133:奥羽人:2024/08/04(日) 13:31:04 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
実を言うと、地球連邦はガミラスの存在自体は前々から知っていた。

銀河規模災害が起きた場合に備えた、天の川銀河外に避難植民地を構築する計画において、天の川銀河に比較的近接する大小マゼラン銀河は、当然調査対象となっていた。
しかし、地球の探査艇は長距離航海の果てにマゼランへと到達したものの、現地では多数の小星間、星系、惑星内国家がひしめき合う群雄割拠の地だった。
当時はガミラスも複数の勢力の内の一つに過ぎず、地球側はマゼラン銀河を包括できるような交渉相手を見つけられずに撤退。
マゼラン銀河内には多数の惑星破壊の痕跡(後にイスカンダルによる“救済”跡と判明)もあった為に、当分は非接触による様子見に留めて置こうと放置していた。
後に、銀河外入植の主流は三角座銀河、アンドロメダ銀河方面へと切り替えられ、大小マゼランは地球にとって「地球時代のアフリカ的地域」として忘れ去られていく。








「貴殿方地球連邦にとって、大小マゼランは銀河の外れにある辺境の一つ。支配できなくとも、腹は痛まぬ筈……もし受け入れて頂けたなら、ガミラスは地球の盟友となり、その発展に惜しみ無く寄与しよう」



地球連邦統合軍マゼラン軍団総旗艦
SC級戦域基幹船団「マクロス・メガラニカ」
外交施設、大会議場

スクリーンを通して地球連邦統合政府やその附属機関のお偉いさん面々が一同に会している会議場の中心。
彼等の視線を一点に集めている存在は、宙に浮かぶ映像に向かって恭しく頭を下げた。
それが、彼の住まう国家からすれば途方もなく屈辱的な行為だと知った上で。


「どうかお力添えを願いたい……滅びに瀕したガミラス民族を救う為に」


彼の名は、デスラー。
ガミラス帝国の独裁者、アベルト・デスラー総統である。



(ガミラスも一枚岩ではない、ということか……)


マゼラン軍団総指揮官である沖田宙将からすれば、頭を下げたデスラーは頭を下げている立場にも関わらず、ある種の不思議な気品もしくは毀損できないオーラのようなものを纏っているように感じた。

デスラー総統の話によれば、今現在、彼の国の実権を握っているのは旧貴族派とかいう裏切り者だとのことである。

ビーメラ星系のゲートにて地球と初接触したガミラスは、統合軍の予想以上の大戦力によって強行策を一時的に中断。
戦端を開けば大損害は確定、もしかすると敗北を喫する相手との初遭遇に、デスラー総統は本来の目的「母星が滅びかけているガミラス民族の新天地の捜索」の為に地球に対して下手に出ることも考えていた所で...…痺れを切らしたゼーリック国家元帥率いる旧貴族派が、総統座乗艦を爆破。
事実上のクーデターであるこの計画をいち早く掴んでいたデスラー総統は、親衛隊の手引きで死を擬装しながら旧貴族派の動向を伺い、頃合いを見て一斉排除……と行こうとした所で、ゼーリックらは予想外に早く地球と開戦。
その上、地球の戦力もこれまた想定外に強大だったことで大小マゼランの防衛線は即座に瓦解。
このまま様子を伺っていてはガミラス存亡の危機である為に、当初の計画をかなぐり捨てて統合軍の先遣艦隊に降伏。
こうして停戦交渉を行っているとのことだ。

134:奥羽人:2024/08/04(日) 13:32:10 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp


『しかしですな、デスラー総統。我々も停戦とその後の国交締結は望むべく所ですが、貴国側から戦端を開かれた関係上、統合政府としてはそう容易くハイ終わりとは出来ないのですよ』


『地球の皆様方の事情は承知しております。我々イスカンダルも、停戦の見返りとして幾つかの技術を譲渡する用意があります』



デスラーと地球の交渉に割り込んで来たのは、ガミラスの双子星であるイスカンダル星の女王スターシャ。
イスカンダルは、古くは大小マゼラン銀河を支配して天の川銀河まで進出してきた国の末裔であり、今は領域の殆どを放棄して単一惑星国家となった国である。
イスカンダルの痕跡は各地で発見されており、正直に言えばその古代帝国が没落したとはいえ残存していることには驚きだった。
しかも、口振りからすれば古代の超最先端技術を未だ保持しているという。



『……これは、波動量子情報の展開システム?』

『真田主任、知っているのですか?』

『えぇ。次元波動がプランクスケールであらゆる情報を保存している可能性は既に学会で提唱されています。先進科学研では、それを解読、もしくは量子単位ですが実空間上に展開する研究が進められていますが……まさか惑星単位でそれを可能とするとは……』


イスカンダル側からもたらされたデータを閲覧しながら話に入ってきたのは、統合政府附属機関である先進科学研究所の波動理論研究主任である真田志郎である。
イスカンダルから渡される技術が本当に役立つものなのか。適当なガラクタを高価で押し付けられていないかを判断するために呼ばれた最先端研究の第一人者であるが、その氏にとっても今回提示された技術は驚きだったようだ。
沖田自身も宇宙物理学博士号は有しているが、彼の話はそれをも凌駕する域の研究であり、理解するのは骨が折れる。


いずれにせよ、地球・ガミラス・イスカンダル三国の話は順調に纏まりそうであり、ガミラス星を大艦隊で囲んで軌道爆撃を行う事とならずに済んだのは良かったのだろう。






「地球……」


イスカンダルの女王スターシャにとって地球の存在というのは、端的に言うと予想外に過ぎた。

彼らが本格的に外宇宙に進出し始めて、「僅か」200年弱。
その短期間で彼らは波動理論を自らの物にし、徒な“救済”に走ることもなく、嘗てのイスカンダル以上の範図を「比較的平和的に」築き上げている。
更に、その技術力はコスモリバースシステムの一端にすら手を掛けている程であり、何のバックボーン(古代帝国の継承)も見受けられていない星としては破格の存在であった。

そう。地球という星は、嘗て銀河の頂点に上り詰めたイスカンダルにとってでさえ、あまりにも例外的な存在だったのだ。
とはいえ、その地球が存外に理性的であり、波動エネルギーを兵器として持っても極端に走らない存在であったことは、イスカンダルにとって何よりも幸運だったことだろう。





「ご機嫌のようだね、ゼーリック君…お蔭で退屈な時間を過ごさずにすんだよ。さて、君の罪状は明白なわけだが、何かいい残すことはあるかね」

「そんなブァカなぁぁ!?貴様の艦は確かに…」

「第7戦闘団前へ、楔を打ち込め!」


尚、デスラー総統の帰還と共にガミラス帝国軍はその殆どが総統に帰順。
旧貴族派残党もドメル率いる第6空間機甲師団を初めとした精鋭部隊によって掃討された。

135:奥羽人:2024/08/04(日) 13:37:24 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
【地球(銀河の半分)連邦世界(仮題)3】


  • SC(ステーション・クラスター)級戦域基幹船団

かつて長距離移民に用いられたアイランド・クラスター級(新マクロス級)を、異空間ゲートのリバースエンジニアリングによって必要性が低下したのを鑑みて移動基地として改装したもの。

136:奥羽人:2024/08/04(日) 13:39:01 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
以上となります。転載大丈夫です。
ガミラスは運良く滅びを免れました。
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最終更新:2024年10月12日 13:03