式戦車と同等レベルで、原型ほどではないにしても、砲塔・車体双方に複合装甲を適用。
 歩兵携帯対戦車装備やABC兵器至近炸裂には十分耐久可能で、砲塔上にはテレスコープ20ミリ機関砲がRWSを介して装備されている。
 そして60式譲りの優秀な駆動系を用いることで最大毎時80キロ以上、固有燃料で500キロ以上の航続距離も獲得している。

 言うまでもなく高価な重自走砲ではあるが原型である戦車とC4Iや駆動系で共通化を図り、条約機構加盟国の過半で生産可能でもあった。
 また中小国には戦闘艤装生産を任せ、ノックダウン生産も併用することで、米中戦争勃発の2066年には現役砲兵部隊への配備を終えている。
 中ソ人海戦術に対しては精密、高速、長射程な効力射を延々と継続し、多数の敵歩兵や砲兵。そして指揮通信機能破砕に貢献している。

328:戦車の人:2024/05/31(金) 23:54:17 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp
2.64式重装甲戦闘車

 60式派生型の中では比較的後発に部類される大型歩兵戦闘車。兵員輸送車の常としてパワーパックを車体後部から前部配置に変更。
 内部容積の最大化と効率化を図り、同時に乗車歩兵の迅速な車体後部からの降車を行うなど、一般的な構造を採用している。
 この歩兵戦闘車において特筆すべきは量子格納技術を用いることで、車体規模を肥大化させず強化外骨格歩兵に最適化したことにある。

 日本及び西太平洋条約機構軍の用いる強化外骨格-パワードスーツは安全な小型核融合電池を用い、また標準規格フレーム方式を採用。
 必要に応じて装甲、電子機材を容易に換装可能な構造を採用しており、電動アシストの最適化により機動力も軽快なものである。
 防御力についても14.5ミリ徹甲弾や榴弾破片等に耐え、ABC防護も有し、優秀な装備であったが、歩兵を二回りほど大型化したサイズとなった。

 故に既存の兵員輸送車では著しく乗車兵員数が減少し、居住性も良いとは言えず、主力戦車ベースの歩兵戦闘車開発は前から望まれていた。
 そこに量子格納技術が軍用に耐える形で普及し、乗車する歩兵は降車直前のみ強化外骨格を展開、装備することが可能になった。
 無論、常時外骨格装備状態でも8名を搭載可能だが、乗車歩兵の疲労軽減や多数の重装備搭載という点で、非常に有用な技術である。


 駆動系を車体前部に配置したことにより、車体正面等の複合装甲は整備性の観点から、主力戦車ほど堅牢ではなく、軽量素材も多用している。
 一方で外装モジュール装甲の二重展開機能は健在で、AFV関連技術で劣後する米中戦車の徹甲弾、対戦車榴弾には十分耐久可能。
 あるいはABC防護も完備されており、広角度レーザー検知器やアクティブ防護システム等も、原型たる60式同様に完備されている。

 武装は無人砲塔に80口径50ミリテレスコープ機関砲を搭載し、主に知能化多目的榴弾による軽装甲目標や歩兵の制圧を重んじている。
 砲同軸には強化外骨格用の新規格7.7ミリ機関銃の車載型が搭載され、防弾ベスト程度の軽歩兵なら1500メートルより排除可能である。
 流石に原型ほど高度ではないが量子計算・通信能力に支えられた、共同交戦能力もこれら搭載火器の効率的な運用を支えている。

 最大戦闘重量は58トンと歩兵戦闘車としては異例であり、デチューンされたとはいえ2400馬力の高効率ディーゼルあっての重戦闘車である。
 強化外骨格歩兵と兵員輸送車のミスマッチを解消すべく、時に他の派生型よりも優先した生産も行われ、配備ペースは非常に早かった。
 最終戦争での奮戦は言うに及ばず、最終戦争以降はAI無人運用と戦闘用アンドロイド用の拠点車両として活躍することになる。

329:戦車の人:2024/05/31(金) 23:55:15 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp
3.62式重工兵戦闘車

 60式の派生型及び重強化外骨格の大量配備は、ABC防護を兼ねて急速な野戦築城がこれまで以上に必要となり、新規車両が要求された。
 また可能ならば量子格納技術を用いることでドーザー、バケッド、架橋、地雷処理装置などを、迅速に外部交換可能な事も望ましいとされた。
 幸いにして60式戦車開発後期段階において、量子コンピュータによる格納容量は30トンを超えることが見込まれ、こちらも実用化の目処が立った。

 実のところこの車両は戦車回収車を原型としており、擱座した60式戦車やその派生型を後方まで牽引輸送することも可能である。
 そして戦車回収車の開発途上において量子格納技術を適用すれば、戦闘工兵車としても運用可能ではないかと、汎用化推進が決定。
 故に本車の外見は戦車回収車そのものであり、必要に応じてドーザー、クレーン、バケッド、地雷処理ロケットを量子格納領域より展開する。

 また速乾性の重防御ベトンや鉄筋、知能化地雷などの築城資材も相応に格納可能であり、兵站部隊の負担をある程度軽減している。
 築城、地雷処理、もしくは地雷敷設などにおいて、最適装備展開を部隊単位でAIがリコメンドし、運用兵員が承認する形も有している。
 本車を用いた急速野戦築城は既存工兵車両の数倍の効率を発揮し、ある意味では戦車や歩兵戦闘車よりも重要性は大きかった。


 そしてそれだけ重要性の大きな車両故に、パワーパック車体後部配置を継承したことから、原型である戦車に準じる重装甲も有する。
 量子通信や格納技術が未知数であったとしても、主力戦車の車体を用いた戦闘工兵車の価値は誰が見ても理解できるものである。
 当然、戦場では戦車以上の火力投射に晒されることが予想され、基本装甲と外装モジュール装甲の二重構造等も継承されている。

 装甲以外の防御手段としてはアクティブ防護システム。そしてコンフォーマルミリ波AESAレーダ、広角度レーザー検知器複数の搭載。
 自衛手段としては20ミリテレスコープ機関砲と7.7ミリ機関銃を搭載したRWSが、それなりの自動化FCSと一体化され搭載されている。
 勿論、敵戦車や歩兵、航空機などの直接攻撃圏内に突入した場合は、可能な限り友軍支援を仰ぐのが最適解であるが。

 最終戦争においては中ソ人海戦術を想定し東南アジア戦線において、ABC防護も視野に入れた多重防御ラインの迅速な構築に貢献。
 友軍撤退から逆襲による陣地奪還後の復旧作業も極めて迅速であり、物量に勝る人海戦術を前に継戦能力維持に大いに活躍した。
 最終戦争以降は障害排除及び除染装置を搭載し、汚染状態を知らせる無人兵器やアンドロイドと連携し、国土浄化に尽力している。

330:戦車の人:2024/05/31(金) 23:56:02 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp

4.61式野戦防空車

 基本的に日本及び西太平洋条約機構軍の海軍、空軍の能力は米中に対して大きく優位だが、野戦防空を疎かにも出来なかった。
 仮に自爆戦術を有人機で行われた際に携帯地対空ミサイルしかないのでは話にならず、米軍なら無人機開発もあり得ないわけではない。
 何より自前の野戦防空を疎かにするという習慣は日本陸軍に存在せず、当然、次世代戦車を原型とした野戦防空車両開発に至った。

 車体はほとんど60式戦車そのままであり、駆動系および防御能力も概ねそれに準じている。ABC防御に加え空襲にも備えねばならない。
 故に可能な限りの重防御を維持しており、駆動系も防空車両に必須の大電力を供給するため、原型そのままの大出力を有する。
 そのような構造から砲塔以外は原型と完全に共通化されており、開発及び生産開始は早い段階で進み、整備性にも優れていた。

 防空車両の要となるC4Iについては、砲塔上面に4面固定式の捜索・射撃管制兼用AESAレーダをセンサシステムとして搭載。
 最大100キロ以上の全周経空脅威探知に対応し、同時に三桁の目標を自動追尾可能で、AESAアンテナ故に損害にも強い。
 処理系には当然量子コンピュータの並列処理が量子通信と共に適用され、バックアップの電子光学センサーも高度なものを有している。


 共同交戦能力と高度なセンサーに基づき投射される防空火力だが、この野戦防空車はSAMと機関砲の二段構えを備えている。
 AESA誘導部を備え有効射程20キロを超える短距離SAM発射装置を4基、80口径50ミリテレスコープ機関砲2門を2名砲塔に備える。
 勿論、これら地対空ミサイル及び機関砲の予備弾薬は、量子格納領域に豊富に備えられ、継戦能力は相応に優れている。

 中射程SAM部隊や空軍無人警戒機と連接、共同交戦能力を常時発揮することで、超音速巡航ミサイルにも十分対応可能である。
 超低空目標に対しても即応性は高く、調整破片榴弾を用いる50ミリ機関砲2門は、有効射程8キロにも達し、発射速度も高い。
 万が一に敵AFVに近接された場合に備え徹甲弾も準備され、こちらは射程2000メートルから均質圧延装甲250ミリを貫通可能である。

 諸兵科連合運用を行う際には大隊戦闘団あたり1個小隊4台が最低でも配備され、有事に際しての米中ソの空襲に備えた。
 なお最終戦争では圧倒的な航空優勢確立により、どちらかといえば人海に対する対地掃討射撃で活躍を示すことになった。
 そして最終戦争終了以降は経空脅威激減によりSAMを撤廃、50ミリ機関砲4門に換装。変異生物の駆除などに投入されている。

331:戦車の人:2024/05/31(金) 23:57:02 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp

5.60式装甲指揮通信車

 量子通信及び量子格納技術が軍にも適用された際、最優先で三軍で研究と実用化。普及が行われたのは指揮通信である。
 既存のコンピュータ及びデジタル通信に比較しても数倍から数十倍に及ぶ能力は、前線から兵站まで恩恵は計り知れない。
 事実、民間の流通業界で真っ先に開発と実用化が行われて以降、西太平洋条約機構の国力は桁違いに向上しているのである。

 故に野戦部隊向けの指揮通信車は海軍艦艇、空軍航空機への適用と並んで、最優先での開発が陸軍で行われている。
 機甲科で新型戦車開発が進捗していることは当然、HVUの重防御に最適としてファミリー化開発にねじ込まれた。
 また原型である60式戦車が徹底したモジュール構造を採用しており、指揮通信車両への改修が容易なことも幸いしている。

 原型と同程度の重装甲及びアクティブ防護システムを備えつつ、砲塔や戦闘室を撤去し相応に広大な指揮所容積を確保。
 3000馬力の小型高校率ディーゼルにより十分な電力を確保することで、指揮用コンソールやより冗長化された量子コンピュータ群の搭載。
 そして量子コンピュータ多数の能力を量子格納ではなく指揮通信全てに割り振ることで、陸海空統合運用にも対応している。


 その指揮通信能力がどれほどかといえば、衛星量子通信が到達する圏内であれば、三桁に達する陸海空軍ユニットに同時接続。
 AI支援を受けた最適化共同交戦指揮を発動可能であり、海軍のミサイル巡洋艦のCICを搭載したAFVと称しても差し支えはない。
 また高度なAI支援により指揮運用人員8名程度でこの能力を発揮可能で、ABC兵器を多用する米中ソを相手に欠かせない存在となった。

 防御力も概ね原型である60式戦車に準じており、砲塔に代わり搭載された指揮通信モジュールにも多層複合装甲を二重で適用。
 アクティブ防護システムやRWSも完備され、如何なる過酷な状況においても戦域統合運用を継続する努力が払われている。
 60式戦車及び派生型からなる戦闘団が対抗演習で、既存装備の精鋭師団を圧倒した最大の原動力とさえ評価されている。

 勿論既存の装甲車両や重火器等を有する部隊への指揮通信にも有効であり、原型である戦車と同等の優先順位で生産が行われた。
 最終戦争の人海戦術に対する戦闘では、往々にして前線が突破される状況でも最適な指揮運用を継続し、敵野戦軍撃滅に貢献。
 そして最終戦争以降は無人機等の収集した汚染情報共有化、浄化ないし害獣駆除部隊の効率的な運用を支え続けた。

332:戦車の人:2024/05/31(金) 23:57:48 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp

6.63式無人機運用支援車

 日本及び西太平洋条約機構軍は陸海空を問わず、最終戦争の半世紀以上前から多彩な無人兵器を運用してきた実績を持つ。
 仮に索敵・偵察のみでも無人装備で担うことが可能ならば、軍全体の背負うリスクと損害が著しく減少するのは、言うまでもない。
 ましてあの大使館襲撃事件以降、明確に仮想敵となった米中ソは戦術レベルで、平然とABC兵器を使う-率直に言えば「人でなし」である。

 故に無人兵器の活動領域は時代を追うごとに拡大され、有名なものとしては人格すら有する高度なAIを備えるアンドロイド等であろう。
 あらゆる兵科部隊で多用された彼ら以外にも、野戦用無人兵器は非常に多く装備され、やがて量子演算処理と量子通信がそこへ加わった。
 60式戦車とその派生型を主力とする戦闘団においても、同種の無人兵器運用支援に特化した車両が開発されるのは、必然であった。

 多様な無人兵器の管制運用をリアルタイムで行うため、原型は60式装甲指揮通信車そのもので、やや量子演算領域を無人機格納に転用。
 あるいは外部に最初から無人機を展開させ、状況に応じた各種偵察及び情報収集、場合によっては阻止攻撃任務なども管制する。
 そのため原型の指揮通信車に比べ、車体後部が大きく車高が増大し、各種無人機の即応格納庫と射出機が備えられている。


 主に用いる無人兵器は小型核融合電池によるモーター駆動で、低空を飛翔し、電子光学センサとAESAレーダで偵察を行う小型無人航空機。
 そして合成繊維履帯を足回りに用い、やはり核融合電池による電気駆動で陸路を静かに走る、装軌無人偵察車の二種類を搭載、運用する。
 前者は車体後部上面の小型カタパルトより、後者は車体後部格納庫側面よりスロープで展開し、搭載定数は無人航空機4機と無人車両6台である。

 何れもミリ波AESAレーダ、電子光学センサを標準で搭載し、電気駆動式故に静粛性に優れ、電波反射面積や赤外線輻射も低く抑えられている。
 稼働時間は無人航空機が毎時150キロ程度で半日以上、無人偵察車が巡航70キロで10時間以上とされ、常時量子通信で運用支援車と連接。
 支援車と無人機双方のAI支援処理を用い、静粛に情報収集活動が可能で、限定的ながら周辺環境に合わせた光学迷彩さえ有している。

 静粛性とステルス性を維持しつつ、敵陣奥深くに浸透し、運用支援車と指揮通信車双方と連接し、確実に的確な攻撃を誘導する能力を発揮。
 故に敵軍から優先攻撃目標とされ、相当数が撃破されたものの、陸戦においても西太平洋条約機構軍が後手に回ることを常に防ぐ活躍を示した。
 最終戦争以降の陸上状況偵察等でも当然活用され、機械仕掛けの歩哨達を適宜運用し、情報収集と損害極限に尽力し続けている。

333:戦車の人:2024/05/31(金) 23:58:42 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp

7.機甲戦闘団ドクトリン

 日本陸軍をはじめとする西太平洋条約機構軍の地上戦ドクトリンは、旅団編制戦闘団を基幹とし、この戦闘団複数で師団を構築している。
 根幹となる旅団戦闘団は戦車・機械化歩兵各2個大隊、防空大隊、工兵大隊、後方支援大隊、偵察大隊等から編成されている。
 かなりの装備が無人化されていることから規模に比して兵員数は5000名程度と少ないが、戦闘力は米中の機甲師団を凌駕するものを発揮した。

 軍隊の常として情報収集と指揮通信を重んじており、攻勢・防御戦闘何れにおいても、指揮通信車が周辺上位部隊・空海軍と量子通信を確立。
 情報共有を常時行い、旅団戦闘団自体からも偵察大隊の各種無人機による情報収集を隠密に行い、敵軍の動向と情勢を掌握。
 仮に攻勢戦闘であっても数量では敵が常に優位なことから、工兵大隊等による緊急築城を実施。最低で二重の半永久築城を展開。

 しかる後に旅団偵察大隊の無人機、あるいは空海軍の支援を受け、最適火力投射諸元を戦闘団全体で共有。まず砲兵大隊が攻撃を開始。
 175ミリ多目的運搬砲弾の効力射200発近くを、度々陣地転換を行い精密に投射し、後方敵砲兵部隊や司令部部隊を優先的に排除。
 我が空海軍や広域防空部隊を掻い潜った敵機が存在する場合は、防空大隊が最優先で処理を行い、戦域航空優勢の維持を行う。


 そして航空優勢、砲兵支援、指揮通信を奪った状態で、なおも「政治将校」に率いられた敵野戦軍を、機甲・機械化部隊の一部が誘引。
 この際にあえて統制の取れない撤退を装い、我が方が潰走していると誤認させ、工兵大隊が急速敷設した地雷原・野戦陣地正面へ誘導。
 知能化された多目的地雷を用い人海先端と最後方で爆破を行い、立ち往生した敵軍を戦車、機械化歩兵等の突撃破砕射撃で粉砕。

 勿論支援可能な空軍、海軍部隊があればその攻撃も誘導し、攻撃衝力を削いだ後に戦車、歩兵戦闘車、強化外骨格歩兵等が反撃に移行。
 インドシナ半島などで多発した陸戦の相手である中国軍などは特に、資源だけでなく「人間」の略奪さえ主目的としており、生かすわけにはゆかない。
 戦闘が生じた場合、可能な限り敵軍を鏖殺-率直に言えば皆殺しにすることを、特に60式系列で装備を固めた戦闘団は、強く意識していた。

 残虐と批判するのは容易であるが、仮に自分たちが突破された場合、銃後がどの様になるかを考えれば、自然とドクトリンも容赦ないものとなる。
 故にキルレシオは圧倒的なものとなったが、糧食さえ事欠く敵軍はそれでも戦闘を停止せず、我が方の損害もけして小さなものではなかった。
 なお旅団戦闘団ドクトリンは最終戦争以降も、車両無人化やネットワーク性能改善などを経て、変異生物や米中ソ残党軍駆除に効果を発揮している。

334:戦車の人:2024/05/31(金) 23:59:37 HOST:61-24-203-31.rev.home.ne.jp

8.あとがき

 60式戦車を原型として生まれたその眷属。量子通信及び電算処理、そして四次元格納システムを用いた車両で固められた戦闘団。
 彼らが圧倒的な物量の人海戦術を前にしても、秩序と統制を維持しつつ、どのように突撃を破砕して反撃に転じる術を作り出したか。
 その点が少しでも伝われば幸いに存じます。因みにAFVや無人機のイメージは佐藤大輔氏の「宇宙軍陸戦隊」をオマージュにしてみました。

 戦闘部隊、支援部隊を合計して7個大隊以上の規模でありながら、人間の兵員が比較的少ないのは、ヒューマノイドタイプのアンドロイド。
 そして偵察大隊向けの無人兵器などを多用してことにあり、戦闘団5000名の兵士の6割は工兵や後方支援大隊に配備されています。
 どれほど高度な自動兵器でも最後は人間が整備しないと動かないという観点から、戦闘部隊よりも人間の割合が多かったりします。

 なお強化外骨格を装備する歩兵に最適化した戦闘車がでかいという設定ですが、サイズ面で言えばFallout4のパワーアーマーサイズです。
 実はあれ、人間を一回り大きくした程度のサイズで、単機で街一つを壊滅させられる性能を持っており、なかなか莫迦にできません。
 勿論日本陸軍などが用いるパワーアーマーは、より安全性や機動力、電子装備に優れ、装甲溶接不備などはありませんが…


 そしてインドシナ半島などでは最終戦争以降も機甲旅団戦闘団多数が、動員を解かれずに現役にあり続けるだろうなあ…と思ってます。
 本土をアメリカ、そして日本の熱核兵器で吹き飛ばされたとは言え、元々の人口が非常に多く、その割に食料を筆頭に物資が枯渇している。
 ならば部隊ごとに軍閥化してなおも食料、水、工業製品、人間の略奪を継続するであろうし、同方面の陸戦は長期化するであろう、と。

 なお戦場の女神である砲兵は長砲身175ミリ自動装填榴弾砲を、量子格納技術と併用して投射してくる自走砲として完成させてみました。
 155ミリに比べ弾頭重量で大きく、203ミリよりは長砲身・高初速・射程拡大が行いやすい火砲として、敢えて選んでみました。
 なお量子格納能力を全て弾薬に用いた場合、砲身外部冷却が必要ですが、毎分10発以上で1時間も撃ってきます。ドラちゃんの無敵砲台かな?

 今回も長い投下となってしまい恐縮ですが、以上となります。まとめwikiへの転載はご自由にお願いいたします。
 なお陣龍様の投下で除染作業が相当迅速に進んだことから、インドシナ半島以外では60式系列。平和な時代を迎えるのが早いかもしれません。
 それはそれで東南アジア加盟国に供与され、レッドチャイニーズ残党を相手とした戦争に投入されるんでしょうが…
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最終更新:2024年09月08日 13:32