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【地球連邦(銀河の半分)改め、汎銀河地球連邦世界】4




宙間標準時2202年12月2日、天の川銀河系辺境宙域。


『浮遊ガス惑星は依然、銀河面に対して平行にバルジ方向へ直進を続ける。間も無く防衛識別圏内に入る』


広大な宇宙空間に浮かぶ銀河系の外郭。
地球連邦領域の近傍に位置するその宙域を巨大な彗星が行進していた。
直径約14万kmと木星に匹敵するサイズの彗星は、膨大なエネルギーで白く発光しているガスを纏いながら、自由浮遊惑星としては類を見ない高速で連邦領内に向かっている。


『目標が防衛識別圏内に入った。他天体の重力の影響が想定よりも少なく、依然直進中。監視を続行する』


宇宙において、危険な恒星や惑星はありふれた存在である。
とはいえ自然保護の観点から基本的には回避または放置されるのが通例であるが、人口密集地域や領内の戦略的要衝に危険をもたらすとなれば話は別であり、軌道変更や破壊措置が実行されることもある。
この白色彗星と呼称されるガス惑星型の自由浮遊惑星も、高い速度と質量から居住惑星の近傍を通過すると危険な影響をもたらす可能性が高く、軌道予測および監視の為に星間警備隊(航路治安維持組織)のカイラム級大型巡視艦とクラップ級巡視艦、計2隻の巡視隊が派遣されている。
大多数の人間は今回も、何時通りの監視任務で終わると考えていたが……唐突に事態は急変する。


『目標の進路上に地球型惑星、1』

『これは、データに無い惑星だと……何故今になるまで気づかなかったんだ?』


星間図では僅かな空間傾斜があるのみで、惑星一つ無い空白だった筈の宙域。
そこには、今日突然現れたかのように青い星が存在していた。
まるで、星そのものを隠蔽する結界がいきなり剥がされたかの様に。
更には、彗星の方でも異変が発生する。


『待て……目標内部に複数の動力反応、おそらく艦艇と思われる』

『国籍不明、いや、ガトランティス艦だと』


彗星の中より、大小多数の艦艇が出現し始めていた。
白く発光するガス帯を抜けて現れるのは、黄緑と白色が特徴的な海賊として名高い宇宙蛮族「ガトランティス」の艦。
その数は優に数十を超える。


『これは海賊行為じゃない。歴とした侵攻作戦だ』

『緊急、緊急、目標内部よりガトランティス艦多数。戦艦、空母含む推定50隻以上が未知の惑星に向かっている』

『不味いぞ、一部が此方に向かってきた、迎撃を』


巡視隊に向かってくるガトランティス艦、ククルカン級襲撃型駆逐艦が数隻。
準軍事組織の星間警備隊だが、常日頃から宇宙海賊への対処を任務としていることもあり、巡視艦といえど下手な星間国家の戦闘艦並みの戦闘能力を持っている。
しかし、今回は敵の数が多い。


『先頭の艦を叩く。撃て』

568:奥羽人:2024/08/11(日) 12:39:03 HOST:sp49-96-47-149.msd.spmode.ne.jp

攻撃力に優れるカイラム級がクラップ級に撤退を指示するのと同時に、回頭しながらガトランティス艦隊に横腹を見せたと同時に、主砲塔4基8門から最大出力の斉射を行い2隻を撃破。
残りを後部砲塔の速射で牽制しながらブースターを最大出力で噴射し、ワープ可能点までの急速離脱を開始する。
巡視隊はククルカン級のばら蒔く緑色の砲撃を受けて各部が損傷し黒煙を噴くも、反撃によってまた一隻を撃破。


『新たに駆逐艦5、航空機10が此方に向かって来ます』


ガトランティス艦より発艦してきた攻撃機デスバテーターも巡視隊への攻撃に加わり、巡視隊の方もパルスレーザーによる弾幕を張る。
加えて、臨検用に搭載されているデストロイド部隊も射出用甲板に展開して対空砲火を撃ち上げて抗戦していたが、数の差は如何ともしがたく船体の被害が増していく。
その時に、巡視隊の先の空間に新たな波紋が現れた。


『作戦域に到着した。敵味方双方を確認、味方の撤退を援護する』


統合軍より救援として派遣された、旗艦のアンドロメダ級、それに続く無人型ドレッドノート級複数からなる救援艦隊だった。


『敵は此方で対処する。貴艦らは早急に離脱せよ』

『援護感謝する。全艦、緊急フォールド開始』


旗艦であるアンドロメダ級と、それに管制される無人ドレッドノートが主砲塔を敵艦隊に指向して一斉射、続けて空間爆雷とミサイルも放たれる。
元々は彗星に対する破壊措置の為に待機していた救援艦隊だったが、巡視艦とは桁違いの総火力を以て迫り来るガトランティス艦隊を鎧袖一触で破壊。
対艦ミサイルを放とうとしていたデスバテーターも、進路上で炸裂する火球に絡め取られて爆散していった。


『よし、今のうちに我々も後退する。全艦回頭』

『ガトランティス艦隊の大部分は未知の惑星へ向かっていった模様。おそらく占領が目的であると考えられる』









白色彗星内部、大帝玉座の間。
そこには、彗星の核……滅びの方舟の“間借り人”達であるガトランティスの指導層が集まっていた。
しかし中央に座す大帝も、周囲を囲む者達も、今しがた戦った地球の艦については差程気にしていなかった。それは、彼等にとってしつこい羽虫を追い払っただけのことに過ぎない。
彼等、ひいては大帝にとっては、そのような匙より何よりも、目の前に出現した星の方が余程重要事であったのだから。


“テレザート星”


それが、たった今ガトランティスの手中に墜ちた星の名だ。







569:奥羽人:2024/08/11(日) 12:41:48 HOST:sp49-96-47-149.msd.spmode.ne.jp


ガトランティスの本格的侵攻、その知らせに地球連邦は騒然とした。
各種の早期警戒網を欺いて彗星に擬装して艦隊を送り込まれ、未知とはいえ領内の居住可能惑星を占拠されたのだ。

更に、その未知の惑星は極短時間の観測にも関わらずハッキリと識別できる程の高エネルギー反応を示す星であり、星から得られるエネルギーを利用したガトランティスが、そこを橋頭堡に支配地域を拡大するための侵攻に打って出ないとも限らない。
いや、その未知の星……“テレザート”から放たれた発信者不明の通信信号から鑑みるに、その可能性は極めて高いと言えた。

統合政府は即座に全域に対して非常事態宣言を発令、テレザート星近隣宙域から民間人の避難を開始した。
更に、各地に分散駐留していた統合軍艦隊の集結も始められた。
流石は地球連邦と言うべきか、統合軍ではこのような突発的侵攻を受けた際の想定もしっかりと行われており、戦時体制への移行が比較的スムーズに行われたのは、不幸中の幸いだった。







12月10日、第一次テレザート沖海戦。

統合軍の内、現場に近く即応できた艦隊が行った威力偵察によって、地球とガトランティスの間に本格的な戦端が開かれた。

テレザート沖にフォールドした統合軍外郭第三艦隊。
戦力はツーサード級可変戦闘空母2、クォーター級可変戦闘空母4、ウラガ級護衛空母8、アンドロメダ級巡洋艦32、ドレッドノート級護衛艦128。

大規模航空攻撃によって迎撃に出たガトランティス前衛艦隊の陣形を破壊、続く前衛のアンドロメダおよびドレッドノートの拡散波動砲によって、ガトランティス前衛艦隊100~150隻を殲滅した。

ガトランティス側は反撃の為に、前期ゴストーク級ミサイル戦艦から成るゴーランド艦隊にて、全面的なミサイル攻撃を仕掛ける。
これに統合軍は、対空砲や無人戦闘機ゴーストによるを対空防衛網を以て応え、その殆どを迎撃。
その隙に側面へと回り込みトランスフォーメーションを完了したクォーター級戦隊は、横腹から三桁隻は居るゴストーク級の行儀の良い陣形に対して、マクロスキャノンの一斉射撃を実行。
これを敵将ゴーランドごと葬り去ることに成功する。

しかしゴーランド艦隊を消滅させてから数分以内に、彗星内部から1000を超える反応が検出される。
出てきたのは、量産されたカラクルム級戦闘艦が2000隻強。
急遽編成されたメーザー提督率いるガトランティス軍第八機動艦隊だった。

外郭第三艦隊は威力偵察による敵情分析を完了したと判断。
拡散波動砲の一斉射撃によって撤退の邪魔になりそうな残敵を掃討しつつ、ツーサード級一隻がマクロスキャノンによる偏向照射攻撃によって陣形を崩したところに、もう一隻が大型拡散波動砲撃を叩き込み第八機動艦隊の過半数を撃沈して突進力を相殺。
再出撃した航空隊の対艦反応弾攻撃による援護を受けながら、外郭第三艦隊は戦域から離脱していった。


同時期、ガトランティスの目が外郭艦隊に向いている隙に、統合軍はテレザート星の近隣星系に前線基地を構築。
臨時亜空間ゲートとフォールドネットワークを構築しつつ、テレザート星周辺にフォールドジャミングシステムを展開し、今後の布石を打っていたのだった。

570:奥羽人:2024/08/11(日) 12:44:06 HOST:sp49-96-47-149.msd.spmode.ne.jp
以上です。転載大丈夫です。
ガトランティスにとってはしばらくカラクルム級ができる方が早いか削られる方が早いかの自転車操業になります。
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最終更新:2024年10月12日 13:14