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憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「ホーリィー・ブルー・バード」3【修正版】


  • 星暦恒星系 星暦惑星 現地時間星暦2147年6月15日 ギアーデ連邦領内 北部奪還地域 地球連合・ギアーデ連邦軍合同FOB近傍



 ギアーデ連邦軍の追跡部隊は、地球連合軍との連携を密にしてヘイル・メアリィを追い詰めていた。
 そもそも、レギオン支配地域ではないことから航空機を飛ばしての捜索及び追従が可能な時点で、難易度は低いものだった。
本人たちは自分たちの主張が受け入れられるという前提で堂々と移動しており、隠れたり痕跡を消すなどを全くしていなかったのもある。
放射性廃棄物を詰め込んだダーティーボムをしっかりと遮蔽していたわけでもないため、放射線量などを基にすればより追跡は楽だった。
 とはいえ、その放射性廃棄物による被ばくが長く続けば助からないところまで行ってしまう可能性があった。
ギアーデ連邦および軍としてはこの暴走を早期に収束させ、連合へのダメージを最小にしたいと考えていた。
そしてしかるべき手順に則って処罰を下すことで、これが一部の暴走であることやギアーデ連邦の本意ではないことを示そうとしていた。

『追い詰め、行く先も塞がれている。
 好機だ……一気にとらえるぞ』

 ミアロナの声とともに、フェルドレス「ヴァナルガンド」を擁する部隊は一気に勝負に出た。
 鈍重だという認識が出そうなヴァナルガンドは、実際のところその巨体に反して俊敏だ。
巡航速度も最高速度も下手な車両を超えており、踏破能力が致命的に低いなどということもない。
ただ、ダーティーボムを破れかぶれに爆発させたときのことを考えると、歩兵よりもフェルドレスの方が安全であったのだ。
少なくともN兵器への対策は施せるし、非殺傷の無力化兵装を搭載する余裕は存在していた。
下手人を捉えても自分たちまで被爆した、では元も子もない話なのだ。

『行くぞ』

 それはともかくとして、そのヴァナルガンドによる追走の、いわばスパートはヘイル・メアリィの探知するところとなった。
静穏モードから戦闘出力への変更し、スパートをかけた際に発生する独特の走行音などが彼ら彼女らにも届いた。
彼女らも追手がかかっていることは理解していた。決起の放送をしたのちに、応じるようにして投降せよという無線が流れたからだ。
また、つかず離れずの距離を保ち、ヘリコプターなどで追尾されていることを察知することくらいはできていたのだ。

「姫様!」
「急ぐわよ、連合の基地は、もうすぐだから!」

 ノエレ・ロヒに悲観はない。
 自分が正しいことをしていると信じているから。
 地球連合を納得させることができると信じているから。
 あらゆる問題を解決できる---純粋なまでに信じているから。
 地球連合からの無線で、そんなもので満足か?などと侮辱されてもおれなかったのは、その意志があったからだ。

 そして、彼女らはついにとらえた。進路上の真正面、敷地に入るであろうゲートのところに地球連合の兵士たちがいるのを。
ヘイル・メアリィの兵士たちは無邪気に手を振るなどしている。
 しかし、彼ら彼女らの動きはどことなく鈍い。
 当然だ。放射性廃棄物を奪い、ダーティーボムを作り、それを大した遮蔽もせずずっと輸送してきた。
その結果として誰もが長時間にわたって被爆してしまい、人にはよるが体調に支障をきたし始めていたのだ。

「えっ……」

 そして、ノエレ・ロヒは次の瞬間に白に包まれた。
 前方と後方に展開していた部隊から、一斉に非殺傷無力化兵器が投じられた結果だ。
真昼だというのに眩しいほどの光に包まれ、同時に途方もない音が襲い掛かり、動きを制限する。
対人想定のフラッシュグレネードの集中投下だ。何の備えもしていなかった、単なる歩兵以下のヘイル・メアリィには防ぐ手段もない。
 間髪を入れることなく、次は捕獲用の電撃ネットがヘイル・メアリィを覆いつくした。
流れる電流によって車両は停止、ネットに迂闊にも触れてしまった兵士たちは次々と気を失っていく。
ノレアにしても、それをよける間もなくかかってしまい、電流が体を突き抜けた。

752:弥次郎:2024/07/27(土) 23:21:37 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

 明確な攻撃。
 殺しこそしないものの、ノエレ達の身体を麻痺させ、まともに動くことを許さない程度に調整されたものであった。
 だから、ノエレは困惑した。どうして攻撃を受けたのだと。

(な、んで)

 自分たちは正しいのに。
 自分たちは皆のために蜂起したのに。
 それを受け入れてくれるはずと信じたのに。

(に、げ……)

 それでも何とかもがいて外に出ようとして、鋼鉄の獣を見た。
 後ろから一気に距離を詰めたヴァナルガンドが肉薄して、完全に包囲したのだ。
 彼らの奪取した輸送部隊に割り当てられるトラックなど容易くスクラップにできる砲が幾門もつきつけられる。
至近距離ゆえに機銃などがメインになるだろうが、トリガー一つで人間だったものに代わるのは変わらない。
機甲戦力でもあるレギオンを想定した機銃は、容易く人間の身体という脆い器を破壊しきるのだ。
 意識を失いながら、最後にノレアは耳にする。
 ヴァナルガンドが有する外部スピーカー越しに届く、途方もなく冷徹な声を。

『終わりだ、農奴共』

 そうして完全に無力化が済んだところで、連合は歩兵を投入する。
 面倒ではあっても、無力化されたヘイル・メアリィの兵士たちは回収するためだ。
被爆しているということもあり、全員が隔離するのも兼ねて医療ポッドに放り込まれる。
地球連合側の用意したそれは、被爆していたヘイル・メアリィの兵士たちに必要な処置を自動で始める。
そう遠からず、被ばくによるダメージは快癒し、元のように活動できるようになるだろう。
 また、彼女らの作成した核兵器---あまりにもお粗末で無意味なダーティーボムに関しても、回収されて遮蔽されたケースに収められた。

『こんなものでレギオンや宇宙怪獣を倒すつもりだったとはな……』

 ヴァナルガンドの中でその作業を見守りながら、声に侮蔑が混じるのを、ミアロナは避けられなかった。
 宇宙怪獣の脅威については、ミアロナも士官の一人として学ぶ機会を得ていた。
 純水爆さえも---月という衛星さえも破壊できる出力のそれを容易く耐久するという耐久力を誇るのだというのは衝撃だった。
代々原子力関係の研究や政策などに関わり、その利便性とともに脅威を理解していたからこそ、理解が追い付かなかった。
原子力という途方もないエネルギーを、そして転じて破壊力を獲得できる技術と兵器が歯が立たない。
そんな生物が存在しているのかと、にわかには信じがたいものと思ったのも懐かしい。
 だが、同時に理解できた。地球連合の上位の兵器は、例えばMSなどは宇宙怪獣と戦える力を有していると。
これまでの戦いであらゆるレギオンを歯牙にもかけない蹂躙をしていたMSがあれほど強いのも、もっと強い相手と戦うために発達したのだと。
途方もない時間と労力、熱意、努力を積み重ね、必要性に迫られて磨き抜かれた切っ先そのもの。

753:弥次郎:2024/07/27(土) 23:22:24 HOST:softbank126036058190.bbtec.net

 だというのに、これはなんだ?
 単なる放射性廃棄物の塊と爆発物を雑に組み合わせただけの、ダーティーボム。
ニワトリの、どこで得たのかはわかるが、あまりにも無知すぎる意志と知識と理解のままに作られた役立たずの塊。
誰も頼まず、誰も望まず、和を乱して混乱を招いてまで作り出した、単なる汚物をまき散らす爆弾。

(反吐が出る)

 元より理解力や学習能力などたかが知れている出自であったことは確か。
 それを生み出したのが旧ギアーデ帝国だということも。
 とはいえ、そんな被害者でも、無知が過ぎれば加害者になるのだ。

「HQに報告、パッケージは確保。廃棄物も問題なしと」
「かしこまりました。
 あいつら、どうなりますかね……?」

 部下の問いかけは、今後の処遇という意味ではない。
 もっと喫緊の課題---放射性廃棄物からの被爆による健康への影響という意味だった。
 ミアロナ家は原子力についての研究をしていた関係上、その弊害---放射線被ばくなどについても詳しい。
学があり、研究をしていたからこそ、如何にそれが恐ろしいものであるのかを理解できている。
人体に致命的なまでに影響を与え、凄惨な事態さえも引き起こす---その数歩手前のことをしたヘイル・メアリィの兵士たちが待つのは恐ろしい末路だ。

「確保した段階で相当量被爆していたようだからな……緩慢な死が待ち受けているだろう」
「……やはりですか」

 部下の一人が問うたのも、確認というか事実を飲み込むための納得を欲したからだというのはわかった。
 原子炉内に侵入し、そこからまともに遮蔽も遮断もせずに放射性廃棄物を盗み出し、長時間輸送したということは、どうやっても被爆する。
急性放射線障害を発症している兵士が殆どであろうというのは予想の範疇であった。
ケジメをつけるためにも軍事法廷に放り込む必要があるが、場合によってはそれまで持たない可能性がある。
意地でも生かすことはできるだろうが、所詮は対処療法になるだろうし、手間取りもするのは確実。
それだから現場での「処分」を認められてはいたのだが---

「とはいえ、それは我々の常識での話だ。地球連合なら助けられるとのことだ」
「そうなのですか?」
「考えてみろ、放射線で満ちている宇宙を航行してきた文明だぞ?」
「ああ、なるほど……」

 すぐに納得できる部下はいいものだ。
 原子炉内部などとは比較にならない放射線量の宇宙さえも領土や開拓地とできる地球連合だから、その程度は容易いのだろう。
ぜひともその除染技術や防護技術について詳しく知りたいところなのだが、生憎とエクソダスや対レギオン戦などで余裕がないのが憎らしい。

「……まったく、ままならないな」

 本来ならば一族郎党揃ってその知識を学びに行きたいところなのだが、全くままならないものだ。
 だが、そんな前向きなことを意図的にでも考えなければ、今すぐ飛び出しニワトリ共を処してしまいそうなのだ。
達成感のまるでない、寧ろ疲弊だけが募った作戦。これでギアーデの品位が疑われないことを祈るしかないとは。
 後は政治の話だ、と深くため息をついた。

754:弥次郎:2024/07/27(土) 23:23:29 HOST:softbank126036058190.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。

とりあえず修正完了

さて、続きを書く作業だぁ
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最終更新:2024年09月14日 15:00