695:弥次郎@お外:2024/08/12(月) 17:36:48 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「再臨」


  • 星暦恒星系 第3惑星「星暦惑星」 現地時間星暦2147年7月16日 サンマグノリア共和国領「グラン・ミュール」 86区 旧前線基地



 かつてエイティシックスたちの基地として機能としていた基地などは、表向きには放棄されている状態だった。
勿論、86区に含まれている土地に残ったサンマグノリア共和国の遺産---建造物や畑や図書館や美術館など---は回収されており、無人ではなかった。
サンマグノリア共和国政党政府からの依頼もあってのことで、レギオンの侵攻に際して放棄されたそれらは回収の対象であったのだ。
レギオンが制圧兵器としての面を持ち、不用意に破壊を行っていないのが功を奏し、貴重な文化財などが人の管理を離れた程度で残っていたのだ。
勿論、10年近い期間が過ぎ去っているために、完全に無傷というわけにもいかない。
自然劣化や経年劣化は発生するし、自然が繁茂することにより浸食を受けたものだってある。

 そんなわけで、旧86区---サンマグノリア共和国が認識する外にはそれなりに人の姿があったのだ。
 そして、それが非常に都合の良い隠れ蓑となっていた。
当初は現地に残されているエイティシックスたちの証拠集めのため。
政党政府樹立後はサンマグノリア共和国の資産の回収という名目のため、人が立ち入っていたとしてもおかしくない場所となっていた。
 だからこそ、そこに裏の人間がひそやかに混じるスキが生じる。
全周囲を囲むそれらの基地などを利用し、特大の呪術的汚染---あるいは蟲毒や呪詛---を少しでも除去する、大規模な儀式が行えたのだ。
星暦2147年2月に始まったそれは、時間をかけて規模を拡大しながら始まり、人員を増やし、設備を増やし、頻度を増やしていった。

 その間、86区---より正確にはレギオンとの間の戦闘領域の掃除も進むこととなった。
 いうまでもなく、現地で打ち捨てられたエイティシックスたちの遺体や乗機や遺品の回収だった。
ジャガーノート配備開始から毎年10万人以上が死んでいるわけで、その数は山ほどどころの話ではなかった。
ついでに言えば、ジャガーノート配備以前、諸兵科連合により戦って死んでいった人々の数もいるわけで、その数は膨れ上がる。
各方面で途方もない数の遺品などが集められ、のちにサンマグノリア共和国政党政府の入植する惑星に持ち込まれることになった。

 しかし、日夜休みなく続くオカルト勢力の努力をあざ笑うかのように、サンマグノリア共和国の危険度は高いままだった。
漸進的な解決こそできてはいるが、全体量から見ればまだまだ少ないのだ。
加えて、土地をも汚染しつくし、質さえも変容させるような特濃の特級呪物のごとき蟲毒なのだ。
さしもの地球連合のオカルト部隊でさえも、これをどうにかしきるためには時間と労力を注ぎ込み続けるしかなく、それでも苦戦を強いられた。
「オカルト知識が全くない状態でも、このような地獄を生み出すことができる」これは重大かつ驚愕すべき発見として本国に報告されることとなったのだった。

 さらに、サンマグノリア共和国政党政府樹立とエクソダス後の新惑星に向け、移動されることになったものがある。
ある意味ではオカルト関係者だけでなくサンマグノリア共和国本国にとっても劇薬にしかならない「モノ」あるいは「ヒト」であった。

696:弥次郎@お外:2024/08/12(月) 17:37:20 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

  • 同惑星 衛星軌道上 地球連合軍星暦恒星系派遣群 星暦惑星地上方面軍司令基地 ソレスタルビーイング級コロニー型外宇宙航行母艦



 巨大な宇宙航行母艦---もはや小惑星そのもの---の「ファントムビーイング」ドック内部に、その船はあった。
サンマグノリア共和国政党政府「領」を兼ねる宇宙航行艦「ヌーヴォ・サンマグノリア」。
正統政府の臨時首都であり、星歴惑星から退避した人員などが詰め込まれている巨大移民船。
その一角に「それ」が運び込まれていた。
それは、大胆不敵にもサンマグノリア共和国「グラン・ミュール」内部に存在した牢獄---その一部だ。
侵入したオカルト専門部隊が記念遺構として残っていたものをごっそりと引き抜き、そっくりなものを底に置いてくることで回収していたのだ。
正確にはその一室、特別な牢獄の部屋を引っ張ってきた形となる。ついでに牢獄の外にあった墓所もひっくるめて。
 そして、それらはその牢獄をそっくり利用した作業室に集められていた。

「では?」
「いつでも」

 オカルト関係者たちは、その牢獄の一室の中央にアンドロイドを設置する。
 ほとんどが科学によって作られ、しかし、しっかりとオカルトも含めて作り上げられた、成体式のアンドロイド。
アストラルが宿らない---正確には空っぽの器となる---ように作り上げた特注品だ。
そして、その外見的な特徴などは遺伝的・外見的に見て一つの特性を有している。
すなわち、白系種---とりわけ貴種とされている白銀種のものであった。
何しろ「本人」の希望と遺伝子情報から再構築したのだから、当然といえば当然であった。

「インストール、開始」

 その声とともに、「彼女」の体となるアンドロイドを囲むコンピューターが演算を開始する。
すでに「悪魔」として「転生」していた「彼女」にふさわしい肉体の用意はなかなかに難しかった。
単に受肉させるだけならば簡単であっただろうが、厄介であったのは彼女の持つ異能であった。
純血の、それも王族の血筋の「彼女」は白銀種としての異能で高いカリスマを発揮する。
それは精神的・肉体的なものもあるが、より深いところ---人の意識・無意識にまで影響するというものであった。
「悪魔」に「転生」したことでその効果はより鮮明となり、影響力を強めてしまったのだ。
オンオフが難しいこともあって、その気になってもならなくても不特定多数を魂のレベルで魅了してしまうほどに。
 その異能について研究するにあたって、同じく白銀種のヴラディレーナ・ミリーゼ少佐の協力が必要で、その原理の究明が行われた。
そしてそれらを反映し、迂闊に洗脳じみたカリスマを発揮しないような調整を施した肉体を作るのに時間がかかって、今に至るのだ。

「工程の54%が完了」
「進捗は順調……義体の機能は?」
「現在は問題なくインストールと最適化を進行中です」
「彼女の希望とはいえ、いやはや……」
「また革命が起きるじゃないかって?」
「彼女はもうこりごりらしいからね。
 彼女に限らず、正統政府もそうらしい」
「そりゃあいい。政治的な革命は大抵ろくなことにならない」

 そんなことを言いつつも、スタッフたちは一切の無駄なく、円滑に作業を進めていく。
 目の前の白銀種のアンドロイドに命が徐々に吹き込まれていく。
 300年前に、王制を覆した革命を率いて、聖女として祭り上げられ---市民ではないからと投獄され、獄死した「彼女」。
その魂はサンマグノリア共和国において信仰という体裁の束縛によって縛り付けられ、未練もあって残留し続けていた。

「残りの工程24%ほど」
「記憶データ、主観データのフィッティング順調」
「油断するなよ」

 そして、300年という時間を経て、彼女はここに----

「100%!」
「チェック急げ……うお!?」
「早くも適合したか」

 体を起こした彼女は、300年ぶりの肉体に戸惑い、しかし、即座に慣れる。

「おはようございます、聖女マグノリア---今は転生した悪魔「マグノリア」でしたね」
「あっ……う、あ……」

 少し言葉に詰まり、しかし、しっかりと彼女は声を発した。

「聖女マグノリア---否定された聖女だけれど、今後ともよろしく」

 彼女---聖女マグノリアは復活した。


698:弥次郎@お外:2024/08/12(月) 17:38:45 HOST:p2570027-ipoe.ipoe.ocn.ne.jp

以上、ウィキ転載はご自由に。

サンマグノリア共和国に彼女の魂が繋がれて逃げられなかったという感じですね。

なので縛りごと引っ越しして悪魔に転生して、肉体を作りましょうねー
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最終更新:2024年10月12日 13:18