【FALLOUT ×
日本大陸 ~或いは人類文明圏最後の守護者~ 】
「……核の炎で消え去ったあの連中が、一切合切後先考えていない輩だと言うのは知ってた積りだったんですが」
「オートメーション化浮流機雷製造工場を、太平洋沿岸地域の各所に建設稼働させ、核戦争後も未だ複数健在等とは、
予想外にも程が有りますな、流石に……」
「あの【ゲッツ】とか何とか言う環境再生装置が、太平洋に総数不明に放流された機雷の掃海にも対応出来てるんですかね」
「【ゲッツ】じゃ無くて【G.E.C.K.】ね。そんな都合の良いモノだったら、今悟りの仏フェイスや真っ白燃え尽きボクサー状態に
なっている【原作知識持ち】が居る訳無いでしょ」
「そんな事より、先行偵察に向かっている特務部隊が掃海用具の早期の輸送や追加の増援要請を矢の雨の如く続けているので、
早急に対応に入ります」
「……本格的に、対機雷網の設営や、民間漁船、民間船への対機雷マニュアル作成、各国合同の国際掃海部隊の創成等を
実施しなければなりませんね」
「……そうですね、嶋田さん……。民間船へは出航禁止令の延長で時間が稼げるでしょうが……頭が痛い……」
「まぁ、西太平洋地域全体で軍艦以外の民間船出航は開戦後から禁止されているので、余程友軍艦が油断か昼寝でもしていない限り、
蝕雷するのは未だに漂流中の旧敵国艦位なのが不幸中の幸いですね」
――――北米大陸現地調査の為先行して派遣された原潜部隊、核兵器と噴火で灰燼に帰したハワイ諸島を通過し米本土への航行中、
海面海中を埋め尽くさんが如き大量の機雷と遭遇する緊急電を受け取った
夢幻会らの図。
後にオーストラリア方面派遣の某南雲船団から英本国艦隊の原潜が発見される緊急電が来る数日前の事であった。
中国大陸に上陸した日本軍が、文字通り物量の桁が違う元中国人民のフェラルグールの大群や、中国本土の植生物から
放射能汚染とFEVで狂暴化した野生生物を、砲撃や空爆、戦車砲の砲撃等で吹き飛ばし、地道に制圧地域を拡大させ情報収集に勤しんでいる頃。
日本本土は横須賀軍港からは、あの地獄の核兵器が乱舞した戦塵を生き残り、加えて修繕と共に小規模改装すら行われた
最新鋭の原子力潜水艦『磐城』級並びに、形式上こそ一世代前とは言え性能は仮想敵国の遥かに上且つ同盟国にもライセンス生産で
姉妹艦多数の『壱岐』級が、生中継のオンライン放送にて日本国内外の国民が視聴と共にコメント多数を送り、
軍部等の関係者の中で人数こそ限られた上で且つ対放射能汚染完全防備された室内から、
北米へ先遣隊として調査に向かう彼女達を見送っていた。
尚、便宜上『原子力』潜水艦を艦種名として名乗っているが、実際には『磐城』級も『壱岐』級も、核融合炉機関を搭載している『核融合潜水艦』だったりするのだが、
【核潜】よりも【原潜】の方が言葉の通りや語呂がよい事や軍民問わず原潜の方が浸透している事、そして書類上の変更や新規記載が煩雑で面倒と言う事も有り、
恐らくこれからも原子力潜水艦の名は続いて行くのでは無いかとされる。
711 名前:陣龍[sage] 投稿日:2024/10/11(金) 17:22:06 ID:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp [3/8]
横須賀軍港沖、そして太平洋へと出撃して行く原潜艦隊の乗組員には、一人として『人間』は搭乗しておらず、
全ての乗員がアンドロイド兵によって構成されていた。彼女らの任務は、確定視された推測事項である、
核戦争によって無制限に拡散された放射能汚染とFEVのによって最早どのような有様と化しているのか見当も付かない
米本土への偵察任務。その道中の寄港地は皆無と言っても過言では無く、旧米軍の太平洋地域最大の要衝であった
ハワイ諸島は核兵器の着弾と火山噴火で寄航はもとより停泊すら難しい有様な為、
日本本土からほぼ直行の形で米本土へ偵察する事が求められた。そして【普通の人間】が上陸するには、
保管するにしても嵩張る各種汚染対策装備が必要な事や、飲食や休養等の必要物資・項目の観点から、
今回は例外的にアンドロイド兵のみでの任務となった次第である。
余談だが、『アンドロイドのみにて乗員を構成すれば、人間が必要とする食料や嗜好品等は不要であり、
その分の領域に別の物資が追加で保管が可能。アンドロイドは常時稼働が可能であり、
必要時は本土へのデータ送受信にて問題はない。潜水艦と言う閉鎖領域且つ長期航海と言う任務にこれ程の適材は無い』と言う、
余りにも正論だが血も涙も情もない結論を出した軍官僚に対して【アンドロイドは俺(私)の嫁(or姉or妹or母or娘orアイドル)】派閥が
『ブラックヒストリーを生み出した(【相互理解】の為の特定官僚二週間特殊部隊訓練強制招待)』と言う話が無責任に流れたらしいが、
当然その様な事実は少なくとも公報等に記載はされていない。
内地での諸事情は兎も角、組織だった脅威となる敵艦が存在していないも同然の太平洋を航海する原潜部隊は、
警戒配置等に着く事も碌に無く、水中の怪生物対策に各種ソナーを発信しつつ殆ど浮上航行の状態で進撃していた。
宇宙での軌道上のデブリが相変わらずの物量で【掃海】が余り進んでいない事情もあり、
衛星通信による支援等は最盛期を下回るレベルでしか受けられていなかったが、
『磐城』級にしろ『壱岐』級にしろ核戦争で衛星・通信機能が壊滅した孤立化状況も想定した性能設計が行われており、
近隣艦とのリンク機能も十二分で稼働している為、行き過ぎた慢心と見られかねない無防備に見える浮上航行でも何の問題も無かった。
何せ『敵艦』が存在しないので乗員のアンドロイド兵は大体が暇を持て余しており、船体が傷付く可能性や怪生物を呼び寄せる可能性が無ければ、
何処かから持ち込んでいた釣り竿で船体の何処かに腰掛け、釣りでも始めそうな有様だった。
中国本土にて出現した巨大な火吹きスズメの様な空飛ぶ怪生物も太平洋のど真ん中では見受けられず、
結局航路途上3割程を過ぎた当たりで『余計な浪費の抑制』を名目に、ローテーション制で通常勤務より多くの乗員が休暇配置と称して
スリープモードに移管した位だった。感情豊かな彼女らに、余りにも何も無さ過ぎる状況で軍務を続けさせたのも、中々に酷な話である。
一応アンドロイドは『機械』なので、命令さえすれば立ちどころに感情抑制させて【人形】にする事も出来ると言えば出来るが、
そんな事を言いだした人間は大体【アンドロイド好き好き派閥(異称・嫁等と称する類)】によって『お話』と『修正』されると言う。
何処まで本当かは知れた事では無いが。
712 名前:陣龍[sage] 投稿日:2024/10/11(金) 17:24:00 ID:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp [4/8]
一応軍事作戦の筈だが驚く程に気の抜けた様な見た目の艦内であったが、核兵器の被弾と全島火山噴火にて
人類文明の残骸が呑み込まれたハワイ諸島に立ち寄った頃には、調査任務の開始と言う事でアンドロイド達は活気を取り戻していった。
衛星写真の通り島内の軍事基地や民間都市、そして港湾施設も核の炎と溶岩に飲まれて消失した島々へ、
分遣隊としてインドネシア海軍やオーストラリア海軍等の各国合同のアンドロイド達が上陸して調査に従事する中、
更に東進して行った本隊。上陸部隊が核攻撃に何とか耐えたがその後の火山噴火とマグマ流出で出口が完全に封印されて
伝熱にて数百度の室温に達したと見られた核シェルター、溶岩に呑み込まれ一面平坦に【改造】された元軍事施設や、
外郭防壁を核で破られた所にマグマが大量に内部へ流れ込んだ元シェルターを複数発見する等、
想像を超える地獄絵図が繰り広げられていた痕跡にアンドロイド達や報告を受けた本国らが溜息を吐いた頃。
『此方『鳥辺(うべ)』、ソナーにて浮遊機雷を確に……確認……いや、なんだこれ…』
『此方『磐城』。『烏辺』、報告は明瞭明確に』
『此方『烏辺』……ソナーの故障の可能性有り。艦の前方、海面海中共に大量の浮遊機雷を確認』
『『竹生(ちくぶ)』より全艦、此方もソナーに無数の浮遊機雷確認』
『……『磐城』より艦隊各艦。本土より連絡が入った。どうやら……アメ公の本土には、機雷の自動生産工場が存在していたらしい。
推測だが、この浮遊機雷はそれによるものだろう』
『『羽後』より『磐城』へ。掃海用具不足の可能性を考慮し、本土へ支援要請が必要と具申』
『『磐城』より『羽後』へ。具申を受理、本土へ状況説明と共に支援要請を行う』
【ソレ】を発見した時の潜水艦部隊の反応は、当初はそこまで重大事項として見られなかった。最終戦争で大破漂流していた所を、
グール化しつつも人間時代の理性や記憶を保持したままだった件の女性通信士官ごと鹵獲した例の米海軍原子力空母から得られた情報で、
米本土に機雷工場が存在している事はある程度解析出来ていたので、あの核戦争中の後先考えていない事が
誰の眼にも明らかだった核飽和攻撃の例を見るからに、戦後処理の事等一切考えずに兵器をばら撒く事は容易に納得できた。
因みに、真空管技術による米原子力空母のコンピューターなので、半導体技術系統のコンピューターとは完全に規格違いと言う事もあって、
情報の吸出しを担当した解析班たちは解析するのに相当苦労していたと言う。ホロテープを実物で利用どころか見た人間なぞ、
西太平洋地域の一般人では祖父母や曽祖父母らから続くレトロ趣味一家でも無ければ居ない程なのだから。
お陰で原点夢幻会員やニュービー夢幻会勢がアドバイザーとして解析部隊に臨時に助っ人として参入していた程だった。
713 名前:陣龍[sage] 投稿日:2024/10/11(金) 17:28:18 ID:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp [5/8]
『『伊是名』より『磐城』へ。機雷処分魚雷欠乏。補給を申請。尚浮遊機雷減少量は不明』
『『豊後』より『磐城』へ。ソナーにて新たな浮遊機雷群を確認。掃海艇部隊は何処に有りや、
支援艦隊は何処に有りや、全世界は知らんと欲す』
『『安房』より『豊後』へ。愚痴の前に掃海されたし。掃海艇部隊は編制中で現着は相当先と何度も確認されり』
『『茂浦』より『磐城』へ。現状の掃海では対処療法にも成らないと推察。本土の対応は如何なりや』
『『磐城』より各艦へ。現在米本土の機雷工場への弾道弾攻撃を検討段階にあり、偵察衛星にて調査中との事。
だから……あの、ホント、もうちょっと頑張って欲しいんです』
『『『『『はやくしろーー!まにあわなくなってもしらんぞーー!!(〇M〇#)』』』』』
『『『『いやぁあーー!おうちかえりたーーい!!!(´;ω;`)』』』』
『いやもうホント、全く以て仰る通りです(´・ω・`)』
アンドロイドもといAIであるが故に可能な、超高速且つ高性能な通信空間では、なんか、もう、
賽の河原の石積みに思える掃海作業の無間地獄に色々と愚痴だの悲嘆だのなんだのが大量に吐き出されつつも、
外面上の掃海作業は必要以上の発言も表情の変化も無く、静かに且つ高度な連携にて効率的に、安全に、
掃海用具が有る限り適切に行われて行く。極普通の人間がこの作業を行って居たら、とっくに機雷の無間地獄に発狂するか、
疲労と疲弊から来るミスで重大事故が複数発生していたであろう。そんなアンドロイド達でも通信内では思わずネタに走ってしまう位に、
神経をすり減らす掃海作業であるのだから、ソナー等で確認される機雷の物量の程は推して知るべし。
「……まぁ、想像通りでは有るんですが。マグマの底に沈められていた機雷工場で発見されたこのアメリカ産機雷には、
国際法のハーグ第8条に有る自爆機能は全く無い、との事で」
「コストカットの掛け声で真っ先に切り捨てたのでしょうね。この世界のアメリカ式資本主義では、
安全性や環境対策に掛ける予算は須らく【無駄】とされていますから」
「なんですよね……それで後始末を全部押し付けられる此方としては溜まったモノでは無いですが」
「報復する米政府は滅亡してるのがね…いや、この前直接ペイントで無くて表示式に機体の絵柄を出せる事実に失神してた夢幻会員曰く、
後継的な組織は居るんでしたっけ」
「【エンクレイヴ】……歴史が大きく変わっているこの世界で、彼らがどうなっているのかは、直接北アメリカ大陸に踏み込まない限りは、
分からないでしょうね」
「まぁそれはそうとして、アザラシ保育園やイルカ小学校、シャチ高校などへ浮遊機雷が押し寄せないように掃海艇の増勢や
対機雷網の追加設置を進めていきます。いやぁ、この夢幻機雷戦の件を公表したら結構な額と人数が個人献金(スパチャ)や募金で
防護を求めて来ましたので……」
「……うん。……癒しと平和は大事な事です」
遠く太平洋東部の端で、アンドロイド達がジェットストリーム空輸で送り込まれる掃海用具で内心泣きながら掃海に従事し、
同じく空輸で簡易港湾施設を壊滅したハワイ諸島の沿岸に緊急開設する作業が始まった頃。
日本本土や西太平洋地域では旧アメリカ軍の暴挙に殆どの人間が『知ってた』と諦観の表情を浮かべつつ、
軍が緊急で求めた掃海艇部隊の大増勢を半ば言い値通りに予算通過させて遅ればせながらに対応を進めつつ、
一部現実逃避気味に西太平洋条約機構の沿岸地域に逃れて来たアザラシ等のライブ配信や保護地域での触れ合いが俄かに人気を博し、
そして配信中の課金や保護地域での募金の額は、保護管理に努める必要額を大きく超える程だったと言う。
こんな人の業と言うには行き過ぎた悪夢の有様であるならば、さもありなんである。
最終更新:2024年10月12日 12:56