846 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/15(日) 11:39:37 ID:softbank126116160198.bbtec.net [175/214]

日本大陸×プリプリ「The Melancholic Handler」外伝「空と地と鉄火にて」3



 「リメンバー・ロイヤル・サブリン」を標榜して襲い掛かるアルビオンは、全力を投じていた。
 アレクサンドリア艦隊と両シチリア艦隊だけでなく、本国艦隊からも戦力をさらに抽出して放り込んでいったのだ。
それは戦闘艦というカテゴリーもそうだが、それ以外の艦艇、特に輸送艦などが多かった。
ロシア帝国軍の飛行船団により間抜けにも焼き払われた空海の輸送艦や戦闘艦の穴を埋めるためである。
ただでさえ物資を消費する戦争なのに、肝心の輸送艦やら貯蔵設備などがやられたとあれば、雑でもいいから早急に運んで供給する必要があったのだ。
それだけの艦艇を揃え、必要な物資を送り届ける準備をわずかな期間で熟し、実際に実現したのはアルビオンの真骨頂と言えた。
世界の海と空の3分の1はアルビオンのものであり、その本質は空運と海運による物流の支配にある。
消耗戦に持ち込まれて疲弊したのは事実だが、調達しようと思えば調達できるのが強みだ。

 このように戦力を揃えたアルビオンは、まずは対空攻撃手段の構築をはじめた。
これまでアルビオンは初見ということもあって殴られるばかりであったが、何もやられっぱなしではなかった。
飛行船や航空機への迎撃方法---特に後者は歩兵の火力を集中させることで落とせる可能性があるということに気が付いたのだ。

「決して無敵ではない、銃の数を揃えて撃ち続ければいい」

 これを行うために航空艦の艦上の一部を改造し、射撃デッキを設けた。
 また、対空砲として榴弾砲が半ば無理やり据えられることとなった。直撃は難しくとも、榴弾の炸裂でダメージを与えればそれで落ちると踏んでの選択。
この二つの対応策は、実際に正しかった。史実のWW1でも航空機を歩兵の小銃で撃ち落とすことは可能だったのだ。
対空射撃を担ったアルビオン陸軍の歩兵たちが装備していたのが当時最新鋭のミニエー銃---ライフル・マスケットだったのも大きい。
本国陸軍に優先配備されていたそれは、それまでのマスケット銃と比較して射程や威力の点において優れていたのだ。
これに目をつけ、わざわざ本国陸軍からかき集めて持ち込んだ甲斐があったというわけである。
こうした防空体制及び防空兵器の配備、さらには空中目標への射撃訓練も相まって、航空機の被害は徐々に増えていく傾向が生まれ始めた。

 さて、攻撃手段の後は実際に待ち受ける体制の構築だ。
この時代、まだ対空レーダーなどという便利なものは存在せず、無線もなかった。
そんな悪条件下でいつ来るか分からない航空機や飛行船をどうやって警戒すればいいのか?
答えは単純、艦艇を警戒にあたらせればいい。それだけの物量をアルビオンは用意していたのだから。
これまでの空襲などの情報を統合すると、飛行船も航空機も日が出ている時間帯に行動が集中しているのが分かった。
そうであるならば、その時間帯に重要拠点の周辺に航空艦を配置して監視及び適宜迎撃にあたらせたのだ。

 これらの複合は、アルビオンに多大な負担を強いた。
 けれども、それ見合う戦果を出し始めたのも事実だ。襲来する飛行船や航空機を迎撃し、撃墜したり撤退に追い込むケースが増加。
これによって重要拠点であるイスタンブールや最前線であるセバストポリでは安全が確保され、消耗や損耗が抑えられるようになりつつあった。

847 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/15(日) 11:41:34 ID:softbank126116160198.bbtec.net [176/214]

 また、足の長い艦艇に、対空設備を増設して送り出すことで、さらにロシア本土深くに攻撃を加えつつあった。
これまではクリミア半島を中心としたところを主戦場としていたのを、さらに広範囲に広げたのだ。
オデッサ、キエフ、ハリコフなど史実ウクライナへの攻撃を続行、食糧供給などを滞らせるハラスメント攻撃に着手した。
民間への攻撃を厭う声がなかったわけではない。如何に敵国と言えども、相手は無防備な一般市民。
けれども、ロイヤル・サブリンを撃沈されたという事実は、そういった声をかき消すのに十分すぎた。
報復を、復讐を。王権を怪我したものに報いを。それゆえに肥沃な大地のウクライナを吹き飛ばすことに躊躇いを捨てたのだった。
 むしろ、猛烈に報復心は燃え上がっていた。
 国家によるアジテーションの結果というのもあるが、根本には殴り返されたことへの理不尽な怒りがあったといってよい。
これまで好き勝手にしていたのに、反抗されたとみるや被害者のようにふるまう。個人でありうる心理状態ならば大衆ならばなおさらだ。

 そうしてロシア軍の後方を脅かし、攪乱している間に、セバストポリ---ではなく本土のエディンバラにおいては準備が整っていた。
 オーバーホライゾン作戦。
 リ・レコンギスタにおいても実行された、航空艦による長距離戦略砲爆撃---それも首都を狙い撃ちにする、まさしく首狩りに等しい攻撃だった。
無論、楽な話ではない。航空艦の航続距離的にも行きと帰りを考えねばならず、空中での補給が必須となり、必然的に練度の高い兵士が必須だった。
行くまでの間で空中で給炭作業、さらに爆撃をして帰ってくる道中でも同じく作業。
ランデブーポイントに正確にたどり着くためには、正確な航法と操船技術が必須なのだ。
この時代に自分の位置を把握するGPSや遠方との通信を可能とする無線はまだ未発達だったが故の要求。

 有効ではあるがリスキーなこの作戦が承認されたのも、偏にロシアを屈服させるためであった。
飛行船団によってイスタンブールが脅かされたことを糊塗するには、同じく相手の首都への攻撃をして見せなくてはならない。
 これは報復という意味もあるが、戦意を喪失しそうなオスマン帝国の尻を蹴り上げる意味合いもあった。
殴られても殴り返せるという事実が、殴り拳を受け止める準備があることを示すことが、アルビオンには必要だったのだ。

 黒海方面で王立空軍と海軍艦隊が陽動を行っている間に---作戦は決行された。
 結果だけを述べれば、作戦は成功。
 エディンバラを発し、コペンハーゲンとゴットランドを経由し、そこからサンクトペテルブルクまで空中補給を済ませ、殺到。
ロシア帝国首都であるサンクトペテルブルクに首尾よくたどり着いた航空艦隊は、示威行為を行った後に、首都目がけ遠慮なく攻撃を加えた。
主戦力---航空機や飛行船を黒海方面に振り分けていたロシア帝国の虚を突いたこれは、まさにロシア帝国を恐怖に陥れた。
今回のアルビオンの攻撃が成功したということは、同じことがまた繰り返される可能性があった。
今度はサンクトペテルブルクではなく別な重要都市を狙ってくる可能性もあるために、警戒すべき都市やルートは多岐にわたる。
現在のところ、クリミア方面に振り分けている戦力を分割すれば対応できるかもしれないが、戦力の数と質の低下が出ていたため、不安がある。
かといって、このまま放置するわけにもいかない。故に、日本へと頭を下げる必要が生じようとしていた。
戦争には勝ちたいところだが、しかして、日本への借りが大きくなるのは困る。

 しかし、そんな二律背反のロシア帝国と同様に、アルビオンにも強敵の足音がひたひたと迫っていた。
 そう、史実においても少なからず発生していた問題---財政問題であった。
 目を背け続けていた問題が、ついに無視できないスケールとなってアルビオンに追いついてきたのだ。

848 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/09/15(日) 11:42:40 ID:softbank126116160198.bbtec.net [177/214]
以上、wiki転載はご自由に。

アルビオンとロシア帝国はエスカレーションしていきました。

さて、あと2話くらいでたためるといいなぁ…
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最終更新:2024年11月02日 19:45