728 名前:635[sage] 投稿日:2024/10/04(金) 22:46:41 ID:119-171-252-158.rev.home.ne.jp [2/12]

ネタ 戦後核アレルギーべいてー世界 第十話 ナチアレルギー物質がさらに蓄積されるようです。


『我、夜戦ニ途中ス』


その電文と共に日本海軍による夜襲から始まった後にエーゲ海夜戦と呼ばれる戦い以降、地中海の制海権は連合国側へと一気に傾いた。
地中海沿岸部の航空基地や魚雷艇・潜水艦基地などは戦艦と重巡の艦砲射撃に晒され、内陸の基地も空母艦載機及びマルタ島から発進した爆撃機により壊滅。
生き残っていたUボートやSボートもアメリカ相手に腕を磨き続けた海上護衛総隊の敵ではなく次々に海の藻屑と消えていった。

この日本海軍の活躍を米英、特にイギリスは大々的に報道。
エーゲ海夜戦で活躍した元同海軍所属の戦艦黒姫をその名前からエドワード黒太子に擬えブラックプリンセスのニックネームで褒めちぎり自国の円卓の騎士にも例えられ、
ついでに最果ての槍持った女武者ウォースパイトが新聞の一面を飾ったりなど文化的汚染が開始されたりしている。

そんな中、この一連の戦いで初陣を飾った一隻の軍艦があった。
大和型の末娘、航空母艦信濃である。

日米の停戦及び日本の対独戦参戦という事態に沖縄戦前より進水すれど艤装が未成であった彼女は数ヶ月の時を掛けより完成度の増した艦体を以て初陣を飾った。
大戦型空母の究極形、戦後型空母の鏑矢そう呼ばれることになった彼女。
日本空母としては初となる本格的なカタパルトの導入に加え
現状で可能なレベルの航空甲板の幅の拡大と斜め着艦帯の設置、後にアングルド・デッキへと発展する諸要素が実験的に取り入れられた。
それもこれも260mを超える巨体故にだ。

そんな彼女はその腹の内から夥しい数の艦載機を吐き出し枢軸の基地を尽く火の海に変えていった。
数は少ないが彼女に魚雷、爆弾などを命中させるルフトバッフェやSボートの初戦からの生え抜きのベテランがいたが彼女の装甲の前には蟷螂の斧。
空母となってもなお大和型の眷属たる彼女の攻撃の手を止めることは出来なかった。
攻撃を受けながらも何事もなく発艦を続け、船も何もかもを尽く海の藻屑にはする様は日本本国の報道では某平安ガンダムにも例えられたという。

そんなこんなで地中海の制海権を奪った連合艦隊はヘラクレスの柱を抜け大西洋へと到達。
そしてついに帝国海軍と海軍に護衛された帝国陸軍はイギリス・ポーツマスへと至る。
地球半周にも及ぶ日本帝国陸海軍史上初の最も長い長い遠征であった。
そして陸海軍は一息つく訳であったが休んでいる暇はなかった、特に陸上の航空部隊は。
彼らの到着の時を狙いドイツが再びイギリスに攻撃を仕掛けてきたからだ。

第二次バトル・オブ・ブリテンとも呼ばれたこの戦いは航空機同士の戦いではなかった。
現実では報復兵器1号(Vergeltungswaffe 1)と呼ばれたFi 103飛行爆弾…比較的ドイツも粘っていたこの世界ではA4ロケットと共にこの時が初めての実戦投入と相成った。
改良により或いは爆撃機に搭載されることで射程が延伸した飛行爆弾は第三帝国宣伝省曰く高度な人工頭脳を搭載し人的被害の出ないクリーンな自爆無人爆撃機との触れ込みで投入直前に大々的に発表された。
そしてその言葉に違わず、速度が遅いので大半が撃墜されたが飛行爆弾は確かに重要施設及びインフラを正確に狙っていた。

729 名前:635[sage] 投稿日:2024/10/04(金) 22:47:48 ID:119-171-252-158.rev.home.ne.jp [3/12]

キィーン、言葉にすればそんな音と共に空を切り裂くが如き疾さで自分の頭上を駆け抜けるソレを王立空軍の若い戦闘機パイロットは見送る。
元々は学生であった彼は恩師と慕う人物がドイツのポーランド侵攻と共に滞在先であったそのポーランドで家族諸共行方不明となった為に復讐の為に志願し空軍に入ったまだあどけなさの残る若者だ。

その視線の先にあるのは濃緑の胴体に描かれた赤い円、”現代”の戦闘機らしからぬスラッとしたまるで剣の様な胴体とシュッと後方に伸びた低翼配置の主翼。
その機首にはあって当然のプロペラが存在せず半ば胴体に埋め込まれたジェットエンジンより揺らめく熱を吐き出し飛ぶ様は未来の航空機を思わせる。
その名を橘花、航空行政の主導権を握った夢幻会の航空技術者らがアメリカからの湯水の様な支援の下で完成させた”戦後”のスタンダードを入れたこの時代では数年以上先を行く戦闘機。

流線形の形から黒王女(ウォースパイト)の空飛ぶ剣、そう英空軍のパイロット達から呼ばれるそれが先行し飛行爆弾の群れに突っ込んでいくとその名の如く雲霞の様な飛行爆弾の大群をバターに触れさせた熱したナイフの様に切り開く。

それに続けとばかりに米英のパイロット達が操る戦闘機達も次々に飛行爆弾を撃墜していく。
彼も負けじと操縦桿を握り直し飛行爆弾に狙いを定め、飛行爆弾を捉えた彼は飛行爆弾の機首部に無人であるならばありえないもの…ガラスが張り巡らされているのに気づく。


コックピット。人影も見える…つまりは有人機だ。


爆弾を抱えた飛行機を突っ込ませる、そんな戦術をドイツが取り始めたという話は聞いていた。
その戦術専用の飛行機だ。
斯様な戦術に怒りを、実行する兵士に憐れみを覚えたがこれも戦争の習わしと照準器を覗き込み操縦桿の機銃のスイッチへと手を掛け撃墜しようとしたその時。


「先生…?」


恩師の懐かしい顔が照準器越しに見えた。一瞬呆然とすると共に混乱する。
生きていたのか?何故そこに?ナチの飛行機に乗っているのだ?色々なことが頭を過ぎるとその間に自機のスレスレを飛行爆弾が通り過ぎる。
慌てて急旋回を始めスロットルを全開にすると直ぐに飛行爆弾に追いつき並走を始める。

どうしたら良いのか分からない…感情がグチャグチャだ。
飛行爆弾だから撃墜すべき、恩師が乗っているのだから撃墜すべきではない。
二つの心がせめぎ合うがその間にも飛行爆弾は高度を下げ始め目標に突入する体勢に入った。
もう時間がない、彼は操縦桿を血が出そうなほど強く握りしめる。
アレはもう恩師ではない、ただの飛行爆弾だと自らに言い聞かせ。


「先生…貴方はもう人間じゃない…ッ!あなたは、あなたは人間飛行爆弾にされてしまったんだ…!」


血を吐くように声を絞り出し。


「お許し下さい…先生…ッ!!」


機銃の引き金を引くと弾が彼の恩師の命を刈り取っていく。
徹甲弾により機体に穿たれる穴、そこより漏れ出した燃料に曳光弾の火が引火。
航続距離を重視し自爆機故に安全も考えず大量に搭載された燃料が燃え、機体中に延焼し更には自爆用の火薬にまで引火し巨大な火球となった。
彼の恩師は故郷の空に散った。

その後の追跡調査や生還した飛行爆弾のパイロットよりで今回使用された飛行爆弾に搭乗していたのはユダヤ人や連合軍の国民や兵士、ナチに反対していたドイツ国民であることが判明、連合軍軍人に多大なトラウトとナチへの嫌悪が植え付けられることとなった。
また、陸でも同様の無人を謳う小型装甲戦闘車両がナチスドイツによる投入。
連合軍が破壊した車両からは乗員であろう子供や女性らの遺体が発見され兵士にトラウマを植え付けることとなった。

730 名前:635[sage] 投稿日:2024/10/04(金) 22:50:15 ID:119-171-252-158.rev.home.ne.jp [4/12]
以上になります転載はご自由にどうぞ。
どうにもこちらの筆が乗らず期間が開き申し訳ありません。

連合軍兵士にトラウマが蓄積されますた。今後は戦線の押し上げとドイツ本土侵攻となります。
まあ、日本は援軍なれど外様故に脇役になるのですが…なお本土侵攻に伴い増え続ける連合軍のトラウマ…。
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最終更新:2024年11月20日 21:55