194 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/06(金) 21:46:06 ID:softbank126116160198.bbtec.net [24/214]

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」外伝「空と地と鉄火にて」2



 ロシア帝国がここまでカードを温存していたのはいくつか理由が存在するが、最たるものは消耗地獄に引き込むためだった。
 クリミア半島を半分ほどとらせ、固執させることで戦線を固定、そこでの消耗を強いる。
以てアルビオン王国の戦争継続能力を喪失させ、しかるべき後に逆侵攻をかける。
ロシアと比較すれば世界帝国本土から遠方への遠征、中継地点を挟もうがどうしてもタイムラグは発生する。
アルビオン王国が離脱すれば、残るはオスマン帝国。それならばアルビオン王国を相手に取るよりもよほど勝機があるというものだ。
 まあ、陸地に来てくれるまで航空機の洋上航法という問題が付きまとっていたために投入できないという事情もある。
とにかく航空機が投入するのにふさわしいタイミングと状況が出来上がって、いよいよ投入を行ったのである。

 衝撃と畏怖を与えるために、間隙を設けない。
 ロシア帝国軍が次に解き放ったのは飛行船であった。
 黒海の海上を迂回することでアルビオン王国側の哨戒網を回避し、丸裸のセバストポリ周辺の拠点目がけ空爆と砲撃を行った。
航空機と異なり、複数人での航法が使える飛行船だからこその長距離侵攻と攻撃。
無防備にも黒海に面した港に泊まっていた海上艦艇や陸港に停泊していた飛行艦艇---重要目標が叩かれてしまった。
全部は焼き尽くさないのがミソだ。まだまだアルビオンにはこのクリミアに兵力を繰り込んでもらわないとならないのだから。
 だからというように、別働となる飛行船団は黒海を縦断。大胆不敵にもイスタンブール直上に居座り、空砲を撃ち鳴らした。
首都への直接攻撃という野蛮行為を嫌ったのと、将来的に制圧予定の地を荒らすことを嫌ったのだ。
帰りがけに軍港に停泊していたアルビオン王国海軍の艦艇へ爆撃を加えていくことは忘れなかったのだが。

 この軍事的大打撃に、アルビオンは上から下まで震え上がった。
 ロイヤル・サブリン撃沈の報告というショックから間を置かずにこれだ。
 ロシア帝国が飛行艦艇を実現したという誤認が広まり、ケイバーライトがどこから漏れたのだと大わらわになり、政府も軍もパニックに陥った。
あるいは大日本帝国が直接ではないにしてもケイバーライトをロシアという緩衝国に流して調略を図ったとまでも噂が流れた。

 また、この攻撃による被害は戦争遂行能力という意味でも痛すぎた。
飛行艦艇と海上艦艇による物資と戦力の輸送に必要な戦力がここで一気に打撃を受けたのだ。
イスタンブール周辺は黒海へとつながる海路の要衝。そうであるがゆえに、アルビオンはここに多くの艦艇をかき集めていた。
戦争を行うにあたって消費される膨大な物資を届けるには、非常に狭いボスポラス海峡を通過しなくてはならず、必然的に通行待ちが発生していた。
そんな艦艇群が積み荷も含めて暢気にしていたのは、ロシアの飛行船団にとっていい的過ぎたのだ。
結果として、飛行船団による爆撃と砲撃でおおよその艦艇が沈んだり燃え上がってしまったりと大損害を受けた。

 さらに、この示威行為は首都の空を抑えられたオスマン帝国の士気に大きなダメージを与えたのだ。
その気になれば首都を灰燼に帰すことも容易いと、ロシア帝国から宣告されたに等しい。
如何にオスマン帝国軍がアルビオン王国からの支援を受けているとはいえ、高高度を飛ぶそれへの対処方法は持ち合わせていなかった。
正確に言えば派遣さえされれば航空艦は存在するが、そんなのは関係ないのは明らか。
 ひいてはオスマン帝国からアルビオン王国への疑心さえも湧きあがらせる程度には、この攻撃は効いた。

195 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/06(金) 21:46:49 ID:softbank126116160198.bbtec.net [25/214]

 これだけの攻撃を浴びせ、その上でロシアはアルビオン及びオスマン帝国に問うた。
 このまま続けるか、それとも要求を呑むか。返答は如何に?と。
 これはロシアの計画に則った行動であり、同時に相応に被害を受けていたロシア側の本音も混じっていたものだった。
如何に新戦術や新兵器を使おうと、被害が出ることは避けられない。
局所的には勝てていても大局としては被害を被るのは基本的にロシア側なのだ。
また、坑道戦術や塹壕戦や地下要塞というエリアを整備するのに途方もないコストをかけ、その上で各種新兵器を投入したことで財政的な危険があった。

 そも、これまで戦争を優位に進めていたのはロシアが日本から様々なものを高値で買い取り、あるいは譲歩を強いられてのこと。
何せ、航空機や飛行船そのもの、あるいはその運用、消費する資源や燃料などはすべて日本から得ていたものである。
そもそも航空艦隊を相手取るための戦術や対航空艦訓練にはロシアに赴いた日本帝国空軍と共に編み出したもの。
何時までも依存せず、さっさとケリをつけたほうが、戦後に権益に絡んでくる割合を下げることができるのだ。
 そんな貴重な航空機にしても飛行船にしても、全くの被害0というわけにもいかなかった。
 航空艦やケイバーライトほどではないにしても、ロシアにとっては途方もなく貴重且つ将来的に抱えておきたいそれらをいたずらに使いたくはない。
まして、仮にアルビオンがここから巻き返してきた場合、戦時賠償にこじつけて奪っていくのは目に見えているのだ。

 さて、戦争は一時的な休戦の合間に設けられた外交交渉の場に移った。
 交渉の席において、オスマン帝国はあと少しというところまで追いつめられていた。
オスマン帝国は確かにアルビオン側ではあるが、かといって完全に従属しているわけでもないのだ。
アルビオンの経済能力や海上および航空の戦力、あるいは物流などの流れの観点から屈するしかないわけで、積極的な味方ではない。
アルビオン側がオスマンを舐め腐っているということも相まって、潜在的には反アルビオンと言える勢力なのだ。
というか、アルビオンが恨みを買っていない勢力の方がレアなのだが、それは事実陳列罪になる。

 他方のアルビオンは---なんと、まだあきらめていなかった。
 従来の常識---つまり時代相応の感覚で言えば手打ちを考えるタイミングだと考えていたところで、継続を選んだのだった。

 これは政府や軍の声もあったが、一番大きいのは国民の声だった。
 ロイヤル・サブリン撃沈の報告は確かに衝撃を与え、アルビオンだけが空を征くのではないという宣言は畏怖を与えた。
 これを糊塗するために、短期的に何とかするために、アルビオンはアジテーションを行ったのである。
ロイヤル・サブリンは雄々しく戦い、その任務を全うして撃沈されただけである。その程度がなんだというのだ、と。
戦争とは殺し殺されるモノ。最終的な勝利は必ずアルビオンの元にある、故にこそ恐れることはないのだと。

「リメンバー・ロイヤル・サブリン!」

 国と軍の圧力---しかも戦時のそれは、強力に広められ、やがては世論までも巻き込んだ大きなうねりとして効果を発揮した。
少々効きすぎてしまった節もあるが、そろそろ仕舞いにしようという人々の意識をオーバーライドし、戦争続行へと傾けることに成功した。
 これは単なる戦いではない、報復(アベンジ)なのだと。
 王権を汚されたがゆえに、その分、いや、それ以上にやり返さなくてはならないのだと。
 奇しくも、それは国家の総力を挙げた戦争---総力戦の片鱗を見せていた。
 アルビオンもまた、ロシアの背後に大日本帝国の姿を見出していたことも無関係である妹。

 かくして、交渉は決裂となり、戦争は継続が決定。
 本国艦隊などからも戦力を抽出し、アルビオンはその世界帝国としての力を叩きつけんと動き出したのであった。

196 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/06(金) 21:48:10 ID:softbank126116160198.bbtec.net [26/214]
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この程度で妥協しては、覇権国家の名が廃るのです。
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最終更新:2024年11月02日 19:30