925:弥次郎:2024/09/02(月) 22:20:40 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」外伝「クリミアに小夜啼鳥は飛ぶ」6
クリミアの地から発せられたフローレンス・“ドクトレス”・ナイチンゲールの報告は軍からの報告と合わせ、本国へと届けられた。
それは、アルビオンにとって不可解であった事態への答えとなる報告であった。
ロシア軍のとる未知の戦術。
航空艦を多数投入してもなお戦線の押上げが不可能な堅牢な防衛線の存在。
積極的に打って出るのでもなければ逃げを打つのでもない、第三の選択---徹底した隠遁。
さらには隠れ潜む地下の要塞で戦う術を用意していた。
相手は銃火器だけでなく、剣や盾までも歩兵に装備させ、閉所での戦闘で用いさせていた。
植民地からも兵士を連れてくる雑多なアルビオンに対し、兵士の質が高いロシア人主体であることも後押ししたのだろう。
では、なぜそんなことをしたのか?
たどり着く答えは一つ、歩兵の狙い撃ちによる出血過多による軍全体の行動の阻害と破綻の誘発だ。
繰り返しになるが、アルビオンの陸海空の三軍をまとめて運用するドクトリンの〆を行うのは膨大な数の陸軍歩兵だ。
その歩兵が数を減らす、ひいてはいなくなってしまった場合、他の軍や兵科のかみ合いが悪くなり、軍事行動が滞る。
なるほど、ロシアが戦争を吹っかけてくるわけだ、とアルビオン政府および軍上層部は納得をした。
同時に、これまでの常識が通用しないことを把握してしまった。
航空艦の存在は圧倒的に大きく、陸軍も海軍もその援護や連携を前提としたものがくみ上げられ、全体の戦闘教義のほぼすべてを覆いつくしている。
だからこそ、それ以外に直面した時---空軍の力を借りない戦闘について未知でああったのだ。
航空艦を保有していたからこそ気が付けなかった視点の偏り、あるいは認識の欠落。
そこで、アルビオンは戦術を変えることとした。
ロシア軍とて消耗しているならば、ダメージレースで勝つことは最終的には可能となる。
つまり現状は無理にテコ入れする必要はなく、歩兵以外の分野で補うことでロシアの策を挫くことを企図しようというわけだ。
そこに歩兵がいるならば、武器弾薬に食料や医療品はどうしても届ける必要がある。
そして、それらの物資を集積する場所も遠くない場所に置かなければ連日の戦闘には耐えられないだろうという予想も。
926:弥次郎:2024/09/02(月) 22:21:29 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
アルビオン王立空軍は、派遣していた艦隊からフリゲート艦を抽出。敵地への浸透と補給線の破壊を指示した。
前線を歩兵と戦列砲艦によって拘束している間に、長期間の攻撃任務をこなせるフリゲートで補給をずたずたにしようという算段であった。
また、強襲装甲揚陸艦と快速の艦艇によって編成された部隊が、ロシア軍の陣地後方にまで歩兵をまとめて送り込み、襲撃を繰り返すようになった。
相手が航空艦の届かないところで戦うならば、アルビオンもまた歩兵の手が届かないところで戦うことができるというものであった。
なお、ナイチンゲールからの報告は、歩兵の死傷者が増えすぎたうえに、現場の将兵の指揮が著しく低下しているので、手を変えるべきではというものも含まれていた。
命は助かっても手足を失うことになったり、目や耳や鼻を失う兵士だっていたのだ。
その後の生活などを鑑みれば、それらは途方もない損失そのもので、戦後の社会の問題ともなるだろうと。
なまじ助けられてしまっているから問題になるだろうという、予測と警告も含んだものだったのだ。
ロシアは今の歩兵だけでなく、戦後の市民と社会そのものさえも攻撃しているという、医者だからこその視点であった。
残念ながら、それを認識するのは戦後になってしばらくしてからであり、尚且つ北米東西戦争でかき消されてしまうことになるのだが。
閑話休題。
斯くして、ロシア軍の生命線たる補給線への攻撃は激化していった。
補給線をある程度隠すことはできても、それには限界がある。どうしても地上の目に付くところを移動せざるを得ない。
また、人間は何時までも地下で生活することが難しいので、どうやっても地上の施設が必須となる。
そういったターゲットを、フリゲートや強襲装甲揚陸艦などは順次破壊して回ったのである。
このように戦争が推移していく中で、ロシア軍もまた次なる手を打った。
それは、アルビオンが未だ知らぬ、新時代の兵器であった。
より戦場が悲惨且つ凄惨を極めていく状況は、もはやだれにも止めようがない。
クリミアの地に多くの仲間を連れて舞い降りた小夜啼鳥の囀りをかき消すほどに、戦火は激しく燃え上がっていくのだった。
927:弥次郎:2024/09/02(月) 22:22:02 HOST:softbank126116160198.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
さあ、次の段階に戦争が進むザマスよ…
しばし婦長の視点から離れ、クリミア戦争の流れに注視する形となります。
そんなわけで次回から新
シリーズとなります。
最終更新:2024年10月26日 17:17