948:冷石:2024/05/16(木) 12:06:16 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp


   銀河憂鬱伝説   シマヅ戦記



  自由惑星同盟軍第14艦隊旗艦『ゴジラ』


「目標地点まであと半日と言うところでしょうか」

「うむ、各提督からはすでに艦隊の展開は済んだと連絡は入っとる」

「あとは引きずり込むだけですね」

「ふむ、我が艦隊はすぐ反転して敵艦隊の鼻っ柱に一撃をくれたあと全力で目標地点ば進出する」

「なるほど、一撃をくれることで相手のヘイトを稼ぎ理性を失わせて他艦隊の発見の可能性を減らす、そういう事ですな」

「そうじゃ、参謀長。カールセンに連絡。反転して攻勢に移れと」

「囮の活きがよければよいほど引っかかる可能性は高くなりますからな」

「そうじゃ、カールセンはその道の達者じゃ期待に応えてくれるじゃろ」

「了解しました」


  自由惑星同盟軍第14艦隊分艦隊旗艦『ガメラ』

「『ゴジラ』より入電、反転して敵の先頭集団に一撃を加えたのちに全速で目標地点に迎えとのことです」

「友釣りか、よしすぐ反転し敵の鼻っ柱を殴り付けろ」

「了解」



  銀河帝国迎撃軍総旗艦『ヴィルヘルミナ』

「小癪な」

思わぬ敵艦隊の反転急襲により先頭集団に被害が出た事にいら立ちを隠せないミュッケンベルガーの神経を逆なでするような報告が来た

「敵艦隊より入電」

「どうした、早く読み上げろ」

「はっ、しかしこれは・・・」

「いいから早く読み上げんか」

「で、では『親愛なるシマヅ・イエヒサ被害者友の会副会長殿。挨拶代わりの鉛玉は気に入っていただけたでしょうか?
それでは鬼ごっこを始めましょう。あなた方が我々に追い付ければあなた方の勝ち。トンズラに成功すれば我らの勝ち。
鈍重なご老体には堪えるでしょうが、しばらく楽しみましょう』以上です」

「ふざけおって、全艦全力で奴らを補足せよ。奴を討ち取ったものは軍功第一ぞ」

ミュッケンベルガーはラインハルトが消極的な戦略を取ったことによる更迭で積極策を取らざるを得ないところにこの挑発に理性を失った。ラインハルトの件が無ければまだ冷静さを保てていただろう、シマヅ、シマダ両者の辛辣な心理戦に引っかかっていたのである。

「司令官閣下、これは罠です。慎重に軍を進めるべきです」

ミュッケンベルガーの全速で敵を補足するという指令にメルカッツが入電する

「たかが半個艦隊罠があったら食い破るのみだ。ここまで侮辱されて慎重策などとるなど。メルカッツ貴様に武人の誇りはないのか」

「ですが、敵の主力艦隊が今行方をくらませています、もしや敵は全軍で待ち伏せているかもしれません。周辺宙域の偵察をすべきです」

「くどい!敵主力が来ていればここで雌雄を決するまでだ」

「司令!」

「臆したかメルカッツ。もうよい、貴様の艦隊は後方で待機しておれ」



「メルカッツ提督」

「シュナイダー中佐、司令はローエングラム上級大将のような目にあうことを恐れている。もう何を言っても聞き入れてもらえまい。
こうなったらもしも私の予想があっていた時に備え偵察艦隊を出し周辺の索敵をしようと思う」

「かしこまりました」

「杞憂に終わるか、早く敵を発見できれば良いが」

しかしすべては遅すぎた、偵察艦隊を出すタイミングはすでに逸していたのである。

949:冷石:2024/05/16(木) 12:06:48 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp


  自由惑星同盟軍第13艦隊旗艦『ヒューべりオン』

「第14艦隊目的地に到着しました。敵軍も上手く誘引できております」

13艦隊参謀長のムライがそう報告する

「うん、計画通りだね。では我々も軍を動かすとしよう。敵主力の退路を断って包囲陣を完成させる」

「せっかくの殲滅戦です。逃がすわけにはいきませんからな。責任重大です」

「しかしこうまでうまくいくとは思いませんでしたな。ローエングラム上級大将を更迭させる、そうすると次の敵は反対の戦略を取らざるを得なくなり、しかも更迭されたところを見ているから判断の幅が狭くなる。後になって考えれば当たり前と言えますが」

「うん、私もローエングラム上級大将を更迭させるなんて手は考えもしなかった。でも、よく考えると理にかなっている。
強敵と戦うのを避ける。そのために敵司令官を更迭させるという手は地球の専制政治の時代にはよくある話なんだよね」

「ローエングラム上級大将は人望が無い、これも盲点でしたな。ですが彼の来歴を見れば考慮するべきだったかもしれません」

「さて、無駄話は終わりだよ。千里の道を行くものは九百九十九里をもって半ばとする。詰めが大事だ。気を抜かないように」

「はっ」


  銀河帝国迎撃軍総旗艦『ヴィルヘルミナ』

「敵艦隊補足、射程に入りました」

「ふん、叩き潰せ「し、司令!敵伏兵が現れました。完全に包囲されております!」」

悲鳴のようなオペレーターの叫びが艦橋に響いた。

士気を高揚させるため、自身が冷静さを失っていたため等の様々な要因が重なりミュッケンベルガーは最前線近くまで艦を進めていたことが災いした。包囲されたことで艦隊の足が弱まった瞬間。前方の同盟軍第14艦隊が反転し猛撃を加えてきた
14艦隊は本来防御に回すエネルギーさえも攻撃に回すという超攻撃重視の突撃をおこなう。包囲されたことによる動揺で足が止まりかけた瞬間にカウンターでこの猛撃を喰らいミュッケンベルガーはその艦と運命を共にした。
こうなってはもう帝国軍に打つ手はなかった。包囲され緒戦で総司令官が戦死したのである。指揮系統はズタズタになり。各自で対応するしかなくなっていた。あとは一方的な蹂躙である。
この会戦に参加した帝国軍の主力はほぼ全滅した。
何とか戦闘集団としての体裁を保てたのは初期に包囲網を脱出したメルカッツ、ファーレンハイト両提督の直営艦隊数千だったという。
一方の同盟軍はほぼ無傷と言っていい軽微な被害だった。まさに一方的なワンサイドゲーム、宇宙艦隊戦史上最大の戦勝である。
このタンネンベルク会戦が後年タンネンベルクの虐殺と言われるゆえんである。

あとがき
とりあえずタンネンベルク会戦終了です。島津と言えばやはり包囲殲滅戦が似合うという事で釣り野伏での包囲殲滅戦です。
戦果はカンナエの戦い。勝利した側の被害は日本海海戦張りと欲張りセットでした。
本当は艦隊運用とかも書きたかったのですが、粗ばかり目立つのでカット。力量不足です。
それでは、冷石でした

950:冷石:2024/05/16(木) 12:10:33 HOST:M014011193161.v4.enabler.ne.jp
とりあえずアップです。
とりあえず帝国軍には軍務尚にとって涙すべき30分をしのぐ被害を出させてもらいました
冗談抜きで退職希望者、過労死と言う戦死者が続出しそうな損害ですが。
とりあえず、感想よろしくお願いします。

01/26 一部誤字を修正

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最終更新:2025年01月26日 20:24