252:冷石:2024/04/28(日) 05:23:28 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp

銀河憂鬱伝説   シマヅ戦記 第6話


  自由惑星同盟軍第14艦隊旗艦『ゴジラ』艦橋


「予想通りでしたね提督」

「うむ、これで勝ったな」

「はい、ローエングラム元帥には人望の無い司令官が焦土作戦を行うという事の愚を教育して差し上げましょう」

「参謀長、奴を元帥などと呼ばんでもよか」

思わずシマヅ提督を見ると、シマヅ提督はいつもと変わらぬていで艦橋を見下ろしている

(あー、これは相当怒っているな)

対ラインハルトの戦略を考えている時

「帝国軍の連中は基本軍人でなく武人じゃ」

そう言っていたのを思い出す、要は帝国軍の上層部は帝国軍の臣民を守るものでなく誇りと名誉、そして皇帝のために戦う
そうシマヅ提督は説明してくれた、そう考えるとラインハルトに皇帝のためという考えがないので
彼は誇りと名誉のために戦っていると言える。
その点我ら同盟軍は軍人、国家と国民を守るために戦っている。
少なくとも提督はそう考えている。それだけに効率的とはいえ、末期戦でもないのに国民を犠牲にする前提の焦土作戦を取る
ラインハルトを許せないのだろう。


「ならば何と呼びますか?かの国の大貴族に習って金髪の孺子とでもよびますか?」

「ふむ、それは芸がなかね・・・
そうじゃ、シマヅ・イエヒサ被害者友の会会長というのはどうじゃろう
うむ、それがいい。よし、参謀長、軍議などのオフィシャルな場面以外で奴を呼ぶときはそう呼ぶよう通達せい」

本気かこいつ、と思ったが。機嫌のよくなった提督を見て、それに乗ることにした。どうも私も結構腹に据えかねているようだ

「かしこまりました、ですがそのままだと長すぎますので普段は『会長』と呼ぶことにしましょう

「うむ、軍隊用語は簡潔を尊ぶそうしよう
さて、諸君作戦開始じゃ」

提督の言葉に艦橋のクルーは敬礼で返す。さあ、嫌がらせの開始だ。



 自由惑星同盟軍第5艦隊旗艦リオ・グランデ


「今何とおっしゃいましたかビュコック提督」

「うむ、さっきも言った通り今後は隠密裏の行動をとりたいので通信を傍受されては困るから
こちらへの通信はよほど状況が変わったとかでもない限り最小限に抑えてもらいたい
ああ、もちろんそちらへの定時連絡は欠かさないようにする」

「その定時連絡はどのような感覚で?」

「それはもちろん、高度な柔軟性を持ちつつ臨機応変に行う」

しれっとした表情でビュコックはそうのたまう

「冗談じゃよ、フォーク准将。もちろん補給を受け取るために現在位置はきちんと報告する
それとも何かね、我々にいちいち司令部にどう動くかのお伺いを立てねばならんのかね」

「そうはいっておりません、ですが我々は艦隊全体の状況を知っておく必要があります」

「じゃから、定時報告は欠かさんと言っておる。
大体いつまでにどこまで進軍し、どうするかを我々は司令部より命じられておらん
そうなると通信を傍受されると我々の作戦が敵につかまれるかもしれんからあまり密にできんと言っておるだけじゃ」

暗に作戦目標の設定をそちらがやっておらんのが悪いと言いビュコックは答える

「了解しました、では他の艦隊もそうという事で」

「いや、他の艦隊からも通信を入れると傍受される可能性が高いでの
わしが一括で報告することにする
司令部はデンと構えて報告を待ってもらいたい
ああ、これ以上は通信を傍受されるかもしれんから切るぞ、ではな」

「待ってください、話はまだ終わっていません」

フォークの叫びもむなしく通信は切られる

「やれやれ、恨むならろくな作戦計画を立てなかった自分を恨んでくれよ准将」

「しかしよろしいのですか提督」

「何がかね、参謀長。我らは大幅な作戦における受有裁量が与えられておる
十分我ら艦隊司令の裁量範囲内じゃ」

(わしの仕事はシマヅ提督の構想に司令部から水を差されんようにすることじゃ
まあ、あとでわしが腹を切ればいい)

253:冷石:2024/04/28(日) 05:24:09 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
 自由惑星同盟軍第14艦隊旗艦『ゴジラ』


「さて、バグダッシュ中佐。進捗はどうかね」

情報操作担当として引っ張ってきた情報将校のバグダッシュに提督が話しかける

「順調です、提督。略奪すれすれの行為を重ねることで我々だけでなく迎撃軍司令部にヘイト上手く向かってます」

「そうか、それは何よりじゃの」

「しかし悪辣ですな提督、『若造の金髪の孺子なんぞは怖くない。怖いのは歴戦のミュッケンベルガー元帥がくることだ』
と情報を流すだけでなく『金髪の孺子は臣民から奪った物資を横流しして私腹を肥やしている』と付け加えるとは」

「誉め言葉と受け取っておこう」

「ふふ、何しろ会長は金のためにおのが娘を売った男の子供である。という事を強調させて信憑性を高めましたからね」

「結果は何時頃でそうかね中佐」

「私の経験と勘。辺境領主たちの中央への陳情の頻度から考えればそう時間はかからないでしょう」

「では、嫌がらせを続けつつ気長に待つとするかの」


  自由惑星同盟軍第5艦隊旗艦『リオ・グランデ』

「それは本当か参謀長」

「は、ただいまローエングラム上級大将が解任され、代わりの迎撃軍司令官が任命されたとの報告が入りました」

「では、他の艦隊に連絡せよ。タンネンベルク宙域へ向かえと」

「はっ」

「あとはシマヅ提督が上手く敵艦隊を釣り上げるだけじゃの、参謀長」

「そうですな、ミュッケンベルガー元帥はしゃにむに突進してくるでしょう」

「そうじゃな、消極的な戦略を取ったローエングラム上級大将が元帥から降格の上、爵位も降爵されておるからのう」

「我らの狙い通りですな提督」

弾んだ声で答える参謀長にビュコックは

「まだ詰めが残っておる。ここで大魚を逃せば無能のそしりを免れんぞ」

このビュコックの言葉に参謀長は敬礼で答えた


  自由惑星同盟軍第14艦隊旗艦『ゴジラ』

「タンネンベルク宙域に入りました提督」

「うむ、参謀長手筈通りにやってくれ」

「はっ、マクマホン中佐準備は?」

シマダは隣のマクマホン作戦主任参謀に尋ねる

「すぐにでもジャミングはかけられます」

「うまく敵に見つかるようにな、中佐」

「任せてください、提督が司令部から借りた通信専門の士官たちが上手く仕事しております
本命はうまく隠しつつ見つかってみせますよ」

「よか、では諸君。副会長と帝国軍に地獄を見せてやろう」

こうしてタンネンベルクの”虐殺”は始まった。



  あとがき

とりあえず第六話です。本当はもうちょいラインハルトの更迭のあたりを書きたかったのですが
こうなりました。
力量不足ですね。
感想お待ちしております

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最終更新:2025年01月19日 18:56