127 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/10/26(土) 22:23:21 ID:softbank126116160198.bbtec.net [14/154]

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「サトゥルヌス祭にはご用心」2


  • F世界 ストパン世界 主観1944年12月 オラーシャ帝国 ペテルブルグ 502JFW基地 通信室


 この世界に似つかわしくない、極めて現代的な通信設備の並ぶ通信室は、連日賑わいを見せていた。
11月ごろから始まり、駆け込みで需要が発生しているために、基地勤務者や周辺基地の人員がここを利用しているのだ。
理由は一つ、サトゥルヌス祭のプレゼント手配である。
キャラバンが来ていればその時に頼めばよいのであるが、ネウロイの襲撃という危険が付きまとう関係上、輸送部隊に付随する規模は大きいとはいいがたい。
その点、後方との通信でプレゼントの中身を注文し、配送するように手配を済ませるならば非常に楽なのだ。
キャラバンが持ってこれないものでも確保できるし、別の基地や母国にいる家族などに贈り物を贈るならばこちらの方が手軽でもある。
 まして、贈りたい相手が多数いる人間にとっては、給与とカタログとをにらめっこしながら、連日通い詰めて手配を進める必要があった。
サトゥルヌス祭が近いという繁忙期であり、駆け込み需要が発生しているので、配送費用も含めて値段は上昇傾向にあるのもある。

 そう、例えばかわいい子猫ちゃんたちとつながりを持つクルピンスキーなど、ブッキングなどがないように手配をする必要があったのだ。
如何に軍属であり、ウィッチであり、502JFWの一員であるからと言って、給与に際限がないわけではない。
元の給与に危険手当や戦果などが上乗せされる一方で、税金など処々の費用が差し引きされて、他の兵科の兵士よりは貰っているが限度もある。

「うーん、困ったね……」

 給与などをうまくやりくりしつつ、尚且つ、贈り物が被らないように、それでいて嗜好に合わせたものを。
伝手やつながりを多く持つからこそ、こういった行事においては必要な経費が膨れあがってしまうものだ。
付箋がたくさん張り付けられたカタログを前にうめくのも無理もない。
可愛い子を片っ端から口説くのはクルピンスキーのライフワーク的なところもあるが、ある意味ではそのツケとも言えよう。

(ひかりちゃんもそうだし、エマちゃんも来たし、ペトロザボーツク基地の娘たちにも……)

 今年だけでもかなり人員が増えて負担が増え過ぎである。もうちょっと配慮くらいしてほしいのだけれど。

(まあ、楽しい時間は長くないかなぁ)

 とりあえず、注文が決まったものは発注しておく。
 後は本国に請求が行き、サトゥルヌス祭に合わせて配達がなされるだろう。
 問題は、その時までちゃんと生きていられるか、贈る相手が無事かどうかという点だろうが、そこは自分達にかかかっている。

128 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/10/26(土) 22:24:52 ID:softbank126116160198.bbtec.net [15/154]

「おー、伯爵ー」

 部屋を出た自分を呼び止めたのはオーカ・ニエーバのバルバラだ。

「やあ、カルガモちゃん。帰投したところかな?」
「うん。今日も撃墜数稼ぎは順調だねー。そっちは?」
「ん?まあ、サトゥルヌス祭に向けてね」
「そういえばそうだったね……期待しているよ、プレゼント。
 ぶどうジュースならこの銘柄でよろしく」

 そういってバルバラはメモ用紙を差し出す。
 目を通してみれば、ちょっとお高いどころじゃないぶどうジュースの銘柄と本数が嫌に具体的に書かれている。
忌憚なく言って高すぎる。これにはクルピンスキーも顔を引きつらせるしかなかった。

「あ、あははは、お高いね……」
「うん、整備士のみんなとかへの賄賂だからね」

 あっけらかんと使い道までばらすのは、大胆というか気もが太いというか……プレゼントを活用するにしても、もっとこう、言い方があっただろうに。

「それと、こっちは自分で飲む分だから」
「追加で……?これ自分で買うのじゃダメ?」
「高い金を払って買ってもらうから、なおのこと美味しい!」

 バルバラは隠す気もなく言い放った。
このロマーニャ出身ウィッチ兼ウォーザード、割とがめついし酒飲みである。
分かってはいたことだ、着任してから知り合い、共にこの502JFWで戦ってきた中だから。
けど、分かっていても受け入れがたいことだってある。たとえ懐が広いクルピンスキーであっても、だ。

「まー、期待しないでおいてね」
「期待しているっていったよ!」

 それと、とバルバラは付け加えた。

「ラル隊長と戦隊長が呼んでいたよ。
 多分、最近増えているネウロイのことについて話があると思う」
「……そっか、ありがとね」

 わざわざ呼び出してのネウロイの話、経験則的に言ってこれは碌な知らせじゃない。
 ネウロイには人の常識も慣習も通じないし言葉も通じない。
 だとするならば、サトゥルヌス祭であろうとなんであろうと、夜討ち朝駆け野伏に奇襲、使える手は何でも使ってくると考えられる。

129 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/10/26(土) 22:26:00 ID:softbank126116160198.bbtec.net [16/154]

  • 502JFW 執務室


 ラルの部屋に赴いてみれば、既にニパとロスマンの姿もあった。オーカ・ニエーバからもみちるが招集されている。
 ローテーションでは、今は隊長であるカーチャが鏡子と共に哨戒に出ているはずで、バルバラから任を引き継いだはず。
そうなると、ついさっき、本当に直近で何かあったということになる。

(カルガモちゃん、簡単に言っておいて……)

 あの何気のない会話の直前まで、ネウロイと、それも殊更に厄介な種と戦っていたということになる。
 たまたまではなくて、自分を本当に探していたということか。

「さて、来たな。
 端的に言うと、新型のネウロイがまた出た」

 言葉とともに、ラルは卓上の端末を操作し、壁に据えられた液晶モニターに画像を映し出した。
 表示されたのは、槍の穂先のような体に申し訳程度の翼が生えたネウロイの姿だ。

「これが?」
「ああ。平たく言うと、新型のエーテルレーダーへの対応能力を持つ個体だ」
「新型のエーテルレーダー……っていうと、アウガ対策の?」

 指(フィガー)と目(アウガ)と呼称される、砲撃手と観測手の役割を担ったネウロイが出現したのはほんの少し前の出来事だ。
あれ以降も、度々姿を現しては補給線や陸上戦闘艦、あるいは拠点への砲撃を行ってくるのが確認されている。
とはいえ、既に目を補足するエーテルレーダーの配備と、砲弾を撃ち落とせるマギリングキャノンの普及で脅威度は下がったはずだ。
偏に対抗策が普及し、未知の能力が既知の能力になったから、一般兵科でさえも対処できるようになったはず。

「対策を打ったら、その対策を打たれた。鼬ごっこだな、これでは」
「どういうことなのさ?」
「検知されることを前提にして、速力と光学迷彩を主軸にしているんです」

 ラルに問いかけたクルピンスキーの疑問に答えたのは、みちるだ。
 他の部隊からの通報を受けて現場に急行、そして交戦し、その性質を見切ったからこそ、分かることがあった。

「発するエーテルの波長を複数にすることで、レーダーからの検知の回避と擬態を行うアウガはほぼ正確に割り出せるようになりました。
 問題は……補足と追撃、さらに撃破するのは自前ということでした」
「……ふーん?」
「能力としては、連合の航空機に近い、独特の形状に由来する高い速力。そして、アウガ同様の透明化技術。
 この二つが合わさればレーダーがあっても、レーダーで捕捉できても振り切れてしまう。
 そして、連絡が追い付くころには目標に対して攻撃を完了できて、そのまま逃げだしてしまう」
「……」

 クルピンスキーとて馬鹿ではない。
 レーダーに対してステルスできなくなったから、足の速さで迎撃と視認を振り切ってしまうということだと理解できた。
エーテルレーダーで捕捉してから迎撃態勢に入るタイムラグの間に攻撃してしまえばよいということ。

「攻撃手段も二種類。体組織を切り離した実弾砲と光学兵器の二種類です。
 これまでのネウロイよりも長射程で、威力が高い。アプローチのたびに一回か二回程度しか放ってきませんが、それでも厄介なことに変わりはありませんね」
「みちるちゃんはどうやって対処を?」
「これでも選抜狙撃手だったから、遠距離から撃ち落として、墜落させた」

130 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/10/26(土) 22:27:17 ID:softbank126116160198.bbtec.net [17/154]

 みちるは、自分の目を指さしながらこともなげに言う。
 だが、クルピンスキーからすれば脅威だ。
高い速力と風景へと溶け込むアウガと同じ能力を持っているとのこと。
そんな相手を狙撃で仕留めた?観測情報も当てになるか怪しいのに、長射程で?
MPFには射撃を補助する機能もあるとは言うが、絶対万能というわけではないのは聞いている。
 それでも、命中させた。しかも撃破した?
 改めてだが、502JFWに配属されるウォーザードだというのは伊達じゃないのだと分かる。
 扶桑皇国の魔導士だったところから、ウォーザードへと転科して、優秀な成績から配属されたとは聞いた。

(改めて実感すると恐ろしいね)

 魔導士が数を優先した戦力であり、集団での射撃戦に重きを置いていることを差し引きしても、まさに天賦の才覚か。

「でも、どうするの?
 みちるちゃんみたいな選抜射手が何時もいるとは限らないんだし」
「新規に対空砲とエーテルバリアユニットの配備を急いでいる。
 初見では苦労するし、種が割れるまでは苦労するだろう」

 ラルは、しかし、と断言する。

「鼬ごっこだろうがなんだろうが、種が割れればいくらでも対抗策を打ち出せる。
 どちらが先に策と対応能力が尽きるかの勝負なわけだな」
「ウィッチが遭遇した場合についての対応や行動方針を定めておきたいです。
 なので、クルピンスキー中尉とニパさんには知恵を絞ってもらいます」
「わーお……」

 これは重要な仕事だ、とクルピンスキーはつぶやくしかない。
 とはいえ、やらざるを得ない。平穏なサトゥルヌス祭のためにも、知恵を絞り、安全の確保に貢献しなくては。

「こりゃあ、ぶどうジュースじゃあ足りなくなりそうだね」

 呟きながらも、クルピンスキーの目は真剣だ。
 これでもウィッチの端くれ、開戦から戦い続け、オーバーロードを超えた一兵なのだから。
 この後の会議は、かなり白熱したものとなったと言っておこう。

131 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2024/10/26(土) 22:28:06 ID:softbank126116160198.bbtec.net [18/154]
以上、wiki転載はご自由に。

みちるちゃん、頭のおかしい選抜射手でした。

何も適当に選ばれたわけじゃないんですよねぇ。
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最終更新:2025年01月04日 16:28