468:冷石:2024/05/01(水) 05:54:05 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp



   シン・アスカとエザリア・ジュールの憂鬱マイナス

シン・アスカ


「議長、議長も随分と議長職が板についてこられましたね」

とある、緊喫の課題もなく比較的暇で平穏な日のプラント評議会議長室。
事実上のこの部屋の主である嶋田議長付首席秘書官の机の上の書類が普段の四割ほど少なくなっていてそのこともあり
嶋田秘書官の期限が比較的良いことを確認した。ルナマリア・ホーク議長付次席秘書官はコーヒーを嶋田と
上司であり恋人でもあるシン・アスカプラント評議会議長に出しつつ。恋人をリフレッシュさせる意味も兼ねて談笑の手を入れる

「うん、まあ最初のころは右も左もわからず嶋田秘書官に頼りきりだったからな。
あの頃はそれまでずいぶんとレイやキラさんに頼り切ってたことを痛感させられたよ」

仕事の手を休めることなくコーヒーを受け取り。シンは議長就任を打診されてからの日を思い出す。



「私に手伝って欲しい?」

議長就任を打診されたことで直属の上司であるキラ・ヤマト准将に相談し、嶋田の力を借りると良いとアドバイスをもらったシンは
その足で嶋田の元に向かい手伝ってほしい旨を伝える。

「はい、実はプラント評議会議長って推薦されたら拒否することができないんですよ
それに世界を平和にするために俺にできることを精一杯頑張ろうって思うんで
嶋田さんみたいに優秀な人に手伝ってもらえたらなって思って」

「ずいぶん大胆に引き抜き交渉をするんだね君は」

「え、あ、そういえばそうですね。すいません忘れてください」

「まあ待ってくれ、別にその件を受けるのは拒否する気はないんだから」

仕事全振りかつ無茶振りしてくるこの職場にうんざりしていた嶋田はそう答える

「ふむ、今はちょうど昼休みだ少し外で話そうか」

「あ、はい」


中庭にてベンチに腰掛けつつ

「それで君は打診されたから受けなければならないのはわかったが、それならナチュラルの私でなくとも
プラントには経験豊富な優秀な人がいるだろう?現議長や、アイリーン女史とかエザリア女史とか」

「ええ、確かにそうなんですが。俺、世界を変えたいんです、家族やステラ、レイみたいな目に合う人が一人でも減るように」

真摯にそう言うシンにまぶしさを覚えつつ、この家族を失ったときに時が止まってしまったがようやく時間が動き始め前に進み始めた少年に力を貸すのも悪くないとシマダは考えた

「シン君君の要請を受ける前に一つだけ質問していいかな?」

「なんですか?俺にこたえられることならなんでも答えますよ」

「いや、そんなに身構えなくてもいいよ。ただね、一つだけ知りたいんだ。君のその選択に君の幸せはあるのかい?」

「え?」

「人というのはね、幸せになるために生きるんだ。財を得たり、地位を手に入れたり。
恋をしてそれが成就して子をなすこと、それはすべて自分の幸せのためにあるんだよ
君の選択は大きな力を手に入れる事だ。そして大きな力というのは。自分が幸せになろうとしないものを決して許さない」

嶋田は最初の転生での人生を思い出す、自分たち夢幻会が起こした衝号作戦。
その結果生態系は崩れ経済は崩壊し、世界は滅びへと向かった。そして始まった贖罪の日々
ただ償いのためだけに権力という力を振るう、賽の河原で石を積むような日々を

シンは少し考えて

「それが俺の幸せかはわからないけど、俺が力を尽くすことで平和になって
その結果皆が笑ってられる、この幸せが明日も続くんだって信じられる日が見たいんです
これじゃだめですか?」

こちらの目をまっすぐに見つめてそう答えるシン

時間にして数秒ほどだっただろう。嶋田はちょっと笑って

「まあ合格かな。よろしく、シン、君の力になろう」

自分の力を振るってた理由なんかよりずっと上等だ

そしてシンに握手を求める。すると少年は綺麗な笑顔で握り返してきた。

469:冷石:2024/05/01(水) 05:54:43 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp

エザリア・ジュール

「イザークとその部下をを議長親衛隊に?」

シン・アスカが議長就任に承諾の返事を評議会に出してすぐにその男は私に接触してきた
嶋田繁太郎現コンパス総裁補佐官それがその男だった。
シン・アスカは自身の議長就任にその男を首席秘書官にすることを条件として出してきた
その条件を呑んでくれないなら議長には就任しないしオーブに国籍を移すとまで言ってきたのだ
ファウンデーション事件での活躍で改めてその実力を示したデュランダル派のトップエース
彼を失うのは避けたいと考えた評議会はしぶしぶ彼の要求を呑んだ。
エザリアはこの時代の人間の常として以前ほどではないがナチュラルに対するぬぐいがたい差別意識がある
だからナチュラルでありながらプラントの議長になる人間に抜擢された彼に興味を持ち面会要請を受けたのだ。

「その見返りにアスカ新議長に協力しろとでも?」

「いえ、違いますよ。新議長には信頼できる親衛隊が必要です。それで新議長とは個人的な親交があり
議長の政治的信念に賛同してくださるであろうご子息の就任をと思っただけです。
それにあたって御母堂にお話を通すのが筋かと思い面会をお願いしました」

「ご配慮有難うございます。そのお話は息子にとっても名誉な話です。ですが息子ももう大人、わざわざご報告いただかなくても結構ですわ」

その男の器量を図るべく表情をうかがうがまさに完璧なアルカイックスマイルを浮かべており
表情からはどんな人間かはうかがえない

(なかなか強敵ね、新議長が就任の引き換えにと望むだけの器量はあるといったところかしら)

そんなことをエザリアは思っているが、目の前の男は百戦錬磨、千軍万馬馬の古強者を通り越し、海千山千、それどころか
煮ても焼いても食えぬならばいっそ揚げてみろというべき政治的怪物である。
その彼から見ればエザリアは才はあっても小娘である。そんな彼に対峙したのが彼女の不幸、後に幸せであった

「そういえばジュール議員、貴女はご子息の結婚について悩まれているとか」

突如死角からコークスクリューブローをテンプルに叩き込まれた
しかし、息子と相手には面識があることを思い出しダウンを免れる
もっともこの時点で彼女の敗北は決定していた、はっきり言って詰みである

「ええ、正直困っていますの。息子は生まれてこの方女性の陰すら見られないのです
思いを寄せているであろう娘が近くにいるのにそれにも気づいていないみたいで・・・」

普段から思っている愚痴を思わずこぼす、それを見て表情一つ変えず彼は言った

「何ならご協力いたしましょうか?」


シンが議長に就任して一月後

「嶋田秘書官!」

エザリアが議長室にノックもせず入室し、驚くシンとルナを尻目に嶋田の手を握る

「ありがとうございます!息子が結婚を決めました。それもこれも嶋田秘書官のおかげです」

微笑みながら嶋田は

「いえいえ、お力になれて幸いですよ。ジュール議員」

と答えた。この瞬間彼女は熱狂的な嶋田シンパになった。

しかし嶋田さんは知らない、自信が虎ばさみに足を突っ込んだことに。


 あとがき
とりあえず過去話です
感想お待ちしております

470:冷石:2024/05/01(水) 05:56:06 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
とりあえずネタSSです
妙なテンションで一気に書き上げたのでおかしな話になってるかもしれませんが
感想よろしくお願いします

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最終更新:2025年01月19日 19:21