38:モントゴメリー:2024/08/04(日) 01:09:54 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
仏帝連合ネタSS——「仏帝連合誕生」——
——『ゲート』内海域、通称「ターミナル」
そこに浮かんでいる“連絡船”内の会議室で、仏帝——ブルボン朝フランス帝国——の外交官は怒りに震えていた。
理由は言うまでもない。
『ゲート』によってつながった平行世界の一つ、非公式名称「Petit Japon(プチ日本)世界」のフランス共和国がやった“暴挙”にである。
「友好の証」と称した催事で、彼の祖国を含む多数の平行世界のフランスに対し、その価値観を根底から否定するようなことをしでかしたのである。
彼の隣にいるもう一つの仏帝——ボナパルト朝フランス帝国——の担当者も怒りで顔色が赤くなるのを通り越して蒼くなっている。
その隣のフランス連邦の人間は今回直接的な被害を受けなかったので表面上は普段通りであるが、見た光景を理解できないようである。
そこへ、遅れていたフランス連邦共和国の担当者が入ってきた。
「皆さま、遅くなりました。ただいま本国より外務大臣が参りましたのでご紹介いたします」
その言葉に室内にいた者たちが居住まいを正す。外交部門のトップがやって来るとは、やはり彼らもこの件を重視しているのだろう——。
しかし、入室して来た外務大臣の姿を見て、彼らは一瞬凍り付いた。
入室して来た人間——フランス連邦共和国外務大臣が身に纏っているのはスーツではなく軍服、それも礼装ではない海軍の戦闘服であったからだ。
外務大臣——彼らの海軍では傍流とならざるを得ない潜水艦畑で苦労を重ねて政治家へと転身した彼は口を開いた。
「まずは遅参をお詫び申し上げる。我が連邦共和国大統領…否、『最高司令官代行』の決断をお知らせに上がりました。」
「一週間以内に、我がフランス連邦共和国は、プチ日本世界のフランス共和国に宣戦を布告いたします。」
「つきましては皆さまには、このターミナル海域の軍事通行権を我らにお認めいただきたい」
その言葉に各国代表はどよめいた。ある程度予測できたことであるが、それでも問わねばならなかった。
「…本当に、異世界相手に戦端を開くおつもりか?それがどれほど危険性のある選択かを理解できないあなた方ではありますまい?」
「無論、理解しております。最悪の場合、派遣軍はあの悪夢のような異世界に取り残されるでしょう」
されど、と外務大臣は続けた。
「あそこまでされて黙っていることなどできませぬ!!我らだけならばまだいい、しかし、奴らは『我らが指揮官』を愚弄した!!!?」
外務大臣はそれまでの事務的は顔をかなぐり捨てて叫ぶ。
「ここで立ち上がらぬは、『霧の向こう』にいる先達たちへの裏切りであり、『我らが指揮官』以下女神たちへの冒涜に他なりません!!」
「どうか…どうか軍事通行権をお認めいただきたい……」
外務大臣は涙を流しながら首を垂れた。
39:モントゴメリー:2024/08/04(日) 01:10:50 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
「…正直に申しましょう、Monsieur。我々ブルボン家を奉ずる者たちからすれば、あなた方も“理解に苦しむ者たち”になります。」
「ボナパルト家を皇帝と仰ぐのはまだマシですが、君主を排除する共和制など認めるのに多くの自制心が必要でした。」
「特に貴殿の所属する連邦共和国の在り方は、未だに理解しかねています」
——“共和制軍事宗教国家”って何やねん?最初に連邦共和国の詳細を聞かされた時の反応を思い出しながら言葉を発する。
しかし、とブルボン家の忠臣は続ける。
「あなた方は、あの野蛮人たちとは決定的に違うものがあります。」
「なんと申して良いか。…そう、あなた方は“生ハムにバターを載せて食べる”ようなものなのです」
「我々の価値観からすれば、さっぱりとした味と風味が命である生ハムにバターの油分を加えるというのは、理解に苦しみます。」
「されど、生ハムもバターも歴とした食品であり、それを組み合わせるというのはまだ合理性の範疇であり、個人の嗜好であると受け入れられます。」
さらに、と彼は続ける
「あなた方はその“嗜好”を我々に押し付けるようなことはせず、我々の“嗜好”を尊重してくださった。それこそが多様性であり、あなた方が“文明人”であると我々が認識できた理由です」
「……『外交に真の友情はなし。だからこそ、誠心誠意を尽くすべし』
この金言は我々の世界にも存在してますれば」
『我らが指揮官』隷下の“兵士”はそう応える。
それに対し“忠臣”はまた言葉を紡ぐ。
「誠に。そしてその金言が我らに対話を可能として“共通項”を作ってくれました。しかし……。」
「奴らには“それ”がありません!!」
「奴らは食料ですらない“ゴミ”を料理と宣い、あまつさえそれを我らに押し付けくる!!そしてそれを拒否する我らを『野蛮人』扱いする!!!」
“忠臣”は机に拳を叩きつけ、立ち上がる。
「我々の価値観を、陛下を!あそこまで侮辱されて黙っているほど我々も恥知らずではありません!!
我らも兵を上げるよう、本国に上奏します。」
「…貴殿達と共に戦場(いくさば)へ赴けることは、『霧の向こう』でも誇れる偉業となりましょう」
“兵士”は“忠臣”へ手を差し伸ばす。
「その話、我らも乗りましょう」
そこに“もう一人の忠臣”——ボナパルト朝フランス帝国の担当官が近づいてくる。
「私もはっきり言って“生ハムにバター”は受け入れがたいですが、それを越えてあなた方とは手を携えることができると確信しております。
…そして、我々も主君と信ずる価値観を否定されたのには変わりありません。」
彼の眼には憎悪を焔が宿っていた。
「———えー、皆さん。ちょっと先走りすぎではありませんかな?」
そこに待ったをかけたのは、今まで一切発言をしてこなかった“市民の公僕”——“現代によみがえった西ローマ帝国”ことフランス連邦の担当者であった。
「これは我々の名誉の問題です。口出しは無用」
「然り、奴らへの報復は我々だけでやります。貴殿達には迷惑をかけませぬ」
「どうかご理解願えないだろうか?」
“復習者たち”は口々に訴えかける。しかし、それに対する返答は彼らの予想を超えていた。
「…2週間、いや、10日ほど頂きたい。そうすれば最低でも1個旅団は我らとしても派遣を約束できます。
その間に指揮系統の構築など、必要な手続きを進めましょう」
「「「!?」」」
“公僕”は彼らを止めるのではなく、逆に参加を申し出てきたのである。
「…ご厚意には感謝するが、理由を伺っても?今回、あなた方は目立った被害を受けていないはずですが」
「——まず、ここで奴らに肩入れしても我が国に利益が無いと言うのが一つ。逆に、あなた方に付けば何らかの利益が望めるのが一つ」
そして、彼はつづけた。
「奴らと『同類』と思われたくないのが最大の理由ですね」
後世、『仏帝連合』と呼ばれることになる組織はこうして発足したのである。
40:モントゴメリー:2024/08/04(日) 01:12:49 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
以上です。
ウィキ掲載は自由です。
何か書かねばならないリアル情勢でしたので予定を急遽変更したしまして仏帝連合を投稿いたします。
(ようやくE-2-1が終わったので書けました……。)
52:モントゴメリー:2024/08/04(日) 13:55:17 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
彼奴が「Ah!ça ira, ça ira, ça ira」を誇るならばそれで良し。
我らは「Vive Henri Ⅳ!(アンリ四世万歳!)」と
「Le Chant du départ(門出の歌)」と
「Partant pour la Syrie(シリアに旅立ちながら)」と
「La Marseillaise(ラ・マルセイエーズ)」
を奏でながら剣を抜こう。
(それぞれどんな意味を持つ歌かはお判りでしょう)
139:モントゴメリー:2024/08/06(火) 23:10:31 HOST:124-141-115-168.rev.home.ne.jp
106
遅ればせながら635氏
プチ日本世界のフランスの所業
それは皆さんのご想像にお任せします……。
ここで仏帝連合、選手の紹介を行います!!
(甲子園並感)
1番、
日仏世界代表、ブルボン朝フランス帝国!!(「ヤバい方のフランスその1」)
2番、
日墨同君連合世界代表、ボナパルト朝フランス帝国!!(「ヤバい方のフランスその2」)
3番、日本連邦世界代表、共和制フランス連邦!!(「ヤバいけどヤバい中ではまだ話ができるフランス」)
4番、日蘭世界代表、フランス連邦共和国!!(「ヤバい奴らの影に隠れているけど、あいつが一番ヤバくね?なフランス」)
以上、第一グループの入場を終わります
(第二グループ以降、募集中)
最終更新:2024年12月06日 22:05