766:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:37:03 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
三菱・アヴロ(オーストラリア)・AE(インドネシア航空電子工業) F/A-70 「ヴァルキリー」(70式艦上戦闘攻撃機「疾風」)
全長:25.0メートル
全幅:20.83メートル
全高:5.41メートル
空虚重量:30155キログラム
全備重量:62980キログラム
最大離陸重量:81210キログラム
エンジン:F12-1(誉/テンペスト)可変バイパス比ターボファン×2基
F13-1(勲/タイフーン)スクラムジェットエンジン×2基
AF2-2アシスト燃焼器×4基(機動補助用スラスタ)
推力:267kN(ドライ 30トン)×2
364kN(ウェット 40.8トン)×2
490kN(スクラムジェット 55.1トン)×2
最大速力:マッハ3.0(高度1万5000メートルアフターバーナー使用時)
マッハ5.0(高度2万メートル スクラムジェット使用時)
巡航速力:マッハ2.1(高度1万メートル時)
実用上昇限度:2万5000メートル
航続距離:3200km(機内燃料のみ)
武装:AAM-6B長距離空対空ミサイル×6(内装最大 通常時0~4)
AAM-7C中距離空対空ミサイル×12(内装最大 通常時8~10)
AAM-8 短距離空対空ミサイル×16(内装最大 通常時2~4)
ASM-3C 超音速空対艦ミサイル×4(内装最大 外装併用時12)
ASM-4A 極超音速空対艦ミサイル×2(内装最大 外装併用時4)
120kWレーザー×1(右翼固定 連続照射時間最大7秒 インターバル2秒)
30ミリ多銃身機関砲×1(左翼 装弾数990)
爆弾等最大25トン搭載可能(内装時10トン)
機動制限G:11G(実用上9G)
乗員数:2(操縦士1 管制自動人形1)
【概要】――日本の三菱飛行機(MAS)とオーストラリアのアヴロ・オーストラリア(AA)、インドネシアのエアロスペースオブインドネシア(AE)が共同開発した西太平洋条約機構の標準艦上戦闘攻撃機
最終戦争(第3次世界大戦)時は各国の新型空母の主力として艦上機の約半数を占め、陸上戦闘機としてはほぼ8割が本機に更新されていた
その後長く現役であり、以後の有人機がことごとく無人機の管制能力を強化したものや宇宙空間での戦闘を重視したものであったことから「最後の有人制空戦闘機(大気圏内戦闘機)」とも称される
派生型は2272年現在も、主として北米大陸で現役である
【開発経緯】――2050年代の急速な国際情勢の悪化に伴い、西太平洋条約機構および日本帝国海軍は主力としていた35式艦上戦闘攻撃機(F/A-35)の後継機として配備を続けていた52式艦上戦闘攻撃機(F/A-52)の調達を打ち切り、新たな戦闘攻撃機を開発することに決定した
当時の仮想敵国であったアメリカ合衆国が後退翼つきのステルス攻撃機の配備をはじめていたことと、常軌を逸した勢いで空母ならびに水上艦艇を量産しつつあったことに対抗した措置だった
というのも52式では5機程度のUAV管制能力とされて制空戦闘機としての機動力を重視していたものの、それでは大量に飛来する核兵器だけでなくこれら攻撃機の迎撃が間に合わないと考えられたためだった
767:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:37:39 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
これまでの米軍機、ことに海軍機はデルタ翼などの大きな後退角のついた機体を採用しておらず、直線的な翼をもつ機体が続いていた
これは海軍が保有する空母のサイズが極端に大型化されていなかったことからくる機体の大型化の限界に加えて航続距離が減少することになるのを嫌ったためであった
というのも第二次世界大戦において敵となったドイツ軍が開発していた可変翼は機構的複雑さから嫌われ、さらにデルタ翼では速度こそ稼げるものの今度は空軍のF-102やF-104のように速度に最適化された翼しか持てず航続距離も減少することからドックファイトを好む海軍の戦闘機乗りには嫌われていたためでもある
なにより、超長距離からの核によるアウトレンジ攻撃を行うことを目的としていた海軍機としては、極端にいえば戦闘機はミサイル運搬役であるだけでよく、有視界距離での戦闘機動性能とこれら運搬能力を両立させるには直線的な翼の方が都合がよかったのだった
(実際のところは、これらを両立するべきダブルデルタ翼の設計がコンピューターの計算能力不足で見つけ出せなかったことが大きな要因となっているのだがひとまずこれは置いておく)
こうした状況は西太平洋条約機構側も把握しており、戦闘航続半径3000キロを内外に誇る米軍のやり方は、これはこれで脅威としつつも防衛的な役割の彼らとしては都合がいいものと判断していた
こちら側は既にマッハ2級でこれを両立させる翼などとっくに実現しているし、航続距離の不足などは増加燃料タンクか、無理をすれば空中給油で補えばいいだけの話だからである
しかし、ほぼ全翼機に近い攻撃機の登場は西太平洋条約機構側を震撼させた
というのも当時全翼機を好んで作っていたのは、アメリカ空軍にべったりのノースロップ社くらいなものであり、彼らは海軍に蛇蝎の如く嫌われ、全翼機の採用などもってのほかという扱いだったからである
(なお実際は、コンピューター制御によるフライバイワイヤが実現できていない
アメリカにおいては全翼機の安定性が特に戦闘機としてはもっての他というくらい確保できていないためだった)
しかしそれを捨ててまでノースロップ製の尾翼つきとはいえ全翼機に近い機体を採用したということは、当局に「アメリカ軍はステルス機の採用に舵を切った」という認識を持たせたのだった
そうなると、これまでは何もステルス性を考えていないような空力的に優れているだけの機体を相手にすればよかった環境が根底から覆される
しかも、数はどんどん増えていくのだ
さらに問題とされたのが、UAVの管制能力の要と目された人工知能の「とっさの反応の遅れ」だった
52式艦上戦闘攻撃機までの間に、西太平洋条約機構側はUAVの管制能力を同時に3機、続いて5機と順調に増やしていた
それ自体は問題がなかったし、深層学習式のコンピュータを用いた空戦の補助において個個のパイロットの癖を学習させていったことは戦闘能力の増大を実現していた
だが、そうなると咄嗟の事態において、どうしてもUAVの機数が増えるに従って行われるべき判断に遅延が生じるのである
このため、52式戦闘攻撃機からは人工知能に対話インターフェイスをつけてパイロットの行動を常時学習させることを義務付けたのだが、これがあまりよい反応を生まなかった
私生活も含めたすべてをAIに監視されているようで、パイロットの評判がすこぶる悪かったのである
また、当時の技術ではAIが仮に常駐していた腕時計型や懐中時計型のインターフェイスでは性能が不足していたことも理由だった
誰だって、カタコトのAIがしょっちゅう空母の艦内コンピューターと同期をかけて話しかけてくるだけでは気分がいいものではないだろう
これらの理由から西太平洋条約機構の統合防衛会議は52式艦上戦闘攻撃機のインターフェイスの抜本改良とあわせ、構想のみが進行していた35式艦上戦闘攻撃機の退役前倒しを決定
新たに条約機構に加わったオーストラリアもあわせて合同で各国標準となる戦闘機の設計開発に着手した
時に西暦2063年のことであった
768:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:38:30 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
【開発コンセプト】――開発にあたっては、「ファーストルック・ファーストキル」が改めてとりあげられた
21世紀初頭の00式艦上戦闘攻撃機の時点で掲げられたこの目標は、「いかに先に発見し、先制し、防衛するか」ということに尽きた
今度はこれに、敵機や敵艦隊だけでなく陸上の各目標が加わる
既に半世紀前の10式において各戦闘機間のデータリンクによって当時のAWACS(早期警戒管制機)とJ-STARS(陸上版早期警戒管制機)を統合したような役割を果たすことはできていた
このため、本機は52式が到達していたUAV複数機のセンサーからの情報の統合処理だけでなく戦場全体のネットワーク端末としての機能をさらに発展させることとした
たとえば、偵察機仕様の本機だけでなく各種UAVや潜伏するUUV、さらには後方の空母や軌道上の衛星コンステレーション群からのリアルタイム情報をダウンロードして自らはレーダーを発振せずとも数千キロ先の戦況を手にすることを目標とした
さらにこの頃は限定的ではあったが、状況によってはこれらネットワークが複雑化する弊害から編隊長機を飛び越えて艦隊司令部や総司令部との直通回線をつなぎ直す自律的なネットワーク構築の権限までもが委任される予定だった
これにより、戦略情報をもとに敵機の存在確率を自律判断し、レーダー照射や索敵を最適化して「戦略的奇襲」すら可能になることから、これら統合情報システムの開発コード、そしてそのまま採用されたシステム名称は「ヒュドラシステム」と呼ばれている
こうした情報系を実現するため、各機には高性能なレーザー通信システムとともに強力なギガヘルツ帯通信システムが設置されており一部では性能が民生用通信規格の先を行くというこれまでの電子装備とは逆転した珍しい現象が発生している
それだけでなく、戦闘機としての空戦性能にも手は抜かれていなかった
少なくとも空戦性能においては52式以上のものが求められたが、機動性においては既に機体は人体が耐えうる限界に達していた
そこで本機は「できるだけ遠距離からの敵機ならびに敵核ミサイル迎撃」を目標としてミサイルの多数搭載が役割と割り切り、格闘性能は据え置いたうえである選択をする
格闘性能が限られるなら、速度性能をもって圧倒すればよい
52式において採用されていたエアターボラムジェット推進機(ジェットエンジンとダクトを共有するらラムジェットエンジンを搭載した)だけでなく、エンジンダクトを共有するスクラムジェットエンジンを搭載することで「熱の壁」を無視し高度2万でマッハ5を実現することにしたのである
残念ながらこの時点では戦闘機に100キロワット級を上回り射程1000キロ以上で一撃で敵機を撃墜できるメガワット級レーザーは搭載できるだけの余裕は存在していない
このため戦闘機としてはどうしても極超音速の空対空ミサイル搭載が最適解となる
搭載数としては歩兵用装備として実用化が進んでいた量子格納領域が使用できるため飛躍的な増大が見込めたが、同時発射数という面ではどうしても機内に多数を搭載せざるを得ない
ならば、速度だけでも圧倒的なものを用意して敵機が迎撃できる時間的余裕を奪いつつ気が付いたときには大量のAAMが投射されているような環境を構築しなければならない
加速度(G)を無視できるようなロボット(もしくは人体改造した脳みそ)を搭載した化け物はUAVに任せておけばよいのだ
どうせ、敵機のエネルギー規模では数百キロの射程をもつレーザー兵器など実用化できないし照準性能などごく限られるから当たりはしない
こうして、52式では据え置かれたAAMの搭載数はついに中距離AAMで12発の大台に到達することが要求された
こうなると機体の大型化は必至である
ミサイル本体の大型化が著しい時代において護身用の短距離AAMだけでなく、超長距離から敵のAWACSやことによると空母の艦載レーダーを狙う長距離AAMを複数搭載しようとするとそういうことになる
さらに、同一機種に2基の異なる種類のエンジンを搭載するとなると全長はどうしても長くなることだろう
769:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:39:07 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
こうした研究報告を受けた西太平洋条約機構の当局は報告を受け入れ、それまで辛うじて300メートル台中盤で済んでいた航空母艦の大型化を是認した
最終戦争時に常軌を逸した規模にまで各国の空母が大型化していたのはこうした理由による
この段階で、空軍当局も研究には合流していた
開発グループとしては前述の人工知能の諸問題については実にシンプルな解答、すなわち後部座席の復活と人工知能の高性能化に伴う義体の付与、そしてそれらが搭乗できるスペースの確保を選んでいたのだが、これが同じく空戦性能の上昇が伸び悩んでいた空軍にも届いたのだ
こうして、2064年、日本本土において各国から参集した技術者たちは図面の製造に着手する
サイズの制限が実質的になくなっていたことから開発は順調に進み、2066年末には試作初号機が進空
良好な性能を示したことから開発参加各国はテストを人の目の多い日本本土からオーストラリアのトリントン空軍基地に移して続行
2069年初頭には初期作戦能力を獲得したと判断され、即座に量産に移された
この時点までに製造されていた増加試作機は47機
まことに冷戦らしい力業で、量産許可が出るまでに製造ラインには数百機の製造中の機体が存在していたという
以下に特徴を述べる
【外観・主翼など】――外観としては、SSTO(宇宙往還機)のような翼と胴体が一体化したようなリフティングボディに2枚のほぼ主翼と一体化した倒立式垂直尾翼が斜めに生えているような形状をしている
最大速度域が似通っているためにこれはほぼ当然ともいえるが、差異としてはラムダ翼とわれるダブルデルタ翼の内側を切り落としたような主翼の形状をしていることだろう
必然的に主翼先端部に負荷が集中することになるが、本機はこの部分をあえて「ねじれる」形状の可動式とすることで機動力を補いつつも巡航時の揚力確保も行っている
マッハ3以上での超高速飛行時には衝撃波を積極的に取り入れて「波乗り」のように自らの揚力としているのである
これはどこかの並行世界における超音速戦略爆撃機XB-70が持っていたのと外観も機能もよく似ている
しかし完全な可動式ではないことから可動部の強度不足を回避しており、これは同じ並行世界におけるX-53の実験コンセプトと同様である
すなわち、本機は機動においてエルロンをほとんど作動させずとも高レートなロールが可能なのである
半面、垂直尾翼は機体の鉛直上方と鉛直下方に90度ずつ可動する上に推力軸に対しては前後50度まで独立して可動できる構造になっている
このため、超高速巡航時には主翼先端同様に垂直尾翼が「下へ向くことで超音速飛行時の衝撃波を揚力として抱き込む」ことができる
また空中戦機動時にはたとえば「左の垂直尾翼は鉛直上方に、右の垂直尾翼は鉛直下方に」といった特異な可動をして機動性や飛行特性を著しく変動させることも可能だった
また内部にプラズマステルスシステム用アンテナを兼ねた受信アンテナを備えていたことからはるか遠距離からのデータリンクアンテナとしての機能ももっていた
(このためいわば電波の聞き耳をたてるために大きく垂直尾翼を立てるために上記配置をすることもある)
外観上は機体構造である立方晶窒化炭素や多結晶型人工ダイヤモンド層を含む複合型耐熱炭素繊維素材の上にアクティブステルス用の透明導電性カーボンナノチューブが積層されているため、無通電状態では灰色に近い
しかし同素材が可視光線ステルスを兼ねている、つまりはカメレオンのような迷彩を実現していることから任務によって日本海軍伝統の洋上迷彩や超高高度迷彩の群青色、砂漠迷彩など多種多様な色彩へと変動させることができた
あくまでも有視界戦闘を想定した補助機能であったのであるが、最終戦争時には有視界戦闘を余儀なくされた米軍パイロットの目視照準での光線砲(レーザー)射撃を大いに惑わせたことから以後も手間をかけて維持が行われる結果となった
ただしパイロットから最も好評であったのが、ステルス化に伴い戦時はロービジュアル化されることになっていた国籍表示をギリギリまで鮮やかなままで保つことができたことや、禁止されていたノーズアートの類を復活させられたことであったという
770:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:40:14 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
【レーダー】――レーダーは機首のメインおよび機体に仕込まれた平面アンテナの複合型である
機首のメインレーダーは艦載用アクティブフェイズドアレイレーダーと同様に、発振用に素子化された進行波管を備え、受信用にはダイヤモンド半導体が使用されている
このため従来の窒化ガリウム素子よりも発振出力がはるかに増大し、カタログ上の探知半径はアクティブモードで850キロメートルに達する(地球の曲率を考慮すると見通し距離は高度2万で535キロメートルであるが超水平線レーダーと同様の原理で飛行中の敵機を探知できた)
ただしこれは西太平洋条約機構標準の機体を相手にした場合であり、実戦においては1000キロメートルに達することもしばしばであったという
素子数は受信のみでも5200個と、00式艦上戦闘攻撃機の2.6倍にまで増大
ほぼ同数の超小型進行波管素子が付属し、無可動で前方140度を広角走査している
これらの補助として、レーダーからのアクティブステルス用の翼面や胴体アンテナ(合計10面)による受信を用いており、機首の進行波管ユニットから発振した電波を翼面アンテナで受信して合成開口レーダーとして使用もしている
ただしこれは地上走査が主体であり、空戦時には補助的機能であった
さらに主翼のプラズマステルス装置の方がステルス時には電力消費量が低いことからアクティブステルスを発揮する機会は空戦中のレーダー誘導ミサイルを避ける場合、あるいは対艦・対地攻撃時に限られていた
また、レーダーとしても機体3か所に設けられた多機能型赤外線索敵装置(EO-DAS)が高性能であったことから本領を発揮する機会はあまりなかったのではないかといわれている
ただし、発振と受信を別の専門素子化した(最高出力発振時はダイヤモンド半導体も利用できた)ことから発生できる電波出力は極めて高く、指向性マイクロ波兵器として対策の甘かった核弾頭搭載誘導弾を撃墜することに大いに役立っていることは忘れるべきではなかろう
【エンジン】――本機は、メイン動力として初の無冷却型可変バイパス比ターボファンエンジンと、高速用のスクラムジェットエンジン、ならびに機動補助用のスラスターを搭載している
メインエンジンは石川島播磨重工の流れを組むIHIエアロスペースが開発した立方晶窒化炭素利用型のカーボンナノチューブ積層型セラミックでできたタービン翼(およびタービンシュラウド)と、北海道産のレニウム多添加型芯材のディスクを用いた複合素材でタービンまわりが構成されている
本素材の耐熱性は極めて高く、タービン翼本体の耐容温度が1500℃以上、ディスクが1350℃に達することから取り入れた空気の2割近くをタービン冷却にまわしていた従来と異なり外部からの間接的冷却によってエンジンを駆動させることができるようになっている
52式において採用されたエアターボラムジェットエンジンにおいては冷媒(特殊な油冷)使用型の間接冷却だったが、本機においては主体として電力による機械冷却を主体としており油冷系統は緊急時用でしかない
ただしこれら冷却機器の都合上、本体素材が軽量化された分以上の重量増加に見舞われており、さらにこれら冷却機構の放熱板の一部がインテーク内側に位置している(蒸気表面冷却にする選択もあったが被弾あるいは損傷時に一気に性能が低下することを嫌った)ことからオーバーヒート寸前での運用時は熱ステルス面で不利になるという欠点も存在していた
ただし相手が最終戦争時の米軍レベルであった場合はまったく問題は生じていない
771:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:41:08 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
半面燃焼室出口とタービン入口部温度については保守的であり、21世紀初頭に実用化された広角スワーラ方式燃焼室を環状に設けるのは変わらない
ただし燃焼室内部はジェットエンジンとしてははじめて(21世紀後半のロケットエンジンとしては採用例が多い)、超音速の爆轟を積極的に燃焼に利用した「ロータリー・デトネーション方式」が採用されて燃焼効率を4割近くも上昇させていた
タービン入口部温度は1850℃であり、大気中の窒素が酸化されることによる吸熱反応で出力が低下するのを嫌って据え置かれていたが上記方式に伴い出力は大幅増大している
このため出力上昇のために必要となった化学反応分の空気の取り入れ、ならびにエンジン本体直径の15%あまりの増大で出力をさらに引き上げている
本体の機体サイズが制限されていた旧来の機体とは異なり本体の大型化と量子格納領域が設けられたがゆえのスペース余裕が設計にダイレクトに反映された形である
これにより、出力はアフターバーナーを使用しないドライ出力で30トン
21世紀初頭の10式艦上戦闘攻撃機用のF8(栄/フルマー 史実のA101)エンジンのウェット(アフターバーナーあり)推力の1.5倍に達している
これら双発によって、全備重量にほぼ等しい推力重量比を確立したことから、ある程度燃料を消費した戦闘時においては翼内にAAMを満載したまま垂直上昇をすることができるなどの高い運動性能を実現した
半面、エア・インテーク(空気取り入れ口)内部のショックコーンや可動式空気流路をもってしてもマッハ3.3以上になると流入する空気の速度やエンジンの回転速度が音速を突破し著しくエンジンの効率が低下することから無理にアフターバーナーによる出力上昇を行う必要はないと判断され、アフターバーナーによる出力上昇もマッハ3に達する程度でおさえられた
ただし有り余るほどの大推力なので、アフターバーナーなしのドライ出力でもマッハ2(高度2万程度であればマッハ2.5近くに達する)程度での超音速巡航ができており、実用上の問題はない
かわりに設けられたのが、エアダクトを可動式にすることで機体上面に設置されたスクラムジェットエンジンである
タービンとコンプレッサーをはずしたいわば燃焼室だけの筒であるラムジェットエンジンがこちらも流入空気速度を音速以下にしているのに対し、そのまま超音速の空気に燃料を噴射する形のスクラムジェットエンジンを戦闘機用に搭載したのは、本機が最初であった
ただし、燃料として宇宙機で使用されるスラッシュ水素(かき氷状になった水素)やアンモニアではなくてジェットエンジン用の炭化水素系燃料を用いていることから燃焼効率を高めても出力増大はそれほどではなく、耐久性を考慮したことから推力は60トン未満にとどまっている
こうしたことに加えて、機体本体にこれ以上であればさらに分厚い耐熱セラミックを用いなければならないことから当時の技術では常用が難しいと判断され最高速度は偵察機のようなマッハ9以上ではなくマッハ5で据え置かれた
こうした速度域における旋回は極めて繊細な操作が要求されることに加え、速度発揮が予定された高度2万前後で用いるために機体各所には、いわば外付けしたロケットエンジン、あるいはむき出しのジェットエンジンの燃焼室であるRDS(ロータリー・デトネーション・スラスター)が補助的に設けられ、船舶におけるバウ・スラスターとしての役割を果たしていた
うち2基は胴体下面に設けられており、VTOL(垂直離着陸)は困難であるものの、従来型の空母からでも本機をともかく発着艦可能な程度のSTOL(短距離離着陸)性能を実現している
ただしこの場合、1機ならまだしも全機発艦などしたあとは飛行甲板のダメージが大きいことやともかくも心臓に悪いという乗り心地の悪い機動をすることからパイロットにはあまり好かれず、最終戦争時の一部航空母艦で使用された以外は空軍機verでのSTOL使用がメインとなった
772:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:41:40 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
【武装】――武装は、従来のミサイル主体のものにとどまっている
これは、前述したようなレーザーの出力不足(メガワット級レーザーは、エンジンの発電能力かららして発振はできるが冷却にあたっては専用のアルコールなどの冷却液を搭載しなければならないと予測されさらに発射から発射までのインターバルが長くなりすぎるので主兵装としては採用できない)ためでもあり、またあまりに数が多いと予想された敵機の数的優位に対抗するためには同時多数発射が可能なAAM主体が望ましいものと考えられたためである
このため、最大速度がマッハ7近くに達する高速AAM(こちらもスクラムジェット駆動により射程延長が図られている)を多数胴体内の弾薬庫に搭載
同時に10発以上の多数発射により別目標へと撃ち放し式で命中させることができた
弾切れの心配は量子格納領域の採用から薄くなったものの、それでも50トン以上の搭載は困難だったことから戦闘力としては限界があった
そのかわり、これらAAMだけでなく、「攻撃機」としての本機は極悪の一言であり、マッハ4から5の空対艦誘導弾が一度に最大12発もつるべ打ちにされるという攻撃力は「1機でも通せば1機に空母が轟沈させられる」ということを意味していた
核装備が基本の米軍機でもないのにこれは悪夢であった
レーザーも有視界程度の射程における使用では弾切れの心配が薄いことは利点として承知されており、120キロワット級レーザーが右翼基部にマウントされた
旧来の機銃と役割は同じであるが、万が一にも大型機やことによると加速中の核ミサイル迎撃を考慮して照射可能時間は最大7秒に設定(この場合、インターバルに最大2秒必要)
通常は0.1秒程度の照射で大口径機銃と同等の威力は実現できていたことから、有視界戦闘時には本砲を乱射しながら敵機を撫で切るように航過する「据えもの切り」が多用された
この場合、10分以上の連続射撃が可能である
のちに、レーザーの冷却技術上昇とAAM多数搭載の必要性が薄れたことから大量の冷却材を搭載した上で発展型の500キロワット級レーザー4門を搭載した型も開発されている(少数の実戦参加にとどまった)
左翼基部にマウントされたのは、空軍の要求で追加された30ミリ多銃身機関砲である
このために専用の量子格納領域を設けられた本砲は、もともとは20世紀の対地攻撃機用に採用されたものの軽量化版である
当初はレーザー砲と交換可能な軽量の25ミリ砲の採用が考えられていたのだが、空軍ならびに西太平洋条約機構構成国にして多数の人民解放軍を仮想敵にしているベトナムやビルマ、ラオスなどインドシナ半島の各空軍と陸軍が連名で要望を提出したことから採用が決定
海軍としても、敵上陸船団に対する攻撃時に量子格納領域により弾切れが少ない30ミリ機関砲を利用する利点は理解しており、搭載量の面で少し懸念を示した程度ですんなり設計変更を認めている
最終戦争時には、米空母機動部隊が壊滅した後の敵上陸輸送船団攻撃に実際に投入されるだけでなく、対地戦闘でも人民解放軍の人海相手に猛威を振るった
このため最終戦争後も現場は頑として本砲の撤去を認めず、結果としてレーザー砲のさらなる多数搭載は断念された
実際、携帯式対空火器を有しない敵相手には本砲はほぼ無敵に近く、2272年現在でも後継砲が北米だけではなく全世界で運用される結果となっていた
773:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:42:27 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
【後席】――前述したアビオニクスの要となったのが、管制能力を高めた自動人形とそれに搭載される戦術AIだった
軍制式の義体規格から女性型に限定されていたこれら自動人形は、コクピット後方、かつての複座機でレーダー手が乗っていた位置に同じく座席を設けられて搭乗するかたわら、パイロットと生活を共にすることでいわば阿吽の呼吸を学習
同時にUAVを指揮して空戦を補助することを期待されていた
加えて戦闘時に仮にパイロットが操縦をできなくなったとしても帰還時まで操縦桿を握るなどの役割をも持っている
対人インターフェイスとして人格を構築されていたことからこの狙いは当初の戸惑いが嘘のように図にあたり、また機体そのものが拡張されたこともあって計算能力の3倍の増大(生命維持用の各種装備が不要であることから増設された本体搭載の固定コンピューターとあわせれば5倍以上)と比較してもそれ以上の戦闘能力向上を見せている
ただし問題も大きくなった
公に戦闘時のパートナーとして生活する外見が美人(当初はこのあと起こることが分かっていたらしい開発者たちによってロボらしい外見にしようとしたが、日本以外の偉い人や現場から不気味であるとされて複数種類の顔面が用意された。開発者はもうしーらね、と言ったとか)で、さらにパイロットに最適化された人当たりのいい女性型AI
どうみてもお嫁さん一直線です
本当にありがとうございました
AIの能力への配慮やパイロットの対話との都合から兵士、それも飛行任務の将校に相応の能力と階級を与えられていたがために性癖を乱されるパイロットが続出
中でも深刻だったのは若い男性…ではなく女性戦闘機パイロットで、こういう事態も想定して設けられていたインターフェイス(意味深)がないことから上官に直訴する者が続出
男性型も特別に製造するべきか議論されたがとりわけ海軍の軍用であることから否決、なんとか対処を余儀なくされるという笑えない事態まで起きている
さらには最終戦争での献身から、退役時に自動人形を同伴させたがるパイロットが続出したこともあってことは当時の呼称のロボットと人間との関係性にまで議論が及び、最終的に各国政府が大きな妥協を余儀なくされる遠因とまでなってしまった
本機がオーストラリアなど各国では「ヴァルキリー」と称されるのも当然であろう
なお、特殊部隊勤務以外は自動人形は外見ですぐに識別できるように眉間のやや上方に逆三角形の小さなプレート(製造番号や軍籍、メンテナンス記録などが記憶されている)が設けられ、とりわけ金色のものが本機専属である証となった
当初はロボットへの差別であると糾弾された措置であり外出時は差別による破損を懸念されてこれを隠ぺいする絆創膏型人工皮膚やファンデーションが用意されていたが、やがて廃止する段階になって退役者たちからの抗議の声が殺到
いわく「私たちの誇りを奪わないでほしい」
こうした理由で軍勤務者や元軍勤務者たちは2272年現在もこの印を存置しており廃止の動きは今のところ起こっていない
774:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:43:01 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
【実戦】――本機は登場が2070年であることから米国との限定的武力衝突時には間に合わず少数機がソ連ならびに中国との国境紛争に参加した程度であった
このため、実質的な初陣は最終戦争(第3次世界大戦)である
最初に戦闘に参加したのは、中部太平洋における日本海軍の反応動力航空母艦「大和」(4代目)搭載機であったとされる
ほぼ1時間もあけずにオーストラリア国防海軍機も接敵
当時空母艦載機として配備されていた1000機あまりに加えて陸上機3500機あまりがあらゆる戦線で実戦に参加した
UAVの管制能力を有する本機の性能は圧倒的であったものの、米ソならびに中国の物量も圧倒的であったことから主として核攻撃に巻き込まれたり流れ弾に当たる形で200機あまりが撃墜ないしは戦闘不能に陥った
しかし生き残った機体は絶対的制空権を握った戦闘後半になると対地あるいは対艦装備に換装し再度出撃
戦略的奇襲を許した北海道など一部を除き、各国本土をほぼ無傷で守る最前線に立った
当然、無理な連続出撃を続けたことからこの後3日でこれらのうち半数近くが機体の重整備必須な状態となっている
戦後は一定数が現役にとどめ置かれたものの、戦後10年が経過した2087年には終戦が宣言されたことで退役が開始
半数程度をモスボールし、以後順次機数が減っていった
だが、北米大陸で断続的に核爆発が確認されていることから完全退役するのは2130年代にずれ込んだ
後継機が実質的に本機の改良型であったことから部品の生産は継続され、2272年現在は各国本土の飛行クラブ(主体となって運営しているのはかつての「後席」搭乗者たちである)に100機あまりが現役であるほかは、北米大陸への派遣を見越して150機程度が稼働状態でモスボール
十数機程度が北米での陸上作戦に投入された後も新カリフォルニア共和国との協定に基づき現地付近で戦闘待機任務についているといわれている
775:ひゅうが:2024/08/02(金) 18:43:31 HOST:KD124209079122.au-net.ne.jp
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最終更新:2024年09月14日 15:21