980 :北部九州在住 ◆NdgHDvOgik:2012/03/17(土) 19:15:49
→920氏へ
 はじまして。

 大友家で姫なんぞをやっている珠と申します。
 そこ「本編どうした」とか「竜神様の続き」とか言わない。







永禄五年(1562年)十二月 豊後国 府内


 どうも私が居る戦国時代は、私の前世と違う時代らしいと確信するものが別府湾にぷかぷかと浮かんでいる。
 織田木瓜が帆についた南蛮船なんですが。
 しかも、私と同じ前世持ちがいるらしい。
 だってさ、秋月騒乱終了時に熱田商人がやってきて、こうのたわまったのよ。

「是非とも、筑豊の石炭の販売について我々にも噛ませて頂きたいのですが」

 ふーん。
 石炭……ね。
 それと、私も後で知ったけど筑豊って地名が呼ばれるの、明治に入ってからなんだけどなぁ。
 そんな訳で、前世チートが私以外にも織田家にいるという確信は持っていた。
 それが織田信長だったら悪夢以外の何者でもないんだが。

「では、硫黄についての取引はこれで」

「今後ともよしなに」

 長島よりやってきた商人相手に取引が成立してほくほくです。
 まぁ、こちらも大いに吹っかけさせてもらったのですが。
 チートなんだろうけど、最適解を一人だけが知っているというデメリットを思いっきり織田信長は味わっているのだから。
 まず、やらかしたのが信長の親父がやらかした守護や守護代の排除。
 いくら下克上とはいえ、権威を真っ向から否定して周辺国に警戒感を抱かせない訳が無い。
 おまけに回りが名族今川をはじめとして、北畠・六角・朝倉・斉藤(土岐)などの守護・および守護代勢力が対織田外交において悪影響を及ぼしたのは必然以外の何者でもない。
 彼はいつ気づくのだろう。
 自らが守護・守護代という権威を否定した場所に、その権威認定者である将軍が逃げ込むという事がどれほど屈辱的な事かを。

 それでも未来知識のチートからか、戦場だと無敵らしく今川を蹴散らしてここで致命的な大チョンボをやらかしてしまう。
 三河一向一揆に介入して本願寺と早くも敵対関係に入ったのだ。
 信長のスタンスは知っているし、前世知識持ちは宗教勢力が政治に介入するデメリットを知り尽くしているから、占領した三河の安定化のためにも当然のように弾圧したのだが、尾張の隣に長島本願寺があったのはどうも忘れていたらしい。
 三河一向一揆鎮圧過程で当然のように長島本願寺も織田家に対して蜂起。
 織田家の権益の大部分を生み出していた海上交易拠点である長島が脅かされるに及んで今川戦を切り上げざるを得なくなり、代わりにその鎮圧過程で三河および長島にてジェノサイドが発生。
 事ここに及んで、石山本願寺が織田家を仏敵認定するに及んで、織田家は旧主派全ての敵となった。

 にも関わらず、織田家の勢力が拡大し続けているのはこの目の前の南蛮船のおかげなのだが、ここでも織田家は敵を作っていたりする。
 南蛮船は兵器であると同時に革命的インフラである。
 21世紀にたとえるならば、新幹線。
 だから、新幹線のメリットを織田家は受けたと同時に、新幹線のデメリットを余所に与えた事に気づかない。
 新幹線が開通した事によるストロー化現象である。
 熱田の隆盛はそのまま大陸および南蛮から直で堺など畿内に物を運べる事を意味し、熱田という拠点からその航路は太平洋に主眼が置かれるのはある意味必然だった。
 その結果、博多商人の恨みを買ってしまう。
 博多の没落は博多―畿内間という瀬戸内海航路の衰退を招き、南蛮船による流通独占は西国水軍衆の激烈な恨みを買った。

982 :北部九州在住 ◆NdgHDvOgik:2012/03/17(土) 19:19:39
「姫様。
 こちらにおられましたか。
 お屋形様が大友館に戻るようにと。
 臼杵鑑速様と安国寺殿も共にお待ちになっているそうで」

「わかったわ。今、行きます」

 麟姉さんの声で港から戻るが私は笑みが止まらない。
 よりにもよって、一番踏んではいけない人間の虎の尾を織田信長が踏んでいるのに気づいていないのがおかしいのだ。
 瀬戸内水軍のドンで、つい先ごろまで我が大友家とガチバトルを繰り広げていた毛利元就の尾を。
 今まで敵対していた者が仲良くするには、共通の敵って必要だよね。
 商都博多の浮沈は大友にとっても毛利にとっても共通の課題だったのだ。
 そういう認識がある事を見越して、私は毛利元就に織田信長が取り得る戦略と国の方向性を全部たれ込んだ。
 だからこそ、毛利の外交官である安国寺恵瓊が大友との講和の為にこんな場所に来ている訳で。
 もちろん、何かあったら互いに背後を殴る気満々だが、瀬戸内海航路の活性化と織田が握る物流の奪還は緊急課題だったのである。

 え!?
 私は無関係、中立を貫きますよ。ええ。
 まだ、父上と豊後同紋衆からの粛清フラグ逃れていないんですから。
 まぁ、転生チートな方がどんな夢を見ているか知りませんが、この国の旧主派相手にがんばってもらいものである。はい。


「麟姉さん。
 後で、この手紙を安国寺殿に渡して欲しいの。
 安国寺殿には了解取ってもらっているから」

「はい。
 ですが、どうして松永久秀殿なんかに文を?」

「ちょっとリクルートをお願いしようと思って」

「り、りくるうと???」

 良いネタあるしね。
 安宅冬康の値段でもお釣が来ると思うけど。
 毛利元就にタレこんだのと同じ織田信長の戦略とその方向性、場合によっては公方を毛利が保護しても構わないという商品は。


あとがき
 某所にてうちの二次が書かれていると報告があったので飛んできました。
 で、喜びのうちにお礼SSをば。
 大友の姫巫女側で気になった点とかを話に入れてみました。
 改善の一助になったら幸いです。

追記
 うちの姫を潰すならば、大友二階崩れか、弘治2年(1556年)に発生する小原鑑元の乱に介入するのが一番楽だと思いますよ。
 これからも遠慮なく書いちゃってくださいませ。

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最終更新:2012年03月19日 20:47