703 :ひゅうが:2012/03/19(月) 02:26:24
→699 氏とは違いますが、彼らネタです。




ネタ――「願い」


――西暦20XX年某日 地球 某所


「どうしても行くのか?」

「ああ。一両日中には月にいく。向こうでも既に準備は整っているし、こうして文化財の移動も済ませてある。跡地は政府が開発事業に使うという話だから少しばかりの見舞金も出たよ。」

「そうか。今更言うのもなんだが、考え直さないか?今回の決定に異議を唱える者もいる。漢城日報の正男編集長も残念がっていたぞ?」

「あそこは二代目が亡くなって間もないからな。自称反日党の連中を抑えるのは無理だろう。それに――」

袈裟を着た男は悲しそうに言った。

「この国の士大夫連中――両斑どもにはほとほと愛想がつきたよ。さんざん親日を装っておきながら今度は地球統合政府に媚びを売る?
事大の礼だなんだと言っているが、やっていることは400年前とまったく変わらないじゃないか。」

「それを変えようと俺たちも努力した・・・だが。」

「分かっているよ。知恵をつけたらつけたでそれを自分のためにしか用いない。何か悪いことが怒ればすぐに他人のせいにする。そのくせ、努力せず、労働を卑しいものと考えて誰かに養われるのを当然とする。
年長者は何をしても許される――まったくどうかしているよ。」

「気をつけろよ。お前さんが宇宙へ行くついでに美術品を売り払おうとしていた連中がまだそこら辺にいるかもしれない。今の台詞を聞かれていたら――」

「ありがとう。」

男は、親友の肩に手を置いた。


「心配してくれるのは嬉しい。だが、この地上を捨ててあの星の海の中に行くにあたってはそんな小人たちを一々相手にする必要はないさ。
あいつらは結局、我々が手放した土地を転がすことに熱中するだろうから。」

「人間は感情の生き物だよ。ことにわが民族はね。」

そうだな。と、慶州仏国寺座主は李氏大韓帝国最後の皇太子となった男に笑いかけた。

「感情にまかせて大韓帝国から大韓国へ移行する、よさそうだから共和制へ移行し親日派の名を着せて帝室を追放する。まさにそういうことなのだろう。
我々はあまりに長く強大な中華の横で安穏としすぎていたのだろうな――日本人たちも自ら変わろうとしない我々をついには無視することになった。」

「だからこそ、変わろうとする者は彼らとともに宇宙へ上がる、か。変われると思うかね?」

「信じるさ。」

男、盧武鉉という名の老人は、まるで子供のような目で星空を見上げた。

「少なくとも、高麗時代中期以前は我々は独立国だったのだから。1000年も、いや日本が生まれた頃のように1500年がすれぎば、良かれ悪かれ、何かが変わっているだろうよ。」

――彼の願いが真の意味で成就するのは、このときからおよそ1500年後の事になる・・・。

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最終更新:2012年03月19日 19:56