107 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/07/10(水) 00:26:45 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [18/97]
日本大陸Fallout世界支援作品-58式強化外骨格】

 2058年に日本陸軍及び海軍陸戦隊等が採用。やがては西太平洋条約機構軍に広く普及することになった、兵員用強化外骨格。
 歩兵の重装備化の進捗、そして近い将来の仮想戦場におけるABC兵器対処手段の一環として、官民合同で開発が行われた。
 基本設計は民間で農作業、流通産業、福祉事業などで秘録使われている外骨格と大差なく、あくまで歩兵装備の延長に存在する。

 軍用規格の先進軽量合金フレームを基本とし、動力源には全固体電池を用いており、フレーム単体でも倍力装置として十分機能する。
 平時や災害派遣などにおいては、フレーム単体あるいは軽量防水パネルを取り付け、各種作業に当たることも多い。
 手足などの動きは電子制御でスレーブされ、ほぼ生身のそれに近い動きが可能である。連続稼働8時間が可能で、30分ほどで充電を終える。

 使い勝手の良さから最終戦争以前より、特に我が国や東南アジア諸国、インドなどで激甚災害の復興支援、人命救助にも活躍している。
 運用実績を重ねるにつれて電子制御、フレーム強度、稼働時間、即応性、ペイロードなどの段階的な改善も施され続けた。
 元が商業用技術を用いているため、調達及び運用維持コストも安価であり、民間用外骨格の運用データも国費を支払い購入。反映している。


 では兵器として見た場合の58式強化外骨格であるが、米軍のパワーアーマーのような重量級の。戦闘車輌に匹敵する装備ではない。
 西太平洋条約機構軍は優秀な機甲部隊、機械化部隊を豊富に有しており、無理に強化外骨格に過剰な戦闘力を求める必要はなかった。
 しかしそれら戦闘車輌や無人兵器などと連携し、なおかつABC防御能力をある程度備える装甲服としての機能は、やはり必要とされている。

 軽合金フレームを覆う形で頭部、胴部、腕部、脚部に装甲モジュールの取り付けが可能で、こちらは軽量複合素材により構築されている。
 防御力としては7.62ミリ徹甲弾の直撃、あるいは榴弾破片や低出力レーザーから、着用した兵を完全に守ることが可能となっている。
 また頭部ヘルメットまで着用。完全気密状態をコマンドした場合、顔面部フェイスガードを含め、外気遮断・フィルター呼吸に切り替わる。

 段階的に性能改善が図られた全固体電池の大容量により、ABC防御状態における冷却機能も持ち、その状態でも稼働6時間は確実である。
 なお万が一放電状態となったとしても、ある程度の自由な歩行や移動、勿論着脱も可能で、ABC警戒状況でなければ電池交換も容易である。
 放電済電池は戦闘車輌などからの充電も可能であり、特に3000馬力の駆動系を誇る60式戦車系列の支援能力も十分なものがあった。

108 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/07/10(水) 00:27:30 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [19/97]

 日本軍、ひいては西太平洋条約機構軍はネットワークを介した共同交戦能力も重んじており、この強化外骨格もその例外ではない。
 今や民間では掌サイズよりも小型化されることも珍しくないスマートフォン技術を用い、相応の高い処理能力と統合データリンクへの対応を達成。
 外部からの共有情報はフェイスガードにAR投影され、全天候における歩兵戦闘を大きく支援する。処理、通信系は当然装甲内部に収まる。

 固有のセンサーは当初存在せず、一般歩兵用の画像増強・熱線映像併用ゴーグルを、ヘルメット上部に取り付け、やはりAR投影を行っていた。
 しかしより高いABC防護能力が求められるに連れ、フェイスガードにスライド式増加装甲を取り付け、より外気防護能力を強化。
 スライド装甲をマウントとして、より索敵能力を強化し、レーザー測距機能も付与された改善型マルチセンサーへと、段階的に交換されている。

 当初はなるべく専用装備というものを省き、既存の歩兵が用いる各種装備で戦うことを目標としたが、58式配備以降、国際情勢は急速に悪化。
 資源戦争で崩壊しつつあった欧州、中東地域等では、第一次世界大戦もかくやという頻度でBC兵器を用い、地獄を演出していた。
 故に装甲フェイスガードを含むABC対応能力の強化、直接防護力も8.6ミリ徹甲弾や対人地雷完全対応へと強化、改善されている。


 そして58式が歩兵装備の一環である以上、走る、飛ぶ、伏せるという動作も敏捷に行わなければならない。歩兵は常に地形を味方につける必要がある。
 この点は初期型完成段階より重視されていたことであり、数十メートル先の障害物に咄嗟に飛び込む、時速15キロ以上で匍匐前進を行う。
 そういった要求が当初より盛り込まれ、高いモーションアシスト能力の恩恵もあり、電力消費を抑えつつも、かなりの運動能力を実現している。

 フルサイズの小銃、狙撃銃用徹甲弾でも阻止できない強化外骨格が、遮蔽物などを用い、匍匐前進を行う有用性は、歩兵なら誰でも理解できる。
 歩行速度こそ毎時30キロと控えめで、長距離移動は位相収納システムを持つ装甲車を用いるが、素早く、堅牢な歩兵システムとして完成を見た。
 米軍のパワーアーマーのような敵砲火をものともせずというコンセプトではなく、瞬発力と常識的な装甲で歩兵を守る方針を一貫している。

 武装もやはり歩兵用を流用するところから始まり、当時、車載機関銃等として普及していた8.6ミリ汎用機関銃を、主戦兵装として用いている。
 一般歩兵が用いる6.8ミリ高初速弾と比べ威力と射程双方で大きく優れ、大口径故の本体及び弾薬重量も、強化外骨格のペイロードが解消している。
 高い継戦能力と精密照準、情報共有のもとに放たれる8.6ミリ機関銃の威力は大きく、60ミリ銃口装着擲弾の並行運搬、投射も可能である。

109 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/07/10(水) 00:28:28 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [20/97]

 58式が西太平洋条約機構軍に普及するにつれて、基本性能の向上や統一規格内における各種外装モジュールが開発され、派生型も多く存在する。
 あえて装甲を軽量化しつつバッテリー容量を拡大、マルチセンサーの機能強化と光学迷彩機能を付与した浸透偵察型外骨格。
 負傷した外骨格歩兵複数人を担ぎ、支援用装甲車両まで迅速に運搬し、やはり多数を携行する医薬品で応急処置を行う衛生兵用外骨格。

 あるいは稼働時間低下(6時間前後)を甘受した上で装甲、武装ペイロードを大きく強化し、最終戦争当時は歩兵用標準型となった重装備型も完成。
 8.6ミリ機関銃や小銃擲弾に加え25ミリテレスコープ半自動砲、携帯多目的誘導弾、果ては白兵戦用に合金鋼製トマホークさえ準備されている。
 こちらは対パワーアーマーというより、中共及びソ連軍による人海戦術の突撃を受けた際に、強化外骨格の膂力で敵兵を薙ぎ払う戦斧である。

 当初は災害派遣、人命救助などで親しまれた58式も、国外情勢の急速な悪化に伴い、いつしか兵器らしい凶悪さを身に纏うようになっていった。
 それでも軽快な運動性、高い信頼性と汎用性、優れた継戦能力などは維持され、何よりも調達コストが性能に比べ非常に安価なことも特筆に値する。
 米軍の核融合電池を用いるパワーアーマーがMBTに匹敵するコストに対し、こちらは精々が軽四輪装甲車程度のコストに収まっていた。


 但し皮肉なことに日本式強化外骨格、米軍のパワーアーマーによる交戦は、両国が太平洋を隔て、米海軍が壊滅したことから殆ど生じていない。
 条約機構加盟国海軍の艦艇の相当数が弾道ミサイル防衛に忙殺されたとは言え、依然として多数の空母、潜水艦等の攻撃兵力はフリーハンドであった。
 時には2070年代の技術を用い蘇った戦艦さえ、戦術核攻撃さえ乗り越え上陸船団に突入し、パワーアーマーを用いる精兵諸共海の藻屑としたのである。

 では58式に出番がなかったかと言えばそのようなことはなく、北海道及び北方領土に上陸を果たしたソ連軍相手の、第7機甲師団による機動防御。
 そして何より地続きであるがゆえに、最終戦争で最も過酷な戦場とも言われた東南アジア戦線にて、中ソ両軍の人海戦術を相手に奮戦している。
 文字通りの飢餓を原動力とした人海の攻撃力は熾烈だったが、大多数の訓練された強化外骨格歩兵たちは、概ね冷静に戦うことが出来た。

 生身よりも身軽に障害物に潜み、人海の大多数が用いる歩兵火器や重迫破片を確実に防ぎ、敵歩兵に優る火力を情報共有のもとに投射できる。
 また歩兵単体で戦うのではなく常に戦闘車輌、無人兵器、航空機などと諸兵科連合を維持したことが、歩兵たちの冷静さと戦意をよく保った。
 戦意旺盛な部隊などは敢えて合金鋼製の戦斧を振るい、敵歩兵を銃弾とは異なる形で肉片として、人海を押し返すことさえやってのけている。

110 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/07/10(水) 00:29:12 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [21/97]

 一通り各陣営が熱核兵器を使い果たし、それらが撃墜されるか着弾するか。野戦軍が文字通り粉砕されるか。艦隊が溶けるように壊滅するか。
 方法は様々であるが最終戦争が一応の終結を見たとき、特にインドネシアなど中国と国境を接した軍の強化外骨格。その6割が大破していた。
 堅実な中防御・高機動外骨格であっても、食料を求める餓鬼となった人海の衝力は、諸兵科連合を常に維持し続けても損害は大きかった。

 一方で大破したはずの外骨格の7割以上から、兵が治療可能な範疇の負傷で救出されたことは、58式がその一義を全うしたと評価できる。
 何しろ歩兵だけではなく戦闘工兵、衛生兵なども着用し、生身の兵なら蒸発しかねない戦場を駆け巡った上で、これ程の生残性を発揮したのだ。
 この高い生残性は58式の生残性の確かさだけでなく、自らの負傷や疲労を顧みず、治療に尽力した軍医や衛生兵の献身も忘れてはならない。

 やがて戦争終結からしばしの間は地上情報収集、敵軍残党駆除等はアンドロイドやドローンに任され、多くの兵は休養を与えられている。
 彼らとともに戦い命を守った外骨格も同様で、健在な4割は後方支援部隊が重整備を行い、破損した6割もメーカー工場で修理が行われた。
 全般的に素直な設計を踏襲し、モジュール構造を全面的に用いたことが幸いし、大破した外骨格の実に半数以上が新品同然に復旧された。


 やがてアンドロイドやドローンたちの尽力により国土除染、危険生物の駆除、地上への人類帰還が進み、強化外骨格も再び出番を得た。
 ドローンやアンドロイドと連携しての国土復興事業において、多くの実践経験を積んだ兵と彼らを守る強化外骨格は、やはり必要不可欠であった。
 商用強化外骨格では危険だが、人間の判断が必要な復興事業において、58式の系譜は着用者を守りつつ、着実に任務を遂行。

 各種BC兵器や戦死者の遺体で汚染されたインドネシア戦線跡地、あるいは豪州熱核兵器着弾地域などの復興にも、かなりの活躍を見せた。
 無論、その途中で危険変異生物や中国軍残党との戦闘も皆無ではなかったが、戦時中に比べれば余程建設的な任務と言える。
 そして西太平洋条約機構の国土が概ねの除染、復興を遂げ、発展へ踏み出したとき、58式強化外骨格はついに現役を退くことになる。

 民意に基づく旧敵国地域への調査派兵においては、強化外骨格歩兵は必要だが、前線を張るには生身の兵は余りに危険と各国は判断。
 新世代の人型アンドロイドの着用、運用に最適化された、事実上の無人化強化外骨格が主力となり、ついに58式は一線を退いたのである。
 とはいえ極めて豊富な実戦におけるノウハウは、流通や医療福祉、農作業用の新世代外骨格に継承され、人類復興と発展に今なお貢献している。

111 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2024/07/10(水) 00:30:00 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [22/97]
【あとがき】

 この度も長文申し訳ございません、これにて西太平洋条約機構軍強化外骨格の拙文はおしまいとなります。
 イメージとしては佐藤大輔氏の「遥かなる星」第3巻に出てくる、北崎重工製の宇宙服兼用のパワードスーツです。
 歩兵は常に伏せ、匍匐前進を行い、地形を味方につけて戦うという、軽量型パワードスーツのコンセプトを日本大陸の技術で高性能化しました。

 Falloutシリーズの米軍パワーアーマーのような重装甲で敵の反撃を防ぎ、ミニガンやガトレザの大火力で蹂躙するのも一つのあり方です。
 しかし最終戦争以降もXシリーズが開発され続けた理由が、最早MBT等のAFV開発を行うリソースも資源もないという背景も存在しています。
 手前味噌で恐縮ですが60式戦車シリーズが広く普及し、砲兵火力や航空機、無人兵器が潤沢な西太平洋条約機構軍。

 彼らが強化外骨格を開発する際にそこまで求めるか。あるいは歩兵の延長線上の存在として諸兵科連合を保つものを求めるのではないか。
 トゥ・ヘァ様などの助言によりアイデアを頂き、最終的には小銃や狙撃銃徹甲弾、対人地雷に耐え、敏捷な歩兵として機能する強化外骨格。
 そのような形に落ち着きました…因みに高合金鋼製トマホークは、銀英伝のオマージュです。多分銃剣より余程役に立つよねって。


 そしてこの58式がそこそこの性能でありながら、最終戦争勃発の2077年までに歩兵、工兵、衛生兵などに幅広く普及している理由。
 それについては軍用以前に、民間市場の様々な分野で強化外骨格が多数運用されており、技術熟成と低コスト化を果たしたと理由付けました。
 流通業界や農業などでは言うに及ばず、福祉介護などでも人間の動作をトレースできる外骨格は、障害者や高齢者支援に必須でしょうし。

 武装や全天候センサーも21世紀現在において、既に実用化されたものを日本大陸基準で、2050年代以降に高性能化したものに留めています。
 なお58式のデフォルトとなる主要武装はシグ・ザウエルMG338であり、ラプアマグナム弾を延々と情報共有のもとに叩き込んできます。
 メタファーで言えば中共人海戦術の衝力を歩兵一人に重機関銃レベルの火力をもたせ、諸兵科連合を維持しつつ破砕することを目標としています。

 それ以外の重武装は米軍パワーアーマー対策に開発されましたが、肝心の上陸部隊が撃沈されたため、やはり中共の人海戦術に投射されました。
 同時にABCを含め高い生残性を発揮し、兵科を問わず多くの兵を救い、自らもモジュール構造故に復旧容易としぶとさもフレーバーとして加えました。
 色々と物足りない、あるいはやり過ぎな部分があるとは思いますが、Fallout日本大陸世界の歩兵装備として、参考程度にして頂ければ幸いです。
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最終更新:2024年09月13日 19:27