564 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/07/02(火) 23:54:18 ID:softbank126036058190.bbtec.net [33/69]

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」外伝「クリミアに小夜啼鳥は飛ぶ」4



 クリミア戦争の舞台は、名前の通りクリミア半島が中心となっている。
 基本的にはロシア帝国とオスマン帝国の争いであり、両者の間の土地で発生したわけであるがゆえに、そこが起点となって戦争が繰り広げられていたのである。
当然だが、アルビオン王国からすれば遥か遠方であり、航空艦艇などが発達する前ならばまさしく辺境であっただろう。
オスマン帝国と同盟を結んで戦う関係上、アルビオン王国はリ・レコンギスタ以来となる大規模な遠征軍の派遣することとなった。

 だが、問題だったのはそのような事情であるがゆえに常識がリ・レコンギスタ前後で停滞していた、ということだった。
大規模な軍勢を動かすとはどういうことか、遠隔地で戦うには何が必要なのか。知識も経験値も不足があったのだ。
 さらに問題なのは言質が欧州というよりは中東であったということだ。
 史実において編成され、派遣された遠征軍はロシア軍と戦う前に劣悪な環境で病気に苦しめられ、不衛生故の感染症などを散々に受けた。
史実において、意気揚々と出発した英国とフランスの遠征軍はろくに現地のことを調べていなかったために痛い目を見たのである。
事前にフローレンスの警告や指導があったものの、それの徹底に時間が足りなかったアルビオン王国軍の先遣隊は同じくして洗礼を受けることになった。
航空艦艇による膨大な輸送により物資こそ何とか存在したものの、現地の水や食料に触れた兵士たちは、史実同様にコレラや赤痢などに罹患したのだ。
これはオスマン帝国との同盟締結、そして派遣が行われ、ロシア帝国軍と交戦する前の出来事であったのだ。

 幸いであったのは、フローレンス自身はいなくとも、彼女の学校で教育を受けて実績を重ねた医師と看護師で構成された医療班が同行していたことであった。
彼らが可能であったのは初期対応であり、あくまでも対処療法にすぎないものであったのも確か。
さりとて、何もされないまま放置されたり、あるいは間違った対処をされ、死んでしまうよりも何倍も良かったのである。
 医療班は本隊の到着まで現場にある食料・水・衛生品などを活用し、次々と発生する患者に対応することに専念した。
遠隔地ということは、本土にこの窮状を伝えても伝わるまでに時間がかかるということである。
なればこそ、正しく必要な判断を選んだ。ここからは持久戦だと。

 当然、先遣隊の将兵たちからは反論の声が上がった。
 彼らはアルビオンの威信をかけ、あるいは国益のために命を懸ける戦いのためにここに来たのである。
それにもかかわらず、医師や看護師風情の命令で戦うことを中断せよとはどういうことなのだと文句をつけたのだ。
速く治療をしろ、さもなくば殺すとまで脅しをかける将兵までいたのである。
それは、コレラを理由として統制が行われ、患者の隔離などが行われる限界環境下での生存本能の発露であった。
兵士達だって死にたくはない。世界に覇を唱えるアルビオンの兵士だからと言って死なないわけではないのだ。

 しかし、医療班も必死だ。彼らは命がけで患者を救う義務があり、ひいては軍を崩壊させないようにすることが仕事なのだ。
 武器を向けられようが怒鳴り散らされようが決して譲ることなく対処を続行する。
徹底して患者を隔離し、汚物や排泄物を安全な場所まで運んで処分し、患者を隔離したテントの衛生状況を常によくする。
テントはやがて専用の病棟に置き換えられ、嘔吐物を受け入れて処分するための小道具なども、随行していった大工たちにより用意された。
そうして土台を整えたのちに、優先して水やアルコール消毒剤を湯水のように用いて、さらには衣服やベッドなども清潔に保つ努力を重ねる。
また、生理食塩水を経口投与ではなく血管から投与することで脱水症状を悪化させないようにしていたのだ。

565 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/07/02(火) 23:54:53 ID:softbank126036058190.bbtec.net [34/69]


 この極限環境は、何かの間違いで爆発しそうな爆弾のようですらあった。
 とはいえ、辛うじて秩序が残っていたのは、倒れた兵士たちが多くが生きていたことによる安堵感だった。
彼らは自分たちが死ぬかもしれないところから引き上げてくれた医師や看護師の働きをよく見ていて、それを忘れていなかったのである。

 さて、この時間稼ぎは果たして成功した。
 先遣隊に続き、セバストポリから追い出したロシア帝国軍を追撃するための次の部隊が到着したのである。
同時に、フローレンスを含めた医療を担う人材たちが先遣隊とは比較にならない量の物資を持って駆けつけることに成功したのである。
 ここで史実よりマシだったのは、航空艦による連絡の速さがあったことだった。
 つまり、先遣隊が陥った状況について艦隊に付随していた通報艦が本国へと持ち帰り、それを報告していたのである。
そしてそれを受けて大急ぎで準備を整えたうえで、本隊は航空艦という足の速さを利用して駆けつけることができたわけだ。

 責任者であるフローレンスが来たことで、軍の先遣隊の司令官は早速文句を言いに来たものの、1時間足らずで言い負かされて部屋から放り出された。
フローレンスはやることが多くあって、その為には時間がいくらあっても足りないという自覚があったのだ。
事前の情報を収集するように進言してもやらず、こちらで行った調査の情報を無視し、挙句に少なくはない死者を戦闘前に出した人間など知らないのだ。

 そして続けて行ったのは現状把握---の前に先遣隊の医療班への感謝であった。
 彼らは本来の予定以上の仕事をぶっ続けで行ったのだ。どう考えても休養や休息は必須であった。
事実として先遣隊の医療班の疲労は色濃く、中にはコレラや赤痢に感染してしまった人員さえもいたのだ。
ローテーションを維持するためにも、そして疫病の連鎖を断つためにも、彼らには相応の対応が必要となったのである。

 だが、無情にも戦場では戦端が開かれ、医療班は仕事を本格的に始めることになった。
 新兵器である航空機や飛行船、地上では装甲車などを積極投入したロシア帝国軍の攻勢が始まったのである。
これまでの戦いは序盤戦の序盤戦にすぎず、進化した技術とそれによって生まれた産物によって行われる殺し合いはこれからが本番なのだ。
 訪れるであろう医師であり看護師としての戦いを感じ取ったフローレンスは、一切の油断をしていなかった。

566 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/07/02(火) 23:56:31 ID:softbank126036058190.bbtec.net [35/69]

以上、wiki転載はご自由に。

とりあえずかけたところまで。

今宵はこのまま寝ます
おやすみなさいませ
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最終更新:2024年09月08日 17:43